No.1009663

英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

soranoさん

第47話

2019-11-08 20:48:45 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1860   閲覧ユーザー数:1615

~東ケルディック街道~

 

「バ、バカな…………精強な正規軍の中でも”最強”と呼ばれていた”第四”がヴァリマールと未知の騎神らしき機体が加勢しているとはいえ、たったあれだけの人数に蹂躙されるだと…………!?これがメンフィル帝国の”力”だというのか…………!?」

一方その頃報告を受けて慌てて戦況を見に来たナイトハルト少佐はリウイ達に蹂躙される第四機甲師団を見て愕然とした後信じられない表情で声を上げ

「…………っ!――――――総員、これよりこの戦場より脱出する。徴収した物資も徴兵予定者達も全て捨て置いて構わん!この戦場から生きて脱出し、帝都に帰還する事を最優先とせよ!」

次々と部下達が討ち取られていく光景やリウイ達、第三機甲師団の裏切り、暴徒と化したケルディックの民達や第四機甲師団の軍人達の対処を思いつけないクレイグ中将は悔しさのあまり唇を噛み締めて無念の指示をした。

「中将閣下…………イエス・コマンダー!すぐに総員に脱出の伝達をしろ!」

「イエス・サー!」

クレイグ中将の様子や指示を聞いてクレイグ中将の気持ちを理解していたナイトハルト少佐は辛そうな表情をした後部下達に指示をして行動を開始した。

 

そして第四機甲師団は脱出行動を始め…………クレイグ中将はナイトハルト少佐と共に”殿(しんがり)”を務めて脱出の指揮を執っていた。

 

「中将閣下、そろそろ我々も脱出を…………!」

「うむ…………――――――!ナイトハルト!」

シュピーゲルを操縦するナイトハルト少佐の通信にヘクトルを操縦するクレイグ中将は頷いたが、脱出行動をする自分達を見つけたヴァリマールが自分達に迫っている事に気づくとナイトハルト少佐に警告の声を上げ

「ヴァリマール――――――シュバルツァーか……………………ッ!」

クレイグ中将の警告を聞いて機体を振り向かせて自分達に迫ってきている機体がヴァリマールである事に気づくとナイトハルト少佐が操縦するシュピーゲルとクレイグ中将が操縦するヘクトルは身構え

「ここから先は通さんぞ、シュバルツァー!」

「!その声は…………ナイトハルト少佐ですか。という事はもしかして、隣のヘクトルの操縦者はクレイグ中将ですか?」

ヘクトルとシュピーゲルと対峙したヴァリマールの中にいるリィンはシュピーゲルが聞こえてきたナイトハルト少佐の声を聞くと驚いた後、すぐに表情を引き締めてナイトハルト少佐に問いかけた。

 

「――――――その通りだ。内戦以来になるな、リィンよ。お主がエリオット達と決別してメンフィル・クロスベル連合側についた事には深い事情がある事を聞いてはいるが…………我らが祖国であるエレボニアに侵略し、多くの戦友達を葬ったメンフィル・クロスベル連合の暴挙は帝国軍人として決して許せぬ!今回の戦争、例え”義”はそちらにあり、帝国政府の思惑が関係しようと、祖国であるエレボニアを侵略者の魔の手から守り、皇帝陛下達の、そしてエレボニアの為に”ヨルムンガンド作戦”を成就させる事が我ら帝国正規軍の役目だ!」

「中将閣下…………」

ナイトハルト少佐はクレイグ中将がメンフィル・クロスベル連合との戦争や帝国政府に思う所があってもなお、軍人としての役目を全うしようとしている事を知ると複雑そうな表情をし

「………………内戦で人質に取られたフィオナさんを見捨てようとした件を考えると、クレイグ中将はゼクス中将のようにメンフィル・クロスベル連合側にはつかないと思っていました。――――――ならば俺達の目的の為に、貴方達もルーファスさんのように死んでもらう――――――クレイグ中将、ナイトハルト少佐!」

クレイグ中将の決意を知ったリィンは静かな表情でかつての出来事を思い返しながら呟いた後クレイグ中将とナイトハルト少佐を討つ覚悟をした。

「若造がよく吠えた!――――――この”紅毛のクレイグ”の首を簡単に取れると思うな!」

「それはこちらのセリフだ、シュバルツァー!帝国軍人として、そしてトールズ士官学院の教官として、トールズ士官学院生でありながら侵略者側についた”裏切り者”は我が剣で始末をつける!」

そしてリィンの宣言に対してクレイグ中将とナイトハルト少佐がそれぞれ戦意を高めてそれぞれが操縦する機甲兵の武装を構えたその時

「よく決意しました――――――”灰色の騎士”。」

上空から状況を見守っていたアルグレオンが降下してヴァリマールの隣に着地した!

