No.1061197

九番目の熾天使・外伝 鬼滅の刃編 柱合会議

竜神丸さん

続けて書き上げたので即更新。

2021-05-07 23:54:21 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:7014   閲覧ユーザー数:1716

 

柱合裁判にて一悶着ありつつも、何とか鬼殺隊での活動を容認された竈門炭治郎と竈門禰豆子。

 

兄妹は隠達に連れられる形で、ある施設へと運ばれる事となった。

 

蝶屋敷(ちょうやしき)

 

負傷した鬼殺隊員の治療所として開放された、花柱である立神冬水、蟲柱である胡蝶しのぶの2名が中心となって運営している施設。

 

この蝶屋敷には、鬼に身内を殺され行く当てがなくなった子供達や、鬼との戦いに恐怖心が生まれ戦えなくなってしまった女性隊士、更には隠の見習いをしている女性などが、看護師として日々忙しく働いている。

 

ちなみに何故蝶屋敷という名称なのかと言うと、屋敷の庭にたくさんの蝶が舞っているからという、これまた非常にシンプルな由来である。

 

その蝶屋敷に運ばれた炭治郎は、先日の任務で共に鬼と戦い、負傷してしまった同期の仲間である剣士達と再会する事になった。

 

そう、無事に再会できたのだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「5回!? 5回飲むの!? 1日に!?」

 

隠の男性―――後藤(ごとう)に運ばれて蝶屋敷にやって来た炭治郎。そんな彼の耳に聞こえたのが、その圧倒的にうるさく汚い声だった。

 

「3ヵ月間も飲み続けなきゃいけないのこの薬!? こんなの飲んだら飯なんて食えねぇよ!! すっげー苦いんだけど!! 辛いんだけどー!!!」

 

「あーもーうるさいよ善逸。ちょっと苦いくらい我慢できないの?」

 

「いやちょっとどころじゃないからねこの苦さ!? これが3ヵ月も続くとかすげーキツいよ!! ねぇこれ本当に治るの!? 本当に俺の手足元に戻るの!?」

 

「静かにして下さい!! 説明はもう何度もしたでしょう!! いい加減にしないとしばきますからね!!」

 

「いぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁっ!?」

 

苦い薬を出された事でひたすら悲鳴を上げ続けているのは金髪の少年、我妻善逸(あがつまぜんいつ)。性格は臆病なヘタレなのだが、ある条件をクリアした時のみ本領を発揮し、高い戦闘力を発揮する事ができる剣士だ。そんな彼だが、那田蜘蛛山における戦いで蜘蛛の特性を持った鬼の毒を受けてしまい、解毒剤は投与されたものの手足が短いまま元に戻らない状態にあった。

 

そんな彼のうるさい文句を聞いて辟易していたのが、伊達眼鏡をかけた銀髪の若い少年、坂下琥珀(さかしたこはく)。彼もまた、炭治郎や善逸と同期の剣士であり、若いながらも卓越した剣術で鬼を狩り続けている。しかし那田蜘蛛山で遭遇した鬼達が強敵だった為に、彼も少なからず負傷する事になってしまい、こうして蝶屋敷で治療を受ける事となっていた。

 

「はぁ……本当にすみません、アオイさん。僕から何度も言い聞かせてはいるんですけど……」

 

「気にしないで下さい。坂下さんには何の非もありません。この人がうるさいだけです」

 

その為、切り傷と腕の骨折のみで済んだ琥珀と違い、危うく蜘蛛にされかけた善逸の方が重傷であり、毎日薬を飲む事で縮んだ手足を少しずつ元に戻していく必要があった。しかしご覧の通り、善逸が苦い薬を嫌がっているせいで看護師達を困らせており、善逸の代わりに琥珀が看護師の1人である神崎(かんざき)アオイに謝罪する羽目になっていたのである。

 

更に、ここにはもう1人の仲間が休養を取らされている。

 

「ゴメンネ、ヨワクッテ……」

 

その人物こそ、彼等の隣のベッドで休んでいる猪の被り物をした少年、嘴平伊之助(はしびらいのすけ)。野生児どころではない文字通り“獣”とも言える人物で、普段の彼は非常に好戦的な性格である。しかし那田蜘蛛山の戦いで大声を出し過ぎたせいで喉が潰れた挙句、更にある剣士の強さを目の当たりにした事で、現在は掠れ声しか出せないほどにまで落ち込んでしまっていた。

