No.1063498

スマブラ Stern des Lichts エピローグ

Nobuさん

灯火の星を題材にした二次創作の最終回です。
私が一番力を入れた長編なので、ここでも完結できてよかったです。

2021-06-04 11:48:00 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:570   閲覧ユーザー数:570

 こうして、最終決戦に終止符が打たれた。

 光の化身キーラと闇の化身ダーズは、スマブラ四天王と、悪魔の子と呼ばれし勇者と、青き音速のハリネズミと、

 黒き究極生命体と、秩序を守る死神の手により敗れ去った。

 そして、美しい夕焼けが八人を照らす中、キーラとダーズはゆっくりと墜落し、大きな水しぶきが舞い上がると共に、身体は完全に海に沈んだ。

 

「スピリッツボールが……!」

 キーラとダーズが海に沈むと、ベルが持っていたスピリッツボールがひとりでに開いた。

「魂が……天に昇っていく……」

 開いたスピリッツボールの中から、スピリッツが次々と天に昇っていく。

 解放された無数のスピリッツは螺旋を描き、青と紫が混ざった、美しい光の柱となった。

 それはまるで、戦いを終えたスマブラ四天王、イレブン、ソニック、シャドウ、ベルを祝福しているかのようだった。

「すっごい綺麗……!」

「僕は……いや、僕達は……この世界を光と闇の魔の手から解放したのだな……」

「ああ……世界は、元の美しさを取り戻したぜ」

「僕の冒険は、まだ終わっていない。でも、この世界を巡る冒険は、終わった」

「ふー、これで丸く収まったな」

「空が綺麗……安心して走りたくなる空だ」

 共に戦ったメンバーが、空を見上げる。

 色とりどりのスピリッツが、元の世界に次々と帰還していく。

 キーラとダーズと戦った八人と、彼らを支えてくれたスマブラメンバーのおかげで、スピリッツは居場所を取り戻したのだ。

 光り輝く太陽が、世界を照らしている。

 それはキーラが持つ邪悪な光ではない。

 全てのものを温かく照らす希望に満ちた光だった。

 

 スマブラメンバーが、キーラとダーズと戦った八人のところにやってくる。

「みんな、ありがとう!」

「この世界を救ってくれたのね!」

 キノコ王国の姫君、ピーチがマリオに真っ先に抱き着く。

「おわっ、やめろってば……」

「私、ずっと信じていたの。マリオが勝って、この世界を救ってくれるって。その通りになってくれて、嬉しいわ」

「はは……でも、キーラとダーズに勝ったのは俺だけじゃないんだぜ。リンク、カービィ、ピカチュウ、イレブン、ソニック、シャドウ、ベル……。

 頼もしい仲間がいてくれたからこそ、キーラとダーズを倒して世界を救ったんだ」

 そう、キーラとダーズを倒したのは、マリオだけの力ではない。

 スマブラメンバーが協力できたから、この大きな戦いに勝利したのだ。

「よく頑張りましたね、リンク」

「フッ……」

「お帰り~、リンク!」

「やったぁ~!」

「……」

 ゼルダ、シーク、ガノンドロフ、こどもリンク、トゥーンリンク、ダークリンクもやって来る。

 ダークリンクを除き、彼らはみんな、笑顔でリンクを祝福していた。

「みんな……ありがとう……!」

 リンクも、彼らに釣られて笑みを浮かべた。

 異なる世界の出身ではあるが、気持ちは同じだ。

「ピカにいちゃ~ん!」

「ピチュー!」

 ピカチュウの弟のピチューが、ほっぺすりすりで近寄ってくる。

 普段はあまり笑顔を見せないピカチュウだが、弟の前では満面の笑みを浮かべていた。

「やっぱり、このきょうだい、なかよしでしゅ」

「……ああ、そうだな」

「俺は一人っ子だからな、兄弟が羨ましいぜ」

「はっはっは、仲睦まじいなぁ」

「こういう光景は、平和になった証だな」

 プリン、ミュウツー、ロート、ルカリオ、ゲッコウガ、ガオガエン、ジュカインも陰で二匹を見守っていた。

 

