No.100875

真・恋姫無双「三国放浪記」第七話『異常』

シンジさん

どうも、劉備一行も加えて早速戦闘です。
でも、書くのが難しくて少し端折ってしまいました。
そこまで期待せずにご覧ください。

2009-10-14 00:26:41 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:4530   閲覧ユーザー数:3779

俺たちは今街に向かって来ている黄巾党を討伐するべく、銀と風と稟の三人を街に残して出陣した。

銀が言った『釣り』作戦とは、まず、餌として、待ち伏せしている星と関羽さん率いる兵百人で、獲物である黄巾党に一当てして合図の銅鑼が聞こえたら後退する。それで針として、張飛ちゃん率いる本隊(ちなみに俺と劉備さんもここにいる)を刺す、というか当てる。統制の取れなくなった獲物である黄巾党は瓦解し逃げようとする。それを網として、白蓮率いる白馬隊で逃げ場を塞ぐ。以上が銀こと軍師・徐庶元直の立てた作戦だった。風も稟も一応賛成した。・・・・・・でも作戦の立案者が街に残るって駄目だろ、ふつー。

そんな訳で今俺は本隊に劉備さんと張飛ちゃんといっしょにいる。

 

「ぶー・・・なんで鈴々は愛紗たちみたいに敵に突っ込んじゃ駄目なのだー?」

 

張飛ちゃんが駄々をこねている。

 

「いや、張飛ちゃん、君の役目は関羽さんや星たちを追いかけてきた敵に突っ込むことなんだけど・・・。」

 

「はにゃ?そうなのか?」

 

「あははー、そうだよ、鈴々ちゃん。鈴々ちゃんが勝利の鍵を握ってるんだからね。」

 

「うん!鈴々、頑張るのだ!」

 

うん、すごく頼もしい。

 

「でも、本当に来るのかな?」

 

「確かにそうなんだよな・・・。」

 

今、俺たちが配置についている場所は全て銀が指示したものだ。黄巾党がここに来るかどうかもはっきりしていなかったのにも関わらず、銀ははっきりと迷いなく、この場所を指定した。関羽さんだけじゃなく、白蓮も疑問を口にしていた。でも・・・・・

 

「大丈夫。銀の言った通り、きっと来るよ。」

 

何故か俺にはその言葉を信用できた。

 

「・・・そうですよね。きっと来ますよね!」

 

「そうなのだ!来てくれなきゃ困るのだ!!」

 

「うん、確かに来なきゃ困るな。張飛ちゃんの言う通りだ。」

 

俺は張飛ちゃんの頭をなでる。

 

「にゃははー。」

 

「そういえば、気になってたんですけど・・・。」

 

「ん?どうかした?」

 

「北郷さんの服ってピカピカ光っててすごいですよね。見たことない生地みたいだし。」

 

そういえばマントの下は制服だったな。まあポリエステル製の制服だから、この世界の人からしたら、見たことないのも当然だ。

 

「もしかしてどこかの貴族だったりします?」

 

「いや、俺は貴族とかじゃないよ。ほんと。」

 

「そういえば、お兄ちゃん、どうして真名がないのだ?」

 

「うーん、俺の世界、というか国では真名っていう概念がなかったからな。俺は二月ぐらい前にこの国に何故か来ていて、それから銀や星たち四人と出会ってこの国を旅してたんだ。」

 

「あっ!じゃあ、もしかして・・・北郷さんって、『天の御遣い』様じゃないですか?」

 

「きっとそうなのだー!」

 

「へ?天の御遣い?」

 

どこかで聞いた気が・・・・・・。

 

「丁度その頃に管路ちゃんっていう占師が言ってたんです。天の御遣いが現れてこの大陸を平和にするって。」

 

ああ、そういえばあの四人に出会ったとき、同じようなことを言っていたな。

 

「その人は光り輝く服を着ているって言っていましたし、間違いないですよ!」

 

・・・はたして、どうなんだろうか?その予言を聞く限り、その天の御遣いが俺である可能性はあるし、この世界に来たとき、四人と初めて出会ってその話を聞いたときにそう名乗ってもおかしくはなかった。けど―――

