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「改訂版」真・恋姫無双 ~新外史伝~ 第31話

先日言っていました怪我の件ですが、入院までの必要は無いものの、膝が曲げれず歩行が困難なので器具で固定して安静ということとなり、当面の間自宅療養となりました。

しばらくは仕事も休みなので作品作りが進むかもしれません。

今回は”あの書状”が明らかになります。

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2018-03-08 00:00:01 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:3536   閲覧ユーザー数:3097

劉宏が崩御して張譲たちは劉宏の遺言について箝口令を引く形を取り、間髪入れずに劉弁を第13代皇帝に即位させたのであった。

 

劉弁即位については張譲と何進はお互い了解していたので、話がスムーズに進んだ形となったが、ここに来て何進の動きが活発になってきた。

 

「えっ!?劉弁様の即位の儀式に各諸侯の軍勢を集めるおつもりですか?」

 

驚きの声を上げたのは皇甫嵩であった。

 

「それは流石にどうでしょうか…」

 

皇甫嵩と同じく反対の声を上げているのが、盧植という官軍きっての優秀な将軍でありこの両名が居なければ軍は崩壊するのではないかと言われ、現在この両名が何進を支える形になっている。

 

何進はこの両名に対して劉弁の即位に際し、各諸侯に対して大将軍何進の名で即位の儀式に軍勢を募って参集するよう指示したのである。

 

「何故じゃ、劉弁様が即位して各諸侯を集め、漢の力を再び世に知らしめる必要がある。ここにどこが問題あるのじゃ!?」

 

「問題大有りです!先般黄巾党の乱が収まったばかり、兵を集結するとなれば民たちは再び乱が起きたのではないかと不安になります」

 

「それにまだ地方が安定していない現状、各諸侯を洛陽に集めれば黄巾党の残党など他の賊も蠢動する可能性も否定できません」

 

皇甫嵩と盧植は揃って各諸侯の集結に反対の声を上げる。

 

何進は劉弁の即位に乗じて各諸侯の軍勢を集め、そしてその軍勢を持って宦官たちを殺し不貞をしている何太后を幽閉しようと考えていた。

 

その考えをまだ二人に告げる訳にも行かず

 

「ええい黙れ!二人とも!!黙って私の言う事を聞いておればよいのじゃ!!」

何進は二人を怒鳴り部屋から出て行った。

 

「……何進様の言う事は分からない訳では無いけど…」

 

「このような動きをすれば宦官たちを刺激してしまいますよね…」

 

皇甫嵩と盧植は何進の真意が何処にあるのかまだ掴めていなかった。

 

何進が諸侯の軍勢を洛陽に集めるという噂は瞬く間に宮廷内に広がっていた。

 

「張譲様、話は聞きましたか!?」

 

趙忠は何進が兵を集めている噂を聞いて張譲の元にやってきたが、既にその顔色は真っ青で明らかに動揺していた。

 

「ああ知っておる。何進の奴が兵を集めているそうじゃな。奴が兵を集めている間、こちらには手は出さん、その間にこちらも手を打つのじゃ」

 

「手を打つですか?」

 

「ああ、儂らの手の内に何太后様が居る。それを利用する」

 

心配する趙忠とは裏腹に張譲はそう言いながら不敵な笑みを浮かべていたのであった。

一方、一刀たちは璃々の村からの視察を終え、武威に戻ると同時に碧がやって来たがその表情は何時もと違い険しい表情をしていた。

 

「一刀、紫苑、真里大事な話がある。帰って来てそうそう申し訳ないが私の部屋に来てくれないか」

 

碧は3人にそう告げると白湯と蒼には見向きもせずその場を立ち去った。

 

母親の何時もと違う姿を見て

 

「……何かあったかもしれないね…あんなお母さん、私、初めて見た」

 

蒼が言っている事は当を得ていた。碧は涼州の太守として五胡ら異民族と戦ってきた百戦錬磨の人物だ。その碧があのような表情をしていることは何らかの事態があったと言っても良いだろう。

 

「でも何があったのかな?」

 

白湯は疑問を素直に口にしたが、その問いに回答する材料が無いので

 

