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真・恋姫†無双 外史 ~天の御遣い伝説(side呂布軍)~ 第九十六回 第五章B:御遣い奪還編⑫・恋の忠臣なのにそんなことも分からないのか!?

stsさん

みなさんどうもお久しぶりです!初めましてな方はどうも初めまして!

本章もぼちぼちクライマックスです。

稟に追い詰められた一刀君たち、果たして、、、!

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2016-10-30 00:02:06 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:2295   閲覧ユーザー数:2001

 

 

ここは許城の地下にあるという牢屋。

 

そこで見張りの任についていた臧覇の元に、突然、曹操がやって来たかと思うと、臧覇は南征軍に抜擢されたのであった。

 

 

 

<臧覇、あなたに南征軍への従軍を命じます。孫策劉備連合軍を潰すためにその力を存分に振るってみせなさい>

 

<・・・御意>

 

<わわわ、えーとえーと、ちょっと待ってください曹操様!>

 

 

 

しかしその時、牢の中から待ったをかける声が響いた。

 

曹操に服従を迫られるも、拒否して幽閉されている徐庶である。

 

 

 

<徐庶?>

 

<口を閉じろ無礼者!華琳様に気安く話しかけるな!>

 

<構わないわ桂花。徐庶よ、ようやく私に知恵を貸してくれるのかしら?>

 

 

 

当然、曹操には知恵を貸さないと頑なに主張してきただけに、曹操の傍に控えていた荀彧が目を三角にしながら黙れと言い放つが、

 

曹操は構わないと荀彧を制すると、徐庶に言葉を続けるよう促した。

 

 

 

<わわわ、えーとえーと、その臧覇という方、もっとよく拝見したいのですが、牢から出してもらえませんか?>

 

<見たいから牢から出せだと!?何を馬鹿なことを―――!>

 

<わかったわ。臧覇、徐庶を出してあげなさい>

 

<御意>

 

<華琳様ぁ~>

 

<わわわ、えーとえーと、ありがとうございます>

 

 

 

すると、徐庶は臧覇をよく見たいから牢から出してほしいという、理解のできない突拍子もないことを言うものだから、

 

ますます荀彧は怒りをあらわにして拒否しようとするが、曹操はすました顔で了解し、

 

臧覇もただ曹操に言われた通り徐庶を牢から出してしまい、荀彧はただ嘆くことしかできなかった。

 

 

 

<・・・・・・・・・・・・・・・・・・>

 

<・・・・・・・・・そ、そんなにジッと見つめるんじゃないぜ>

 

 

 

そして、牢から出された徐庶は臧覇の元に近づくと、ジッと、ただジッと臧覇の瞳の中を覗き込むように臧覇の顔を見つめ続けた。

 

徐庶と臧覇の顔と顔の距離は十数センチ。

 

その時間数十秒。

 

徐々に徐庶の顔も紅潮していき、さすがの臧覇も、顔立ちも整い、同年代の少女の中でも、

 

一際可愛らしい容姿という形容が相応しい徐庶にそのようなことをされてはたまったものではなく、

 

ついに耐え切れず思わず顔をそらしてしまう。

 

 

 

<何、顔なんか赤らめて、アンタまさかコイツに気があるとでも言いたい―――>

 

 

 

そのような徐庶の様子に、荀彧はくだらないものでも見るような視線を送るが、

 

 

 

<曹操様、遠征中、背中には気を付けた方が良いですよ>

 

 

 

突然、何の前触れもなく、徐庶は曹操に警告を発した。

 

普段のオドオドした弱弱しくも可愛らしい声色からは想像もつかないような、大人びた、重々しい一言。

 

 

 

<(――――――このチビガキッ!?)>

 

 

 

その刹那、臧覇は五臓六腑が口から飛び出るような感覚に襲われた。

 

肝を冷やすなどという次元ではない。

 

数秒もの間心臓が止まったのではないかとも思えるほどの衝撃。

 

なぜ悟られたのか。

 

呂布の元から離れ、曹操軍に降ってから数年もの間、隠し通してきた呂布に対する絶対的忠誠心。

 

益州で再び起ち上がったと聞いたあの日以来、必ず曹操軍を出し抜き、呂布の元に帰ると誓った心の内を、

 

