No.911897

紫閃の軌跡

kelvinさん

外伝~止まれない歩み~

2017-06-28 11:50:07 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:2735   閲覧ユーザー数:2415

~リベール王国エイフェリア島 ホテル・アンスリウム~

 

リベールならではの多彩なコース料理の夕食を終えたⅦ組一同+αは各々自由時間を過ごしていた。その中でアスベルはというと……宛がわれた部屋で一人、得物である太刀の手入れを黙々とこなしていた。

 

「……メンテはそこまでいらないんだろうが、気分の問題もあるからな」

 

この世界に転生する際に神様の少女から渡された太刀、クラトス・アーヴィングに頼んでゼムリアストーンから鍛え上げた太刀と二本の小太刀、先日お礼という形でルドガーから渡された太刀の計五本を所持しているが、特殊な法術によって出し入れができるのでそこまで嵩張ったりすることはない。いずれも常軌を逸した武器や特殊な加工のために錆びたりすることは決してないのだが、それでも気分の問題もあるのだ。一通りメンテを終えてしまいこんだところで、扉のノック音が聞こえる。

 

「鍵は開いてるから入っていいぞ」

「失礼します。って、アスベル君一人なの?」

「あの二人なら風呂に行きたいと言ったからな。流石に長風呂はしないから後で行くとは言ったんだが……『じゃあ、ちゃんとケリをつけなさいよ』とはアリサに言われたが」

「あはは……」

 

入ってきたのはアスベルの予想通りの人物―――トワ・ハーシェルその人であった。どうやらすでに風呂に入ったらしく、浴衣姿だったのには流石のアスベルも驚きを隠せなかったが。そして、先に風呂に行ったアリサの言動からして何かしらの相談をしていたことにトワ自身も苦笑を浮かべた。

 

「で……きっかけは、四年前のあれか」

「そうなっちゃうね。アスベル君も本国のことはシルフィアちゃんから聞いてるでしょ?」

「そりゃあね」

 

“原作”とは異なるかもしれないが、トワは<守護騎士>第四位の位階を持つ実力者。かく言うアスベルも第三位の位階を持つ。トワの聖痕は背中に発現しているので、ワンピース型の水着を着ていたのだ。特別な階級を持つ人間の存在……それが女性ともなれば、よからぬことを考えようとする人間はいる。それがどういった手段なのかはあえて口にしないが。

 

「ダメもとで総長に相談したら、『それならば第三位に教えを乞うといい。何せ、周囲は女性ばかりだというのに、律儀に一線を張っているからな』ということになって、私もリベール行きになったって感じかな」

「片っ端から手を出したら絶対収拾つかねえし、本国にいる下衆共と変わらんし、なにより俺自身の体力と精根が底抜けになるのが目に見えてたからな」

「ふふ……アスベル君のサポートメンバー全員が好意を向けていたとしても?」

「………その節は感じてるんだが、下手に進展させるとシルフィが本国に突撃して建物がまた一件地下行きになるぞ……」

「え、なにそれ初耳だよ」

 

まぁ、要するにだ。年頃の女の子に囲まれているのに、彼女らに手を出さない人間ならば安全であると結論付けて送り出した、ということだ。本来ならばトワがリベールに来た時にそのあたりのことを聞くべきだったのだが、シルフィアの暴走の一件もあってすっかり聞きそびれていた。

 

「つまり、二人とのアレコレも見ていたというわけか」

「………うん」

「そっか。しかし、アリサに伝わっているということは、シルフィとレイアにも伝わっているとみるべきか……」

「ふふ、たぶんそうなるね。ふぅ……これでも、成長はしてるんだよ?」

 

大きく息を吐いたトワのほうを見たアスベルは次の言葉が出なかった。トワのとある箇所―――女性の武器ともいえる胸の大きさが変化していたのだ。どうやら気の流れを巧く使って、いわゆるロリ体型を維持し続けていたということだ。一瞬でも気をゆるめばばれてしまう危険性も孕んでいるが、これも日常生活においての負荷として活用していたと考えられる。しばらく絶句していたアスベルの次に放った言葉は