「カービィ、シャドウ、ベル。三人とも頑張った」

「……フッ」

「カービィさんの戦いを見守ってましたが、かっこよかったですよ! ね? 大王様」

「そうだゾイ。キーラとダーズにとどめを刺す時のカービィは、かっこよかったゾイ」

 そして、瑠璃、メタナイト、デデデ、ランスは、カービィ、シャドウ、ベルを祝福した。

 カービィ、シャドウ、ベルは最初の襲撃で生き残った三人のファイターである。

 それだけに、この三人は他のファイターと比べて一際特別な存在だった。

「……そんなわけないだろう。ただ、僕の邪魔をしていただけだ」

「当然でしょ! 私、死神なんだから!」

「美味しいご飯をいっぱい食べて、いっぱいお昼寝するのが、僕の一番の幸せだからね」

 三人の反応は、文字通り三者三様だった。

 それもまた彼らだ、と瑠璃達は笑みを浮かべた。

 

「では、そろそろ帰ろう」

「君達にも戻る場所があるからな」

「本当に、全てが終わったのですね」

「ええ……この空がそれを表しています」

 広がっているのは、澄み切った空。

 マスターハンドとクレイジーハンドは、スマブラ屋敷に帰るための魔法陣を作り出した。

 螺旋の光になったスピリッツが天に昇る中、スマブラメンバーは全員魔法陣に乗り、帰るべき場所に帰還するのだった。

 そして、スマブラ屋敷では、キーラとダーズの異変を解決した記念のパーティーが開かれていた。

 ヨッシー、カービィ、パックマンなど大食い組は出された料理をたくさん食べている。

「あ~、幸せです~」

「……ヨッシー、そのメロン、一口で?」

「はい~! とっても美味しかったです~!」

 マールは、ヨッシーの食べっぷりに驚いていた。

 ドンキーとディディーは夢中でバナナを食べ、パックマンは自分と同じ世界にあるマーボーカレーといも大福を食べていた。

 バンジョーとカズーイも、笑顔で食事をした。

「美味しいね、兄さん」

 ルイージは双子の兄マリオと共に、普段はあまり飲まない酒を飲んでいた。

「おっ、ルイージも付き合いが良くなったな」

「へへ……みんなと一緒にいると、断ろうにも断れなくて……」

「でも、あまり無理はするなよ」

「はーい」

 

 そんなマリオとルイージの席の近くでは、ピーチとデイジーが談笑していた。

「なんやかんやで、やっぱりマリオとルイージはめっさ仲が良いんやなぁ」

「うふふ、この二人こそマリオブラザーズなのよ」

 

「これが平和になった証なんだな」

「ぴかにいちゃん、これ、とってもおいしいでちゅ」

「ピチューが食えない分は俺が食ってやるよ」

「ありがとうございまちゅ!」

 ピカチュウとピチューの兄弟は、ワイワイと楽しみながら食事していた。

 

