漫画的男子しばたの生涯一読者
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漫画的男子しばたの生涯一読者

■ 単発&完結ものだぴょ〜単行本その2

続いて1冊限りの単発モノと、完結巻が出た連載モノをば。

「ハデー・ヘンドリックス物語」 漫☆画太郎 集英社 [bk1]

おくれよおくれよ兵隊さん!!
「ハデー・ヘンドリックス物語」
漫☆画太郎

なんといっても巻頭に収録された表題作がすごい。この作品は、演奏をするたびにギターをぶち壊すロックシンガー、ハデー・ヘンドリックスが、ギターを盗みに入った楽器店で警察に取り囲まれ、籠城の様子が全国中継される中で最後のライブをぶちかますというもの。「ギブミーチョコ! ギブミーガム! おくれよおくれよ兵隊さん!! ヘイ!!!」というシャウトは非常にソウルフル&パワフルで、漫画だから音はしないはずなのに確かにページから音が聞こえてくる。紙を突き破って声や唾やゲロが飛んできそうな勢いにはまったく驚かされるばかり。ダイナミックで非常に爽快。画太郎先生ありがとう。

「富士山」 さそうあきら 小学館 [bk1]

富士山
「富士山」
さそうあきら

「ビッグコミックスピリッツ増刊 IKKI」(小学館)で連載された短編読切シリーズ。タイトルにある富士山は、物語の中で大きな役割を果たすこともあれば、ちょびっとしか出てこないときもある。人身事故を起こした電車の運転手や、同僚に誘われて富士の裾野で一緒に自殺することにしたOLなど、描かれる人間模様はさまざまだが、いずれも命そのもののありように踏み込んでいっており重みがある。静かで乱れることのない語り口がかえって迫力がある。さそうあきらは絵柄的にはあまり目立つ作家ではないけれど、今回のような短編でも手を変え品を変えしながらしっかり粒揃いな作品を描いてくるし、長編についても読みごたえのある作品を連発している。コンスタントであり最高到達点も高い、希有な作家である。

「心の悲しみ」 西岡兄妹 青林工藝舎 [bk1]

心の悲しみ
「心の悲しみ」
西岡兄妹

銅版画のような独特の珍しい画風で、埋めがたい欠落や孤独感を描く叙情派の最新作品集。不思議な造形と構図を持った作画は、それぞれのコマが一枚絵としても完成されている。アートっぽい雰囲気はちょっととっつきにくいかもしれないけれども、不思議と心にしんしんと染み渡ってくる、どこか懐かしい寂寥感のある作風は一見の価値あり。

「SING OUT!」 どざむら 少年画報社 [bk1]

SING OUT!
「SING OUT!」
どざむら

「アワーズライト」および「ヤングキングアワーズ」(ともに少年画報社)に掲載された短編を収録した作品集。迷いながらも愛を育んでいく恋人二人、円谷くんと君原さんシリーズ全5話を中心に、コメディありエロスありと作品の内容はバラエティに富む。そのいずれにおいても、みずみずしいどざむらの作風が十分に生きている。エロシーンは妙に艶めかしいしギャグはカラッと明るい。パッと見てなぜか目につく独特のモノを持った作家さんである。非エロ系では初単行本。

「楽園夢幻綺譚 ガディスランギ」 深谷陽 リイド社 [bk1]

楽園夢幻綺譚 ガディスランギ
「楽園夢幻綺譚 ガディスランギ」
深谷陽

深谷陽といえば東南アジア系の地を舞台としたエキゾチックな紀行モノを得意とする作家だが、この作品でもその持ち味は存分に発揮されている。この作品では日本からの旅行者タローが「聖なる土地」と呼ばれる「ガディスランギ」の地を訪れ、そこで「神獣」と呼ばれる獣をめぐる事件に巻き込まれる。黒ずくめの謎の集団や記憶喪失の女性も登場し、ロマンスを交えつつお話はスペクタクルに展開。熱帯雨林のアツい空気の存在を感じさせる力作。掲載誌の「リイドコミック爆」は昨年休刊になったが、きちんと単行本化してくれたリイド社には感謝したいところ。

「恋の門」 5巻 羽生生純 エンターブレイン [bk1]

恋の門
「恋の門」 5巻
羽生生純

石で漫画を描くことに拘泥し続ける厄介な男と、コスプレ同人作家の女。そんな二人の数奇な恋の物語もついに大団円を迎えた。二人の男女は恐ろしく不器用で、ときには衝突し、罵り合いさえしながら紆余曲折の道を歩んだ。それだけに二人が行き着いた道程の終着点は、素直に感動できるものとなった。ストーリー展開、登場人物の個性、作画、すべにおいて濃い強烈な作品だった。軽い恋愛ドラマが多い世の中だけど、こんな不格好な愛の形もあったっていい。

「おやつ」 5巻 おおひなたごう 秋田書店 [bk1]

おやつ
「おやつ」 5巻
おおひなたごう

最後までクールですごくマイペースだった。おやつにこだわる小学生おやつくんを中心として、終始一貫ものすごくナンセンスにお話は展開。読者からの投稿キャラ「オリ・キャラ」を投稿そのまんまでそれが稚拙であっても手を加えずお話の中で使いきる思いっ切りの良さとか、架空スポーツ「パワーホライズン」などよくもまあこんなことを考えつくもんだという奇想の数々は、改めて読み返してみてもびっくりさせられる。地味ながらスゴイ作品でありました。

「ねこぢるyうどん」 3巻 ねこぢるy 青林堂 [bk1]

ねこぢるyうどん
「ねこぢるyうどん」 3巻
ねこぢるy

単行本化にあたり、最終話の後半部を描き下ろしで加えて完結。ねこの姉弟、にゃー子とにゃっ太が仲良くしている偏屈な神様が創り出した「コロぺた号」が町に襲来、殺戮を続けるというスペクタクルなストーリーを、全ページカラーのCGで描いた作品。夢のような薄ぼんやりとした風景は不思議な感触を与えてくれるが、基本的にはけっこうストレートにエンターテインメントしていたような気がする。途中、物語はぐねぐねうねり想いもよらぬ方向へと進んだけれども、最終的にはとてもきれいにまとまったなあという印象。 

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