No.1012148

紫閃の軌跡

kelvinさん

外伝~せめてその1万倍以上は持って来い~

2019-12-07 06:51:15 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2045   閲覧ユーザー数:1595

 対峙しているのはセドリック、ミハイル少佐、シャーリィ、そしてトールズ士官学院・本校の生徒たち数名に加え、機甲兵数機。すると、ここで名乗りを上げたのはクルトであった。

 

「……皆、殿下のことは僕に任せてほしい」

「クルト君……言うからには、負けないでよ!」

「そうですね。フォローするのも大変ですから」

「ま、てめぇに関しては心配してねえが、もしもの時はきっちり帰してやるから安心しろ」

「クルトさん、頑張ってくださいね」

「ありがとう、皆」

 

 新Ⅶ組の激励を受ける形で双剣を構えるクルト。対するセドリックは剣を抜いた上で、クルトに対して不敵な笑みを浮かべていた。

 

「舐めた真似をしてくれるね、クルト。僕が君1人でどうにかなると思っているのかい? “星杯”での出来事を忘れたわけじゃないだろう?」

「……兄がかつて言っていた言葉。その意味を成すためにも、ここは僕がやらなければならない。いきますよ、殿下!」

「上等じゃないか。来なよ、クルト!」

 

 そうして始まるセドリックとクルトの戦い。それに加担しようとするフリッツとエイダだったが、それに立ちはだかったのがユウナだ。その後ろにはアルティナがいた。

 

「お前たち、この意味が分かっているのか?」

「当然よ。あたしたちから言わせれば、こんな状況に加担しているあんたたちが間違っている! それでもあんたたちが邪魔するのなら、全力で立ち向かうだけよ。ハァァァァ……ハアッ!!」

「なっ!?」

 

 ユウナはアスベルから教わった「氣」のコントロールをもとに自らの身体能力を向上させるクラフト『エクサランスハート』を発動させる。とても同年代とは思えないオーラにフリッツとエイダは怯んでしまう。

 それを見たアルティナがボソッと呟いた。

 

「ユウナさんも無事人外への道を歩み始めたんですね」

「アル、それは貶してるだけでしょ……とにかく、やるわよ!!」

「了解です、ユウナさん」

 

 そして、ミハイル少佐に対してはアッシュ、ミュゼ、オーレリアの3人が対峙する形となった。明らかに分が悪いところにトールズ士官学院・本校の生徒もミハイル少佐の補助に入っているが、アッシュとオーレリアの纏っているオーラに怯んでいるような雰囲気が見られた。

 

「ほう、この短期間で私に迫る気迫を手にしたとはな。もしや、あそこにいる御仁のおかげか」

「否定はしねえな。けれど、まだまだ付け焼刃な程度だ。あんの野郎に説教するだけでなく、鉄血の野郎に一発ぶん殴るぐらいの実力が欲しいからな!」

(アッシュさんと別れてそれほど経っていないはずなのですが、ここまでとは……あの方々は、一体何者なのでしょうか?)

 

 ミュゼが内心で呟いた面々―――アスベルとシルフィア、レイアはというと、アスベルは残りの本校生徒をまるで子どもでも相手にするかのごとく軽くあしらい、シルフィアは特殊な剣で機甲兵をバラバラにしている光景が見えていた。

 そして、レイアはツインブレードライフルを用いて「テスタ・ロッサ」を持っているシャーリィを完全にあしらっていた。

 

「アハハ! 『テスタ・ロッサ』でも切れないブレードライフルって、初めてだよ! それに、私や<西風の妖精>と同じ臭いを感じる。ねえ、お姉さん。名前を聞いてもいいかな?」

「―――レイア。私の名前はレイア・オルランド。ま、貴女が知っても知らなくても、それは関係ないけれど……お遊びは、もう終いにしよっか」

 

 そう言って、レイアはツインブレードライフルを前方に構え、静止状態からの最高速による加速を以てシャーリィに突撃。<闘神>譲りの力を余すところなく使い、神技グランドクロスの突撃力を応用したSクラフト「シュヴァルツ・ベルゼルガー」。

 その一撃は「テスタ・ロッサ」を容赦なく破壊し、シャーリィはその事実を知る暇もなく気絶と同時に宙高く舞い上がった。

 シャーリィのその様子を興味なさそうに振り返り、他の面々の様子を見やった。

 

「レイア、終わったか」

「まあね。アスベルは……あれは、かわいがりというかいじめでしょ」

「これでも同じ学生の範疇のレベルに収めたんだがな。そんなことを言ったら、シルフィアが相手にした機甲兵なんてバラバラになってるし」

「それを呑気に言えるようになったって、常識って怖いね」

 