 

『・・・ぅぉぉぉ』

 

「!」

 

「ほんとに来たよ!」

 

――side黄巾党

 

「へへへ、この人数なら、あの太守が来ても勝てるだろ。」

 

例え、相手が訓練された軍だとしても、この数の暴力には勝てないということは、戦いの経験の浅い下っ端の俺でもわかる。これでしばらくは楽に生きて行けるだろう。

 

「おい!ちょっと待て!全員あれを見ろよ!」

 

その声の方を見ようとするが、俺のいる位置からじゃ、何があるのかさっぱり見えない。

 

「金目のモンとか食い物をわんさか持ってそうな商人たちがいるぜ!」

 

なにっ!ついてるぞ!思わず笑みが浮かぶ。

 

「女もいるぞ!!」

 

はは、本当についてる・・・!

 

「よっしゃ!野郎共!じゃあまず、そいつらから狩っていくぞ!」

 

「「「「おおおおぉ!!」」」」

 

頭の言葉に俺たちは雄叫びをあげ、獲物であるその商人の方に向かって走り出した。

 

――side愛紗(関羽)

 

今、私は趙雲と率いている兵達と共に、徐庶に指示された場所である、両脇が切り立った崖のようになっている岩場に身を隠すように待機している。

 

「・・・・・・」

 

「どうした?なにやら不満気のように見えるが?」

 

確かに趙雲の言う通り、不満とは言わないが機嫌は悪い。その理由は当然あの徐庶という者のことでだ。

 

「はっきりと言おう。私はあの徐庶という者を信じることができない。何故あやつはここに我らを待機させているのだ?確かに策としてはいいのだろうが、何故この場所に黄巾党の連中が来ると断言できる!?もしここに黄巾党が現れなかったらどうするのだ!?それに立案者であるのにもかかわらず、街に残るとは・・・それでも武人か!?」

 

もしかすると、奴は黄巾党と繋がっているのではないかとさえ思えてくる。だが、それを口に出すのはやめておいた方がいいだろう。

 

「・・・まあ、お主の言うこともわかる。確かに私も何故銀が前線に来なかったのか、と疑問に思っている。が、しかし、ここに黄巾党が来ることは間違いないだろうな。」

 

「?何故そのように断言できるのだ?」

 

「なに、お主より私の方が銀との付き合いが長いというだけのことだ。あやつは冗談は言うが、嘘はあまりつかん。それに銀の情報収集能力は凄まじいものがあるし、行動力も半端ではない。」

 

・・・・・・そのような者には見えなかったが・・・。

 

『・・・ぅぉぉぉ・・・』

 

「!?・・・本当に来たのか!?」

 

「ふむ、だが、何か様子がおかしい・・・。」

 

そうだ。何故奴らは走っているのだ?どこかの街や邑を襲うとしても、ここからだとまだ少し距離がある。走るにしてはまだ機が早過ぎる。かといって、我等に気付いているということもなさそうだし・・・。まさか・・・。

 

「・・・何かを追っているのか?」

 

「ぅぁぁ・・・」

 

「!?あれは・・・」

 

悲鳴のような声を聞き、目を凝らして黄巾党の集団がいる場所の前方を見てみると、そこには商人らしき者達が走ってきていた。いや、逃げているのだ。そしてそれを黄巾党の連中が追いかけているのか。

ふと、先程の趙雲の言葉が頭によぎる。

『それに銀の情報収集能力は凄まじいものがあるし、行動力も半端ではない。』

まさか、あの商人達が黄巾党が通るだろう場所にいて、さらに目をつけられるだろうことも知っていて、そしておそらくこの場所に向かって逃げてくるだろうと予想して、ここで私たちに待ち伏せをさせていたとでもいうのか?

 

「・・・!!」

 

そう思ったとき、私は徐庶という者に対して、恐ろしいとも思ったが、それ以上に怒りを感じていた。力なき人々を守るための者が、その守るべき人々を囮に用いるなどと、そんな事を、力なき人々を守るために立ち上がった私たちに認められるはずがない!

