No.1022980

Octo Story 第22話「決戦」

Nobuさん

ネルス像との最終決戦、次回が最終回です。

2020-03-14 08:01:05 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:700   閲覧ユーザー数:700

 世界の存亡をかけたナワバリバトルが、始まった。

 

「ポリュープさん! 移動用にこの子達を使ってください!」

 そう言って、イイダはたくさんのインクレールをネルス像に張り巡らせ、ポイントを点灯させる。

「イイダボムはポイントに投下します!

 最初は胸の辺りに5個、その30秒後に首の周りに5個、

 60秒後に背中に5個、90秒後に右腕に5個、最後、120秒後に頭に10個。

 このイイダボムを3分以内に全部壊してください」

 ふむ……30秒前後でイイダボムを壊せば、次の移動に余裕ができるというわけだな。

 

 私は、タルタル総帥の愚行を止めるため、ネルス像にナワバリバトルを挑んだ。

 制限時間は3分。塗って、塗って、塗りたくれ。

「最初のイイダボムです! 胸に5個、投下!」

 イイダがネルス像の胸に、イイダボムを5個取り付けた。

 私はまず、見えない場所にあるイイダボムを壊し、前に進んでイイダボムを壊す。

 イイダボムが壊れるとインクが周囲に飛び散るためインクの回復は容易になっている。

 胸のイイダボムを3個壊し、インクにセンプクして4個目のイイダボムを壊した。

「ガ……魚介類よ、このまま大人しくネリ返されるがヨイ」

 そうはいかないぞ、タルタル総帥。

 お前が望んだ人間の世界は二度と取り戻せない事を分かってくれ。

 私は転落しないギリギリの場所からオクタシューターを撃ち、5個目のイイダボムを壊した。

 ここまでにかかった時間、17秒。

「次は首に投げます! 少々お待ちを……」

「首にあるポイント近くで待機じゃ!」

 私はイイダボムが来る首の辺りまで急いで向かう。

「イイダボム、首の周りに5個、投下!」

 30秒が経過し、イイダボムが投下される。

 私はすぐ近くにあった6個目のイイダボムを壊し、振り向いて7個目のイイダボムも壊す。

 そしてゆっくりと落ちながら、8個目のイイダボムを壊した。

「ガッ! 貴様ラはネリ返され、新世界の一部となるノダ!」

 タルタル総帥は抵抗して叫ぶ。

 お前以外に何もない世界を新世界と言うのか?

 そんな事をして博士が喜ぶとでも思ったのか?

 これ以上、お前の好きにはさせない!

 

 ……なんだか、激しい気分になってきた。

 目的がはっきり分かったのが、理由なのだろう。

 

 私は下にあった9個目のイイダボムを壊した後、インクの中にセンプクし、

 上にあった10個目のイイダボムを壊した。

 ここまでにかかった時間、23秒。

「次は背中側に投げます! 少々お待ちを……」

「ポリュープ、聞こえたか!? 背中側に先回りするんじゃ!」

 分かっているさ、イイダ、アタリメ司令。

 私はネルス像の背中に回り込み、黄色いポイントが近い場所で待機した。

 5……4……3……2……1……。

 

「イイダボム、背中に5個、投下!」

 残り時間が2分になった後、イイダはイイダボムを5個投下した。

 私は一番近い11個目のイイダボムを壊し、左に移動し、

 ギリギリの位置で12個目のイイダボムを壊す。

「ガガ……この世界をネリ返し、博士の求めた世界ヲ……」

 いい加減にしろ、タルタル総帥。

 博士は世界を滅ぼす事は望んでいないんだぞ。

 いつまでそんな事にこだわっているんだ。

 

 私はインクレールに乗りながら、13個目、14個目、15個目とイイダボムを壊す。

 ここまでにかかった時間、17秒。

「次は右腕の方に投下します! 少々お待ちを……」

「ポリュープ! 間違うなよ! 像の右腕に急げ!」

 私はネルス像の右腕に回り込む。

 紫のポイントがある……間違いない、ここが次にイイダボムを投下するポイントだ。

 5……4……3……2……1……。

「イイダボム、右腕に5個、投下!」

 紫のポイントに、イイダボムが5個投下された。

 16個目のイイダボムを壊した後、私はインクレールに乗って17個目のイイダボムを壊す。

「ガガッ……ムダだ、No.10008! ネルス像は止めらレン!」

 諦めるものか、絶対に諦めるものか。

 タルタル総帥のせいで、世界が滅んで、たまるか。

 18個目、19個目と順調にイイダボムを壊していき、私は最後の20個目を壊した。

 ここまでにかかった時間、20秒。

「最後は頭です! 少々お待ちを……」

「ライドレールを使って、頭に向かえィ!」

 5……4……3……2……1……。

 

「最後です! 頭に10個、投下!」

 イイダは青いポイントに、10個のイイダボムを投下した。

 残り時間は1分、イイダボムのノルマも多い。

 だが、ここで諦めては世界は滅ぶ。

 私はインクレールの上に乗りながら、21個目、22個目、23個目と、

 イイダボムを次々に壊していく。

「ガガッ! ネルス像、ネリ返す時が近づいて来たゾ!!」

 その前に、全て塗っちゃえばいいだけだろう?

