No.1014283

九番目の熾天使・外伝 蒼の章 クリスマス編 その2

Blazさん

遅れに遅れたクリスマス編のラスト。
俺ことBlazは…しれっと追加されます。
というわけで今年最後の投稿です!

2019-12-30 23:45:48 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:639   閲覧ユーザー数:617

クライシス「それでは後半だ。対象のナンバーズは楽しみにしておけ」

 

 

 

・デルタ プレゼント : 休暇

 

 Blazらの部屋を後にしたクライシスは足をデルタの部屋へと向ける。しかし、足を向けようとした足は部屋に入るどころかBlazの部屋を出た瞬間に止まってしまい、一瞬だけ考えたクライシスの足は本来の目的地とは別の方へと向き、歩みだした。

 デルタは部屋にはいない。

 それをクライシスは一瞬で感知し理解したので、向かうことはなく、その足取りに迷いはなかった。

 ではデルタはどこにいるか。答えは、彼が用いる蟲を考えれば容易だった。

 

 

 

 

 

 ―――研究区画・『飼育室』

 

 竜神丸が管理している研究室。その区画の一つにモンスターやタイラントを研究する区画がある。基本、そこには竜神丸だけが立ち入るのだが、彼以外にも数名は用いることもある。

 その一人がデルタで、飼育室のドアを開けると騒音のオンパレードが出迎え、その音をシャットアウトすると飼育室の中心の台座でなにか作業をする人物の姿を見つける。うるさく鳴り響く音の黙々と作業をするデルタだ。

 

「世間はクリスマスだぞ、デルタ」

「ん? ああ、団長……いや今はクライシスでいいか?」

「問題ない。竜神丸も今日は別件だ」

「そうか……で、その恰好は? まさかお前がサンタか?」

「ああ。団員たちが日ごろ頑張っているんだ、団長として労いの一つでも用意せねばダメだろ?」

 

 クライシスに気づき作業を止めたデルタが振り向くと作業していた光景がクライシスの目にも映る。奥には小さなケースに大事におさめられた蟲と、その資料らしきものが散乱しており、興味のあったクライシスは問いを投げる。

 

「それは何を育てている?」

「ん……これか。これは今育てている蟲の試作タイプで、新しく育て始めた奴さ」

「新しい蟲か。見たところ全体的に色が薄いが、そういうタイプなのか?」

「いや、今はまは羽化したばかりで小さいけど、育てば六センチには育つな。それに今は経過観察中でどんな色になるかは私にもわからない」

 

 問いに答え、後ろに置いていたケースをクライシスが見えるように移動したデルタは中身がまだ育ち切ってないことを明かす。彼曰く、生まれたのはつい最近で今はまだ体が弱い時期であるらしい。一応高い抗体や耐性を持つように交配しているが、それでも生まれたてというのは何が起きるか分からないので、かなり神経を使う。

 実際、クライシスの目にも蟲はまだ幼く弱く見えるので、今は人で言うところの赤子そのものだ。

 

「なるほど。それでお前の顔が真剣だったというわけか」

「そう言うことになる。こいつが問題なく成長すれば、いよいよコレの量産ってわけになる」

「繁殖能力はそれなりなのか」

「そうだな……一度の生殖で三匹前後だと思う。でもこの手の蟲の出産数は大体一匹か二匹だからな。三匹は私の希望だ」

 

 いくら強い蟲を生み出しても、子孫を残せないのであれば意味がない。加えてたとえ産んでも子にしっかりと遺伝できてなかったり彼の心配事である生まれてすぐに、となってしまえばせっかく大事に育てた意味がなくなってしまうのだ。なのでできるだけ多く子を残せるようにするのは生命の常だ。

 

「……で。わざわざそんなことを言いに?」

「そんなわけないだろう。今年のサンタとしてお前にもプレゼントを用意した」

「本当にサンタをしていたのか。団長ともあろうお前が」

 

 団長だからだ、と反論するクライシスはそう言って袋からデルタのプレゼントを取り出し、差し出す。

 デルタのプレゼントは他の面々に比べて小さく、そしてなにより薄い。あまりにも小さなそのプレゼントは子どもであれば落胆のため息が漏れること間違いないだろう大きさで、大人であるデルタは表情にも出さず、さして落胆してはいないが「これが?」と疑いはした。