 

「くっ!!」

 

今はこの場にいない者への怒りより、目の前の商人達を助けなければ・・・!私はそう思い、飛び出そうとする。

 

「ちょっと待て、関羽よ!」

 

それを制する趙雲。

 

「止めるな、趙雲!」

 

「いいから!・・・何かあの商人達おかしいぞ。あれだけの大人数にも関わらず、気配がほとんどないなどありえん。」

 

「何!?」

 

趙雲に言われてから気付いたが、確かにあの集団からは人の気配が感じられない。いや、全くないというわけではないのだが、それでもおかしい。ただの商人に気配を絶つなどという技を使えるとは思えないし、もしそれが出来たとしても、賊集団に追われている最中にそんな事をする必要性は全くない。

 

「・・・存在が希薄というより、むしろ気配がちょうど人一人分程しかないような・・・。」

 

「だが、確かに一人ひとりの声がそれぞれ聞こえるぞ。」

 

?・・・何か、今の自分の言葉に違和感が・・・

 

「どうした?関羽よ。」

 

「いや、何か今の言葉に違和感を覚えたのだが・・・」

 

「ふむ、確かに私も何か違和感を覚えたが・・・はて?」

 

なんだ?どこがおかしかったのだ?私の言葉と状況は確かに一致している。確かに一人ひとりの声がそれぞれ聞こえている・・・。

 

『――一人ひとりの声がそれぞれ――』

 

「!そうか!」

 

「?違和感が何か分かったのか?」

 

「ああ。何故、あの状況であの者達の声は『一人ひとり』、しかも『それぞれ』でしか聞こえてこないのだろうか?」

 

「!!なるほど、そういうわけか。」

 

そう、普通、人が悲鳴をあげる時、周りを気にする余裕がない。特に他の者が悲鳴をあげている時、その悲鳴に自分の悲鳴がかぶらない様に、などという配慮をする者などいない。一人の悲鳴を切っ掛けとして大勢が悲鳴をあげることはあっても、あの大人数で、しかも追いかけられ始めてから結構な時間がたっているだろうにもかかわらず、黄巾党の雄叫びの他に一度に聞こえてくる声は、毎回違う声ではあるが、商人一人の声だけだ。いったいどういうことなのだ?そう思ったのは私だけでないようで、趙雲も黄巾党よりあの商人を注視している。後ろから追いかけてくる黄巾党から、必死に逃げている商人達。・・・普段なら間違いなく助けに向かっているだろうが、今は一人の将として、そして一個人としても、この違和感が何か分からないと助けにいけない、と思っている自分に少し驚いている。

 

「・・・・・・関羽よ。」

 

?どうかしたのだろうか?

 

「・・・何故、あの者達は他の者達と離れないのだと思う?」

 

「離れない?はぐれると危険だからではないのか?」

 

「いや、そういうことでない。あの商人達が全員必死になって逃げているのにも関わらず、何故あの者達は離れていかないのだ?あの者達の足の速さが全て同じなどという事はありえん事であろう。」

 

言われてみれば確かにそうだ。訓練された軍でも、混乱すれば足並みが崩れ、纏まって行動することは出来ない。だがあの商人達は混乱しているように見えるが、それでも誰かが後ろから抜かそうとしたり、誰かが突出していることでもない。・・・さらに違和感が増してしまった。

 

「よく見れば、黄巾党との距離も絶妙・・・。まさか・・・いや、ありえるな。」

 

趙雲は何か納得しているようだが、私には何がなんだかわからないままだ。

 

「あれを助ける必要はないようだ。関羽よ、あれが我等の横を通った時に討って出るぞ。」

 

「?どういうことだ?」

 

「いやなに、私はあれと同じようなものを見たことがあるというだけの話だ。」

 

「いや、だから私にもわかるようにだな・・・」

 

「無駄口を叩いている暇はないぞ。」

 

