No.102591

真・恋姫無双another 風ストーリーその7

ぴかさん

真・恋姫無双の二次小説です。

風の視点で物語が進行していきます。

今回から例の連合が始まります。

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2009-10-22 23:16:10 投稿 / 全12ページ    総閲覧数:12590   閲覧ユーザー数:9475

張三姉妹を私達の陣営に引き入れてから、しばらくして黄巾党の動きは沈静化しました。

張角を捕らえて処刑したという噂が利いたようです。

 

噂の内容に半信半疑であったであろう、各諸侯や朝廷も黄巾党の動きが沈静化するのを確認して戦闘状態を止めました。

 

こうして、一連の騒ぎは一応の収まりをみせました。

しかし、一難去ってまた一難とはまさにこの事でしょう。

 

黄巾党の件が収まってしばらくすると、大陸を揺るがす事件が起こりました。

漢の皇帝、霊帝が亡くなりました。

 

形骸化していたとは言え、漢の皇帝はこの世界の最高権力者です。

その皇帝が亡くなったとなれば一大事です。

しかも、霊帝は自分の世継ぎを指名することなく亡くなってしまったため、朝廷内の権力争いがさらに激化しました。

朝廷を牛耳っていた宦官の十常時達と何進大将軍の争いです。

それぞれが次の皇帝を擁立しようと躍起になりました。

 

最初は、軍事力でモノを言わせた何進大将軍が十常時を追い出し、自分の推す少帝弁を即位させました。

しかし、何進大将軍が何者かによって暗殺されその野望は潰えてしまいました。

何進大将軍がいなくなり、再び十常時達による政治が始まるのかと思いきや、何進大将軍の腹心であった将軍達が反旗を翻し十常時達を排斥しました。

そんな中、十常時の一人である張譲さんはそのどさくさに紛れて二人の皇帝候補を連れて洛陽を脱出しました。

そして、周辺諸侯の一人、董卓さんの助けを借りて再び洛陽に戻ってきました。

董卓さんの力はすさまじく、何進大将軍腹心の将軍達も太刀打ちできないほどだったそうです。

 

こうして、何進大将軍の一派を排除することに成功した張譲さんでしたが、結局董卓さんに暗殺されたそうです。

その後董卓さんは少帝弁を廃位して、劉協さんを皇帝として即位させ、献帝と名乗らせました。

ですが、実際には献帝を傀儡として董卓さんがその全てを牛耳るというものでした。

それによって洛陽の民は酷い圧政に苦しんでいるという事です。

 

全くの無関係というわけではないですが、今は自分の領地に対する事で精一杯の状態なので、洛陽の民を助ける事は出来ません。

と言いたいところですが、それに無理矢理にでも参加させようとする檄文が本日届きました。

 

 

「と言うわけで、この本初から届いた檄文に対する対応だが、どうすればいいと思うか各々意見を出してくれ。」

 

白蓮さんがその檄文を読み上げた後、私達を見回しながら言いました。

今ここには、張三姉妹を除く皆さんが集まっています。

 

「私は参加するべきだと思う。理由はどうであれ、洛陽の民を圧政から救いたい!!」

 

白蓮さんが熱く語りました。

 

「私も参加することに賛成です。周辺諸侯も参加するでしょうから、白蓮さんが参加しないとなるとその後の評判にも影響出ると思いますし。」

 

稟ちゃんは賛成のようです。

となると私は別の意見を出さざるを得ません。

 

「ん?星と風は参加に賛成ではないのか?」

「そうですね~。その檄文の内容がどこまで真実か分かりかねるのでちょっと躊躇しちゃいますね~。」

「左様。それに洛陽の民を圧政から救おうといえば聞こえはいいが、結局のところ朝廷を牛耳った董卓殿への嫉妬が垣間見えている気がするな。」

「確かにそうだが・・・。」

「それに、霊帝が亡くなった事は斥候からの報告で分かっていますが、それ以降の事柄への確認が取れていないのですよ~。」

「なぜだ?洛陽にも斥候は放っているだろう?」

「そうなんですが、誰一人報告に戻ってきていないのです。新たに送ってもなしのつぶて状態で・・・。」

 

稟ちゃんが困惑しています。

そうなのです。

周辺各所には定期的に斥候を放っています。

霊帝が亡くなるまでは洛陽からの報告も定期的に来ていたのですが、亡くなって以降一切の音沙汰が無い状態なのです。

 