 だがクライシスは見た目で疑われるのは承知しており、彼にとってはそんなことは予想の範疇だった。

 

「これは……宿泊券?」

「見た通りな」

「ええっと、なになに……『三泊四日、フォレストリゾート無料宿泊コース』……か」

「たまにはゆっくりと湯治をしてこい。抑制剤でコジマ粒子の汚染が抑えられているとはいえ、お前の体は常に汚染に犯されているんだ。少しでも長生きするためには湯治も必要だろう」

「………。」

 

 それでも焼け石に水だが、と言いたくなるが確かにここ最近デルタは体の調子がよくなく医務室に行こうとしたこともあった。それをクライシスは知っていたので、せめてもの気遣いとして湯治を進めた。無論、それでコジマ粒子の汚染が抑制されたり、治療させるかと言われればそうではないが、湯治だからこそできる治療というのもある。

 何より、デルタの性格上軽々と休むという考えはなく、こうでもしないと彼が休まないことを知っているので多少強引だが彼を休ませるように手配したのだ。

 

「お前がこれを受け取っても「はいそうですか」と了解するわけがないのは分かっている。だが、今という時期に少しでも治療をしないとお前の体は持たないだろう。団長としてそれは見過ごせない」

「……そうは言うがな。万が一があっても楽園に居れば治療は可能だ。それに招集があればすぐに駆け付けられるし、何より治療効果がないのであれば行く意味も……」

「言いたいことは分かるが、だからと言って常駐することもない。休めるのであれば休む。他のナンバーズは自分たちのペースでやっているんだ。お前が治療を行っていても誰も責めないし、それで旅団がつぶれるわけもないだろ?」

「しかし……」

 

 デルタはそれでもと反するがクライシスの意思は変わらない。気持ちはわからなくもないが、クライシス自身は休まない彼のことが気になってしまうようで、表情に出さずとも彼のことを案じていた。なので意地でも断ろうとするデルタに不本意だが『命令』を下した。

 

「……仕方ない。では、これを命令としよう。それでどうだ?」

「む……」

 

 命令には基本従うこと。旅団の鉄則を出されたので退くことができないデルタは意地が悪い、と不満げな顔をするがその顔をしたいのはむしろクライシスだ。

 

「権威乱用か」

「なんとでも。お前がいい加減休まないと私も枕を高くして眠れんのでな」

「だからと言ってそれはどうかと思うがな……」

 

 こんなことで、と呆れるデルタはついには観念したようでクライシスは降参した彼の顔に意地の悪い笑みを浮かべる。

 

「……わかった。ただしこれっきりにしてくれ」

「結構。ただしその約束はできんがな」

「お前なぁ……」

「当然だろう、怪我をしている、持病を持っている者を治すな、などできんだろう。誰だって怪我は治したい、病気から回復させたい。それは己だけでない他人もそう思っているのだからな」

 

 

 結局。こうしてクリスマスプレゼントを強引にだが渡されたデルタは、その後三が日をこのリゾート地で療養することとなるのだが、それはまた別の話。

 かくしてつかの間の旅行を行った彼だったが、帰還後の感想は「二度と行かない」と腰を押さえ医療班に診断書を提出。どうにも旅行先で吐血したようだが、その原因がマッサージを受けたからで、折られたと思った彼はそうさせたという。

 だが、医療班の診断結果は「単にデルタさんの骨格が歪んでただけで今は戻ってる」だそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朱雀 プレゼント : 休暇

 

 

「さて……」

 

 デルタのいた飼育室を後にしたクライシスは次のメンバーのいる場所に向かいつつも、それと並行して別の事を行っていた。バフバロの上で揺られながら取り出したのは携帯で、迷うこともなくある所へと電話をかける。

 その電話相手とは……

 

『もしもし……?』

「私だ。そちらの休暇はどうだ、朱雀」

 

 

 

―――都内某所

 

 都内の街道を歩く朱雀はクライシスからの電話に内心戸惑うも、人込みを避けつつ冷静に返す。

 彼だけはクリスマスパーティーが行われる楽園には居らず、ある世界の東京都内の街中を歩いており完全に別行動かつ外出中。一人、夜の都内を散策していた。

 というのも彼のクリスマスプレゼントはデルタと同じ休暇で、彼の場合は今日半日と大晦日、元日とその翌日の三日半を求めており、そのプレゼントはクライシスがサンタに扮する前に渡されていた。