気付けば、あの商人達は私たちがいる場所のすぐそこまで来ていた。・・・黄巾党との距離は、部隊を展開し、名乗りをあげるにはちょうど良いくらいで黄巾党が食いついてきそうな距離だ。そして商人が私の横を通ったとき、慌て混乱している商人達は一人としてこちらに気付いた様子はないのにもかかわらず、私はその内の誰かと目があった。それを見た時、私は全てとはいかないが、ある程度納得し、趙雲とともに黄巾党の前へ躍り出た。

その者は、真紅の眼をしていた。

 

――side一刀

 

黄巾党と雄叫びが聞こえてから少しして、星たちが戻ってきた時のために中央をあけて道の両脇で待機していると、前方から星たちでもなく、かといって黄巾党でもない誰かが一人、すごいスピードでこっちに向かって走ってきた。それはもう、馬ぐらいの速さで。そいつは見覚えのあるマントとフードをかぶっていて、今は街で待機しているはずの人だった。

 

「銀!?なんでここに!?というかなんで向こうから!?」

 

「質問が多いぞ、一刀。それより準備ができてるならそろそろ銅鑼を鳴らせ。丁度頃合だろう。」

 

「わ、わかりました。」

 

劉備さんはそういって、兵に指示をだす。そして銅鑼の音が響いた。

 

「まあ、私は直接戦闘に関わる気はないが、軍の鼓舞とお前の護衛はするから安心しろ。」

 

「いや、俺は別に護衛は・・・」

 

「へぇ、その重さの鎧を着て、十分に戦えると?」

 

うっ!忘れてた。確かにこの重さで戦うのは無理かもしれない。というかまだ無理だな。

 

「ところで、凶器「張飛ね。」は心配する必要もないだろうけど、九尾「劉備ね。」はどうなんだ?」

 

「えーっと、私は、そのー・・・」

 

「お姉ちゃんはだめだめなのだ。」

 

「ううう、そんなはっきり言わなくてもー・・・。」

 

「それじゃ、お前も一刀と一緒に守ってやろう。」

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

そんな感じで話していると、前方から星たちが後退してきた。

銀はタイミングを見計らって味方に鼓舞をする。

 

「お前ら、よく聞け!!これより我らは黄巾党とぶつかる!相手は倍以上の大軍だ!が、恐れることはない!相手は何の訓練も受けていない烏合の衆、そしてこの場所では奴らの数の利を十分に発揮できない。だが、お前らは日々訓練を受けてきた精兵であり、そしてこちらには一騎当千の将たちがついている!!この戦いで負ける要素は何一つない!!もう一度言おう、恐れることはない!!さあ、愚かなる賊を叩き潰せ!!」

 

『うおおおおぉぉぉおぉ』

 

「さて、後は任せた張飛。」

 

「了解なのだ!」

 

あ、あの銀が、きちんと名前を覚えているだとぉ!?

 

「・・・制裁!!」

 

「ぐはっ!?」

 

な、なぜ俺は攻撃された・・・。

 

「いや、なんとなく。」

 

酷い!というか銀にまで心を読まれているのか!?

 

「みんなー、行くぞー!突撃!粉砕!勝利なのだー!!」

 

『うおおおおおぉおぉぉ』

 

俺たちが馬鹿をやっている間に星たちの部隊との入れ替わりを終えたらしく、張飛ちゃんの号令のもと、黄巾党に突撃していった。

 

 

この後、白蓮の白馬隊も黄巾党の後方より突撃して、黄巾党討伐は難なく終わった。ただひとつを除いては―――

 

それは、黄巾党の数がもう百程になったときだった。

 

「!?がっ!?ぎゅかえいがぢくじゃ!?」

 

突然、黄巾党の一人が奇声をあげ始めた。

 

「!?なんだ!?」

 

そして、男に変化が訪れる。その男の身体がどんどん巨大化というよりどちらかというと肥大化していき、身体の重さに耐えられなくなったのか、両手を地面につけ、相変わらず奇声をあげている。そして男の身体は人の何倍もの大きさになっていた。

 

「ぐががあぁぁぁああぁ!!」

 

男は左手を地面につけたまま、右手を思い切り振り、そしてさらに地面に叩き付けた。

 

「ぎゃあぁ!!」「ひいぃぃ!!」「や、やめr」

 

ぐしゃ!!べしゃ!!ごきゃ!!

