タニグチリウイチの出没!
TINAMIX
タニグチリウイチの出没!

ロッテ応援団、頑張る

応援のための応援、という意味ではむしろ日本のプロ野球の方が著しいようで、攻守の切り替えこそ出来てはいるものの、選手の一挙手一投足に目を凝らす訳でもなく、のべつまくなしラッパや太鼓を打ち鳴らしては「かっとばせー」「○○倒せー」とやる応援のスタイルが、「本当に野球を愛しているのか?」といった疑問派の声を招いている。とりわけイチロー選手に佐々木選手、新庄選手が米大リーグへと移籍して、ラッパや太鼓などなくただ拍手と口笛のみで選手を鼓舞し、自らも試合に没入していく応援のスタイルが、テレビの大リーグ中継を通じて知れ渡って来るにつれ、日本のプロ野球の応援スタイルが、いかに突出したものであるかが明らかになって来て、一段の摩擦を引き起こしている。

千葉マリンスタジアム
甲子園じゃないけど風船を飛ばすのはやっぱり日本のお約束。あとに散らばる残骸が無惨

それほどまでにプロ野球の応援はやかましいのか?非スポーツ的なのか?勝利の期待も胸にのぞいてみた、6月23日に千葉マリンスタジアムで開催された「パシフィックリーグ公式戦千葉ロッテマリーンズ対日本ハムファイターズ」の応援は、なるほど確かに凄まじいとしか言いようのないものだった。けれども決してやかましいものではなかった。セントラルに比べて人気でも入場者数でも劣るパシフィック、ガランとしたスタンドで応援することが目的の人が応援するためだけに集まって、ブガチャカやっているのかと思ったらこれが大間違い。1塁側の「マリーンズ」応援団が陣取る席はほとんど満席の状態になっていて、外野に近い内野まで及んでしっかりとした応援のカタマリを作っていた。

その迫力といったらここはサッカー場か、「セリエA」の試合かと思わせる揃いぶり、モダンぶり。選手紹介がスタートした途端に立ち上がって名前が呼ばれた直後に「ヒュー」と叫ぶ様子とか、トランペットをのべつまくなし吹き鳴らすことはせず、太鼓をメインに合わせて唄い叫びここぞとゆー時にトランペットを混ぜて声援のボルテージを上げていくエンターテインメント性とかは、あるいはサッカーの応援よりも洗練されているかもしれない。所属するボーリック選手が打席に立つと、スタンドの全員が「ボーリック、ボーリック」と叫びながら垂直ジャンプを続ける、その波打つ観客席の迫力は見た人にしか分からない。対する「ファイターズ」の応援団が、少ない人数で頑張っていたことは認めつつも、トランペットの合間に「かっとばせ××」とやる旧来からのものだっただけに、「マリーンズ」との差がよけいに目立つ。

5回が終わってからマスコットのマーくんリンちゃんに、何故かコアラ(ロッテ「コアラのマーチ」のキャラ)も加えて「YMCA」を踊らせ、それから投石器のようなものを使ってスタンドに巨大なパッケージの「コアラのマーチ」を投げ込んでいく趣向があって、観客の動員に力を入れようとする球団の努力が垣間見える場面もチラホラ。地元の地酒をプレゼントし「ファミリー」と「ミス」のそれぞれ1組&1人に食事券をプレゼントするサービスもあって、決してウザくない応援にこういう楽しみがあるんだったら、また行ってみようかという気も起こって来る。7回表が終わった所で「野球場へ行こう」まで唄うんだから。ここは「セーフィコフィールド」か。大リーグの純粋さとも、スポーツのさわやかさとも違うことは承知の上で、それでも「スポーツらしさ」が感じられる応援ぶり。vs「マリーンズ応援団」、敗北……かな。

馬場さんありがとう

全日本プロレス
分裂・脱退を経てもなお「日本武道館」で興行を打てる全日本プロレス。馬場はやっぱり偉大だった。

いかん、やっぱりスポーツはお約束と欺瞞さにあふれたものなんだということを確認するにはこれしかないと、訪れたの先は日本武道館。「UWF」や「K-1」の爆発的な人気を経て、「パンクラス」「修斗」といったガチンコがモットーの団体が数多く発足しては話題の試合を繰り広げ、プロレスや総合格闘技の中にも真剣勝負のものがあるんだ、ということを広くアピールしているけれど、老舗中の老舗のこの団体に限っては、真剣さよりも楽しさを全面に打ち出して、スポーツというよりはショーとしてのプロレスを見せてくれるんじゃないか、そんな期待をこめて、全日本プロレスの「2001サマーアクション・シリーズ」最終戦を見物する。