 

「サンドロット卿!?」

「!あの銀色の機体は…………!」

「銀色の”騎神”らしき存在か…………!しかも今の声…………まさか操縦者は女性なのか!?」

アルグレオンの登場に双方はそれぞれ驚き

「幾ら性能は機甲兵を上回る騎神であろうと、二対一――――――それも、操縦者が”達人”クラスが相手では貴方でも厳しいでしょう。――――――私も加勢致します。」

「ありがとうございます、サンドロット卿…………!」

リアンヌの加勢の申し出を聞いたリィンは感謝の言葉を述べた。

 

「銀色の騎士を駆る者よ――――――貴様は一体何者だ!?」

「先程シュバルツァーが口にした”サンドロット卿”という名前や、声が女性である事からして、まさかかの”槍の聖女”と何か関係があるのか!?」

一方リアンヌやアルグレオンの正体がわからないクレイグ中将とナイトハルト少佐はリアンヌに問いかけ

「我が名はリアンヌ・ルーハンス・サンドロッド。”英雄王”リウイ・マーシルン並びに”聖皇妃”イリーナ・マーシルンを守護する”聖騎士”也。そしてこの銀の騎士の名は”銀の騎神アルグレオン”。」

「な――――――ヴァリマールやオルディーネ以外の”騎神”だと!?」

「それも名は”槍の聖女”とほとんど同じとはな…………例え貴様が伝説の英雄であろうと、帝国軍人としてこれ以上貴様らの好きにはさせんぞ――――――メンフィル・クロスベル連合!」

「意気や良し。共に参りましょう――――灰色の騎士!」

「はいっ!」

そしてリアンヌの号令に力強く頷いたリィンはクレイグ中将とナイトハルト少佐との戦闘を開始した。それぞれ”達人”クラスの使い手であるクレイグ中将とナイトハルト少佐が操縦する機甲兵達は手強かったが、伝説の英雄たるリアンヌと現代の英雄にして今も急成長し続けるリィンの前では敵わず、それぞれ戦闘不能にまで追い込まれた。

 

「――――――勝負ありましたね。」

「ええ…………サンドロット卿の加勢が無かったら、もしかしたら立場は逆だったかもしれませんね…………」

それぞれ戦闘不能になった機甲兵達の様子を見て判断したリアンヌの宣言にリィンは頷き

「ハァ…………ハァ…………ぐっ…………伝説の英雄と現代の英雄の力…………まさかこれ程とはな…………」

「クッ…………中将閣下、自分が囮になりますのでせめて閣下だけは――――――」

クレイグ中将共々満身創痍の状態だったナイトハルト少佐が自らを犠牲にしてクレイグ中将を逃がそうとしたその時!

「ハッ、取り込み中の所悪いが邪魔させてもらうぜ!」

何とオルディーネが空から勢い良く降下し、ヘクトルとシュピーゲルを庇うように二体の前に着地し、ヴァリマールとアルグレオンと対峙した!

 

「お主は…………」

「バカな!?貴様は死んだのではなかったのか――――――アームブラスト!」

「オルディーネ――――――”蒼のジークフリード”か…………!いや、でもさっきの口調は…………!?」

「――――――どうやら既に生前の記憶が戻っているようですね、蒼の起動者(ライザー)。」

オルディーネの登場にクレイグ中将とナイトハルト少佐と共に驚いたリィンだったが、オルディーネから聞こえてきた口調の様子でオルディーネを操縦しているのはジークフリードではなくクロウの可能性である事に気づくと信じられない表情をし、リアンヌは静かな表情で推測を口にした。

「ああ、”黄昏”の発動によって記憶が戻るというクソッタレな条件のお陰でな。」

「………そうだったのか…………ハハ…………何はともあれ、クロウの記憶が戻った事はよかったよ。…………ちなみにもしかして、ジョルジュ先輩やアリサのお父さんも元に戻っているのか?」