 

その攻撃はこちらの兵だけでなく、黄巾党をも潰した。というより、潰されたのはほとんど周りにいた黄巾党の連中であり、意思ある攻撃ではなく、単に暴れようとしているのだろう。しかし、そんな事は関係なく戦場に恐怖の念が駆け巡った。こちらだけでなく黄巾党の連中にも。それでも一流の将たる者にはあまり関係なかったようだ。

 

「くっ!いくぞ鈴々!」

 

「わかったのだ!」

 

「私もいこう。」

 

いくらとんでもない馬鹿力を持っていたとしても、単なる力任せの攻撃では星や関羽さん、張飛ちゃんに敵う訳もない。だが、斬っても斬っても、傷を塞ぐかのように、内側から肉が盛り上がってくる。

 

「これではきりがない・・・!」

 

周りの黄巾党を巻き込みながらの攻撃を捌きながら、猛攻を仕掛ける三人。他の黄巾党が全滅しても続くその攻防がいつまで続くのかと思った矢先に男の様子がおかしくなり、そして・・・

 

「がひゃあっ!!」

 

まるで内側から破裂したかのように血を噴き出した。それを境に肉は爛れ落ち、地が至る所から噴き出し、先程の大きさと比べると明らかに合わない普通サイズの骸骨が残った。

 

なんとも言えない不気味な雰囲気を残したまま、討伐戦は終わった・・・。

 

今、俺たちはこちらの被害も少ない状態で黄巾党討伐に成功し、街に戻っている途中なんだけど・・・

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

く、空気が重い。

 

「・・・あれは病などではなかった。それは私の『眼』が証明・・・」(ぶつぶつ)

 

銀は何やら考え事をしているようだが、珍しく考えが声に出ている。まあ何を言ってるのかは分からないけど。

 

「と、とりあえず勝ったんだから、もっと元気出そうよー。ねえ、白蓮ちゃんもそう思うよね、ね。」

 

「!あ、ああ、そうだな。これじゃ負け戦みたいだもんな。あっ!そういえばどうして銀がここにいるんだ?」

 

「・・・ならあれはなんだ?何らかの妖術の類かもしくは・・・」(ぶつぶつ)

 

「お、おーい、銀さん?」

 

「・・・氣の澱みというより・・・ん?どうした?ハム?」

 

「だからハムいうな!!・・・いや、なんでここにいるんだ?街に残ったんじゃなかったのか?」

 

「普通に考えて、作戦の立案者がその場にいないなんて事は滅多にないぞ。特に今回みたいな急遽決まったような策の場合は特にな。」

 

「ぐっ・・・。」

 

「・・・ならば、あの商人は何だったのだ?あの者達からは人の気配がしなかったぞ。」

 

商人?何の事だろう?

 

「ああ、これの事か?」

 

そういうと、銀は右手を前に突き出した。すると、その指先から無数の銀色の糸が伸びてきて、その糸が動き、纏まっていき、そして、

 

「な!?」「はにゃ!?」「え、ええー!?」「なんだ!?」「はあ!?」「ふむ、やはりな。」

 

そこに銀色の人が立っていた。

 

「これは私の氣の糸で作った人形だ。これは私の意のままに動かすことができるんだが、私からあまり離れての操作が出来ない上に、耐久性が低くて子供の拳にも耐えられない。本来は戦闘用に使うものではないんだが・・・まあ今回は囮のために使ったんだ。」

 

「な、ならば、声はどうしたというのだ?あの時、確かに別人の声が・・・」

 

「それはな・・・」

 

そういって今度は二本の指を喉元に持っていき、そして言葉を放つ。

 

「『こういうことなのですよー。』」

 

「「「「!?」」」」

 

これは風の声!?銀は声帯模写もできるのか!?