 お前の野望も、これまでだ。

 インクレールを伝いながら、24個目と25個目のイイダボムを壊す。

「世界をネリ返すエネルギー発射まで残り30秒!」

 同時に、イイダボムの数も残り5個になる。

 後は時間との勝負だ。間に合ってくれ。

 

 26個目を壊した時間は、4秒。

 

 27個目を壊した時間は、3秒。

 

 28個目を壊した時間は、3秒。

 

 29個目を壊した時間は、5秒。

 

 そして、ラストの30個目は――残り15秒で壊した。

 ネルス像のチャージが止まる。間に合った。

「ポリュープ! こっちの準備ができるまで、そこで待っとれィ!」

 ああ、と私は頷く。

 そして、タイムアップになるまで、私はインクレールの上で待機した。

「テンション、そろそろいいゾ!」

 ヒメのテンションもMAXになってきた。

 後は、勝利を待つだけだ。

 

 5……

 

 4……

 

 3……

 

 2……

 

 1……

 

 ――Finish!――

 世界の存亡をかけたナワバリバトルは、終わった。

 

 私は真っ逆様に落ちていき、地面に着地した後、蛸の姿に戻ってすぐに人の姿になる。

 ついに私は、世界を救ったのだ。

 だが……イイダは喜んだ顔をしていない。

 どういう事だ、とイイダに聞くと、イイダはキーボードを叩きながら言った。

「世界をネリ返すエネルギーがフルチャージに達しないまま、放出されそうです!」

 なんだと……私達がやって来た事は、全て無駄だったのか……。

 私のインクで塗りたくられたネルス像と、右目の中にいるタルタル総帥は、

 真っ直ぐに私を見ている。

「No.10008……ここまでワタシの計画に背いた実験体は初めテダ……。

 こうなったら、博士の願ったカンペキな世界……その一部となるがヨイ」

 ネルス像のチューブから、今まさに、膨大なエネルギーを発射しようとしていた。

 チューブはハイカラスクエアに照準を向けている。

 まだ全て溜まっていないとはいえ、直撃すると、

 ハイカラスクエアどころかハイカラシティまで消えてしまうかもしれない。

「さらばだ、No.10008……。貴様をあの街ごと、ネリ返してヤル!」

 駄目だ、もう、間に合わない……。

 街は、あいつにネリ返されてしまうのか……。

 

「何やってるんだ、ポリュープ!!」

 

 その声と共に、突然、上からヒメが落ちてきた。

 まさか、私を助けに来てくれたのか?

「何、諦めようとしてんだよ!」

 ヒメ……もう、大丈夫なのか?

 私は……もう、休んでもいいのか?

「ポリュープはよく頑張った。ごくろーだったな! 後は任せな!」

 ヒメは私の肩をとん、と叩いた後、センパイキャノンを発射する準備にかかる。

「よし! テンション、MAX! いくゾッ!」

 ヒメが被っていた王冠が光ると、彼女はどこからともなくメガホンレーザーを取り出した。

 先端にある王冠の宝石が、ぴかっと光る。

 モーター音が鳴ると同時に、ネルス像のチューブからドロドロのインクが発射される。

「マ゛ーーーーーーーーーッ!!!!」

 ヒメがテンションMAXで叫ぶと、センパイキャノンから放たれたインクが、

 ネルス像が放ったインクにぶつかった。

 

 センパイキャノンのピンクのインクと、ネルス像の緑のインクが押し合いになる。

 最初は互角の勢いだったが、すぐに相手のチームが優勢になる。

 しかし、フルパワーでない事が災いしたのか、ネルス像のゲージに罅が入っていく。

 

 勝利したのは、センパイキャノンだった。

 センパイキャノンは888.8%のエネルギーで、ネルス像を「ぶっ壊し」ていった。

 像の中から物品が次々と飛び出て海の中に落ちる。

 ゲージも、あまりのパワーに先が壊れてしまった。

 

 そして……。

 

「ガ……ッ! ガガッ……!!」

 タルタル総帥は、逆さになってインクの中に溶けていた。

 身体からは、タコ足がちょっとだけ出ている。

 この身体は、散っていった私達のもの……だから、手厚く葬り、弔おう……。

 

「ハカセ……イマ、アイニ イキ マス……。ネルルルルルルルル……!!」

 タルタル総帥はそう言い残し、ゆっくりとインクに溶けていった。

 彼は、私達に倒された事で、12000年という、長すぎる生涯を、ようやく終えたのだ――

 

「……ありがとう」

 私の口からは、それしか言えなかった。


 
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