No.884578

司馬日記外伝(小ネタ) 大浴場の勝者は

hujisaiさん

今更ですが、飯坂様が第二期予告(嘘)のイラストを描いて下さりました!
イラストのシーンそのものずばりとまでは出来ませんでしたが、インスパイアされた小ネタです。

それにしても私の書くあの人は鬼のように強くて困ったもんです…

2016-12-22 00:32:41 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:8026   閲覧ユーザー数:5662

着替えと手拭いを入れた風呂桶を小脇に小走りで廊下を進み、大浴場の入り口の扉に手をかけると静かに暖簾をくぐる。

脱衣所への鍵はかかっていない、中に誰か――――一刀様が居る事の証に一段と胸が高鳴る。

周囲の廊下に人影が無い事をすばやく確認すると静かに扉を閉め、鍵をかけると広い脱衣所を右に進み、『管理職用(魏)』と表示された棚の脱衣籠に着替えを放り込む。

大浴場は主に定時後に大人数での利用がある為広大に作られており、脱衣所もそれに応じた広さである。入り口から向かって右から魏、三国以外の所属の者、蜀、左端に呉の順で脱衣棚――――部長・将軍級の者には専用の鍵付きの棚が与えられているが、これらは各国で最近管理職になった者らが希望し設置された者だという。曰く、魏の者らは申し訳なさ気に、蜀の者は妬ましげに『国王の隣に並んでは着替えづらい』と言った為らしい。

 

素早く服を脱ぎ、下着をはずして鏡の前で自身のモノを軽く持ち上げる。

以前、御伽前に楓御嬢様と風呂に御一緒した時に乳房の下部に下着跡が付いていた事を見咎められ、意匠は良いが寸法があっていないと厳しく御叱責の上下着屋に御嬢様同伴で直行させられている。その場で店員に寸法を測られ何着も試着し、普段用、御伽用、軍務・運動用、見せる用等と上京前の五年分程度も買わされたのにも驚いたが、御嬢様の御指示通りにその領収書を半信半疑で仲達に提出すると事も無げに半額は経費で落ちると言われた時は唖然とした。曰く、後宮の者の下着は一刀様の為であるからだと言う。

 

肌に何の跡も無い事にほっとしながら手を離すと、上を向いていたものがぷるんと正面を向いた。御嬢様にお叱りを受けた時に着用していたものは以前仲達が大トラになった際に無理矢理買わされたものだ。その仲達には及ばないが、一刀様のものになって以降他の者がそうなると言うように少し大きくなって来たのではないか。

『畢竟、一刀様にお尽くしする”おんなの身体”になる。案ずるな』

最近も飲みに連れ出して自分の身体に自信が持てないと相談した際、入職時では考えられない酔眼のしたり顔で頷く親友の顔を思い出す。

 

一刀様の為の、おんなの身体。

熱く甘い夜の記憶と今から起こるであろう事に思いを馳せ、昂ぶりと緊張を抑える溜息を一つ吐いて下着を降ろす。

ふと感じた違和感に、脱いだ下着をそのまま脱衣籠に入れずに手に取り二重の部分を確認する。

 

……………既に、私の娘の方は”一刀様のおんな”の自覚があるようだ。いや、あり過ぎだ。正直過ぎて母は恥ずかしいぞ。

顔が赤くなるのを自覚しながら、下着を手早く脱いだ服にくるんで入浴着を身体に巻き、浴場へと駆け出す。なに、すぐに湯を浴びてしまえば一刀様にばれることはない。しかし今後は私も下着の替えを更衣室に用意しておこう。

さあ、一刀様に御挨拶だ。一言目は『遅くなりました、泉です』で行こう。いや真名を差し上げたとは言え馴れ馴れしいか、伯道ですにしよう。

待ってたよ、泉さんとか言ってくれるだろうか。御優しい一刀様の事だ、きっと仰ってくれるだろう。いかん、顔の緩みが抑えられない。

 

 

 

