[プロローグ]

とあるライブ会場のステージ

煌めくサイリウム

こだます歓声

普通なら高揚するであろう。

間違いなく。

しかし、何の因果なのか僕はこの神々しい舞台へ立っていた

「・・・あれ？本当なら今頃リリフレのステージで

サイリウムを振っているはずなのに、どうしてこちら側に立っているの？」

僕は榎本悠17歳アイドルグループ ソルティフェニクスのメンバー

半年前までただの女性アイドルオタクで推す側だった

それが、こんな僕が推されるなんて思わなかったんだ

「どうしたんだ？悠」こいつはセンターの神月総途

ちょっとバカだけど引っ張ってくれるリーダーだ

「悠くん 元気で楽しくだよ」

そしてこのゆるゆる天然少年の冬季 夏鳴瑠

この3人でアイドルをやってる

最近は音楽番組のミューステに呼ばれ

ドラマを1期に数本こなす程の人気者になった

そんな運命を分けるような出来事が

半年前のライブのあの日からー

[第１章オタクの僕がスカウトされるなんて！？]

可愛い女の子が歌って踊る空間が好きだ。

僕はそう思ってこの楽園で淡い光の棒を振る。

最近人気がうなぎ登りのアイドル集団[[リリィフレア]]

僕は中学生の頃からファンをやってる

もちろん、推しは鈴原かれん♡

それはもう気持ち悪い程に崇めてますとも。

なんか最近、僕がチケット拝見係を任されて以降

リリィフレアのファンミーティングに来る女性客が増えたような気がする。

やっぱり、リリフレの可愛さは

男女問わずなのかなと軽く考えていた

そんなとき、ファンクラブ仲間の藤原氏があることを言い出す

「最近悠さんの列だけチケット渋滞が出来るんスよ」

「僕の列だけ？お客が集中しているの？」

藤原氏はなんか苦笑いしつつも

「悠さんの列を整理しようとしても

その・・・ほとんどの女性客だけが応じなくて」

と凄く困った様子で「そんなバカな事あるか」

ぼくは信じられずに否定したが

「悠さんがバズったせいでにわかが増えて仕方がないんだ」

他のファンクラブ仲間に聞いてみると

どうやらTwitterに僕の事が書かれてて

それがファンミーティング毎にバズっているらしい

理由としては、僕の容姿に問題があるようだ

ツイートには

あのイケメン誰？

うそ一般人？

優しそうな

目鼻立ちが綺麗で可愛い目付きをした

甘めのイケメン

芸能界で人気が出ても

おかしくないレベルだと書いてある

「ほー、へー？」

「ファンクラブの総意として、

芸能界の洗礼を受けてもらいたい」

「何その悪意たっぷり含んだどす黒い罰ゲームは」

僕は芸能界に行くことを全否定し

「とにかく、僕はオタ活を続けるし

かれん一筋で推し変もいたしません！」

と堂々と言い切った。

「あー・・うん。とりあえず

いつもの頭のおかしいイケメンで安心したよ

もし舞い上がって天狗ナルシストに

なっていたら殺意が吹き上がるところだ」

「藤原氏、だれが頭のおかしいイケメンだ？」

「そのままの意味だ残メンが！」

その時、ファンクラブの副会長がやってきて

「そろそろ公演開始だぞ、早く客入れろ」と注意してきた

「すみません副団長、この頭のおかしいイケメンのせいで整列しにくいんですよ」

「さっきも言ってましたけどどういう意味です？」

「そのままの意味だ！この残メンが

帰ったらかれんちゃんの抱き枕で(;´Д`)ﾊｧﾊｧしてるクセに」

「してねーよ！童貞野郎」

「ちょっといいな？悠・藤さんよぉ」

「はい。」「すみません」

副会長はおもむろにファンクラブ会則の復唱を命じて来た

リリフレのファン界隈の規則意識は日本一厳しい。

❮ファンクラブ会則その１！他人に迷惑をかけない❯

❮ファンクラブ会則その２！会場で騒ぐな！❯

❮ファンクラブ会則その３！不用意に推しに近づくな。ステージと適度の距離を保ち

乱入も禁止、メンバーに対する詮索・中傷を禁ずる❯

❮ファンクラブ会則その４！幹部クラスは会場の運営に従事せよ❯

❮ファンクラブ会則その５！推しに危害を加えるような不届き者を

法律に則って罰せよ、危険物を許すな

メンバーにストーカーする裏切り者は退会処分にし、会場への出入りも禁ずる❯

❮ファンクラブ会則その６！ 会員はライブを安全かつ楽しく楽しむ義務がある❯

❮ファンクラブ会則その７！許可なくメンバーの撮影を固く禁ずる❯

もし、この会則を一つでも破れば即退会処分

ライブ観賞も一切許されないという

どのファンクラブの中でも相当厳しい厳格なルールを敷いて

厳重な警備をやった上でファンミーティングを開いてる

4年前にアイドルが熱烈なファンに

襲撃されて大怪我を負わされ引退する事態が起こった

それを受けて会長はこの厳格な規則を作りアイドルの安全を守ってる。

やっとライブ会場の中に入ったファンクラブ幹部組は

最前列で重大な仕事を始める

推しモチーフデザインの法被を纏い、サイリウムを4本持ちで

オタ芸を披露するのだ

胸きゅん！きゅんきゅんバズフィード☆恋は燃えて熱くなる

トキめきバズフィード！恋のいいねがリツイート

「はい！はい！うおー！かれんかわいい！神かわいい」

「遥香！遥香！めさかわいーね！世界で一番の美少女！」

[優実花！優実花！クールかわいいお姉さま]

「璃里愛璃里愛ほんまにかわええねん天使の歌声さいこうでーす！」

そして、幹部は歌もやるのだ

特にそれは僕の仕事

歌唱力がファンクラブ会員でもトップクラスなのだ

まぁ推しの歌う曲は完璧に歌えないと

愛が伝えられないだろ？

[告白ツイートリツイート♡僕は君を愛してる。

ときめきバズってきゅんきゅんで☆

両恋リア充炎上メラメラで

僕の心は君をフォロしてるんだー！]

「歌いきった・・」と緊張がほどけた瞬間

リリフレの4姫は

なぜか顔を真っ赤にして

震えていた。

[冗談あらへん、

ファンクラブのバズるレベルのイケメンがあのイケボで

ファンパートを歌いきるなんて・・アカンて。]

「アイドルなのに恋愛禁止なのに・・耳が恋しちゃう」

「大昔ならオタクといえばキモいデブ野郎だったのに

あの子、なんで一般人なの・・おかしい」

その時、マネージャーが

榎本悠

芸能界の申し子