「風達が得られていない情報を、袁紹さんがなぜ知りえたのか不思議です~。それにあの董卓さんがそんな圧政を敷くとは思えません~。」

「確かにそれもおかしな話だな。」

「なんだ・・・、星と風は董卓の事を知っているのか?」

「はいなのですよ~。風達はここに来るまで大陸中を回っていました。その時に董卓さんの領地にも言った事があります~。」

「そうだったな。面会こそ叶わなかったが、人心は穏やか、治世が乱れている様子もなかった。圧政には程遠い状況だったよ。」

「ですが、董卓さんのそばには名うての軍師がいたのでは?」

「稟ちゃんは今回の件はその軍師さんがやったと思うのですか~?」

「その可能性は捨てきれないでしょう。それに自分の領地と朝廷の権力では雲泥の差があります。どんな優れた人物でもその権力におぼれる事はあり得ますし。」

「そうだな。仮にこの檄文が、本初の董卓に対する嫉妬のモノであっても、この分を書けるだけの事実が何かあるはずだ。でなければ、洛陽に着いた時に本初が参加した諸侯に責められることになろう。」

 

白蓮さんの言うことはもっともです。

ただの嫉妬でこんな事を書き、諸侯に参加させて実は嘘でしたなどとなればその後の結果は目に見えています。

そういう意味では、ここに書かれているような酷いモノではないにしてもそれに類する事象が起きているのかもしれません。

しかし、これらは推測の域を脱しません。

ですが、確認しようにも斥候が役に立たないのであれば、実際に見に行くしかありません。

もう、結論が出ました。

 

 

「これはもう、参加するしかないですね~。」

「そうですな。」

「結局、二人とも参加する事に賛成なのだな?」

「そうですね~。でも、風は最初から参加するべきだと思っていましたが~。」

「ならなぜ?」

「白蓮殿・・・。一つの事例に対し意見は一つだけではないという事ですぞ。」

「そうなのです~。一人が賛成ならそれに対する反対の意見を出せなければ軍師失格です~。」

「なるほどな・・・。・・・北郷はどうなんだ?」

「えっ、俺?」

 

突然話を振られ困惑するお兄さん。

 

「なんだ、北郷。話を聞いていなかったのか?」

「いや、聞いていたよ。」

「だったら何ぼーっとしていたんだ?」

「いや、その董卓って人だけど、俺の知っている三国志の歴史にも出てくるんだ。」

「そうなのか?」

「俺の知っている董卓は、それこそそこにある檄文に書かれているような圧政を敷いて悪役として書かれている事が多いんだけど、風達の話を聞いていたらそれを話すべきか考えちゃってね。」

「そういう事か。だがな、北郷。どんな時でも遠慮せず自分の意見を話すようにした方がいい。お前は天の御遣いで、この国の一員なんだから、遠慮する事はないぞ。」

「別に遠慮とかじゃないけど、余計混乱するんじゃないかなって・・・。」

「それは愚問ですね~。それを正すために風や稟ちゃんがいるんですから~。」

「そうですよ、一刀殿。そういった事は話していただけると、私達の利益にもなりますし。」

 

お兄さんの懸念はもっともなのですが、それを正しい方向に導くのが私達軍師の役目です。

お兄さんはもっと、私達に頼ってもいいと思うのですが、どうもそう言う考えはもっていないようです。

 

「そうだよな・・・。ありがとう、風に稟。それと白蓮も・・・。」

「い・・・いや・・・、当たり前の事を言っただけだ。・・・感謝されるほどの事でも・・・ない・・・。」

「おや白蓮殿、顔が赤いな。風邪でも召されたか?」

 

分かっていながら星ちゃんがわざとらしく言います。

 

「ほんとだ!!大丈夫か、白蓮?」

 

そう言って自分の手を白蓮さんのおでこに当てるお兄さん。

その行動にさらに顔を赤くする白蓮さん。

 

「だ・・・大丈夫だ!!風邪なんかひいてないぞ!!とにかく、私達はこの連合に参加するんだ。各自準備を頼む!!」

「御意!!」

 

そうでした、今回は袁紹さんからの檄文に参加するかの集まりでした。

最後あたりはいつもの白蓮さんいじりになっていましたが、気にしない事にしましょう。

 

それよりもこの連合に参加するとなれば色々準備も必要となります。

まずは実際に行く人間ですが、白蓮さんはもちろん、私と稟ちゃん、それに星ちゃんは参加決定です。

それとお兄さんも同行する事になりました。

 