 

「…降参だ。無意識的に隠し続けていたということからして本気のようだからな」

「む~、それって冗談言っていると思ったってこと?」

「疑ったわけじゃないんだけど、その、そこまで本気だったことに驚いた」

「そっか……今すぐじゃなくてもいいよ。これから忙しくなりそうだし」

「ま、ありがとな」

 

そういった趣味は微塵もない。しかし、彼女にだって心の準備があるだろうし、なにより時期が時期なだけに迂闊なことはできない。仮に一線を踏み越えるにしても、相応の準備と心構えが必要なほどに。

 

「ただ、そこまで必要以上にアプローチかけた記憶なんて微塵もないんだが」

「……私たちのプライドを平気でへし折っちゃうお菓子を作るアスベル君が悪い」

「なんでやねん」

 

されど、トワの口から言われたことに関してだけは納得いかない表情を浮かべたアスベルであった。それはもう、思わずどこかの方言が混じった発言が出たぐらいに。流石にこのまま部屋に居続けるといろいろ問題がありそうなので、と述べてトワは部屋を後にした。それを見送ったのち、アスベルは静かに息を吐く。

 

「こうなる可能性は無きにしも非ずだったが……俺はリィンのはけ口じゃないんだぞ」

 

下手をすればトワもリィンの毒牙にかかる可能性があっただけに、これが結果的に良かったかどうかなんてわかるわけもない。幸か不幸か、アスベルのそういう方面でのスペックは非常に高い。性欲がないわけでもないし、どこかの文芸部部長が喜びそうな趣味なんて持ち合わせてもいない。このまま堂々巡りになるのは目に見えていたので、アスベルの出した結論は

 

「風呂、行くか」

 

まずは気持ちを落ち着けてから考えることにしたのだった。

 

 

特に風呂でめぼしいトラブルが起きることは……今回はなかった。そして翌日、朝食を済ませるとアスベルは一緒に移動していたアリサとセリカに向き直った。

 

「アリサ、セリカ。悪いけれど俺はこの後野暮用があるから、自由行動時間は動けそうにない」

「そうですか……」

「その分の埋め合わせぐらいは自由行動日ぐらいにするよ」

「ま、アスベルのことだから心配はしてないけれど……約束よ?」

「了解」

 

二人と別れたアスベルが向かった先は軍関係者以外立ち入りが許されていない場所―――エイフェリア島の半分を占めている、大規模演習場だ。ゲートの前の兵士に声をかけてゲートをくぐる。ゲートが閉じられた瞬間、アスベルは普段の学院生活では決して見せることのない真剣な表情を浮かべていた。

 

「あと二か月弱……しかない、というべきかな。そのために、残りの“神式”も完成させなければいけないな」

 

そう言ってアスベルは<神衣無縫>を身に纏いつつ、溢れ出るオーラを見えるか見えないぐらいのギリギリまで制御していく。身に纏うオーラが相手にも見えるということは、それだけでも力を無駄にしているということに他ならない。人の領域を既に超えながらも、未だ向上心を捨てないアスベルの目指す先は彼だけにしかわからない。

 

「手の届く範囲だけでも守りきる……そう決めた以上、立ち止まってなんていられない」

 

そう意を決すると、アスベルは一歩を力強く踏み込み、その場から消え去るような急加速を以て演習場の奥地へと向かう。

 

 

そうして演習場に籠ること約三時間……アスベルはジト目で眼前に映る人物を見やっていた。その人物はこの国はおろか周辺の国家にもその名を知られる“英雄”と呼ばれる類の人物。彼自身もまた、静の極致に踏み込んだ人間。

 

「で、何やってるんですか。母さんにはちゃんと説明したんですよね?」

「まぁな。それに、お前たちが強くあろうとしているというのに、俺だけ怠けるわけにもいくまい。この国を守る軍人であるならば……違うか? アスベル」

「こっちとしては、別に発破かけてるつもりはないんだけどな『父さん』」

 

