No.1069392

紙の月20話

太陽都市の侵略を始めるフライシュハッカー達と、太陽都市の支配者たちの邂逅

2021-08-14 10:58:18 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:587   閲覧ユーザー数:587

「僕たちの目的はこの都市の支配権を得ること。そのためにあんたたち含めたただの人間には、この都市から出て行ってもらいたいんだ」

「我々にこの都市を去れだと! アンチどもの国でも作るつもりか!」

 太陽都市の管理者たちがざわざわと騒ぎ出す。都市国家でも特にアンチの取り締まりが強いこの太陽都市が、奴らに乗っ取られたとなれば他の都市国家も考えを見直さなければならない。

「残念だけど外れだよ。太陽都市は紛い者、超能力者だけの新人類の都市国家にすることだ」

 フライシュハッカーの言葉に騒がしかった議会が静まり返る。超能力者だけの都市国家。それにやつら紛い者が新人類だと?

「おい、話が違うぞ!」

 アンチのリーダーである男がフライシュハッカーに詰め寄った。

「お前の手下の紛い者の能力で、太陽都市を我々のものにすると……」

 一瞬画面にノイズが走り、ぐしゃりと何かがつぶれる音。画面にはフライシュハッカーしか映っていない。

「これで邪魔者はいなくなった、話を戻そう。僕の言った事は聞いてもらえるかな?」

 当然だが、そんな一方的な要求は誰も飲まなかった。沈黙が続く事が答えだ。

「もし聞いてもらえないなら、これから君たちをそこのアンチのリーダーのように、全員壁のしみにしてやるさ。そこで待っているがいい」

 通信が終了して画面には何もう映らなくなった。それからして、再びざわざわと管理者たちが騒ぎ出す。

「そんなことできるはずがない」

「でも、もしここまで来たら……」

 あんな子供の言葉にここまで動揺するとは……ゴウマはため息を漏らした。

「落ち着きたまえ、相手はただのテロリストだ。冷静に考えてみろ。たとえこの都市を乗っ取ったところで、ヴァリスが黙ってないだろう」

 太陽都市の環境維持AIヴァリス。太陽都市の生産区域すべてこいつに管理されている。太陽都市が機能しているのも、この意志を持ったプログラムが稼働しているからだ。奴がいなければこの都市は廃墟も同然だ。

「すぐにヴァリスへ通信を入れる。警備ロボットを使い、奴らを全員排除させるぞ」

 

 太陽都市への宣戦布告も終え、邪魔者もいなくなった。これからが本番だ。

 フライシュハッカーがいるのは太陽都市の管理タワー一階。ここから地下に行けばヴァリス、上階に行けば管理者たちがいる。それは事前の調べで分かっていた。

「僕は上に行く。ブルメたちは地下に向かってくれ」

 ブルメとスタークウェザー、そして残り二人の紛い者に指示を送る。

「期待してるよブルメ」

「ええ……」

 フライシュハッカーは他の紛い者と別れ、エレベーターで一人上を目指した。

 ブルメの反応は芳しくない。少し前だったら二つ返事で承諾してたはずなのに……これもあのデーキスとかいうやつの影響か。

 あいつは紛い者になってから日が浅い。だから紛い者が人間と違うのだと理解させることができなかった。度々ブルメに会っていたことは知っていたが、これならもっと早く引き離しておくべきだった。

 独り考えていると、エレベータが止まる。目的の階はまだ先だというのに。扉が開くなり待ち構えていた治安維持部隊の隊員たちが、銃弾の嵐を浴びせる。

 しかし、フライシュハッカーの超能力が、見えない壁を周囲に展開し、向かってきた銃弾をすべて弾く。

 無傷のフライシュハッカーの姿を見て、あぜんとする隊員たちに、今度は超能力で衝撃波を放つ。重武装の人間が壁にめり込むほどの勢いで飛ばす威力。これでもまだ彼にとっては出力を抑えている。

 この先へ、フライシュハッカーは何事もなかったかのようにエレベーターを出ると、倒れた隊員たちには一瞥もせず、階段を上がっていった。


 
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