リアンヌの問いかけに対して苦笑しながら答えたクロウの答えを聞いたリィンは複雑そうな表情をした後苦笑し、ある事を訊ねた。

 

「いや…………ジョルジュやアルベリヒは俺と違って、”最初から向こう側”で”逆に今の状況が元に戻っている状況”で、アルベリヒに関してはアリサの親父さんがいなくなった時期あたりから”アルベリヒに戻っている”状況だそうだ。」

「そうか…………」

「黒の工房に関する貴重な情報を提供してくれた事には素直に感謝します。――――――ですが、我々がエレボニア帝国軍と敵対している状況と理解していて、乱入し、エレボニア帝国軍の関係者を守ろうとすることを考えると貴方は”鉄血宰相”側なのですか、蒼の騎士よ。」

クロウの答えを聞いたリィンが複雑そうな表情をしている中、リアンヌは静かな口調で問いかけた。

「ハッ、別に俺はあの野郎に手を貸している訳じゃねぇ。”煌魔城”でリィン達に負けた時から、Ⅶ組(あいつら)側に戻った――――――いや、戻る予定のつもりだ。」

「!!…………なるほど…………アリサ達が今の状況を知れば、間違いなく止めようとするだろうから、クロウはアリサ達の代わりにクレイグ中将達を討とうとする俺達を止めようとしているのか。」

クロウの話を聞いてクロウの行動を察したリィンは静かな表情で呟いた後複雑そうな表情を浮かべた。

 

「ああ、記憶が戻った当初は今更Ⅶ組に戻るなんて格好つかねぇ真似をするつもりはなかったんだが、超リア充シスコン野郎の後輩のせいで、トワやゼリカに加えて後輩達が厳しい状況になっている話を聞いたから、仕方なく戻る事にしたんだよ。」

「そうか…………それにしても、誰が”超リア充シスコン野郎”だ?俺は”シスコン”でもないし、”リア充”とか意味不明なんだが…………」

リィンの指摘に対して苦笑しながら答えたクロウはジト目になってヴァリマールを見つめ、クロウの言葉に対して複雑そうな表情をしたリィンはすぐに気を取り直してかつてのクロウに対する態度でクロウに接していた。

「コンニャロ…………今の状況になってもなおまだ”自覚”していないとか、”そういう事”に関しては全然変わっていねぇみたいだな。――――――まあいい。ナイトハルト教官、エリオットの親父さん!後輩達に免じて今回だけ助けてやるよ!さっさと逃げなぁ!」

「すまん、アームブラスト…………!」

「恩に着る…………!」

そしてクロウの指示によってクレイグ中将とナイトハルト少佐が操縦する機甲兵達は撤退し

「さぁてと…………見ての通り選手交代だ。どこからでもかかってきな!」

「…………………サンドロット卿、勝手な申し出とは思いますがオルディーネとの一騎打ちをさせてもらえませんか?」

「フフ、因縁の戦いに水を差すような無粋な真似はしませし、陛下達が貴方達を見つけても陛下達にも介入させませんので安心して戦いなさい。――――――私はこの場で見届けさせて頂きます――――――”灰”と”蒼”の”相克”を。」

オルディーネが双刃剣を構えて宣言すると、リィンはリアンヌに自分が操縦するヴァリマールとクロウが操縦するオルディーネの一騎打ちをする事を頼み、リィンの頼みに対してリアンヌが静かな笑みを浮かべて答えると周囲の地面から謎の光が発生し始めた!

 

「これがサンドロット卿の話にあった”相克”…………ですが、サンドロット卿の話では今の状況は”真の条件”を全く満たしていないのに、一体何故…………」

「ま、そこのところは”騎神”が三体揃っている事に加えて”蹂躙戦”とはいえ、この辺りはさっきまで激しい闘争が繰り広げられた上、おまけに騎神二体と達人(マスター)クラスが操縦する機甲兵達のガチバトルがあったから、準備が整ったんじゃねぇのか?」

戸惑っているリィンに対してクロウは自身の推測を答えた後オルディーネに双刃剣を構えさせ、それを見たリィンもヴァリマールに太刀を構えさせた。

「そいつがヴィータの話にあったゼムリアの武器を超える武器か。ったく、そんなとんでもない代物まで用意できるとか”工匠”って連中はどんなチート技術者連中なんだよ?」

「ハハ、それに関しては同感だ。――――――ちなみにセティ達の話では、”工匠”は”ゼムリアストーン”を人為的に作る事もできるそうだ。…………まあ、それを知った時の俺とセレーネは色々と複雑な気持ちだったけどな。」