「俺なんかが行っても役に立たないだろ。」

 

とお兄さんは言ってましたが、おそらく参加するであろう周辺諸侯の顔を見るだけでも価値はあるというものです。

それにお兄さんは天の御遣い。

お兄さんがいるだけで負ける気がしないは、私だけでしょうか。

 

張三姉妹は残ってもらう事になりました。

彼女達の仕事は、兵士さんの士気を高める事と、兵士さんの数を増やす事です。

今回の連合では、活躍の場は無いに等しいでしょう。

それに、彼女達も戦場は好きではないようですし。

 

私達が不在の間の国の運営は、白蓮さんの身内にお願いする事にしました。

それほど長期間にはならないであろうと言う事と、この機会に色々させてやりたいという白蓮さんの考えからこのようになりました。

しかし、それでは不安なので、私と稟ちゃんの配下の者を数名残すことにしました。

彼女達なら問題なく国を運営できるはずです。

 

このようにして後顧の憂いを絶った私達は、袁紹さんの待つ場所へと行動を進めました。

 

 

その場所に着いた私達は、その光景に騒然としてしまいました。

これほどの規模とは思わなかったためです。

袁紹さんはもちろん、その従妹である袁術さん。

その袁術さんの後ろにはためく孫の旗。

あれは孫策さんでしょう。

あとは、曹の旗も見えます。

あれは・・・。

 

「曹操様~。」

 

稟ちゃんがうっとりするような表情で曹操さんの旗がはためく方向を見ています。

 

「なあ、稟はどうしたんだ?」

「稟ちゃんは、曹操さんの下で働くのが夢なのですよ~。」

 

お兄さんの疑問に答えてあげました。

 

「そうなのか・・・、なんだかあの入れ込みようは半端じゃないなぁ。もしかして、稟は曹操のところに行っちゃうんじゃないか?」

「それは無いと思いますよ~。稟ちゃんの居場所は、白蓮さんの下ですし~。」

「そっか・・・。ならいいんだけどな。」

 

お兄さんの懸念はもっともですが、稟ちゃんも分別をわきまえていると思います。

それ以上に、私と稟ちゃんが離れ離れになる事は無い。

そう思っています。

 

こんな会話をしながら、私達は袁紹さんから与えられた場所に陣を敷きました。

そして兵站作業をしていると、袁紹さんからの伝令が届きました。

 

「公孫賛殿、袁紹様がお待ちです。至急本陣まで来て下さい。」

「ああ、分かった。・・・それじゃ行ってくるな。」

「あっ、風も一緒に行きます~。稟ちゃん、星ちゃん、お兄さん、残りの作業をお願いしますよ~。」

「わかった。」

 

陣地での作業をみんなに任せ、白蓮さんと私は袁紹さんの待つ本陣に向かいました。

 

 

袁紹さんが待つ本陣に到着すると、すでに多くの諸侯達が集まっていました。

そうそうたる顔ぶれ・・・なんでしょうが、顔と名前が完全に一致していないのでなんとも言えません。

唯一分かるのが、金色の鎧を着けどう考えても一番目立っているのが袁紹さんだろうという位です。

 

「すまない、待たせたか?」

「遅いですわよ、伯珪さん。早速先ほどの続きですけど・・・。」

 

そう言ったっきり袁紹さんを始め、周りの諸侯達も黙っちゃいました。

 

「なあ、本初。何の話をしているんだ?」

「何のって・・・、この連合の総大将を決めているのですわ。」

「は?総大将って・・・。」

「総大将もご存知ありませんの?全くこれだから田舎の太守は・・・。」

「誰が田舎の太守だよ!!それに総大将くらい知っている!!そうじゃなくて、何でそんなモンを決めているんだって話だよ!!」

「総大将は大事ですわよ!!この連合の顔ですし、総大将が負ければそれは負け戦ですわよ。」

 

そう言って胸を張る袁紹さん。

対称的に、呆れてモノも言えなくなる白蓮さん。

 

なんだか腹の探り合いをしているようで、軍議が一向に進む様子がありません。

 

どう考えても総大将は袁紹さんで決まりでしょう。

ですが、それを言うといらぬ被害を被りそうです。

それが分かっているので諸侯達も、そして私達も発言しないようにしています。

 