 元は戦争とは無縁の世界で暮らしていたのに、慣れというものは実に恐ろしいと思う。すると、シルフィアが剣を収めてアスベルのもとに近づいてきた。

 

「お疲れ様、シルフィア」

「ありがとう、アスベル……ところで、彼女らに何をしたんです?」

「普通に鍛えてやっただけだ。特別なことは例のクォーツ以外何もしていない」

 

 何が起きているのかと言えば、アッシュは仕込み付の得物で相手を確実に戦闘不能にしていき、ミュゼやオーレリアのサポートに徹していた。ユウナはフリッツとエイダの2人相手に1人で無双していて、アルティナは少し暇そうにしつつも小型艇の防御もしていた。

 そして、セドリックとクルトの結果は……膝をついているセドリックと、少しも息が上がっていないクルトの構図が出来上がっていた。

 

「くっ……何故だ。あれからそれほど時間が経っていないというのに……どうしてそこまで強くなれたんだ」

「自分だけの強さではありません。自分は、多くの人から学び、それを糧として努力した結果です。殿下、ここは素直にお引きください。それが一番の利巧な選択です」

 

 クルトは真剣な表情を崩すことなくそう呟いた。だが、それを聞いたセドリックは再び不敵な笑みを見せていた。

 

「なら、仕方がない……出でよ、テスタ=ロッサ!」

 

 緋の騎神がこの場に姿を見せ、セドリックを包む光の球が吸収され、騎士剣を構えた。これには本来味方であるはずの面々まで動揺しているのを見るに、セドリックは力に固執して周りが見えなくなっている。

 それと、兄の死が彼に強い影響を与えているのだろう……自身がやったことだというのに、それで動揺しているのならば初めからやるな、と愚痴りたくもなる。

 すると、アスベルの中に共鳴のような波長を感じる。その元を辿ると、ボックスに放り込んだ1本の騎士剣―――レンハイム邸跡地で手にしたものだった。もしやと思い、アスベルは騎士剣を鞘から抜き放ち、赤黒いプレロマ草が大量に咲く地に突き刺した。

 そこから白い光が溢れ、アスベルだけでなく近くにいたシルフィアとレイアの3人の前に、1人の女性が姿を見せた。見知らぬ人間の姿にシルフィアとレイアは首をかしげるが、アスベルには面識があった。

 

「貴女は……アリエル・レンハイム、でしたか」

「レンハイムって、確かオリビエの……」

『成程。似て異なるゼムリアの、オリビエの友人ですね』

「友人と評していいのかどうかは……」

 

 シルフィアの言いたいことも分からなくはないと思いつつ、アスベルはアリエルに尋ねた。

 

「あまり悠長に話してる時間はありませんが……貴女も力を貸してくれるのですか?」

『はい。私自身に強い力はありませんが、あなた達の力となることができるでしょう』

「ねえ、アスベル。どういうこと?」

「彼女に“核”となってもらい、騎神を作る。俺には既に騎神があるから、2機目は正直手に余る」

「あ、だったら私はいらないかな。シルフィが貰うべきだと思う」

 

 話を聞くに、白と黒の騎神はレイアの持っている騎神とのことだ。それを聞いたアリエルは光の球となり、シルフィアの前に降りてくる。それを見計らうかのように、アスベルはボックスから大量のゼムリアストーンを積み上げていく。これにはレイアやシルフィアだけでなく、アリエルも引きつった笑みを見せるような口調で零した。

 

『あはは……コホン。それでは、シルフィア・セルナートさん。私に名を』

「―――私の剣となれ、水の騎神『シルヴァーレ』」

 

 ベースは『オルディーネ』の形状をより洗練した形となった蒼色の騎神。シルフィアの言葉を聞き終えると同時に、アスベルとレイアは手を上に掲げ、自ら手にした騎神の名を呼ぶ。

 

「―――来い、アクエリオス!」

「―――出番よ、ヴェスペリオン!!」

 

 再びユウナ達がいる場に戻ってくると、3機の騎神の登場にテスタ=ロッサが動揺していた。機甲兵がいない状態で1対3の戦いなど、セドリックも想定外なのだろう。だが、そんな暇を与えてやるほど、アスベルたちは優しくない。

 

「――― 一意専心、夢想覇斬!」

「シャイニング、セイヴァー!」

「食らいなさい、インフィニティ・スパロー!」

「ぐあああっ!?」

 

 完全なオーバーキルと言っても差支えない状況に、完全に出遅れた形となったユウナ達は苦笑を浮かべていた。

 

「あはは……味方で本当に良かったわ」

「確かに。僕たちは幸運だったのだろう」

「否定はできませんね」

「ああ……あの様子じゃあ、鉄血の野郎の首が先に飛んでいきそうだ」

「私の予測でも読めない人たちですね」

「フフ、ぜひ手合わせ願いたいものだな」

 