 その為、朱雀だけはクリスマス当日は楽園には居らず外出できていたのだ。

 が、さすがにパーティ不参加は容認できないということでパーティ開始までに戻ることという子どもじみた条件がつけられ、結果彼はつかの間半日の休日を過ごしている。

 

「団長。……休暇と言いましても少々疲れました……」

『ほう。女に連れ回されるのは慣れていないか?』

「いや……そういうわけでも……ないはずですが……」

 

 クライシスの言葉に言葉が詰まる朱雀。そう、今彼は女性と行動しており都内を歩き回っているのだ。真面目な彼の性格からしてまさか、と思えるかもしれないが彼にも異性に対する甲斐性も気遣いもあるので異性関係が無いわけではない。むしろ蒼崎やBlaz、そして女性関係永遠の筆頭であるディアに続く形で女性関係―――女難の相―――を持ち合わせている。

 

『ホホホ。だがそういう謙虚なところはお前の短所であると同時に長所でもある。あまり謙虚すぎるのも問題だが、それが間違いでもないからな。たまには羽目を外すといい』

「羽目を……ですか」

『何か問題が?』

「ええ、まぁ……」

 

 クライシスがいるわけでもないのに携帯から目をそらし小さく失笑する朱雀は、うつむいていた目線のを上げて目の前の光景をとらえる。そこに彼にとっての今の悩みの種があったのだ。

 

 

「あ! マスター(・・・・)! 遅いですよ!」

「む、どこに行っていたマスター。私たちを置いていくつもりか」

 

 彼が目を向けた先にいたのは自分のことを待っていた少女二人。朱雀と同じ私服姿で冬の寒さから身を守っているというのにその肌の色は色濃く、そして色白い。正反対の肌を持つ彼女らは朱雀と目が合うと真っ先に回りを気にせずに声を上げて彼のことを「マスター」と呼びかける。

 その二人の姿と声に若干恥ずかしい朱雀は他人のフリをしつつも二人の下へと歩んでいく。

 

「……というわけです」

『元気なのは結構なことではないか。まぁ羞恥心については分からなくもないが』

「ええ……おかげで偶にみられる視線が辛いです……」

『そこはお前の気持ち次第だ。それにそんなことのために私はお前に外出の許可を出したわけではないぞ』

「いや、それは承知してるのですが……」

『お前が彼女らを楽しませたいというから許可したんだ。これで失敗するようでは”マスター”失格だぞ?』

「……善処します」

 

 その会話を最後に電話を切った朱雀は丁度、自分のことをマスターと呼んでいた二人の少女『沖田総司』と『魔神・沖田総司』と合流し寒さで赤くなった二人のむくれた顔に苦笑いをして言い訳を言う。

 

「お、遅れてごめん二人とも」

「本当にそうですよ! 私たちを凍えさせる気ですか!」

「これはマスターの責任だな。帰りにおでんを含めた温かいものを買ってもらおうか」

 

 色白な肌をした少女沖田が両手を振り回しながら元気に朱雀に抗議し、朱雀の体にぽかぽかと音が立つような力加減で殴り続ける。

 その反対側では濃い肌の色をしている魔神沖田が寒そうな顔で朱雀の腕につかまりうるんだ目で見上げてくる。こう見えて寂しがりな一面もあるので、そんな一面に朱雀はごめんごめんと謝罪を口にする。

 

「それだけでは済みませんよ! 沖田さんたちをここまで待たせたんですから! おいしい物だけじゃなくなにか買ってもらいませんと割に合いません!」

「むぅ、それは正論だな。よしマスター、今からあの大きいショッピングモールをめぐるぞ」

「今から!?」

 

 二人が言い出したことに思わず驚くが、既に二人の機嫌はななめっており、修正するにはなにかしらで機嫌を直させないといけないほどに拗ねていた。これには朱雀も時間をかけてしまったかと頭を抱え、しばらく考え込む。が、ほかに選択肢がないということで諦め、

 二人の沖田の要求を受け入れ

 

「……しょうがない、遅れてきたバツだからね。付き添います」

「当然です。さぁ行きますよ!」

「れっつごー」

 

 

 ……その後、朱雀が二人の買い物に付き合わされて財布が悲鳴を上げることになるのだが、それはここで語ることではない。

 そしてなぜ彼女ら二人が召喚され、彼がマスターとなったか。それは、もしかすればいずれ語られること、なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・蒼崎夜深 プレゼント : 休暇……?