 

ちなみに、炭治郎の知り合いには他に先輩の剣士として、暁零(あかつきれい)という男と村田(むらた)という男の2人がいるのだが、この2人は両者共に無事であり、前者に至っては一番無傷だったのもあってすぐに次の任務に向かった事を、炭治郎は琥珀から聞かされたのだった。

 

「あらあら、あなたが竈門炭治郎君ね。先生としのぶから話には聞いているわ。鬼を連れている隊士だって」

 

「は、はい。そうですけど……」

 

「私は胡蝶カナエ。しのぶは私の妹なの。よろしくね♪」

 

そんな炭治郎の診察を担当したのが、しのぶの姉であり元は花柱だったという女性、胡蝶カナエだ。鬼殺隊において屈指の美人である彼女は、その優しくおっとりとした性格も相まって男女問わず人気が凄まじく、彼女に手当てして貰いたいという下心からわざと怪我をして来る隊士もいるとかいないとか。

 

そんなカナエは今、物凄く嬉しそうな表情をしている。何故そんなに嬉しそうなのか、気になった炭治郎が彼女に問いかけてみたところ、その理由はすぐに判明した。

 

「私ね、人と鬼が仲良くできる日が来るのをずっと夢見てたの。元々鬼は、人が無理やり変えられてしまった憐れで悲しい存在だから……皆からは正気の沙汰じゃないって言われるけど、そんな自分の夢を今も諦め切れずにいる自分がいたわ。だから、禰豆子ちゃんの話を聞いた時はもう本当に嬉しくて嬉しくて!」

 

そう、その理由は禰豆子の存在にあった。元々、カナエは鬼殺隊の一員でありながら、人と鬼がいつの日か仲良くなれる日が来る事をずっと夢見ていた。他の鬼殺隊員からすれば当然、そんな事はあり得ない話だと、これまではずっとそう言われ続けてきた。しかしそんな彼女の前に、禰豆子という本当に人を襲わない鬼が現れたのだ。これで喜ばない方が彼女にとっては無理な話だった。

 

「禰豆子ちゃん専用の部屋も用意したから、日光に当たる心配はないわ。あ、後で私も禰豆子ちゃんに挨拶して良いかしら?」

 

「はい、良いですよ。禰豆子もきっと、カナエさんの事を好きになってくれると思います」

 

「本当? そう言ってくれると嬉しいわ♪」

 

カナエに頭をポンポンと撫でられた炭治郎は、彼女から母性溢れる優しい匂いがするのを感じ取っていた。鬼は憐れで悲しい存在だという、自分と同じ考えを持っていたからか。その母性を感じる優しさに、亡くなった自身の母の姿が思い起こされたからか。今回が初対面でありながら、既に炭治郎の中でカナエに対する好感度は非常に高い物となっていた。きっと禰豆子もカナエに懐いてくれるだろうという確信もあった。

 

その後、カナエから診察を受け終えた炭治郎は、琥珀や善逸、伊之助達と同じ部屋を当てられ、ベッドで安静に休む事となったのである。善逸と伊之助が既に眠りについている中、まだ起きていた炭治郎と琥珀は眠っている2人を起こさないよう、静かな声で語り合っていた。

 

「でも3人共、本当に無事で良かった」

 

「炭治郎こそね。話には聞いてるよ、裁判にかけられたって。大丈夫だったの?」

 

「うん。俺も禰豆子も、今後も鬼殺隊で活動させて貰えるようになったんだ。十二鬼月を1人倒せば、皆が俺達を認めてくれるって」

 

「そっか。それなら良かった。こっちもあの後、色々あって大変だったよ」

 

「え、ここで何かあったの?」

 

「うん。僕もあくまで話に聞いただけなんだけどね……昨日の那田蜘蛛山の任務でさ。蜘蛛の鬼に糸で操られている隊士達がいたのは覚えてる?」

 

「もちろん覚えてるよ……結局、1人しか助けられなかったけど」

 

「……その、助けた1人の隊士に関する事なんだ」

 

それは、炭治郎が蝶屋敷にやって来る前。

 