 マルス、ロイ、メタナイト、アイク、シュルク、ルキナ、クラウド、クロム、そしてイレブンはみんなで談笑していた。

 ピットとブラックピットが火花を散らす中、パルテナは微笑みながら見守っている。

 パックンフラワーとジュカインは意気投合しながら野菜ジュースを飲み、サラダを食べた。

 リュウ、ケン、テリーの三人は拳を交わす者として酒を飲みながら笑い合い、食事をした。

 フォックスとファルコはウルフに絡まれ、サムスはリドリーとダークサムスを睨んでいた。

 リンクとゼルダは笑いながらロンロンミルクを飲んでおり、

 こどもリンクとトゥーンリンクはリンクが作ったお子様ランチを食べ、ガノンドロフは一人で酒を飲んでいた。

 ファルコンはというと……いつも通り、黙々と出された食事を食べていた。

 しずえは砂糖とミルクたっぷりのモカコーヒーを飲みながら、りょうと共に食事をしていた。

「やっぱりみんな、仲が良いんだね」

「そうだね」

 剣士達の様子を遠くで見守っていたのは、ルフレ、ベレス、アイシャ、ドリィ、ミロ、そしてジョーカー。

 ベレス以外は全員オレンジジュースを飲んでいた。

「そういえばあたし、あなたみたいな真っ赤な怪盗が主人公の本に興味があるの」

「真っ赤な……」

「その主人公とパートナーは、いとこ同士なの。読んだ事ないけど、是非、読みたいわ」

「そうだな、俺もその本を読んでみたい」

 ジョーカーは同じ「怪盗」という事で、ミロが言った本に興味を示した。

 ベレスは相変わらず、無口で食事をしているが、肉を食べた瞬間、微妙な表情になった。

「……これ、誰が作った?」

(わたくし)ですが、何か?」

 ドリィがさらりとベレスに言う。

 彼女はメイドだが、お菓子作り以外の料理はお世辞にも得意とは言えないのだ。

 全くの下手ではないのが、救いだが……。

「あ、お口直しにわたしのお菓子は……」

「やめなさい」

 アイシャがお菓子をベレスにあげようとすると、ドリィがお菓子を取り上げる。

 彼女は、アイシャがお菓子を作ると微妙な味になってしまう事を知っているのだ。

「そのお菓子、一口食べていい?」

「構いませんよ」

「いただきます」

 そう言って、ルフレがお菓子を食べると、ベレスと違って特に問題なく完食した。

「大丈夫なの? ルフレ」

「うん、平気さ。……僕の料理は、鋼の味だからね」

 

 一方、どこかのテーブルにある三つの席では、ソニックがチリドッグ、シャドウが栄養剤、ベルがカキフライ膳を食べていた。

 今回、ベルは健康を重視して食事を選んだらしい。

「あれ? シャドウ、珍しいわね。ソニックと一緒の席にいるなんて」

「マスターハンドとクレイジーハンドが、こいつと僕を一緒の席にしただけだ」

「何だよ、こいつって!」

 シャドウはソニックに対し憎まれ口を叩いていた。

 でも、とベルがカキフライを食べてから言う。

「闇の世界でソニックを助けたのは誰だったかしら。私は知らないから、よく分からないけど」

「……」

 シャドウは何も言わず、黙々と栄養剤を食べた。

 気になったソニックは、シャドウに声をかける。

「シャドウ、楽しめないのか? せっかく、世界を平和にしたんだぞ?」

「やめなさい、ソニック。それだと逆効果よ」

 ベルが、ささっとソニックの前に手を置く。

「シャドウは、あんたみたいに自分のやりたいようにやっているの。だから、シャドウの方から来るまで待ってなさい」

「へいへい……」

 ソニックは用意されていたソーダを飲み、シャドウが話しかけてくるのを待った。

 そして10分後、シャドウはようやく、食事をしているソニックに反応した。

「それで、ソニック。僕に何の用だ?」

「このパーティーを楽しめないのか、って話だ」

「楽しむ、か。騒がしい事は好きではないが……」

 やはり、シャドウは騒がしいものが嫌いらしい。

 ソニックは口を尖らせていたが、ベルは逆に、微笑みを浮かべていた。

「あら、楽しんでないわけじゃないわよ? 楽しめないなら、すぐに出ていったはずでしょ?

 でも、シャドウは今、席にずっと座っている。それだけで、パーティーを楽しんでいるんじゃないかと私は思うわ」

 確かに、シャドウは難しい顔をしながらも、席から離れずに栄養剤を食べている。

 言われてみればそうだな、とソニックは思う。

 そして、ベルは小声でソニックにこう言った。

「シャドウはね、ああ見えても繊細なのよ。『繋がり』ってものには弱いの。

 大好きな子のために一生懸命頑張ったり、あんたが一度死んだ時に弱音を吐いたり。

 50年前に生まれたけど、中身はまだまだ子供。内面は……あんた以上にね」

「ベル……」

「もちろん、この事はあいつには内緒よ。あいつのプライドを傷つけちゃうからね」

「……ああ」

 こんな近寄りがたいシャドウにも、意外な一面はあるんだな、と思うソニックだった。

 と、その時、シャドウの耳がピクリと動く。

「……ん? 何か言ったか、ソニック、ベル?」

「さあ? あ、そろそろ時間みたい。私、準備してくるわ!」

「いってらっしゃ~い」

 こうして、みんながパーティーを楽しんでいる時。

「みんな、そろそろベルから話があるぞ」

「おっ? なんだ、なんだ?」

 マスターハンドの掛け声により、全員がベルのいる方を向く。

 彼女は、今回の異変の解決において大きな功績を残した英雄の一人だ。

 一体何の話があるのだろうかと、カービィやネスなどの子供組は興味津々だ。

 