「マジかよ…………聞かなきゃよかったぜ。まぁ、いい。――――――遠慮は無用だ。存分にやり合うじゃねぇか!」

リィンの答えを聞いて冷や汗をかいて表情を引き攣らせたクロウだったがすぐに気を取り直して戦意を高めた。

 

「………………………………」

「…………?おい…………どういうつもりだ?」

しかし自分の宣言に対して何も返さないリィンの様子が気になったクロウは眉を顰めて問いかけた。

「…………クロウ。”相克”は真に騎神同士の奪い合いならば、”起動者”――――――いや、”不死者”が負けたらクロウは今度こそ消えるんじゃないのか?」

「………………………………」

リィンの問いかけを聞いたリアンヌは目を伏せて重々しい様子を纏って黙り込み

「ま、その辺りはやってみなきゃわからないだろ?大体お前、闘り合う前からなに勝ったつもりでいやがるんだ。肚を括れや――――――”後輩”。”世界”の命運が決まろうっていうこの状況で…………”終わっちまった”ヤツ相手にウダウダ足踏みしてる場合かよ!?」

「っ…………!いいだろう――――――だが訂正してもらうぞ。俺達の仲間で、先輩で、常に先を行っていたライバルを…………そんな安い言葉で片づけたことを!」

「ハッ…………上等だ。かかって来いや――――――リィン!」

クロウの激励を聞いたリィンは唇を噛み締めた後決意の表情で戦意を高め、リィンが覚悟を決めた事を知ったクロウは不敵な笑みを浮かべた。

「おおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

「らああああああああああああああっ!!」

そしてヴァリマールとオルディーネは一騎打ちを開始した!

 

「そらっ!!」

「……ッ!」

オルディーネとの戦闘を開始したヴァリマールは先制攻撃代わりに放ってきたオルディーネの攻撃を太刀で受け止めてダメージを最小限にし

「一の型―――閃光斬!!」

「グッ!?」

オルディーネの攻撃が終わると反撃代わりの連続攻撃を叩き込んだ。

「喰らえっ!!」

「甘い!」

オルディーネが放ったクラフト―――ブレードスローに対してヴァリマールは機体を側面へと傾けて回避し

「まだ終わらないぜ!?そらっ!!」

投擲したダブルセイバーを回避されたオルディーネはヴァリマールへと向けて加速しながら戻って来るダブルセイバーを受け取ってヴァリマールに突きを放った。

 

「させるか!」

「何っ!?」

しかしヴァリマールは放たれた突きを太刀で受け流してオルディーネの側面へと回り

「そこだっ!!」

「グッ!?」

反撃を叩き込んだオルディーネを怯ませた。

「燃え盛れ……滅!!」

側面からの攻撃によって怯んでいるオルディーネ目掛けてヴァリマールはクラフト―――龍炎撃を放ち

「!!」

ヴァリマールの更なる追撃に気付いたオルディーネは間一髪前方へと加速して回避した。

 

「へへっ、これに耐えられるか……っ!?」

ヴァリマールと距離を取ったオルディーネは溜めの構えでダブルセイバーを構え

「秘技――――」

対するヴァリマールは抜刀の構えでオルディーネの攻撃に備えた。

「クリミナルエッジ!!」

「百烈桜華斬!!」

そして互いに突撃した2体の機体は強烈な一撃を放つと、オルディーネが扱っているゼムリアストーン製のダブルセイバーを遥かに超える硬さや性能を持つヴァリマールの太刀が勝っていた為、攻撃がぶつかり合った瞬間ヴァリマールの攻撃がオルディーネを除けぞらせた。

「何!?」

「まだだっ!ハアッ!!」

「グッ!?」

オルディーネの体勢を崩したヴァリマールは更に追撃をしてオルディーネにダメージを与え

「クッ……お返しだっ!―――崩爆華!!」

対するオルディーネはダメージに苦しみながらもダブルセイバーに闘気を溜め込み、ヴァリマールに反撃を叩き込んだ!