今の一瞬で徐庶にすべて読み取られたのだと、徐庶の言葉は物語っていると臧覇は直感していた。

 

 

 

<何、突然訳の分からない―――>

 

<そう、助言をありがとう>

 

<華琳様!?>

 

 

 

対して、荀彧は徐庶の言葉の意味を理解していないようであったが、

 

曹操はその真意を悟ったか悟らないか、言葉を受け取ると礼を述べた。

 

 

 

<・・・・・・わわわ!?えーとえーと、もう牢に戻っても良いですか?>

 

<何勝手な事―――!>

 

<臧覇、徐庶を牢に返してあげなさい>

 

<・・・御意>

 

<華琳様ぁ~~~!!>

 

 

 

その後、何事もなかったかのように徐庶は牢に戻された。

 

臧覇が南征軍から外され、許城に残留するよう伝えられたのは、その数日後のことである。

 

 

 

 

 

 

【豫洲、許城北側】

 

 

許城の北では、郭嘉の仕掛けた十面埋伏の計にかかった張遼たちが、必死の抵抗を試みるも、事態は一向に進展していなかった。

 

 

 

張遼「アカン、防戦一方で全然ウチらのしたいことをさせてもらえへん!」

 

 

 

張遼は飛んでくる数本の矢を偃月刀で弾き飛ばし、突いてきた長槍兵の攻撃をかわし、

 

カウンターの一撃で袈裟懸けに切り伏せながら、イライラと悪態をついた。

 

 

 

公孫賛「無理もないさ!これだけ囲まれてしまえば騎馬兵の機動力も何もあったものじゃない!こちらの攻め手を殺した上手い策だよ!」

 

 

 

一方の公孫賛も、飛んでくる矢を避けながら、長槍兵の攻撃を剣で防ぎ、苦い表情で敵の無駄のない策に舌を巻いていた。

 

機動力が売りの騎馬兵たちも、多くの伏兵に囲まれ一所に集まってしまっているため、身動きが取れない状況にあった。

 

一人、また一人と、曹操軍の攻撃の餌食になり、騎馬兵たちは倒れていく。

 

 

 

張遼「感心しとる場合かいな!?このままやったら城門に攻撃すらできずにお陀仏や!陽動役にすらならへんやないか!」

 

 

陳宮「いえ、それは違うです!この十面埋伏の計を受けている時点ですでに陽動としての役目は十分果たせているはずなのです!伏兵の

 

数はざっと見積もって2万ほど。いくら曹操軍とはいえ、主軍がほとんどいないはずなのですから、多くの兵力をここに注ぎ込んでいる

 

と考えて間違いないのです!」

 

 

 

事実、陳宮たちは知る由もないのだが、ここに集まっている曹操軍の兵士を除けば、残っているのは、

 

東門の守備に着いている満寵一人と、城内に残っている郭嘉と兵士百余名、

 

魏続らが城内から追い出した非番の兵が数名程度しかおらず、陽動役としての仕事は十二分に果たされていると言えた。

 

 

 

公孫賛「それもそうだ!なら、あとは私たちが踏ん張って、ななからの合図を待つ。予定通りそれでいいんだな!?」

 

陳宮「はいです!」

 

 

 

敵の策にかかったとはいえやることは変わらない。

 

高順の合図を頼みに士気を上げ、張遼たちは各々の持つ得物を握る手に力を込めた。

 

しかしその時、思わぬ報告が兵士からもたらされた。

 

 

 

北郷兵「ぐ、軍師様!!た、大変なことに!!」

 

陳宮「何事ですか!?」

 

 

 

それはあまりにも唐突で、起こってほしくないと願っていた最悪の知らせ。

 

 

 

北郷兵「そ、曹操軍本隊の動向を注視していた物見より報告が・・・南方より紫紺の曹旗を掲げた一団が許を目指して北進しているとの

 

こと!!」

 

 

 

その瞬間、陳宮たちの表情から血の気が引いた。

 

そして一瞬の間の後に襲い掛かる驚愕と焦燥。

 

 

 

陳宮「何ですと!!??」

 

張遼「アホな!!もう戻って来たっちゅーんかいな!?ありえへん!!」

 

 