 

 場所は再び旅団のナンバーズの部屋。Blazらはすでに部屋を後にしていたのでフロアは静か……だったはずだが廊下からは聞こえるはずのない絶叫と何かの音が響き渡り、その雰囲気を大きく変える。

 例えるならそう。どこぞの特殊性癖の店の前で聞こえてくる店内の声や音のような。とはいえ、このフロアにそんな部屋があるわけもなく、聞こえてくる音と声を頼りにクライシスはその部屋……蒼崎夜深のもとへと向かった。

 

「さて。あとは二百式と朱音。それにげんぶと蒼崎か」

 

 残るナンバーズのリストを確認しつつも音の鳴るほうに向かったクライシス。その音が聞こえるのは、なんと、というべきか蒼崎の部屋でそこから聞こえてくる蒼崎の声にしばし考え込んだクライシスは特に何も考えずに部屋のベルを鳴らした。

 鳴らされたベルの音に向こう側から「はーい」と返事が返ってくる。だが聞こえてきた声は蒼崎の声ではなく女性の声で、よくよく聴けば奥からは彼以外にも何人かの声が聞こえており、どうやらBlazの部屋同様に何人かが中にいる様子だ。

 その結果が、ドアの向こうから姿を現すとはクライシスも思ってもなかった。

 

 

「あら、団長」

「……カデンツァ嬢。なぜ上だけ薄着なのだ?」

 

 ドアを開けて応対したのはピンクの髪を腰まで伸ばした女性で、蒼崎の新たな妻の一人(・・)であるマリア・カデンツァヴナ・イヴその人だ。女性としては魅力的かつグラマラスな体つきが露わとなった服装……というよりも中に着たインナーのみで下は今日着てきたズボンが履かれているという完全な薄着で現れたので、クライシスは顔を見せずにはいたが思わず尋ねてしまう。これにはマリアもセクハラではなく普通に気になっただけと取り、「ああ」と言って理由を説明した。

 

「これは……こういう意味よ」

 

 と言って自らを退けて部屋の中を見せるので、部屋を覗き込んだクライシスはそこで行われていた光景に絶句する。

 

「…………。」

 

 というのも、彼の目の前に広がっていたのは文字通りサンドバッグにされてフルボッコにされている最中の蒼崎で、顔が真っ青になりながらも言い訳をしているというカオス極まりないものだった。その周辺にはマリアと同じく彼の妻であるシグナムと天羽奏の二人が息絶え絶えで立っており、部屋の中で揺れる蒼崎を荒い息で睨んでいた。

 

「……これは?」

「ええっと………夜深がパーティをするっていうから私たち呼ばれたのよ。ええ。もちろんあなたが主催する方のね。それで私たち三人は一応顔合わせはしてるから問題はなかったの。三人では……ね」

「……四人目か」

 

 突っ込む気もないクライシスは隠すこともなく聞き、マリアの無言の頷きに小さく息を漏らす。そして「そうか…」というと相手のことについて尋ねた。

 

「で、相手は?」

「……私の世界の人間。しかもバツイチ」

「……なるほど」

 

 はたしてこれ以上の言葉、返答があるだろうかというほどの深い落胆をする二人―――というがクライシスはさして顔には見せていない―――は奥で嫁二人にこってり絞られている蒼崎の顔を見る……が当人に反省の色はなくむしろ殴られけられで満足している、という顔をしていた。

 完全に犯罪街道を闊歩している蒼崎にこれ以上言うことも与えることもいいのかと思わず思ってしまうクライシスは沈黙するが、やがて諦めたかのように袋からプレゼントを取り出す。

 

「……まぁいいだろう。蒼崎にこれを渡しておいてくれ」

「これは……リゾートのチケット?」

「休暇が欲しいとごねていたのでな。だがこの光景を見て気が変わった」

「……気が」

 

 

 

「蒼崎に伝えておいてくれ。「来年から仕事の量は五倍にする」と。あと結婚するのはいいが金は出さんとだけ」

「……鬼ね」

「団長なのでな」

 

 

 

「え、ちょ、なんか団長らしき人いるんだけど。マリアがプレゼントらしきものをもらってんだけど。っていうか俺のことでなんか恐ろしいこと言われてんだけど!

