No.944628

「改訂版」真・恋姫無双 ~新外史伝~ 第32話

時間がありましたので出来ました。

今回は一刀の決断について書いてます。

では第32話どうぞ。

2018-03-10 18:56:09 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3677   閲覧ユーザー数:3213

白湯から書状を受け取った一刀は流石に事が事だけに自分一人で決断する事に迷いがあったので開墾従事中の璃々と現在客人として滞在している小蓮(同盟中であるが事が重大案件なので除外)を除く幹部を集め衆議することにした。

 

集まった全員は一刀の話と書状を見て理解はしたが、重大かつ今後の自分たちを左右する事柄なので全員無言になっていた。

 

「白湯様…貴女は自ら皇帝になる気ありませんか?」

 

真里がまず白湯の意志確認をする。白湯が皇帝の座に未練があれば敵に付け込まれ内部分裂の可能性があるので軍師としては当然の質問だ。

 

「……正直言ってあの魑魅魍魎の世界に戻りたいとは思わぬ。涼州に来て初めて人間らしい生活を送っている。そのような生活を手放して皇帝などなりたいとも思わぬわ」

 

「だが…父上の遺言とは言え一刀にこのような事を押し付ける様な状況になって申し訳ないとは思う」

 

白湯は自分自身が皇帝になる気が無いことを皆に告げ、一刀に全てを任せる発言をした。

 

「ならご主人様が、その書状の通り皇帝になるか若しくは新たに国を作ってしまえばいいんじゃないかな?」

 

「翠お姉様!そんな簡単に言っているけど、事はそんな簡単な事じゃないんだから!!」

 

鶸は翠の軽率と思われる発言を窘めようとするが

 

「えっ?でも宦官や何進たちは私たちを目の敵にしているのでしょう。翠お姉様が言っている事、強ち間違っていないと思うけど…」

 

「それにやられる前にやれというじゃない。だから先手必勝ということで先に攻めちゃえばいいと思うよ」

 

蒲公英や蒼は逆に翠の意見に同意したので鶸は驚いた表情をしている。

 

「……私たちは一度漢に反旗を翻して、向こうが和議(白湯の降嫁の事)を求めてきたから同意したまでの事。向こうがその気なら私たちが再び反旗を翻してもおかしくないだろう」

 

「私は元々、漢という国に対してはずっと疑問を感じていました。もし一刀様が皇帝になるという覚悟はあるのでしたら我が智を全力で振うことを誓いましょう」

 

寧ろ碧や真里は既に腹を括っている感じであった。

 

「私はご主人様にこのような事を託されるという事は何らかの天命だと思っていますわ」

 

「天命…?」

 

「ええ、ご主人様。今まで私と璃々が出会ってからこれまで行ってきた事を考えてみて下さい。常人ではなし得ない事を貴男は行ってきました。そして私たちはそれをずっと見てきました」

 

紫苑と璃々は過去の外史から一刀の行動をずっと見てきており、英雄と呼ばれている人物でも出来ない事を一刀は何度も成し遂げてきた。それはある意味選ばれた人物と言っても良いくらいだと紫苑は思っていた。

 

「ご主人様…ご主人様が戦えと言われれば私は神々とも戦いましょう。そして死ねと言われればどのような死に方も受け入れましょう。私はあの時から身も心も…命すらも貴男様の物ですから……」

 

「紫苑……」

 

紫苑の決意を聞き、更に皆は覚悟を決めている。後は一刀の決断のみ。

 

「………」

 

「………」

 

部屋に落ちるのは沈黙の間。

 

今回兵を上げれば、今度こそ乱世に突入するだろう。

 

だがこちらが黙っていても向こうが体勢を整えば再び攻めてくる事は自明の理。

 

そしてここで自分が引いてしまえば、今まで共に道を歩いてきた人たちを裏切ることになる。

 

一刀は深呼吸をして決断する。

 

「……皆の気持ちよく分かったよ。それに劉宏様の気持ちを無駄する訳にはいかない。漢を滅ぼす為に俺たちは決起する」

 

一刀の覚悟を聞いて、皆、安堵の表情をする。

 

「一刀、一つ聞いてもいいか?」

 

「ああいいよ。白湯」

 

「一刀の意志は分かった。でも何故、漢の皇位をそのまま継がぬのじゃ?」

 

「残念ながら白湯、今の漢王朝は一度正しても時が経つと、又、元に戻るだろう。最早漢の時代は限界に来ていると思う。このまま漢王朝を存続させるよりも考えようによっては、人心一新する良い機会かもしれないし、まだ民にとって血を流す事がまだ少なく済むかもしれない。ただ立つ時期を見誤ると余計な血が流れてしまうかもしれないけどね……」

 

「………」

 

一刀の言っている事が間違っていないのか白湯は反論もせず黙っていた。

 

「ご主人様、立つ時期を見誤るとはどういうことだよ?」

 

だが代わりに翠が一刀の言葉に疑問の声を上げる。

 

「今、俺がここで反旗を翻しても漢は俺たちを敵と見定めて、宦官と何進は手を組んで一致協力体制を組んでしまうだろう」

 