琥珀達が蝶屋敷に運ばれてから、数時間後の出来事だった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ちょ、落ち着いて下さい尾崎さん!!』

 

『離して!! 邪魔しないでよ!!』

 

蝶屋敷に運ばれた隊士達の中で1人、発狂して暴れ始めた者がいた。アオイや看護師の子供達の制止を振り切った女性隊士が、割れた窓ガラスの破片を手に持ち、その尖った先端を自身の首元に向けていた。そこに騒ぎを聞きつけた冬水としのぶが駆けつける。

 

『全く、一体何の騒ぎですか?』

 

『どうしましたアオイ!?』

 

『あ、先生、しのぶ様!! それが、彼女が突然暴れ出して……!!』

 

『近寄らないで!!』

 

冬水としのぶが動き出そうとした途端、尾崎という女性隊士が大声を出し、2人をその場に制止させる。尾崎は自身の首元に尖ったガラス片を向けながら、その手はガタガタと震えていた。

 

『……一応お聞きしますが、どういうおつもりで?』

 

『放っといて!! アタシはもう、死にたいのよ!!』

 

『はぁ?』

 

死にたいだと。突然何を言い出すのか。理解ができず困惑する冬水達に対し、尾崎という女性隊士はガタガタと震えながら、その目には涙を滲ませていた。

 

『アタシが、アタシが殺した……アタシのせいで、仲間がたくさん……ッ!!』

 

尾崎は元々、那田蜘蛛山に潜む鬼を討伐するべく部隊の一員として行動していた。しかし蜘蛛の糸を駆使する鬼によって、何人かの隊士が操り人形にされてしまった。尾崎もその1人であり、その強力な支配に抗う事もできなかった彼女は、仲間の隊士達を自分の手で攻撃させられる羽目になってしまった。攻撃された隊士の中にはそのまま死亡してしまった者もおり、その事実が彼女に罪の意識を抱かせ、精神的に追い詰めてしまったのだ。

 

『アタシのせいで、何人も死んだのよ……なのに、アタシだけ生き残って……ッ』

 

『ッ……それで、死にたいと?』

 

『えぇ、そうよ!! 仲間を何人も斬った!! 死んだ仲間もいる!! なのにアタシ1人だけ、のうのうと生きていて良いハズない!! だから死なせて!! 死なせてよぉ……お願いだから……ッ!!』

 

『……』

 

涙を流しながらも、ガラス片の先端を首元に近付け、しのぶ達を近付けまいとする尾崎。その様子を見ていた冬水はと言うと……呆れた様子で溜め息をついた。

 

『いきなり暴れ出しといて、いきなり何を言い出すのかと思えば……また随分アホらしい』

 

『……何ですって?』

 

『おや、聞こえませんでしたか? アホらしいと言ったんですよ。二度も言わせないで下さい』

 

冬水は本当にアホらしいと言った様子で鼻を鳴らし、それに対する尾崎は彼を睨む目付きが鋭くなる。

 

『……アンタに何がわかるって言うの!! アンタなんかに、アタシの気持ちがわかるはずない!!』

 

『えぇ、わかりませんよ。そもそも理解する気にもならない』

 

『ッ!?』

 

冬水はそう告げた瞬間、その場から一瞬で姿が消える。冬水の姿を見失った尾崎が周囲を見渡そうとした直後、横から伸びて来た手によって、彼女の持っていたガラス片が叩き落とされ、そのまま尾崎の体が床に取り押さえられた。

 

『あぐぅ!?』

 

『本来なら別に、あなたがいつどこで死のうと私にとってはどうでも良い話なんですよ』

 

尾崎の両腕を片手だけで封じ、床に押さえつけた冬水は冷たい目で彼女を見下ろしながら、白衣の内側ポケットから1本の注射器を取り出す。

 

『しかしここに運ばれて来た以上、あなたはもううちの患者です。そんなに死にたいのであれば、完治した後に鬼狩りの任務にでも出て、そこで死ねば良い。完治してもいない状態で自害などして、この蝶屋敷の名前に傷を付けるような真似だけは、この私が許さない』

 

『くっ……!!』

 

『あぁ、隙を見て自害しようとしても無駄ですよ。夜中でも常に見回りは行われますから。それにあなたが何度死にかけようが、私が何度でも治して助けてしまいますので。大人しく完治する時を待ちなさい』