公孫賛「孫劉同盟と十数日程度しか戦っていない計算だぞ!?大陸を代表する二大勢力の激突だろう!?数週間、下手をすれば数か月、

 

最悪年単位の戦いになってもおかしくないはずだろうに、曹操軍はそんなに圧倒的だったのか!?」

 

 

 

もちろん、当初から曹操軍が戻ってくることによって挟み撃ちになるのを避けるために、

 

速攻の強行軍が求められると言っていたが、それはあくまでも最悪の事態を想定してのことなのである。

 

曹操軍と孫劉同盟が戦うというのは、事実上現在の大陸のナンバーワンとナンバーツーの勢力がぶつかるに等しいことであり、

 

数週間、下手をすれば数か月、あるいは年単位の長きにわたる戦闘が繰り広げられるとも考えられていた。

 

にもかかわらず、曹操軍が帰還したという報は、やはり到底容易に受け入れられるようなものではなかった。

 

 

 

陳宮「落ち着くです!!何も全軍が戻ってきたわけではないはず。恐らく、本城からの援軍の求めに曹操が応じたのです!!」

 

 

 

なので、陳宮が希望的色合いの強い主張で場の混乱を鎮めようとしたこともやむを得ないことであった。

 

しかし、陳宮の主張もまた、ありえない話ではないのである。

 

たとえ曹操にとって孫劉連合との戦いが一大決戦であろうとも、

 

本拠が攻められ落とされそうになっているとなれば、当然援軍をよこすだろうし、

 

事実、曹操軍と孫劉同盟の兵力差も圧倒的であると予想できるだけに、援軍に当てる兵力も十分にあると予測できた。

 

 

 

公孫賛「どちらにせよ、もう時間がないぞ!!」

 

張遼「恋、なな、早う頼むで・・・!」

 

 

 

リミットは迫りくる曹操軍にはさまれずに逃げられる退路を確保できる直前まで。

 

しかし、どちらにせよ張遼たちにできることは、呂布と高順が北郷を奪還しやすいように陽動役に徹することだけ。

 

受け身状態でしかいられないことに歯噛みしながら、ただ、高順からの知らせを祈ることしかできないのであった。

 

 

 

 

 

 

【豫洲、許城東側】

 

 

許城の東側では、満寵の仕掛けた新兵器によって、北側の戦場以上に混迷を極めていた。

 

 

 

馬超「ふん!無人連弩がなんだ!ようは壊せば済む話だろ!皆、この程度の兵器じゃあたし達は止められないってことをあの変態野郎に

 

知らしめてやれ!」

 

 

涼州兵「ウェエエエエエエエエエエエエエエエエエィッッッ!!!!!」

 

 

 

無人にもかかわらずひとりでに攻撃して来る連弩に最初は怯んだものの、

 

すぐさま所詮相手は絡繰りと馬超が喝を入れることで涼州軍は再び息を吹き返し、元の勢いに戻っていた。

 

 

 

鳳徳「破壊っ!」

 

 

 

先陣を切ったのは鳳徳であった。

 

鳳徳は背負っていた巨大な黒棺を両手でつかむと、無造作に連弩に向けて振りぬき、容赦なく叩き潰してしまった。

 

 

 

馬岱「へへーん、動かない分、ヤバめな武将と戦うより全然平気だもんねー♪」

 

 

 

続いて馬岱が、馬超が、涼州兵たちが、次々と無人連弩を破壊していった。

 

無人とはいえ連弩は連弩。

 

連弩の破壊が目的となれば、動かぬ的を攻撃するだけである。

 

当然、途中、連弩による攻撃や、遠方からの投石による攻撃によって何人もの兵士達が倒れるが、それでも涼州軍の勢いは止まらない。

 

数十機ほど設置されていた無人連弩も次第にその数を減らしていった。

 

 

 

満寵「さてさてー、お高い兵器が次々と潰されるんだねー?これは金庫番さんからまたまたお折檻な予感なんだねー?」

 

 

 

そのように自慢の兵器が次々と破壊される様子を目の当たりにするが、しかし満寵に焦った様子は見られない。

 

グルグル眼鏡のずれを直し、どこか楽しささえ感じられる雰囲気でしきりに何かをブツブツとつぶやいていた。

 

 

 

満寵「さてさてー、でもこれは必要経費、失敗を繰り返してこそ新たな発見も見つかるものなんだねー?」

 