袁紹さんは袁紹さんで、その発言を心待ちにしているように思えます。

そんなどっちつかずの状態が暫く続き、いい加減に話を進めようとした矢先、天幕に袁紹さんの部下が来ました。

 

「失礼します。平原の劉備殿が到着されました。」

「劉備さん?あんまり聞かれない名ですわね。」

 

自分で檄文を送っておきながらこの体たらく。

袁紹さんは噂以上の人物のようです。

 

「劉備は私の知り合いなんだ。呼んでくるよ。」

「あら、そうですの?なら伯珪さんにお願いするわ。」

「ああ。それじゃ、行ってくる。」

「あっ、風も一緒に行きます~。」

 

私達は、重苦しい空気の天幕を離れ、桃香さんのいる場所へと向かいました。

 

 

桃香さんのいる場所に来ると、そこには見慣れた顔と新しい顔がありました。

 

「桃香!!」

「あっ、白蓮ちゃん!!」

 

桃香さんは、白蓮さんの姿を確認すると走ってきて抱き付きました。

別れたあの頃と何ら変わらないようです。

 

「お久しぶりです、桃香さん~。」

「風ちゃん、久しぶり。元気そうだね。」

「ええ、おかげさまで~。お兄さんたちも元気ですよ~。」

「そっか、早くみんなに会いたいな~!!」

 

そう言う桃香さんは、何か遊びに来たかのような雰囲気を醸し出しています。

 

「桃香様!!遊んでいる場合ではないですよ!!」

 

そんな桃香さんの後ろから懐かしい声が聞こえてきました。

 

「おー、愛紗!!それに鈴々元気そうだな。」

「白蓮殿もお変わりないようで。」

「鈴々はいつも元気百倍なのだー!!」

 

愛紗さん、鈴々ちゃんと一通りの挨拶を交わし、暫く雑談していると、その後ろから二つの影がおずおずと出てきました。

 

「あのー、皆しゃん。話をしている場合じゃ・・・。」

「そうです~。」

「なあ、桃香。この二人は?」

 

私も見慣れない顔です。

 

「この二人はすっごいんだよ!!黄巾党なんかすぐに追い返しちゃうんだから。」

「そうか?そんなに優れた武人には見えないのだが・・・。」

 

この二人は武人ではなく私と同じ軍師でしょう。

 

「違うよ~!!二人は軍師なんだよ!!」

「そうなのか!?」

「はい。私は諸葛亮孔明と言いましゅ。」

「鳳統士元れしゅ。」

 

狙ってやっているのか、緊張なのか分かりませんが、先ほどから言葉がたどたどしいです。

ですが、この二人の名前、どこかで聞き覚えがあるような気がします。

 

 

しばらく考えてしまいましたが、思い出しました。

 

「もしかして、伏龍と鳳雛ですか~?」

「はわわ・・・。」

「あわわ・・・。」

「風、その伏龍と鳳雛って?」

「噂で聞いたのですが~、水鏡塾という私塾を出た門下生で、その智謀は天にまで届き、その策略は神をも欺くそうです~。そんな二人に付いた俗称が伏龍と鳳雛というわけですよ~。」

「それがこの二人というわけか。凄いな、桃香!!」

「そうでしょう、えっへん!!」

 

自分の事のように胸を張る桃香さん。

当の本人達は恐縮してしまったのか黙り込んでいます。

 

「あっ、自己紹介がまだだった。私は幽州の公孫賛。桃香とは私塾時代からの知り合いだ。よろしく。」

「風は、軍師の程昱と言います~。これからよろしくですよ~。」

「よ・・・よろしくおねがいしましゅ。」

 

狙っているのかと思ったのですが、前言撤回です。

どうも単に緊張しているだけのようです。

この二人が、本当に伏龍と鳳雛なのか、この戦いで見極められればいいのですが・・・。

 

軍師のお二人とも挨拶を交わし、その場に和やかな空気が流れたのですが、すぐに現実に引き戻されました。

 

「それで、白蓮殿。私達はこれからどうすればいいのですか?」

「あっ、そうだった!!桃香、本初が待っているから本陣に行こう。」

「本初って袁紹さんのこと?もう作戦とか決めているんだ~!!」

「・・・いや・・・全然・・・。」

「えっ、私達結構遅れてきちゃったよね?それなのに?」

「ああ・・・。」

「それじゃ、今は何を決めているんですか?」

 