 

プスッ

 

『あっ……』

 

尾崎の首元に麻酔入りの注射器が打たれる。それにより尾崎は瞬く間に眠りに落ちていき、それを確認した冬水が注射器を引き抜く。

 

『きよさん、すみさん、なほさん。二度とこんな馬鹿な真似ができないよう、厳重に縛っておきなさい。舌を噛めないよう、猿轡も忘れずに』

 

『『『は、はい!』』』

 

『アオイさんは点滴の用意を。それからしばらく様子を見て、適度に精神面での介護をお願いします』

 

『わ、わかりました!』

 

アオイ達にそれぞれ指示を下した後、ガラス片を拾い上げた冬水は不機嫌そうに窓ガラスを眺める。また修理代が馬鹿にならないなぁと思いつつ溜め息をつく彼に、しのぶが後ろから声をかける。

 

『優しいんですね』

 

『は?』

 

『精神的な介護までお願いするなんて。昔の先生からは考えられない事ですよ』

 

『同じ事を繰り返されても困るからってだけの話です……全く。ガラスの修理代だって安くないというのに。後で修理代を請求してやりましょうかね』

 

『ふふ、そうしてやりましょうか♪』

 

窓ガラスの修理代を自分のメモ帳に書き記していく冬水と、その後ろをトテトテと付いて行くしのぶ。その様子を見ていたアオイの視点では、2人の後ろ姿がどこか仲睦まじいように見えたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「以上が、アオイさん達から聞いた顛末だよ」

 

「……そっか、そんな事が」

 

琥珀から話を聞いて、炭治郎は驚きを隠せずにいた。自分の知らないところでそのような騒ぎがあったなんて。しかし炭治郎にとっては、一番驚いた点はそこではない。

 

「あの冬水って人、凄く危険そうな人だと思ってたけど……」

 

柱合裁判の時、冬水が鬼を凶暴化させる薬の塗られた小太刀を実弥に貸し与えていたのを、炭治郎は今でも強く記憶に残っていた。それ故、炭治郎は冬水が危険な人物だと思っていたが、琥珀の話を聞いた事で、炭治郎は冬水の意外な一面を知って驚いていた。

 

「大丈夫だよ炭治郎。あの人がヤバい人種なのは事実だから」

 

「えっ」

 

「他の隊士達から聞いた話だとあの人、捕まえた鬼の四肢を切断してから、鬼の再生力がどれくらいなのかを確かめる為に夜明けまで拷問を繰り返していたんだってさ」

 

「え、えぇ……」

 

琥珀の話を聞いてドン引きする炭治郎。じゃあやっぱり危険人物なのだろうかと思う彼だったが、そんな彼の様子を見てクスリと笑った琥珀が一応のフォローに入った。

 

「でも、自分のやるべき仕事はきっちりこなす人だから。禰豆子ちゃんの存在が認められた今なら、もう心配はいらないと思うよ」

 

「そ、そうなのかな……?」

 

「それにあの人……この鬼殺隊に入ってから、色々変わったみたいだし」

 

「? 何か言った?」

 

「いや、何も。炭治郎達の方はどんな感じだった?」

 

「俺? 俺達は……」

 

炭治郎は柱合裁判での出来事を琥珀に話した。炭治郎が話を続ける中、琥珀はところどころの部分で苦笑いを浮かべた。

 

「そっか。色々大変だったね」

 

「うん。でも、鱗滝さんや真菰さん、冨岡さんに獅子吼さんも、俺達の為に命を懸けてくれていたなんて……今回の件だって、お館様に俺と禰豆子の命を助けて貰ったようなものだし……俺達、守られてばっかりだなぁって」

 

「炭治郎……」

 

左近次や真菰、義勇や(みこと)が命を懸けてくれて、耀哉が庇ってくれて、そのおかげで自分達兄妹はこうして生きてられている。剣士として多少は強くなったつもりでいたのに、まだまだいろんな人達に世話になりっぱなしだと、炭治郎はそれを痛感させられる1日となった。

 

「俺、もっと強くならなきゃ……俺達を助けてくれた人達に、恩返しができるぐらいには。痛い事や、辛い事ばかりだけど……まだまだ頑張らなきゃな」

 