 その中でオーレリアだけが強さへの渇望を見せたことに対し、ユウナ達が揃って冷や汗を流したのは言うまでもない。

 もはやセドリック達の戦力は全滅に等しい。だが、それでも戦おうとするセドリックに対し、ミハイル少佐は心苦しいと思いながらもセドリックに視線を向けた。

 

「殿下。心苦しくはありますが、現戦力で相手にするのはほぼ不可能になりました。―――撤退を具申いたします」

『……っ!! 分かりました……各員に撤退の支持を。クルトにⅦ組、それに各々方。いずれ借りは返しますよ……僕の手で、必ず』

 

 テスタ=ロッサが飛び立っていくのを皮切りに大人しく撤退していく面々。それを見届けつつ、3機の騎神からアスベルたちが地上に降り立った。その様子を見つつ、シルフィアが尋ねた。

 

「殺さなくてよかったの?」

「今はその時じゃないからな。ミハイル少佐殿や大半の本校生徒は皇太子に已む無く従っている部分があるわけだし……ただ、それ以外は別問題だが」

 

 すると、転移陣が発動して旧Ⅶ組の面々も合流してきた。戦闘が終わった状況を見て、一体何が起きたのかと思っているところに、2人の来訪者が姿を見せた。

 

「お、アスベル! やっと2人以外の顔見知りに会えたぜ」

「おひさ、アスベル。ここに来る途中で軍隊に邪魔されたから、ぶっ飛ばしてきた」

 

 それはスコール・S・アルゼイドとクルル・スヴェンド。元執行者の2人を相手にしたエレボニアの方々はご愁傷様と言わざるを得ない。そして、更に隠形を解除したパンタグリュエルからウォレスとヴィータ・クロチルダも合流してお互いの事情を説明することとなった。

 

「―――似て異なるゼムリア世界の過去から来た、か。いやはや、信じがたい部分もあるが、事実なのだろうな」

「あのオルランドの妹に、アルゼイドの嫡子とはな……『戦鬼』を破った実力に嘘偽りなし、ということか」

「しかも、セルナートって星杯騎士団の総長の名字じゃない。ということは、君も例に漏れなさそうね」

 

 ウォレスやオーレリア、そしてヴィータのセリフの後、視線は自ずとアスベルに向けられた。それを見たアスベルは諦めたように、事実を語る。

 

「アスベル・フォストレイト……いえ、本名はアスベル・フォストレイト・ブライト。この世界ではわかりませんが、元の世界ではカシウス・ブライトの嫡男にあたります」

「カ、カシウス・ブライトって……」

「リベール王国において救国の英雄とされる人物……」

「あの強さも、何故か納得できてしまいますね」

 

 それで納得されてしまうことにどこか腑に落ちない様子のアスベルをシルフィアが嗜めた。

 この世界はアスベル達から見れば未来になるため、素性を明かすことに関しては躊躇いなどなかった。騎神の得物からして八葉一刀流を修めていることは薄々勘付いているのだろう。

 

「とりあえず、ユウナ。特異点打ち込みの作業をしてくれ。またローゼリアさんから小言が飛んでくるし」

「あ、そうですね」

『お主ら、わしを何だと思っておるんじゃ』

 

 いつの間にかいたローゼリア。彼女の口元にポテトチップスの欠片が付いていることをレイアが気付いて笑っているのはともかく、速やかに特異点の打ち込みを済ませ、そしてユウナからの誘いと新Ⅶ組の言葉でミュゼも合流することとなった。

 その間、アスベルは騎神であるアクエリオス、シルヴァーレ、そしてレイアの騎神であるヴェスペリオンを見つつ、レイアに尋ねた。

 

「レイア、ヴェスペリオンの核となってるのは誰だ?」

「えっと、それがね……話していいよ」

『お、許可が下りたか。ったく、こんな娘がいるなんて、あっちの俺が羨ましいぜ』

 

 その言葉でヴェスペリオンの核となっているのが誰かすぐに分かった。そう、<闘神>ことバルデル・オルランドその人であった。順調に原作で亡くなっている面々かつ所縁のあるメンバーが増えていくことに頭が痛くなりそうである。

 

「アスベルの騎神はレーヴェ、私の騎神は父親、シルフィの騎神はオリビエのお母さんか……そういえば、シオンの騎神の核って誰なの?」

「……シオンの母親らしい」

 

 アスベルの炎、シルフィアの水、レイアの時、そしてシオンの幻。これで4機の騎神が増えたことになる。なお、シルフィアとレイアの騎神の動力源は各々の転生特典に基づくものらしいが……それ以上のことは聞くのをやめた。

 


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