到着するとまず目立ったのがキャラクター商品を売るテントの列。似顔絵が描かれたTシャツを並べて販売しているテントがあれば、向こうには200円を入れて回すとカプセルが出てくる通称「ガシャポン」を何台も並べて販売しているコーナーがあって、中身さえ気にしなければ、「東京キャラクターショー」や「ワンダーフェスティバル」といった、キャラクター主体のイベントにあって不思議のないブースという感じさえした。「ガシャポン」で売られているのは全日本プロレスの選手たちのフィギュアで、5つ購入すれば偉大なジャイアント馬場選手の特別フィギュアがもらえるという呼び声に、つられてハンドルを回す客も結構な数いたあたりに、有明と同種の”キャラ萌え”エナジーに支配された人々が集まるイベントなんだってことが感じられる。勝ちかはともかくこれなら負けない。

始まった第1試合は渕正信が登場して、いつの間にか全日本に参加していた愚乱・浪花と平井伸和の3人で同じリングの中に立ち、誰か1人がピンフォール取られるまで戦う「トリプル・スレッド・マッチ」という不思議な形態の試合。そこは米WWFではないにしても、エンターテインメント・プロレスが信条の全日本、交互に譲り合ったりいがみあったりしながら渕を立てる愉快な試合を見せてくれる。以下、藤原喜明組長やらグラン浜田やら川田利明といった生え抜きに外様のレスラーたちが入り交じりながら、それぞれが「明るく、楽しく、激しい」全日本っぽさにあふれた試合を披露。間合いに呼吸にリズムの心地よさはもはや一種の「型」になっていて、苛立たせ煽り盛り上げカタルシスを与える試合運びに、いつしか時間が過ぎるのを忘れて気持ちはリングへとのめり込む。

プロレス
膝蹴りで決まった勝負。あとで決め手が「シャイニング・ウイザード」と聞いてちょっと吃驚。なぜ?

メインは新日本プロレスが本拠の武藤敬司がどういう訳か奪取して保持している三冠のベルトに、全日本最強の刺客という触れ込みでスティーブ・ウィリアムズが挑んだ試合。途中足を痛めてフラフラになりながらも武藤が最後までねばりにねばり、膝蹴りにしか見えないんだけど「シャイニング・ウィザード」なんで派手な名前がついた技を6連発、ウィリアムズに繰り出してノックダウンしたところをピンフォール。跳ね返したかと思ったもののカウント3が入ってしまって、ちょっぴりカタルシスを外した終わり方になったのは愛嬌だけど、間近に見る鍛えあげげられた巨体の男たちが、汗をとばし肉打つ音を響かせながら戦う姿は、シナリオがあろうとなかろうと身に染みる感銘を与え、身に迫る痛みを感じさせてくれる。うーん、悪くない。

「真剣」に行こう

陸上
女子ハンマー投げで日本記録を出し綾真澄選手と室伏妹の由佳さんがガッシと包容、飾りっ気のない感動のシーンに涙、涙

ほかにもサッカーの「キリンカップパラグアイ代表vsユーゴスラヴィア代表」に、Jリーグの「東京ヴェルディ1969vs名古屋グランパスエイト」といったドラガン・ストコビッチ絡みで話題の試合も幾つか見たり、「世界選手権」のハンマー投げで見事銀メダルを獲得した室伏選手が登場した陸上の「日本選手権」も見たりして、なるほど決してすべてが「さわやか」で「純粋」で「クリーン」ではないと分かって来た。スポーツだからって臆することないんだと思えて来た。けれどもこと「真剣さ」という点で、スポーツに絡んだ人たちのスタンスには目をむけるべき部分が少なからずあるんだということも分かって、スタジアムの現場でスポーツを見る醍醐味が、すこしばかり理解できるようになった。

勝ち負けなんて関係ない。というより元から勝負なんてできやしない。スポーツはスポーツとしての楽しみ方があり楽しんでいる人がおり、オタクもオタクとして楽しみ生き甲斐にしている人がいる。「さわやか」だとか「清潔」だとかいったイメージなんて無関係。ただ「真剣さ」があれば説得はできなくても納得はできるんだと考えれば、おのずと進む道は開けてくる。もう迷わない。たとえどう思われようともそれぞれの道を進むんだ。という訳で目指そうスポーツライターを。スタジアムに乗り付けたオープンカーに美女を乗せて走る日を。◆

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