「うあッ!?」

オルディーネの放った反撃によってヴァリマールは仰け反り

「そこだっ!隙だらけだぜ!」

「うっ!?」

その隙を逃さないかのようにオルディーネは更なる追撃をヴァリマールに叩き込んだ。そして二体の騎神は一端仕切り直しをするかのように互いに距離を取って対峙した。

 

「ゼムリアストーンの武器を遥かに超える”工匠”が造った武器…………話に聞いていた以上にとんでもない武器のようだな。ったく、そういう意味でも俺とお前は立場は逆になっちまったようだな。」

「…………確かにⅦ組の件も含めるとそうなるな。だが訂正してもらう。トールズに来る前にできたメンフィル帝国軍の訓練兵時代の俺の仲間達は”V”や”S”のように、目標がなくなったからといって自分達の人生を諦めて”死”を望むような人達じゃないぞ。」

「チッ…………その点に関しては否定できない上、”S”に関してはお前に救ってもらったんだから、反論できないのが痛い所だな。――――――つーか、それ以前にヴァルカン達とお前のメンフィル帝国軍時代にできた仲間の連中は”立場”とか全然違うから比較対象にならねぇじゃねぇか!」

リィンの指摘に対して舌打ちをして苦笑しながら答えたクロウだったが、すぐにリィンに反論した。

「ハハ、それもそうだな。…………」

クロウの反論に対して苦笑したリィンは少しの間考え込んである事を思いつくと、ヴァリマールを操縦してヴァリマールの太刀を納めた。

 

「おい、何の真似だ?」

「――――――今日はこのくらいにしておく。これでトールズで初めて戦った時の貸し借りは無しだ。」

「!コンニャロ…………あの時の事を未だに根に持っていやがったのか。へっ…………お前こそ、50ミラの利子の返済であんだけしつこかったんだから、当然俺もあの時の貸しに対する”利子”をしつこく請求させてもらうぜ!――――――かつてのお前のようにトワやゼリカ、それにⅦ組と共にな。」

リィンがトールズ士官学院で初めて戦った騎神同士の戦いの件を持ち出したことに驚いた後ジト目になって呟いたクロウは口元に笑みを浮かべてリィンに呼びかけ

「!ハハ…………やれるものなら、やってみるといいさ。」

クロウの呼びかけに目を見開いたリィンは苦笑しながら答えた。

「ハッ、今の内にせいぜいⅦ組の連中――――――特にアリサにどう謝るか悩んでおけ!後、トワが言っていた俺の掃除当番にもお前も絶対お巻き込んでやるからな!――――――ああそれと、”不死者”の件だが、ヴィータがマクバーンからもらった”焔”を”不死者”だから機能していない心臓に同化させて心臓の代わりにしているから、少なくても”相克”でオルディーネが誰かに奪われても俺自身は消える事はないとヴィータが保証していたぜ!」

「へ…………」

そして口元に笑みを浮かべて自分の言葉をリィンに伝えたクロウはオルディーネを飛び上がらせてその場から飛び去った。

 

「…………………あの、サンドロット卿。今のクロウの話は一体どういう事なのかサンドロット卿はわかるでしょうか?」

オルディーネが飛び去った後少しの間呆けていたリィンは我に返った後リアンヌに問いかけ

「フフ、彼の話が本当であれば、恐らく深淵殿はマクバーンから授かった”神なる焔(カクヅチ)”を”不死者”である蒼の騎士の止まった心臓に埋め込めることで”仮初めでありながらも本物の命”を宿らせたのでしょう。――――――わかりやすい例で例えるのであれば神々に選ばれし者達が神々から”神核”を授かり、”神格者”となる事や動かない機械に動力源となる物を埋め込むようなものでしょうね。…………不死者の肉体にそのようなものを宿らせた事例は聞いたことがありませんから、これから彼がどうなるかわかりませんが…………あくまで私の推測になりますが、少なくても彼は”通常の人間よりは長い生の時間”を過ごす事はできると思われます。何せ彼を生かしている源はあのマクバーンの”焔”なのですから。」

「あ……………………ハハ…………再会して早々騙すなんて、早速やってくれたな、クロウ…………!」

リアンヌの推測を聞いて呆けた声を出したリィンは安堵の笑みを浮かべながらクロウの顔を思い浮かべた。

「ふふっ………第四機甲師団も完全に撤退したようですし、我々もそろそろ帰還しましょう。」

「はい………っ!」

そして自分の様子を微笑ましそうに見守っていたリアンヌに呼びかけられたリィンはヴァリマールを操縦してアルグレオンと共にヴァリアントへと帰還した。

 