「まずは私たち三人が呼ばれているのでまずはそれを聞いてからにしましょう」

 

真里がそういうと無言で皆、同意して、先に言われた一刀たちは白湯と蒼と別れ、碧の部屋に向かった。

 

一刀たちが碧の部屋に入ると碧の表情はまだ硬いままだった。

 

「白湯様は?」

 

「白湯様は蒼ちゃんと一緒にいますが?」

 

「そうか…」

 

紫苑の返事にただ一言呟くものの碧はそのまま黙る。

 

「碧さん、何かありましたか?」

 

「……最初に白湯の事を聞きましたが、何か洛陽で変事がありましたか?」

 

一刀も碧の様子と部屋に入室して最初に白湯の事を確認したので、洛陽で何らかの異変があることまでは一刀も推測できた。

 

「ああそうだ……陛下が崩御された」

 

流石に三人とも驚いた。

 

「それは誠の話でしょうか?情報源はどこからですか?」

 

逸早く思考が戻った真里が何らかの罠では無いかと懸念して情報の正確性について確認する。

 

「事実だ。まずは私の親友である皇甫嵩と盧植からの書状、そして洛陽から来ている商人からも同様の話が流れている。そして私の方でも確認したら崩御してから直ぐに劉弁様が既に皇帝として即位されている」

 

複数の情報があり、更に商人という民間人まで崩御の報を知っていることは事実として間違いないと言っても良いだろう。

 

「それで白湯ちゃんにどう伝えるかですわね……」

 

紫苑の一言は碧を一番悩ましている大きな原因であった。父親である劉宏崩御についてどう知らせるか悩んでいたのであった。

 

「ああ我が娘なら単刀直入に言うが……白湯様にはそういう対応を取る訳にはいかんしな…」

 

何れは知らせなければならない話であるが、まだ幼い白湯にどう告げるか流石の碧も困っていたのであった。

 

「……申し訳ないですが、ここはやはり白湯様の夫としてご主人様の口から言った方がよろしいかもしれませんね」

 

一刀も立場的に分かっていたのかこれには躊躇せず

 

「そうだね…俺から言った方がいいだろう。じゃ紫苑も手伝ってくれるか?後、碧さんと真里は情報収集とこれを機に策動する者が居ないかどうかの調査よろしくお願いします」

 

一刀の言葉に三人は同意したのであった。

そして一刀と紫苑は白湯を探しにまずは白湯の部屋を訪ねる。

 

二人が部屋を訪ねると白湯は旅の疲れか寝台に寝そべっている状態であった。

 

白湯は恐らくこのまま放置されていたら、そのまま夕食まで昼寝していただろうが、一刀が部屋に入る合図であるノックの音が聞こえると慌てて目を覚ます(白湯にノックの事は教養済み)。

 

「ああ…ごめん。疲れて寝ていたのを起こしてしまったか」

 

「ううん、大丈夫だもん。でもこのまま放って置かれていたらそのまま寝ていたかもしれないけど」

 

「そうか…涼州の生活に慣れた?」

 

「うん。一刀や紫苑、璃々に蒼、皆、親切で助かっているもん」

 

「そうか、それは良かった。俺があまり白湯と接する機会が少し少ないと思って心配していたから安心したよ」

 

一刀は何とか話を切り出すタイミングを計ろうとするが

 

「なあ一刀、何かわらわに話があるのではないのか?」

 

何か普段違う一刀を見て白湯が何か感じ取ったみたいだ。

 

「さっき碧も普段と違っていた。何かあったのかわらわに教えて欲しいもん」

 

白湯からそう言われると一刀も覚悟を決めた。

 

「……さっき、白湯のお父さんが亡くなったと知らせが入った…」

 

「えっ!?それ本当の事なの!?」

 

「ああ…同じ知らせが複数あって、既に白湯のお姉さんでもある劉弁様が皇位に就いたという話だ」

 

「うっ……ううっ……ううっうっ……」

 

その場で力を失くした様に崩れ落ち、皇族の誇りなのか顔を両手で覆い隠しながら涙を見せまいと堪えようするも我慢できずに嗚咽に肩を震わせる白湯。

「白湯ちゃん、悲しい時は目一杯泣きなさい。私たちに遠慮しなくてもいいわよ」

 