「なるほどそういう訳か……」

 

「それではご主人様は今後どうするおつもりですか?」

 

鶸が今後の動きについて一刀に質問する。

 

「取りあえず何時でも動ける様に備えておくことと洛陽の様子を探る者を送る必要があるかな…」

 

「分かりました。洛陽に送る者の手配、私の方で組んでおきます。でも…孫呉の方はどうなされますか?」

 

真里は今回の劉宏の遺命の件並びに今後のこちらの決起を同盟相手である孫呉に伝えるかどうか一刀の意向を聞いてみた。

 

「伝えた方がいいだろう。ただ今後の事もあるからこちらから使者を出して齟齬を生じない様にしないと…」

 

一刀は以前孫堅の決意を聞いているので裏切る心配はしていないが、ただ孫呉の方針というものがあるので向こうは向こうで独自で行動する事があるのである程度の意志の疎通を図っておきたいというのが一刀の方針である。

 

「使者か……今回私、無理だよ。難しい話、私付いて行けないし」

 

「蒼も無理!!」

 

「貴女たちね……」

 

前回呉に派遣された蒲公英と蒼の使者拒否に鶸は呆れた顔をする。

 

「ご主人様…私が呉に行きましょう」

 

「紫苑が?」

 

「ええ前回、孫堅様自らこちらに来ました。今回はこちらの都合もありますが私が行けば問題ないでしょう」

 

『天の御遣い』でもある紫苑が使者と行けば肩書として問題ない上、お互いの意志の疎通を図るには持ってこい人選とも言える。

 

そして他に反対する者が居なかったため、紫苑の使者が決まり、護衛には渚(龐徳)が付くこととなり、2・3日中には出発することが決まった。

 

「だけど…紫苑さんがしばらく居ないとなれば真里さんや私、お母さんの負担が大きくなるな…」

 

鶸が紫苑不在により内政面で自分たちの負担が増えることを嘆く。鶸と碧の二人も基本武人なので翠と蒲公英、蒼に比べたら何とか内政できるという感じだからだ

 

「ふむ……なら璃々も反省しているみたいだから、そろそろこちらに戻したらどうだ」

 

碧が璃々の復帰を言い出すが、蒲公英が冷やかしを入れる。

 

「伯母様、それは自分の負担を楽にしたいからじゃないの?」

 

「……それは否定せん!」

 

「何だよ!それ!!」

 

碧の本音に翠がツッコミを入れる。

 

「でも……それはいいかもしれないわね。璃々の報告書をずっと見てきたけど、今の彼女なら紫苑さんまでとは言えないけど内政では十分使えるわ。私も碧様の意見に賛成するわ」

 

真里は姜維と陳登の助力があったとは言え、張三姉妹や黄巾党の残党並びに洛陽の難民たちから信頼を勝ち取り開墾事業等を軌道に乗せて今後の生活に目途を付けたことを評価したのである。

 

そう考えると今の璃々は内政面では馬家の二人より上という感があり、紫苑の穴埋めとしては適任と真里は考え璃々の復帰に同意した。

 

璃々出奔時に被害を受けた二人から璃々復帰の承諾を得たこともあり、そして誰も璃々の復帰に反対の意見を上げなかったので、一刀は璃々の帰還するようにという旨の使者を出した。

 

その日の夜、一刀と紫苑は白湯と一緒の部屋で寝る様にした。

 

父親を失って悲しんでいると思い一刀は白湯を呼び、そして紫苑が母親代わりとして自ら白湯と一緒に寝て色々と話をしながら、一刀も一緒に聞いている。

 

そして白湯が喋り疲れたのか、紫苑の横で寝てしまった。

 

「辛かったんだな…白湯」

 

一刀の言葉に紫苑は無言で同意する。

 

白湯は幼い時に母親が何太后に暗殺された為、母親の愛情を知らず、更に父親である劉宏は白湯の心配はするものの、皇帝という立場もあったため一緒に寝るということは無かった。

 

「紫苑が母親の様に感じるのじゃ」

 

白湯は寝る前に紫苑の事を幼い時を思い出したのか若しくは母親と同じ雰囲気に感じたのか、気持ち良さそう就寝している。

 

「璃々の事、思い出した?」

 

一刀は白湯に起こさない様に小声で紫苑に話しかける。

 

「ええ…でも全て落ち着いたら今度こそ璃々の弟か妹が欲しいですわ。もう高齢出産を気にしなくてもいいですから」

 

「確かに…えっ!?まさか…」

 

紫苑は一刀に璃々の弟か妹をせがまれたので、まさかここで“する”のかと一刀は冷や汗をかく。

 

「フフフ…そんな白湯ちゃんが居るのでそんな事言いませんわ。ですが…私が呉から帰ってきたら“褒美”期待していますわよ」

 

紫苑は一刀に笑みを浮かべてそう告げた。

 

そして2日後紫苑は一刀の新たな道を切り開く為、呉へ出発したのであった。

 

 

 


 
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