先ほどまで緊張しっぱなしだった諸葛亮さんが急に真剣な表情で聞いてきました。

これには、白蓮さんの面食らったようで、戸惑いながら答えました。

 

「いや・・・、この連合の総大将を誰にするか・・・。」

「そんな事に時間を費やしているんですか?」

「私に言われてもなぁ。」

「あっ、すみません・・・。」

「とにかく、話があるなら本初に直接言えばいい。今は本初の本陣に行くのが先決だ。」

「そうだね。朱里ちゃん、一緒に来て。愛紗ちゃん、鈴々ちゃん、雛里ちゃんの三人は陣の展開と兵站をお願い。」

「御意。」

「了解なのだ~!!」

「うん・・・。」

「それじゃ、白蓮ちゃん、案内して!!」

「ああ、こっち・・・『ちょっと待って下さい。』。」

 

白蓮さんが桃香さんを連れて行こうとする時に私が声をかけました。

 

「風、どうしたんだ?」

「風は一度陣地に戻ってお兄さんを連れてきます。」

「北郷を・・・、そうだな。連れてきた方がいいな。」

「はい~。では、風は一旦戻りますので、皆さんは先に行って下さい~。」

 

私は、お兄さんを連れて行くべく自陣に戻りました。

陣地では、あらかたの作業が終わり、話をしたり武器の手入れなど各々が自由に行動していました。

 

「風、話は終わったのか?」

「いえ、まだですよ~。ちょっとお兄さんを連れて行こうと思いまして~。」

「俺を?俺なんか行っても何の役にも立たないぞ。」

「いえ、一刀殿。この機会に諸侯の顔を見ておくのも悪くは無いです。」

「そうですな。こういう機会は滅多に無いのですから、遠慮する事無いですぞ。」

「稟に星も・・・。何かたくらんでいるんじゃないのか?」

「何もたくらんでなどおらんよ。」

「そうです、私達は純粋に一刀殿の事を考えているのですよ。」

 

二人とも風の考えが分かっているようです。

 

「ほら、二人ともこう言ってるんですから~。行きますよ、お兄さん~。」

「おい、風。引っ張るなって!!」

 

私は、無理矢理お兄さんを連れ出しました。

 

 

袁紹さんの天幕の前に来ると、白蓮さん達が待っていてくれました。

久々の再開に、桃香さんがお兄さんに抱き付こうとしましたが、時間が無いという事で白蓮さんに止められました。

お兄さんに諸葛亮さんを紹介したいところですが、時間が無いので次の機会にしました。

 

天幕に入ると、中の様子に違いはありませんでした。

 

「すまない、待たせちゃったかな?」

「遅いですわよ、伯珪さん!!何度待たせれば気が済みますの!!」

「悪かったって・・・。久々に会ったからちょっと話し込んじゃっただけだよ。」

「・・・まあ、いいですわ。そちらに座って下さる?」

 

私達は前と同じ場所。

桃香さんは、袁紹さんが指示した場所に座りました。

 

「さて、皆さんが揃ったところで先ほどの続きですけど・・・。」

 

袁紹さん言いましたが、周りの方は黙りを決め込んでいます。

これはひょっとしてまだ総大将を決めているのでしょうか?

 

「なあ風、なんでみんな黙っているんだ?」

 

お兄さんが小声で聞いてきました。

私は皆さんに聞こえないよう同じように小声で答えました。

 

「腹の探り合いというところでしょうね~。」

「腹の探り合い?」

「皆さん、本音を探り合っているんでしょうね~。」

「みんな仲間なんだろ、そんな探り合いしてどうするんだ?」

「正直うわべだけの集まりですよ~。」

「先が思いやられるなぁ・・・。」

 

白蓮さんにもこの言葉が聞こえたのかうんざりするのが見えました。

その場の中央では、この連合の発起人である袁紹さんが総大将に相応しい人物像を挙げていました。

 

中身は明らかに袁紹さん自身の事を言っているのですが、それを自ら名乗り出る事無く周りに言わせようとしています。

それに対して曹操さんが皮肉を込めて返事をしています。

他の皆さんはそのやり取りにうんざりしていると言うのが現状のようでした。

 

「なぁ、袁紹がやりたがっているんだからそう言えばいいじゃないのか?」

「それが出来ればしているよ。でも、袁紹を総大将に推挙しようものなら、その責任を取れとか言って理不尽な要求をしてくるに違いないからな。だから誰も推挙しないんだよ。」