紫苑の一言で悲しみを堪えていた白湯の我慢の決壊を破り、大声で泣くが二人は白湯が落ち着くまで黙って見守っていたのであった。

 

「……二人ともありがとう。それでこれからわらわをどうするつもりじゃ」

 

「どうするつもりって…どういう事?」

 

白湯の問いの意味が分かっていない一刀は逆に聞き直してしまう。

 

「いや…父上が亡くなったのじゃ。それで姉上が父上の跡を継いだことでわらわには人質として価値が無くなったも同然。それでどうするのか聞いたのじゃが…」

 

劉宏の崩御により、白湯は父親を失った同時に何太后一派への抑止力も無くなってしまった。現状、劉弁の後継者が不在であるため、もし劉弁に何かあれば降嫁した白湯に再び皇位継承する可能性は否定できない。

 

更に一刀たちは漢から見れば反旗を翻した反逆者で、何太后一派から見れば二人とも邪魔な存在だから一刀と白湯を纏めて始末することが可能になったことから白湯としては妻とはいえここに居られる理由が無いと思っていた。

 

「何言ってるんだ白湯、俺たちはもう家族だろう。何で出て行く必要があるんだ」

 

「でも…」

 

以前雪蓮が言った通り同盟を結んだものの、政局等により同盟破棄され、その裏切られた方が見せしめの為に殺される者が多いということは白湯も知っている為、まだ一刀の言葉に戸惑いを見せていた。

 

「白湯、信じてくれ。君を離すつもりは毛頭無い。それに君のお父さんからも頼まれている……もし、君に対して何か言う奴が居ても、俺が君を絶対に守ってやる」

 

「……本当に?」

 

「ああ本当だ。君を返す気など全くないし、もし漢が君が居ることを理由に再び戦いを挑んできても俺たちは剣を持って戦うだけさ」

 

一刀はそう力強く言い、白湯の頭を優しく撫でる。

 

「うっ……ううっ……ううっうっ……」

 

一刀からの決意の言葉を聞いて安堵したのか再び白湯は嗚咽を上げる。

 

しばらくすると白湯の嗚咽が収まり、すると白湯の表情が先程と違い真剣な眼差しになっている。

 

「一刀に一つ聞きたいがあるが…よいか?」

 

「ああ、いいよ」

 

「一刀は漢という国の事、どう思う?」

 

「……正直言って乱が続いている上、民が疲弊して、このままだと滅ぶのは時間の問題だと思うよ」

 

「そうか…父上も同じことを言っていた。このままだと再び民が泣いてしまうと…それでじゃ一刀、以前そちが反乱を起こした時に『民憂う心ある』と言葉を言っていたが今でもその心持っているか?」

 

「ああ、その気持ちはある。だけど自分が皇帝とかなりたい気はないよ。まずは俺たちを救ってくれた馬騰さんやここの民たちの為に尽くしていきたい。今はそれが精一杯だよ」

 

白湯は一刀の言葉を聞くと無言で机の引き出しの鍵を開けて、引き出しから一通の書状を取り出し、それを一刀に差し出す。

 

「これは?」

 

「これは亡き父上からの書状じゃ。父上が一刀の事を民の事を憂う者ならこの書状を見せなさいとそしてやり方は全て任せると言っておった」

 

一刀は白湯からそう言われると書状を開封する。

 

一刀はその書状をしばらく黙読して、読み終えると険しい表情になっていた。

 

「……ご主人様、どうかなされましたか?」

 

心配になった紫苑が一刀に声を掛けると

 

「この書状、紫苑にも見せてもいい?」

 

一刀は白湯に確認を取ると

 

「紫苑なら問題ないのじゃ」

 

白湯から承諾を得たので一刀は紫苑に書状を手渡す。

 

そして紫苑も書状を黙読して読み終えると驚いた表情をして

 

「ご主人様これは……」

 

「ああ……国譲り状だよ」

 

劉宏は白湯に預けた書状は何と漢を一刀に託す「国譲り状」であった。

 


 
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