「なら、一緒に強くなっていこうよ」

 

「琥珀……」

 

「僕も、那田蜘蛛山の任務で思い知ったよ。自分はまだまだ弱いって事を」

 

那田蜘蛛山の任務で、炭治郎達だけでなく、琥珀も全身に切り傷を付けられ、腕の骨を折られるなどの傷を負わされてしまった。そんな彼等が苦戦する相手を、柱に属する剣士達は難なく倒してみせた。自分達の前には、まだまだ複数の壁があるという事を、彼等は改めて思い知らされた。

 

「でも、今の自分は1人じゃない。炭治郎と禰豆子ちゃんがいる。善逸や伊之助だっている。皆で一緒に、どんどん強くなっていこう」

 

「琥珀……あぁ、そうだな!」

 

ベッドから体を起こした2人は、互いの拳をコツンとぶつけ合い、互いに笑みを浮かべ合う。今ここに、2人の若き剣士達が、強くなる事を決意したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻。

 

産屋敷家の屋敷では……

 

「皆の報告にあるように、鬼の被害はこれまで以上に増えている。人々の暮らしが、かつてなく脅かされつつあるという事だね」

 

暗い畳の部屋を灯りが照らす中、耀哉と柱達による会議は今もなお続いていた。耀哉が告げた通り、既に鬼達による被害は更に拡大していっており、早急に対策を練らなければならない状況にあった。

 

「鬼殺隊員も増やさなければならないが……皆の意見を聞きたいな」

 

耀哉の言葉を皮切りに、柱達の間で議論が交わされ始める。まず口を開いたのは実弥だった。

 

「今回の那田蜘蛛山でハッキリした。隊士の質が信じられないほど落ちている。ほとんど使えない」

 

実弥が懸念していたのが、一般隊士の戦闘力の質が低下しているという事。那田蜘蛛山の任務で多数の隊士が犠牲になった一件から、一同はそれを強く実感していた。

 

「まず育手の目が節穴だ。使える奴か使えない奴かくらいはわかりそうなもんだろうに」

 

「昼間のガキはなかなか使えそうだがなぁ。不死川に派手な一撃を入れていたし、見込みはある」

 

昼間の柱合裁判の一件から、天元は炭治郎に見所があると考えているようで、それを聞いた実弥はチッと小さく舌打ちする。そんな彼の機嫌を察してか、しのぶが話題を切り替える。

 

「まぁ人が増えれば増えるほど、制御・統一は難しくなっていくものです。今は随分、時代も様変わりしていますし」

 

「やはり、廃刀令が下されてしまっているのが痛いですよねぇ。表の世界ではもう、刀を振るう機会なんてそうそう巡り合えるものじゃない」

 

「うむ……愛する者を惨殺され、入隊した者……代々鬼狩りをしている、優れた血統の者以外に……それらと並ぶ、もしくはそれ以上の覚悟と気迫で、結果を出す事を求めるのは残酷だ」

 

人数は増えれば増えるほど、上層部の目は行き渡りづらくなり、制御が難しくなっていく。おまけに、今の時代は廃刀令の影響もある。鬼への復讐に燃える者、大昔から鬼殺隊と関わりがある血統の者以外で、優れた才覚を持つ剣士を見つけ出すのは非常に困難である。しのぶ、冬水、行冥は順々に事態の深刻さを語っていく。

 

「それにしてもあの少年!! 入隊後、間もなく十二鬼月と遭遇しているとは!! 引く力が強いように感じる!! なかなか相まみえる機会のない我らからしても、羨ましい事だ!!」

 

「……トドメは冨岡が刺したとはいえ、下弦の伍を相手に粘ったというのは確かに評価すべき点ではあるな。そういう意味では、鱗滝殿は見る目はあったと言えるだろう」

 

そんな重い空気を少しでも和らげようと思ったのか、杏寿郎はいつも以上にハキハキとした口調で熱く語る。彼が言う通り、炭治郎は鬼殺隊に入隊してから間もなく十二鬼月と遭遇し、勝てはしなかったものの、後一歩のところまで追い詰めてみせた。その炭治郎の実力や鱗滝の目利きの良さについては、一哉も素直に高く評価していた。