 

「ああー・・・そういえば、そんな事できたよな。こいつ・・・。」

 

「おや、白蓮殿はお忘れだったようですな。あの時、あんなにからかわれていたというのに・・・。」

 

「な、なんで星が知っているんだ!?」

 

「ふふふ、何故でしょうな・・・。」

 

・・・声帯模写で何か銀と白蓮の間であったようだが、まあ大した事じゃないんだろう。

 

「こういうことだ。納得したか、関羽?「愛紗でいい。」ん?」

 

「私の真名をあなたに預けよう。我が真名は愛紗だ。」

 

「いいのか?私みたいのに真名を預けても?」

 

「かまわない。真名を預けるに値する者だと私が判断したのだ。」

 

「ふーん。なら、私の真名も預けようか。私の真名は銀だ。よろしくな、愛紗。」

 

「うむ、よろしく頼む、銀よ。」

 

「・・・ほう、先程まであの者は信用できないとか言っていたのにな。心変わりのはやい事だな。関羽よ。」

 

「な、そ、それはだな・・・。」

 

「まあ、そんな事より、我が真名も預けたいのだがな。どうだろうか?」

 

「うむ、いいだろう。ならば我が真名も預けよう。」

 

「うむ、我が真名は星だ。よろしくな、愛紗よ。」

 

「うむ、こちらこそよろしく頼む、星。」

 

「じゃあ、鈴々も真名を預けるのだ!鈴々は鈴々なのだ。よろしくなのだ。」

 

「あー。じゃあ私もー。えーっと、私は桃香っていいます。よろしくお願いします。」

 

「うむ、了解した。桃香殿、鈴々、こちらこそよろしく頼む。」

 

「ん。分かった。私の事は銀でいいからよろしくな。桃香に鈴々。」

 

・・・・・・・・・

 

「・・・なんか俺、蚊帳の外だな・・・。はあ・・・。」

 

べ、別に寂しくなんかないんだからね!・・・・・・はあ・・・。

 

「あ、そうだ。北郷さんにも私の真名を預けますね。これからは私の事は桃香って呼んでください。」

 

「へっ?」

 

急に話が俺に来たから間抜けな声が出てしまった。って、俺に真名を預ける?

 

「鈴々もお兄ちゃんに真名を預けるのだ。これからは鈴々のことは鈴々って呼んで欲しいのだ。」

 

張飛ちゃんも・・・ありがたいな。

 

「あ、ああ、ありがとう。桃香さんに鈴々ちゃん。」

 

「違います!」「違うのだ!」

 

「へ?」

 

な、何か間違えたのか、俺は?いや、でも真名を間違えた訳じゃないし・・・。

 

「さん付けじゃなくて桃香って呼んでください。」「鈴々にちゃんをつけなくてもいいのだ。」

 

そういうことか。

 

「あ、ああ、ごめん。わかったよ、桃香、鈴々。これからよろしく。俺には真名がないから、俺のことは一刀でいいよ。」

 

「分かりました。よろしくね、一刀さん。」「よろしくなのだ。お兄ちゃん。」

 

・・・二人とも呼び捨てじゃないんだけど・・・まあいいか。

 

「ほら、愛紗ちゃんも。」

 

「わ、私もですか!?」

 

「えー、どうして?一刀さん、いい人だよ。」

 

「あ、あのですね、桃香様、私はまだ北郷殿の事をきちんと認めているわけではないのですが・・・。」

 

「いや、無理に預けなくてもいいよ。まあ、そんな簡単に認められるわけじゃないしね。でも・・・」

 

「でも?」

 

「いつか絶対に認めてもらうから、そのつもりでね、関羽さん。」

 

俺は関羽さんの目を見てはっきり言った。少しの沈黙、そして・・・

 

「・・・そこまで自信があるならば、あなたに我が真名を預けておこう。ただし、私があなたの事を、真名を預けるに値しないと判断したときは、その頸を貰い受けるが、それでもいいかな、北郷殿?」

 

「・・・ああ。わかった。俺のことは一刀って呼んでくれ。」

 

「了解した。では改めて、我が真名は愛紗。よろしく頼む、一刀殿。」

 