「――皆さん、聞いてください」

 ベルは凛々しい表情でメンバーの方を向くと、マスターハンド、クレイジーハンド、そしてこの場にいる全てのファイターに演説した。

 

「この最大規模の戦いで、ある1つの事実が証明されました。それは、光も闇も善悪はなく、本質は同じという事です。

 光は善、闇は悪と思いますか? 違います。

 あなたは、疲れた時はどうしますか? 疲れが取れるまで休みますよね。しかし、それを光が許さなければ?

 あなたは人々の期待に応えるために無理をし、限界を超え、やがて疲れ果てて永遠に休みます。

 それは『引退』『活動休止』という形で、最悪の場合は『死』という形で表れます。それを防ぐために、闇という安らぎがあるのです。

 闇も同じです。あなたは、色々な事を色々な手段で表現したいでしょう。しかし、それを闇が許さなければ?

 やりたい事ができなくなり、自由がなくなり、やがて多様性が失われます。だから、光が照らし、可能性を生むのです。

 光も闇も長所と短所があり、それだけでは成り立たないのです。

 キーラは光を以て、ダーズは闇を以て、新たな世界を創世したいという信念がありました。

 しかし、彼らが望んだ創世は、この世界に生きる人々の未来を閉ざすものでした。光に満ちた世界も、闇に覆われた世界も……。

 世界は時間に合わせ、常に変わります。しかし、変わる事は悪い事ではありません。

 確かに時に悪くもなり、時に良くもなります。でも、どちらも同じ、未来に進む事です。

 私達は永遠の存在ではなく、誰かに行動を管理される存在でもありません。だからこそ、結末はどうであれ、未来に向けて自分の足で走っています。

 前で戦ってくれた皆さん、後ろから支援してくれた皆さん、この世界の未来を守るために頑張ってくれて、本当にありがとうございました。

 ……私は秩序の守り手として願います。いつか、全ての人が、自分自身の力で幸せに生きられる世界になりますように……」

 

 ベルが演説を終えると、盛大な拍手が彼女に向けて送られた。

 

 今回の光と闇の化身が起こした異変をきっかけに、外の世界への警戒心がより一層強くなった。

 その一環として、マスターハンドとクレイジーハンドは、この世界を守る結界をより強めた。

 これによって、二度と異世界から悪意をもって侵略する者が来る事は、なくなった。

 亜空軍も、タブーも、キーラも、ダーズも、彼らに匹敵する脅威も、もうこの世界にはやってこない。

 「この世界」は、本当の平和を取り戻したのだ。

 

 ちなみにキーラとダーズは、この世界の住民を駒のように酷使したため、マスターハンドとクレイジーハンドにより15000年の封印刑に処された。

 刑期は長すぎるかもしれないが、この世界に最大規模の異変を起こしたのでスマブラメンバーはほぼ全員「当然」といった表情だった。

 

 色とりどりの、炎の螺旋。

 どこまでも流れる、果てしなく続く光の中、戦い交わる全ての人達が、立ち上がり、踏み出して、明日へ進んでいく。

 未来がどんなものかは、誰にも分からない。

 また、誰かが勝手に決めていいものではない。

 

 そう、スマッシュブラザーズの未来は、スマッシュブラザーズ自身が選ぶのだ。

 何故なら、何者にも囚われない自由こそが、スマッシュブラザーズを表すからなのだ――

 

 大乱闘スマッシュブラザーズ

 Stern des Lichts ~ 灯火の星

 

 完


 
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