あとマリアこの術式解除してほしいんですけどぉ!!」

 

 ……と。そんな絶叫を響かせた蒼崎はその後パーティが始まる直前までボコられてたとか。

 ちなみにチケットはご丁寧に七枚(・・)あり、誰が行くかという時に蒼崎の顔が真っ青を通り越して血流が止まっていたのは語られない話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・げんぶ プレゼント : 夫婦の営み(げんぶ) 第二子(白蓮) 黒猫のぬいぐるみ(蓮)

 

―――本郷家

 

「……いいのか?」

「ああ。今の私はサンタだ。無粋なことはせんよ。それにそれがお前たちの願いであるなら、私が拒否する意味もない」

 

 本郷家の庭に立つクライシスはそう言って目の前にいるげんぶら夫婦に答えた。彼らのプレゼントは他のメンバーとは一線を画し、そのプレゼントはある意味で彼ららしいものだった。

 そのプレゼントとは、まさかの新しい子どもである。

 

「団長がいいと言っているんだ。ここは素直み好意を受ければいいだろ?」

「そうだがな……俺だけなんだろ、パーティに出ないのは」

「あとはZEROが保留だから厳密にはお前だけでではない。それにお前の願いもたまには聞き入れんと、後があるからな」

「団長……」

 

 子ども、であれば本郷一家には愛娘の蓮がいる。彼女だけでいいのではないか、と思えるが昨今の旅団内の結婚ブームにどうやら白蓮と蓮もあてられたらしく、ともに子どもが欲しいをせがんできたのだ。

 これにはげんぶも驚き、なぜと言いたくもなった。養子の話も出たが、それは団長が支援している孤児院に迷惑をかけるかもしれないということで流れた。

 結果、白蓮が自分とげんぶとの間にまた新しい子どもを作りたいという形になってしまい、これをしぶしぶ受け入れたということである。

 とはいえ、げんぶもしばらく任務続きで白蓮や蓮と一緒に居られる時間がなかったので、そういった意味でもげんぶはこの二人の願いを受け入れたわけである。

 

「それにパーティも二日ある。今日来なくとも明日来ればいい」

「……助かる、団長」

「気にするな。娘の方は安心しろ、Blazに押し付けてきた」

「……まぁアイツのところのチビとは仲がいいからな」

 

 娘のこともクライシスが預かり、これで夫婦水入らずとなった二人の姿に小さく笑みを作ると、それではな、と話を切り上げてバフバロのいる方へと向かう。

 これでこの家には彼らだけ。邪魔なサンタは去るのみ、とクライシスは足早に本郷家を後にした。

 ……が。ただそれだけを言って去るだけの彼でもなく

 

「ん。ところで白蓮、さっき団長から何をもらった?」

「ああ……栄養剤、だと」

 

 

 

 ……完全にやる気である。白蓮がそう言ってからというもの、妙に胸騒ぎがしており息もつかれていないというのに荒くなっている。何より白蓮を見るだけで唾を飲み込んでしまうという状態は前に覚えがあり、その感覚をどうにも思い出せないげんぶは頭の中が混乱する。

 しかし、ただ一つ分かるのは今からヤる気満々であるということ。その証拠に白蓮の顔は赤く、妙に火照りがある。彼女も息を荒くしてこちらを見ているが、トロンと溶けた目で見るというその顔は妖艶だ。内またをこすり合わせ必要にげんぶにくっついてくるという甘えん坊な仕草は普段の彼女では絶対に考えられない。

 この艶めかしい自分の妻のしぐさにげんぶも欲情しているのだろうとようやく気付くが、それを今ここで開放してしまえ翌日のビッグニュースになりかねない。

 かくにも今はまだ、と理性を用い本能を抑えるげんぶは妙に赤い白蓮に問いを投げる。

 