そして洗い場の扉を開けると同時に。

呉側の入り口から似合いもしない雌臭さ満点の照れ顔で入ってきた野猿が、私のそんなにやけ顔を一瞬で般若の面にしてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

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「陽(太史慈)、陽!」

「あ?んだよ、ノック位しろよ」

今日は休みだ。亞莎が『女子力を上げるコツ』って特集がありますよって言ってたから生協でその雑誌買って来てごろ寝しながら読んでるけど、いまいち良くわかんねーなぁとか思ってたら雪蓮が俺の部屋にやってきた。

「一刀がね、今お風呂に行ったんだけど貴女に洗って欲しいんですって。行ってきてくれない?」

「はぁ?マジで!?」

慌てて跳ね起きたが、はっと思い返す。

 

「………ウソじゃねーだろうな?」

「あら心外ね。あたしが親友の陽に一度でもウソをついたことがあった?」

「山ほどあったじゃねーか!」

今までこいつのウソのせいで何回ひでー目に…えっと、ひでー目にあって、その後一刀様が可愛がってくれた事もあったかもしれねーな。

 

「信じてくれないなんて私悲しいわ…しょうがないわね、陽が嫌ならそれじゃ明命に頼」

「ま、待て!わかった信じた!信じたから!」

「ううん無理しなくていいのよ、第一マットプレイなら明命と正命(蒋欽)が第一人者だし。この機会逃したらもう一刀がお風呂に貴女呼ぶ機会なんて二度と無いかもとか全然考えなくていいのよ?文嚮(徐盛)とか、他にも一刀の身体洗いたいなんて娘呉だけだって掃いて捨てるほどいるんだから」

「や、やるってば、やるってばよ!だから待てよ!」

「ホントに?やる気あるの?」

「あるある、今着替え出したら行くからよ」

「どれくらいやる気あるか、ちょっと言葉で示してもらわないとねぇ?」

「はぁ?どうしろってんだよ、おめーが持って来た話だろうが」

「これ、小説で呉の娘がマットプレイする時の台詞なんだけど。これ笑顔で読めるなら貴女に任せてもいいわ」

箪笥から一番いい下着を出しながら答えると、『三国志 呉編 ○巻』って表に書かれた小説らしきもののある頁を見せられた。

なになに。

 

 

 

 

『一刃様ぁ♪これからぁ、女の子の一番えっちな○×△でぇ、一刃様の※■↑を洗わ◎%&*!?』

 

 

 

 

「バカかぁっ!?、こっ、こっ、こんなの言える訳ねえだろっ!」

本を床に叩きつける。

 

「あら、言えないの?明命と正命なら楽勝よ」

「そりゃあいつらは可愛いしそういうの言えるキャラだし!」

「亞莎だって」

「亞莎も可愛いじゃんかよ…すげえ恥ずかしがって嫌がりそうだけど」

「子敬だってきっと言えるわよ」

「あ、何かその絵面は痛そうだな」

「ほら出来ないのは貴女だけ。これ位言えないなら、残念だけどこの話は」

「待て」

「陽と私の仲だから、初めに貴女にと思ってきたけど悪かったわね。穏も最近仕事詰まってて色々溜まってそうだったし、そう言えば子烈(陳武)も今日暇だって言ってたかしらぁ?」

「………ぐ、…ぎ……」

 

 

 

俺に選択権は無かった。

 

 

 

言い終わってヒクつく人の笑顔覗き込んで『その顔が見たかったのよ』とか煽ってくる雪蓮の顔面に、衝動的に拳を叩き込みたくて堪らなかったが超いい話を持って来た事に免じてここは勘弁してやった。

 

 

 

 

「いってらっしゃーい、一刀と頑張ってねぇー♪………………………いっつも誤解されてるけど、私ウソはついてないのよねぇ。ウソは」

 

 

 

 