 

お兄さんと白蓮さんが小声で言い合ってました。

白蓮さんの言う通りなのですが、とはいえこのままではどうしようもありません。

この状況を快く思わない桃香さん辺りが推挙しそうですが、多分諸葛亮さんに止められているんでしょう。

先ほどからそのようなやり取りをしているのが見られます。

となると、この状況を打破するのはただ一人しかいません。

 

 

「あのさあ、総大将なら袁紹がやればいいんじゃないか?」

 

お兄さんがそう言いながら立ち上がります。

 

「あら、誰ですの?」

「俺は、北郷一刀。白蓮のところで世話になっている。」

 

北郷一刀と名乗った瞬間、場がざわめきます。

 

「あなたが噂の天の御遣いとかいう・・・。」

 

そう言いながら袁紹さんはお兄さんをジロジロ見回します。

 

「なんだか田舎臭いですわね。」

「田舎臭いのは関係ないだろ!!それより天の御遣いって・・・。」

「あら、本人が知らないんですの?なにやら民が噂をしているんですのよ。天の御遣いが世界を平和にするとかなんとか。そんなものは眉唾物と思っていたのですが。」

「ああ・・・、それは・・・んっ。」

「ええ、このお兄さんは天より流星に乗って降り立った天の御遣いですよ~。従ってこの人の言葉は天の言葉です~。」

 

お兄さんがあらぬ事を言いそうだったので、その口を塞いで私が代わりに紹介しました。

天の御遣いの威光は、こういう時に使うものです。

 

「では、天は私に総大将をやれと、そう言ってるんですの?」

「そうですよ~。先ほどから袁紹さんの挙げている条件に相応しい人物。それが袁紹さんだと言ってるんです~。」

「さすが天は分かってらっしゃいますわね。ほーほっほっほっ。」

 

お兄さんを黙らせて私が代わりに話を進めました。

もう、お兄さんが発言してしまったので後戻りは出来ません。

それなら、袁紹さんをおだてて気分よくなってもらうのが得策です。

 

「皆さん、天は私が総大将になって欲しいと言っているそうですわよ。それでいいかしら?」

「……いいんじゃないのかしら?」

「あたしは構わないぜ!!」

「妾が・・・『お嬢様も袁紹さんでいいですよね?』、うむ七乃がそう言うなら麗羽姉さまでいいのじゃ。」

「私も袁紹さんでいいと思います。」

 

皆さん賛成しました。

 

「では、早速本題に・・・。」

「私は、自陣に戻るわ。作戦が決まったら教えてちょうだい。春蘭帰るわよ。」

「はっ。」

 

曹操さんはそう言って、一緒に来ていた春蘭と呼ばれた人物を連れて出ていきました。

 

「曹操が戻るならあたしも戻るぜ。」

「妾達も帰るのじゃ。七乃、孫策、戻るぞ。」

 

曹操さんに続き、馬超さん、袁術さん達も出ていきました。

 

 

皆さん自陣に戻ってしまい、残ったのは袁紹さんと桃香さん達、そして私達です。

 

「全く、皆さんは協調性というものがないのかしら?」

 

お前が言うなと思いたくなる袁紹さんの言葉です。

その後、袁紹さんはお兄さんの方向を向きました。

 

「これで、私が総大将になったわけですけれども、あなたの言葉でこのような重大な責務を負わされることになった、その責任はどう取って下さるのかしら?」

 

やはり来ました。

これがあったので誰もが袁紹さんを総大将に推挙しなかったわけです。

こうなった以上どうしようもないので、なるようにしかなりません。

 

「責任か・・・。俺たちで出来る事なら何でもやるよ。」

「おい、北郷!!」

「大丈夫だって。」

 

心配する白蓮さんをよそに自信満々のお兄さんです。

 

「なんだか仲がよろしいのですわね。まあ、そんな事はどうでもいいですわ。…そうですわね、あなた方には次の戦いの先陣を務めていただこうかしら?」

「先陣って、連合の先頭に立てというわけか?」

「そうですわ。何か不満がありまして?」

「いや、不満はないけど・・・。」

 

そう言って、白蓮さんと私の方向を向くお兄さん。

白蓮さんはやれやれといううんざりした様子でお兄さんを見ていました。

私は、どうしようかと色々模索していました。

相手勢力の現状が分からないので何とも言えませんが、今の私達なら先陣でもそれほど苦にはならないでしょう。

ですが、何もしなければ被害が出るのは私達だけです。

ならば、少しですが袁紹さんも巻き込む事にしましょう。

 