「ああ、こちらこそよろしく、愛紗。」

 

・・・頸を飛ばされないように頑張ろう・・・。

 

「あ、そういえば、少し疑問に思ったんだけど、銀ちゃん、聞いてもいいかな?」

 

「ん?なんだ?答えられる事なら答えるけど・・・」

 

「えっとねー、さっきの賭けの話なんだけど・・・」

 

「さっきのって、城でした、一刀が愛紗とまともに戦えるようになるかどうかっていうやつか?」

 

「な!?本気でやるつもりなのか、銀!?」

 

「当然。もう決定事項だ。」

 

「それなんだけどね、将来的にって言ってたけど・・・」

 

「うん。」

 

「将来的にって、いつまでなのかなーって。」

 

「「「あっ。」」」

 

そういえば、賭けの期限を決めてなかったな。

 

「・・・チッ。」

 

お前は確信犯!?

 

――side???

 

この暗い空間で、先程の実験の経過を見ていましたが・・・

 

「・・・ふむ、やはりうまくいきませんでしたね。」

 

解っていた事とはいえ少し落胆しますね。まあこれはあくまで実験ですし、調整を繰り返せば前回の時のように成功できるでしょう。

 

「―――どうだ、成功したか?」

 

私以外、誰もいなかったこの空間に声が響く。まあ、私は驚きませんがね。

 

「いえ、やはりうまくいきませんでしたよ。まあ、あと何回か調整すればうまくいくでしょう。」

 

「・・・まあ、いい。それよりも『扉』の方はどうだ。あとどれくらいで開く?」

 

「順調、ですがこちらの方もまだまだですね。」

 

「チッ・・・くそっ!!はやく奴をこの手で殺したいというのに・・・!!」

 

「そちらの首尾はどうですか?」

 

「ふん、俺の方は特に問題はない。順調に『欠片』は集まっている。前回ほど数が揃っていないがな。」

 

「そうですか。・・・まあ前回は『欠片』を大量に使ってしまいましたからね。」

 

「・・・俺はもう一度『欠片』を探してくる。その間に少しでも進めておけ。」

 

「御意。」

 

そう言って、彼は再びこの空間から去っていった。

 

「さてと・・・」

 

愛する人の期待に応えるために、頑張るとしますか。

 

あとがき・・・・・・という名の言い訳

 

どうも、シンジです。このままの更新スピードだと、はたして完結までにどれだけかかるのか?と疑問に思いつつ、ブームが完全に去る前になにかマジ恋の話を書きたいなー、と時間的にも技量的にも無謀に思える事を考えてしまっている今日この頃です。

 

さて、今回の話に入る前に、前回のタイトル『賭け』について・・・前回の話にこのタイトルをつけたのは、そんな深い理由があったわけでもなく、ただ単にいいタイトルが思い浮かばなかったので、作中で賭けをしてたしそれでいいか、というなんとも申し訳のない理由です。更新後、コメントをみて、「あれ?何かすごい深読みされてね?」と思ったのでここで説明をしておこうかと。だからといって、六話のタイトルを今更変えるのも、めんd、もとい、どうかと思うので、そのままにしておきます。

 

さて、今度こそ今回の話についてですが、戦闘、特に軍vs軍って書くのが難しいという事を実感しました。まあ、端折ってしまったんですよね。すいません。あと真名の交換も難しいです。何か不自然を感じてしまいます。さらに戦場での明らかな異常と謎(?)の人物の登場。そして銀の所持スキルである『声帯模写』に『人形』、あと『氣の糸』。人形はこの後出てくるかどうかは分かりませんが、声帯模写と氣の糸は結構出てくるんじゃないかと。そしてまだ銀の所持スキルは残っているので何が出てくるか楽しみにしていただけるとうれしいです。

 

さて、次回の話は、前回には次回、つまり今回に書くといっていたちょっとした日常編になるかと思われます。

 

それでは、次回も読んでくださることを願っています。

 

おまけ

 

 

 

「・・・・・・なんか、私、存在を忘れられてないか?・・・ぐすん。」

 

 


 
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