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「あのっ、かず………………おい、ンだよてめーは」

「何だは私の台詞だとっとと帰れ」

自分の言葉に余裕の無さを感じる、一瞬で沸点を超えかかっている自覚があるせいだろう。

目の前の野猿も弛みきった表情が消え失せ、奥歯をぎりっと鳴らして獰猛な表情を浮かべる。元野盗の品性丸出しだ。

 

「…騒ぎたくねえんだ、今すぐ帰れ」

「騒ぎたくないのは同感だが帰るのは貴様だ。私は一刀様のお召しで来ている」

「はぁ?一刀様がお呼びになったのはおめーじゃねえ、この俺だ」

「何だと?」

割り込みに来られては堪らないので止む無く一刀様の名を出したが、この猿は夢でも見ているらしい。

「寝言は寝てから言え。鎮西将軍東郷候曹子丹様の名にかけて、私が一刀様の御指名を受けて御伽に来ている」

「おぉ?こっちも元呉王の名にかけて、一刀様から御身体を洗えって御命令を受けてんだよ」

名を出された孫策様の姿を思い浮かべる。英雄の風はあるが今では若き楽隠居の身、酔っていたりふざける事も多いと聞く。

「はっ、大方酒席の言でも真に受けたのだろう。貴様のような野人に一刀様の御身体等任せられるものか」

「あぁ?ついこないだ初めて股ぐら血まみれにして痛い痛いってベソかいてた奴に御伽が務まるつもりで居るのか?」

「貴様一刀様を愚弄する気か?お上手な一刀様に『大変御優しく』して頂いたからな、血や痛みなど無かったも同然だ。阿婆擦れの破落戸相手では一刀様もやる気も何もなく形ばかり入れて出すだけだったろうがな」

「ざーん念だったなぁ、その一刀様はその阿婆擦れにべろちゅーしながら中出しまくりのぶっかけまくりで黒いバニースーツが真っ白になるまで御執心だったぜ?今からキュウキュウ絞り洗いして差し上げるんだから、血がこびりついたカッサカサ穴はお呼びじゃねえんだよ」

「ふん、泣き喚いてお情けで構って頂いてた事を知らない女が後宮に居るとでも思っているのかこのゴワゴワ束子が。貴様の期待に沿えなくて悪いが一刀様の手厚い御開発のお陰でな、いつでもお迎えする準備は万端で下着が乾く暇もない程だ。貴様さえ居なければな」

 

「…きれーに手入れされてんのが見えねえのかこのお子様×××の変態女が。てめー、今日こそ許さねぇ」

「貴様こそ引導を渡してやる。野猿が一刀様の回りをうろついて一刀様に獣姦趣味がお有りだ等と噂されないためにもな!」

言いながら、顎を狙って全力で右拳を突き上げた。

 

 

 

 

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「…………なんか洗い場の方で聞こえない?」

「…さあ?ここ露天ですから、邪な欲望で周りが見えなくなってるお猿さんでも騒いてるんじゃないですか?それより、浴槽ももう大体洗い終わっちゃいましたよ」

「ああ、ありがとう。雪蓮に暇で手伝える人誰か居たら呼んで来てってお願いしたんだけどねぇ?楓(曹真)にも声かけるみたいな事も言ってたけど」

「総務の人達に休暇出した上に今日は一人で過ごさせろって皆に自分が言ったの忘れちゃってんですか?お偉いさん達には月さんから今日はこっち(後宮)に近づくなって通達出てますから、そりゃ来ませんよ」

 

もう立場も何もない雪蓮さんは通達なんか知ったこっちゃないって曹真さんと示し合わせて仕掛けてきたんでしょうけどね。

折角の休暇に結局暇だからって風呂掃除なんて馬鹿なことさせといちゃいけないってとこには賛成しますよ。

「あっ……そうだった、七乃さんよく居たね?」

「まー暇でしたし、私ぺーぺーの派遣職員だからそういう連絡来ないんですよ。…疲れたんで、一刀さんとこの小浴場入れてもらえません?こっち(大浴場)お湯張りも時間かかりますし」

 

 

 

事後シリーズ4に続くとか続かないとか。


 
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