「分かりました、風達が先陣を務めましょう~。ただ、風達の戦力では心許ないので、袁紹軍の方達を少しお貸しいただけませんか~?」

「なんで、私の兵士をあなた方にお貸ししなければならないですの?」

「風達が負ける事になればその後の戦いの士気にも関わりますよ~。それに次の戦いで勝ったときに、実は公孫賛軍には袁紹軍の兵士もいて、彼らの優秀な働きが戦いを勝利に導いたとなれば袁紹さんの評判もうなぎ登りだと思うのですが~。」

「確かにそうですわね。分かりましたわ、どれくらいの兵士を貸せばいいのかしら?」

「ありがとうございます~。」

 

私は兵士の数とそれに合わせ兵糧と武器も借りる事にしました。

建前上借りた事になりますが、実際にはもらったも同然です。

その代わりに袁紹さんには勝利という評判をあげるわけですから、こちらがお釣りをもらいたいくらいでしょう。

 

それだけの約束を取り付けて私達は自陣に戻りました。

その途中で桃香さんと諸葛亮さんが追いかけて来るのが確認できました。

 

 

桃香さんと諸葛亮さんが息を切らせて走ってきていました。

私達は立ち止まり、二人が到着するのを待ちました。

 

「桃香、どうしたんだ?」

「白蓮ちゃん達が先陣を務める事になったから、私達も協力できないかなって。」

「いや、本初の奴に兵士や兵糧なんかももらう事になっているから、桃香達に・・・『いえ、協力してもらいましょう~。』えっ?」

 

白蓮さんが断ろうとしている所に割り込みました。

確かに兵士数などは問題ありません。

ですが、それを率いる将が少ないです。

白蓮さん、星ちゃん、そしてお兄さんだけでは心許ないですし、私や稟ちゃんでは敵将が相手では荷が重すぎます。

その点、桃香達の協力が得られれば愛紗さんと鈴々ちゃんという一騎当千の武将がそれに加わります。

それに、伏龍と鳳雛の力も見ておきたいところですし。

 

「白蓮さん、協力できる人は多いに越した事はないですよ~。」

「そ・・・そうだな。よろしく頼むよ、桃香。」

「うん!!一緒に頑張って洛陽のみんなを救おうね。」

 

白蓮さんと桃香さんはそう言って握手をしました。

 

「それで、まずはどうしようか?」

「桃香様、自陣に戻ってみんなに報告しましょう。袁紹さんの作戦が決まってからまた集まって具体的にどうするか検討しましょう。…それでいいですか、程昱さん?」

「風もそれでいいですよ~、諸葛亮さん~。」

「なんか二人とも他人行儀だなぁ。これから一緒に戦っていく仲間なんだよ。もっと親しみを込めた感じで…、そうだ真名を交換するといいよ。」

「えっ!?」

 

桃香さんの言葉に唖然となる諸葛亮さん。

私もビックリしてしまいました。

真名とはこれほど軽いモノなのでしょうか。

 

「いや、桃香。気持ちは判るがそれは私達が促す事じゃないだろ。真名は二人がお互いを認めあった時に自分の意志で交換するものだ。」

「そうかなぁ。真名を交換すればもっと仲良くできると思うんだけど・・・。」

「確かにそうですが、やっぱり抵抗がありますよ。」

「風もです~。」

「そっか…。それじゃ、この戦いを通じて仲良くなれたら真名交換してね。」

 

そう言って諸葛亮さんと無理矢理握手をさせられました。

確かに敵に回したくない人物の一人なので仲良くできるのならそれに越したことはありません。

 

そんな感じで軽くやり取りをしてからお互いの自陣に戻りました。

不安な駆け出しですが、お兄さんがいるだけで負ける気が全くしませんでした。

 

 

あとがき

 

反董卓連合の開始です。

 

何度も書き直しをしたので、ちょっと時間がかかってしまいました。

それなりにまとめられたのでよかったかなと思います。

 

基本は、原作の蜀ルートでのやり取りになっています。

まあ、こんなもんでしょw

 

次は第一の関、汜水関です。

ようやく戦いが始まるのですが、ちょっと苦手かなぁ。

でも、頑張って書きますので次もよろしくお願いします。

 

今回もご覧いただきありがとうございました。


 
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