「お前……さっき何か飲んでたな。あれか」

「ご明察。あれは私のフェロモンと生殖本能を刺激するものでな。遅効性なのが問題点だが……そこを団長はさっしてくれたのだろうさ」

「要は媚薬か」

「そうだな。それに今貰った栄養剤もあるから準備は万端だ」

「まて。ここでしたらマズいだろ。部屋で……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……部屋でなら、ナニをしてもいいんだな?」

 

 甘い声で近寄った白蓮にげんぶの理性は臨界点ぎりぎりだった。

 その後は彼の理性との勝負で、白蓮を抱き上げて部屋に向かうと二人は真っ先にアメリカン映画さながらのスタートダッシュを切り、それから朝までの六時間をノンストップで行ったという。

 当然、これで当たらないわけもなく後にそのことでまたひと騒動起こるのだが、それはまた別の話である。

 そして、実はクライシスが白蓮に渡したのは栄養剤ではなく今回のために作った特別な薬で中の赤子が無事に産まれるように守る術式を込めたものだったが、それを知るのは白蓮だけだったりする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、クライシスは全員のナンバーズにプレゼントを送り届け彼のサンタ活動は美時に終わりを告げた

 

 

 

―――わけではなかった。

 

 

 

「お疲れ様です、団長」

 

 そう言って薄暗いラボの中で何かをしていた男、竜神丸が振り向き歩いてくる団長に対し労いの言葉を贈る。

 全てのメンバーにプレゼントを贈り終えてこれで彼の役割も終わり……そのはずだったがクライシスは自室でも会場でもなく竜神丸がいるラボに足を運んでいた。

 

「まったく。サンタでの配達と言うのも苦労するな。とはいえ、お前の根回しと手伝いがあってこそでもあるかな、竜神丸」

「そういってもらえると私もうれしいのですがね。残念ですが、それを言うには……何か足りない。でしょう?」

 

サンタの帽子と髭を取り、帽子をかぶるクライシスを横目に竜神丸は言葉を紡ぐ。

 

「我がまま承知で言いますが、私にもプレゼント。ありますよね? 団長」

「………。」

 

 しばし、クライシスは目線をさげて沈黙するが、やがておもむろに手をコートの中に伸ばし奥にしまっていたものを取り出す。

 取り出されたものを見た竜神丸は、一瞬目を大きく見開くが次の瞬間には彼の顔は不敵とも、至上ともとれる笑みに変わる。

 取り出されたのはクライシスの手に収まる程度のカプセルにおさめられた『何か』で、その中は深淵とも思えてしまうほどに黒く、禍々しく、そして鮮やかだった。

 

「……感謝します」

「……だが、正直これは私としてはここに存在してはならない代物だと思っている」

「それは先刻承知です。ですが……」

「そう。しかし、これからのこと。そしてそのために我々がするべきこととして用意した。ゆえに、これを使うのはこれっきりだ」

「……わかってますよ。私としても傍観者の立場は捨てたくもないので。それにアナタには理の内外は関係ないですし。いつ消されるかもわかりません。

ですから裏切るなんてことはしませんよ」

「………。」

 

 それは彼に裏切る意思があるからか、それとも。いずれにしてもクライシスはその言葉についてを考えることを後回しにしてカプセルを手渡した。

 

「……確かに。受け取りましたよ―――黒き獣の欠片を」

「それで何を作る気だ」

「愚問ですね。これで作成するもの、といえば一つでしょう」

 

 竜神丸の言葉にクライシスは彼から目を離し、ラボ内にあるカプセルを見つめる。あまりにも大きく、何が入っているか分からないそれは一瞬だがその中にあるものを映し出す。中身はクライシスでも眉を寄せるものが入っており、それを見るだけで彼の中に嫌悪感というものが生まれた。

 それを今後のためと割り切るが、それでもこの光景は彼としても容易に納得できず、そして受け入れがたいものだった。

 

 

 

「さて。それでは実験再開と行きましょう―――ファースト」

 

 

 

 

 

・竜神丸 プレゼント : 実験体

 

 

 サンプルネーム「ファースト」。それはイカルガで覚醒した篝美空の遺伝子を元にした竜神丸が作成した次元境界接触用素体。そして未来というイレギュラーが見せた奇跡を再現するために生み出した運命の少女。

 彼女が目覚める日は―――まだ先のこと。

 


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