 

第四機甲師団撤退後…………メンフィル・クロスベル連合とヴァイスラント決起軍、そして第三機甲師団は協力して事態の収拾にあたった。

 

クロイツェン州全土の町や都市で起こった火事を消火し、ケルディックの暴動を治めて一段落終えると、メンフィル・クロスベルからはそれぞれの”総大将”であるリウイとギュランドロス、ヴァイスラント決起軍からは”総主宰”であるミルディーヌ公女がゼクス中将と対面し、今後の事についての話し合いを始め…………話し合いの結果、第三機甲師団も正式にメンフィル・クロスベル連合に協力する事になり…………更にアルフィンとアルフィンの”主”であるリィンから許可を取り、ヴァイスラント決起軍と第三機甲師団は連合を組んでかつての”紅き翼”のようにアルフィンを旗印とした”ヴァイスラント新生軍”へと名を改め、その存在とエレボニアの他の機甲師団や領邦軍にも帝国政府打倒の為に結成したヴァイスラント新生軍――――――通称”新生軍”への加入を呼びかける呼びかけをメンフィル・クロスベル連合の協力の元、世間に広まることとなった。これらの出来事により三国を降し、大陸に覇を唱えるオズボーン宰相を重用する現エレボニア皇帝ユーゲント三世を支持する帝国政府と、衰退や滅亡を覚悟してでも全ての元凶たる帝国政府を打倒し、エレボニアを正そうとするアルフィンを支持するヴァイスラント新生軍の対立で皮肉にも事実上の”獅子戦役”の再来となった。

 

帝国政府によるクロイツェン州の”焦土作戦”と”ヴァイスラント新生軍”の結成はエレボニアだけでなく、西ゼムリアの各国家、自治州にも衝撃を与える事になり、それらの出来事によってメンフィル・クロスベル連合に加えてリベールを始めとした西ゼムリアの各国家、多くの自治州に加えて本来ならば戦争になれば”中立”の立場に徹する事が最も求められている”七耀教会”の総本山であるアルテリア法国もエレボニア帝国政府に対する非難の声明を出し…………その事によってエレボニア帝国政府の国際的立場は孤立し、事実上”四面楚歌”の状況となった。更に”明日は我が身”である事に恐怖を抱いた民達がエレボニア以外の国や自治州へと脱出したり、第三機甲師団のように帝国政府の所業に反感を抱く他の帝国正規軍の軍人達の中には所属している部隊や酷い時は部隊ごと機甲師団から脱走して”ヴァイスラント新生軍”に合流する者達も現れ始め…………それらの予想外の出来事の収拾に帝国政府は奔走する事になり、ヴァイス達の宣言によって陰りを見せていた『国家総動員法』にも更なる大きな陰りの影響が出る事で”ヨルムンガンド作戦”の見直しの恐れの可能性まで出始める事となった。

 

また…………メンフィル・クロスベル連合とヴァイスラント新生軍も”焦土作戦”によって受けたクロイツェン州の復興の為に今後の侵攻ルートやメンフィル本国からの物資の追加の補給や援軍等、様々な計画を修正する必要が出てきた為、最低でも1週間は本格的な侵攻は中止せざるを得ない状況となった事で、帝国政府が行った”焦土作戦”は双方”痛み分け”という結果となった。

 

なお、今回のメンフィル・クロスベル連合、第三機甲師団の襲撃によって精強で知られているエレボニア帝国正規軍の中でも”最強”と名高い第四機甲師団の被害は死者、脱走者、反逆者を合わせて全体の5割を失う事になるという大打撃を受けてしまった――――――

 

 

 

という訳で前話のあとがきで予想できた人もいたかと思いますが、中途半端な結果に終わりましたがここでまさかのヴァリマールとオルディーネの一騎打ちでしたwクロウの寿命に関しては若干ご都合主義か?と思いましたがそこはマクバーンの”カクヅチ”だからという理由で納得してもらえればと(コラッ!)なお、次回からはしばらくⅦ組側の話になり、リィン側の話は第二部のⅦ組側の話の間に1~2話挟んで、第二部のⅦ組側の話が終わった後そのままⅦ組側が主でリィン側が少しだけ活躍する予定の断章に突入する予定です。


 
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