 

「そうだね。しかし、これだけ下弦の伍が動いたという事は、那田蜘蛛山周辺に無惨はいないのだろうね。浅倉もそうだが、隠したい物があると無惨は騒ぎを起こして、巧妙に私達の目を逸らすから。何とももどかしいね」

 

耀哉の言う通り、鬼舞辻無惨は自分が生き延びる為ならば、逃走という手段も躊躇う事なく使用する。良く言えば用心深い、悪く言えば臆病と言えるその警戒心の強さは、これまで幾度となく鬼殺隊の追跡から逃れる最大の要因となっていた。

 

一同の議論はその後も更に続いていく。それから数刻の時を経て、彼等の会議は終わりの時を迎えつつあった。

 

「鬼共は今も、のうのうと人を喰い、力を付け生き永らえている。これまで死んでいった者達の為にも、我々のやるべき事は1つ」

 

鬼を徹底的に狩り、全ての元凶である無惨を討ち滅ぼすその時まで。異常なほどの執念を持つ彼ら鬼殺隊は、決して立ち止まる事はない。

 

「今ここにいる柱は、戦国の時代……始まりの呼吸(・・・・・・)の剣士以来の精鋭が集まったと、私は思っている」

 

そして今、その鬼殺隊には耀哉が強く誇るほど、強い剣士達が集まっていた。

 

宇髄天元(うずいてんげん)

 

―――それは、誰よりも派手に戦場を駆ける者。

 

煉獄杏寿郎(れんごくきょうじゅろう)

 

―――それは、誰よりも熱く、誇り高き精神を持つ者。

 

龍神冬水(たつがみとうすい)

 

―――それは、誰よりも無慈悲に、鬼を蹂躙する者。

 

胡蝶(こちょう)しのぶ」

 

―――それは、誰よりも軽やかに舞い、毒を刺す者。

 

甘露寺蜜璃(かんろじみつり)

 

―――それは、誰よりもときめきに胸を高鳴らせる者。

 

時透無一郎(ときとうむいちろう)

 

―――それは、誰よりも剣技の才を持つ者。

 

悲鳴嶼行冥(ひめじまぎょうめい)

 

―――それは、誰よりも慈悲の涙を流す者。

 

榊一哉(さかきかずや)

 

―――それは、誰よりも嵐の如く、鬼を刈り取っていく者。

 

不死川実弥(しなずがわさねみ)

 

―――それは、誰よりも鬼を滅する執念を持つ者。

 

伊黒小芭内(いぐろおばない)

 

―――それは、誰よりも鋭き眼光を持ち、鬼を穿つ者。

 

冨岡義勇(とみおかぎゆう)

 

―――それは、誰よりも冷静に判断し、鬼を断つ者。

 

獅子吼命(ししくみこと)

 

―――それは、誰よりも冷たく、優しい刃を振るう者。

 

「私の子供達。皆の活躍を期待している」

 

「「「「「御意」」」」」

 

柱達が耀哉に向けて一斉に頭を垂れる。

 

それを合図に、柱合会議は終わりを告げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして柱達が1人残らず退室していった後。

 

灯りが消え、月の光に照らされた部屋の中で、耀哉は呪いの影響で視力を失ったその瞳に、強い闘志の炎を燃やしていた。

 

「鬼舞辻無惨……何としてもお前を倒す。お前は必ず、私達が……」

 

穏やかなようで、それでいて強い怒りが込められたその言葉を最後に、耀哉は1人静かに目を閉じる。曇りなき夜空に満月が浮かぶ中、風の音と、鴉の鳴き声だけが響き渡っていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~おまけ~

 

 

 

 

 

 

 

(みこと)・一哉・冬水と柱9名のお互いの印象

 

・一哉から見た柱9名

 

しのぶ:医療担当として、鬼殺隊に不可欠な存在

杏寿郎:声がうるさい。ブレない信念の強さは心から称賛している

天元:派手過ぎる。元忍ならもっと地味になれ

蜜璃:独自の呼吸法を生み出したのは素直に凄いと思う。服装がはしたない

行冥:強者としての風格が凄まじい。信頼している

無一郎:こっちの世界に来てからの一番弟子。何だかんだで気にかけている

小芭内:ねちっこい。職務には忠実なのでそこは素直に評価

実弥:粗暴過ぎる。お館様の前で見せている丁寧さを普段から出せ

義勇:勤務態度が悪過ぎる。何を考えているのかわからない

 

・柱9名から見た一哉

 

しのぶ:隊律を重視してる。真面目な人

杏寿郎:真面目!! 卓越した剣技!! ブレない覚悟が素晴らしい!!

