No.970070

「真・恋姫無双  君の隣に」 外伝第13話

小次郎さん

終わりの地、成都まで後少し。
桃香の元へと。

2018-10-12 19:03:14 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2492   閲覧ユーザー数:1353

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(雒)

多くの将兵を失いながらも魏国の追撃を振り切り、ようやく見えてきました。

蜀国の本拠地である成都への入り口、最終防衛拠点となります雒城が。

・・遠征に従軍しました将や軍師の内、私と愛紗さん、そして詠さん以外の皆さんは戦死が確認されました。

もう悲しみを通り越して、自分自身が生きているのかも覚束無い程です。

そして愛紗さんと詠さんの間では痼が生じていて、お二人ともに口を噤まれています。

今の蜀軍は瓦解寸前で、事態を打破する為には一刻も早く桃香様と朱里ちゃんの元へ向かい、体制を立て直すしかありません。

雒城は蜀一の要塞、残存兵力を集結させれば魏国の大軍に対してでも長期間守り切る事が可能です。

最早滅亡は不可避ですが、とにかく時を稼がないと。

雒城城主の孟達将軍が出迎えてくださり、城内へと門を抜けます。

・・其の時の私は脳を巡らせていたようで、十全ではありませんでした。

孟達将軍が突然駆け出し、伏せてありました弓兵が姿を現します。

放たれた矢を私が躱せる筈もなく、消えゆく意識に微かに出来た事は、大事な友達の顔を思い浮かべる事だけでした。

「雛里っ!!」

 

 

「真・恋姫無双  君の隣に」 外伝 第13話

 

 

(成都)

続々と届きます悲報に、私は桃香様にお声を掛ける事も出来ません。

確かに勝てるなどと身の程知らずな事を考えてはいませんでした、ですが此処まで一方的に敗北するとは思慮の外でした。

そして魏国の熾烈を極めた対応もです。

確かに蜀呉の行いは魏国にとって裏切りで、赦し難い事ではあるでしょう。

ですが戦乱の世を知る魏の方達なら自分達の行いがどう見られるかなど重々承知で、これほど強硬に恐怖で塗り固めるような事をすれば後の統治に悪影響が過ぎる事も分かっている筈。

戦の大義名分は魏国にこそ有りました、それを破棄するかの様に。

あの聡い方達が、一体どうして?

「朱里ちゃん」

「は、はい、桃香様!」

「要職を務めて貰ってた人達が領地に帰ったけど、城下の人達の生活に支障は出てない?」

「大丈夫です。特に混乱も無く、訴えなどもありません」

多少の漏れは有りますが、敗戦の事実は噂の範囲でしか民に下りていません。

呉国では魏国の流言飛語があり国と民との連帯感を損なわれたとの事ですが、人の流通に制限の掛かる蜀国では細作の出入りが厳しく、最新の情報を使った活動は行うのが難しいですから。

政に関しましても、桃香様を慕われて士官した方達が立派に熟してくれてます。

ですから愛紗さんや雛里ちゃんが戻ってき次第、急ぎ雒城での籠城に備えませんと。

漢中方面軍は壊滅しましたが、荊州方面軍は敗走中で失ったのは恋さんとねねさんだけと聞いてます。

勿論亡くなった方達の事を考えれば身を切られる思いですが、まだ、まだ出来る事があるんです!

桃香様さえ御無事なら私達は!

「朱里ちゃん。少し休んだ方がいいよ、顔色良くないよ」

「で、ですが!」

「駄目だよ、生きている私達にはしなくちゃいけない事があるんだから。休むのは必要な事だよ」

桃香様の言葉にはどれだけ大きな意味が含まれている事でしょうか、頷く事しか出来ませんでした。

「・・・はい、桃香様」

 

 

(雒)

孟達を斬り、周りに目を向けると兵達が武器を放り捨てて逃げていった。

誰も居なくなった城壁に立っていたら、成都方面に向かう詠の後ろ姿が見える。

私も向かわねばと足を進めようとすると、何故か其の場で倒れ伏してしまった。

顔に血が付いたので足を滑らしたかと思ったが、ひょっとすると血は他者の物ではなく私から流れている血なのか。

・・そんなに血を流す傷でも受けていたのだろうか?

雛里が幾つもの矢に射抜かれたところから記憶が曖昧だ。

どうやら私は逆上し、孟達以下の雒城の者達を斬りまくったようだ。

全く、普段から鈴々に将たる者は常に冷静であれと言っておきながら、これでは逆に怒られてしまうな。

星など腹を抱えて笑うだろう。

鈴々、星。

・・ああ、お前たちも死んだのだったな。

・・すまぬ、お前たちが笑って殿を引き受けて私に桃香様を託したというのに、この体たらくだ。

・・桃香様、・申し訳ありませぬ、・・私は、此処までの・ようです。

どうか、お逃げに・・・、いえ、おそらく・・貴女は・・・。

・・桃香・様、わた・しは・・しあわ・せ・でし・・・た・・・・。

 

 

 

「関羽、・・何故止めなかったのだ」

 

 

 

(成都)

私はずっと大事な決断が出来ず、人の言われるままに逃げてきました。

ですが何時か向き合わなくてはいけない日が来るとも、頭の片隅に巣食っていたのです。

衣服棚の奥に仕舞っていた箱を取り出して蓋を開けます。

時折手入れはしていましたので解れや虫食いも無く、着ている服を脱いで袖を通します。

あの時以来、着る事の無かった服。

私が董卓の名を捨てた時から、着る事は許されなかった服。

・・かつて洛陽の戦いで私の為に多くの方達が亡くなりながら、私は逃げて桃香さんたちに保護されました。

利用されていただけで私は悪くないと、そんな訳がないのに。

流されるだけで本心を明かさなかった私は十分過ぎるほどに罪人で、少なくとも私を護ろうと戦ってくれた人達に対して恥知らず以外何者でもありません。

・・そんな私を咎めもせずに優しく接してくれた恋さん達が亡くなりました。

詠ちゃんと違って恋さんは私の為に戦った訳ではないでしょう、ですが・・・。

・・私はまた、同じ過ちを繰り返してしまいました。

戦が始まった当初、桃香さんは私に南蛮へ逃げるように勧めて下さいましたが、私はお断りさせて頂きました。

もう大事な人達を置いて逃げるなんて出来ないから。

短剣を手に取って、首に添え引きます。

董卓、それが私の名、恋さん達に会って謝意を伝える時の私の名。

・・詠ちゃん、今迄ありがとう。

 


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