リベール王国軍実質のトップである<剣聖>カシウス・ブライト中将。彼の纏う空気からしても手合せする気満々だということにアスベルは溜息を吐きたくなった。とはいえ、この手合せ自体やぶさかではないのも事実であった。

 

「言っておきますが……ある程度力の加減はしますが、手を抜くつもりはないので」

「ああ、そうしてもらわんと俺も鍛錬にならないからな(……そこまで磨き上げているとはな。これは、もうじき抜かれてもおかしくはないか)」

「(……―――とか思うぐらいには余裕がありそうだから、困るんだよな)」

 

しばしの静寂ののち、双方同時に地面を蹴り、互いの得物を振るう。

 

 

「もうじき夜か。というか、お昼抜きだったよ」

 

アスベルが施設のシャワーを借りて汗を流し…演習場の外に出たころには、もうじき太陽が地平線の向こうに沈みかけているぐらいに時間になっていた。時間にすると約八時間飲まず食わずで戦っていたということになる。先ほどの疲れを癒すよりもまずは何か食べようとホテルへと戻ることにした。

 

「って、アスベル!」

「お、アリサにセリカに、トワさんもか」

「今、ちょうどアスベルの話をしてたんですよ」

 

アスベルがホテルのロビーに着いたところで、アリサとセリカ、トワの三人と出くわした。どうやら一緒に夕食に行くようで、特に断る理由もなく同行することにした。今日の夕食は各自好きなものを食べるレストラン方式となっていて、四人はそのまま四人掛けのテーブルに座った。アスベルの隣にアリサ、向かいにセリカ、その隣がトワという塩梅だ。

 

「そういえば、トワ会長から聞いたわよ。昨日の話」

「遅かれ早かれだし、別に止めはしてなかったけど……直接話したのか?」

「そうだね。やっぱりギクシャクしたくなかったし。すんなり受け入れてくれたのには吃驚だったけど」

「アスベルの場合、一度や二度じゃありませんからね。それに、レイアという変わり種がいますから今更かと」

「それだとアイツが珍獣みたいな扱いじゃねーか…否定できない要素は多いが」

 

以前、自身とシルフィアの関係のことを総長に話したところ、返ってきた答えは『むしろストッパーができたことが喜ばしい。というか、<空の女神>からの教えでも別に一夫一妻を縛っているわけではないからな。そのためならば努力は惜しまない。むしろ喜んで協力するぞ?』と投げかけられたときは、流石にシルフィアをなだめるので一苦労した。そのあとでレイアが転生前の仮想の某怪盗もびっくりのアプローチをかけてきたものだから、それはそれで大変だったが。

 

「俺個人としては受け入れるけどさ、あっち的にこれはどうなのよ、ってことになる」

 

別に<守護騎士>を含めた星杯騎士の間での恋愛規定云々はないのだが、<守護騎士>三人が恋人関係としてつながるとなればそれに対してアクションを起こす可能性がある連中がいるのも事実。下手に部下が人質でもとられようものなら、最悪法国そのものを敵に回す覚悟はしているつもりだ。だが、その辺も自身の上司は想定済みだったようで……

 

「と以前は思ってたんだが……法王猊下から『恋愛は大いに結構』とかGOサインのようなものもらったらしいって総長から連絡を受けたから、考える必要もなくなってしまった」

「えぇ………」

「えと……法王って、アルテリア法国のよね?」

「はい。アルテリア法国の現法王、マーレンヴェルク・ファルンハイン猊下です」

 

アルテリア法国のトップである法王からそう返事をもらったのであれば、これ以上考えること自体馬鹿らしくなると結論付けるほかなかった。というか、下手に面倒事が増えるよりは遥かにマシな展開になったことに対してだけは感謝したいと思ったアスベルであった。

 

 

Ⅲのサイト更新がされたようで、セドリック・アルフィン・エリゼの三人……まぁ、いろいろ思うところはありますが、セドリックがどうにも不安というほかないです(傀儡的な意味で)

鉄機隊の三人も更新され、個人的にはエンネアが好み。

というか、未だに公表されないかの御仁は一体どんなラスボス臭を放ってくれるのか(ぇ


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