天元:眼帯が派手にイカしてる

蜜璃:凄く真面目な人。怒ると怖いけどそこもまた素敵!

行冥:職務に忠実。生き急ごうとしているのが心配

無一郎:虎みたい。尊敬している師範。彼の事は何故か覚えていられる

小芭内:真面目。過去の記憶がなくて辛いはずなのに、それを表に出さない点は尊敬している

実弥:堅物。口うるさい。でも真面目でブレないので信頼はしてる

義勇:職務に忠実。彼のような人間こそ柱に相応しい

 

 

 

 

(みこと)から見た柱9名

 

しのぶ:かなりの美人。でも師匠に似てきたのか、笑顔に圧を感じる事がある

杏寿郎:凄くまっすぐな人。その生き様は心から尊敬できる

天元:派手で面白い人。まさか妻が3人もいるとは……

蜜璃:明るくて天真爛漫な人。いつも目のやり場に困る

行冥:とても強い人。責任感が強く信頼できる

無一郎:無口な子。話しかけてもすぐ忘れられるのがちょっと悲しい

小芭内:かなりねちっこい人。でも真面目なので不快感はない

実弥:凄く粗暴な人。意見が対立する事がある。でも過去が過去なので嫌いになれない

義勇:柱の中で一番よく話す人。心から信頼してる。でも言葉足らずな点は直した方が良いと思う

 

・柱9名から見た(みこと)

 

しのぶ:礼儀正しい。どうして義勇の言いたい事がわかるのか気になる

杏寿郎:明るくて爽やか!! 好感が持てる!!

天元:良い奴。女性にモテやすいところがなかなかに派手

蜜璃:少年らしくて可愛い。紳士的でとても素敵!

行冥:真面目で優しい。たまに暗さを感じる事がある

無一郎:雀みたい。穏やかな印象

小芭内:明るい奴。たまに眩しく感じる

実弥:意見が対立する事がある。ただそこまで嫌いな訳ではない

義勇:冷静沈着。彼のような人間こそ柱に(ry

 

 

 

 

・冬水から見た柱9名

 

しのぶ:医学と薬学を叩き込んだ自慢の一番弟子。生意気に成長してくれて何より

杏寿郎:うるさい。暑苦しい。でも何故か嫌いにはなれない

天元:派手好きな面白い人(※1)

蜜璃:破廉恥な恰好の子。話していると何故か力が抜ける

行冥:強過ぎて割と本気で戦慄している

無一郎:あまり話した事がない

小芭内:ネチネチした人。口喧嘩が割と良い気晴らしになる

実弥:稀血の研究をさせて貰っている。鬼を嬲る時だけは割と息が合う

義勇:言葉足らず過ぎて何を考えているかわからない

 

・柱9名から見た冬水

 

しのぶ:尊敬する師匠。信頼している。でもお仕置きの脳天締めはちょっとトラウマ

杏寿郎:医者としても剣士としてもかなりの腕前!! 残忍過ぎてたまに引く!!

天元:医者であり剣士でもあるとかちょっと派手過ぎる

蜜璃:笑顔が結構怖い! でもそこが素敵!

行冥:冷徹だが、たまに慈悲を感じる事がある。しのぶの気持ちには気付いていないらしい

無一郎:鷹みたい。あまり話した事がない

小芭内:かなり慇懃無礼な奴。口喧嘩すると気晴らしになるのでそこまで嫌いではない

実弥:いけ好かない奴。でも鬼を嬲る時だけは驚くほど息が合う

義勇:冷たい男だが、職務には忠実。彼のような(ry

 

 

 

 

 

 

※1:後々、アオイ達を無理やり任務に連れて行こうとした一件から好感度がダダ下がりし、天元の姿を見かけた途端【木刀で容赦なく半殺しにしようとした】(胡蝶姉妹によって未然に阻止された)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く……?

 

 

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