 

 

失敗は成功の基。

 

今現在進行形で失われていく兵器は、次なる成功のための犠牲。

 

どういう仕組みなのか、満寵はヘアバンドのウサミミをぴょこぴょこ動かしながら、

 

ニンマリと楽しげに書簡を取り出すと、猛スピードで何かメモしているのか書き込み始めた。

 

 

 

馬超「よし、この調子であの変態を直接叩くぞ!あれさえ潰せばここは抑えたも同然だ!」

 

 

 

そして、あらかた無人連弩を破壊した馬超は、今度は目標を満寵に定めた。

 

そもそもこの東側エリアには敵兵としては満寵しかいないのである。

 

無人とはいえ人の手あってこその絡繰り、という満寵の言葉が真実なのであれば、

 

満寵さえ仕留めることが出来れば、無人兵器も止めることができるはずなのである。

 

 

 

満寵「さてさてー、良いことを思いついたから今度はこれを試しておくんだねー?」

 

 

 

しかし、涼州軍の盛り上がりなど我関せずと、マイペースに書簡を懐にしまった満寵は、

 

グルグル眼鏡を煌めかせ、ニヤリと不敵な笑みを浮かべたその刹那、複数個所からガタガタと音がしたかと思うと、

 

新たに3機ほどの兵器が現れ、それぞれが涼州軍に襲い掛かった。

 

 

 

涼州兵「ぎゃぁあああ!!??」

 

 

 

突然の新規の兵器の出現、そして有無を言わせぬ無人の不意打ち。

 

一気に数十名ほどの涼州軍が兵器に撃ち抜かれその場に倒れ去った。

 

 

 

馬岱「―――ッ!?何あのへんてこな形の・・・もしかして、連弩なの!?」

 

 

 

現れた兵器は、見た目は六つの筒状のものが束ねてあり、土台に固定されている。

 

現代の言葉を借りれば、ガトリング砲そのものであった。

 

 

 

馬超「あの筒みたいなのが回転して、そこから矢が次々放たれているみたいだけど、もしあの筒の横から垂れているのが矢なんだったら、

 

マズくないか・・・?」

 

 

鳳徳「連射っ!」

 

 

 

馬超の言うように、現れたガトリング砲は回転しながら次々に矢を放ち、打ち尽くすと、

 

次の矢が自然と筒の中に吸い込まれ次矢が装填されているようであった。

 

 

 

満寵「さてさてー、真桜様謹製の回転動力に、チョコさんから聞き取った、陥陣営の多発式連弩。さしずめ、“回転式多発連弩”といった

 

ところなんだねー?名前は現在募集中なんだねー?」

 

 

 

つまり、満寵は李典の獲物『螺旋槍』の動力源となっているモーターに、潼関の戦いの折に張郃が目撃した

 

(というより餌食になった)、高順の多発式連弩『幻獣』の情報をもとに、ガトリング式の連弩砲を生み出してしまったのである。

 

 

 

馬超「・・・け、けど、結局は地面に張り付いた兵器に違いはない!動かない的なんてあたし達には通用しないぞ!」

 

 

 

それでも馬超が怯んだのは一瞬の事。

 

どれだけ強力な兵器であろうと、そのものが動けないのであれば問題ないと再度自軍を鼓舞した。

 

 

 

満寵「さてさてー、そこで取り出したるは、衝車とかについている何の変哲もない車輪なんだねー?で、これに真桜様謹製の回転動力を

 

取り付けたものがこちらになりますなんだねー?」

 

 

 

しかし、満寵は馬超の想像の一歩も二歩も先を進んでいた。

 

満寵は馬超の指摘を待っていましたと言わんばかりに、ウサミミをヒョコヒョコ楽しげに動かしながら、

 

後ろを向いてごそごそすると、何の変哲もない車輪の両輪を見せつけ、次いでその車輪を捨てると、

 

再び後ろを向いてごそごそし、今度は両手で持ち、見せびらかすように頭上に掲げた。

 

今度のも車輪の両輪に違いはなかったが、なんと何もしていないのにグルグルとひとりでに回転しているではないか。

 

 

 

馬岱「うそ、まさか・・・!」

 

満寵「さてさてー、ここで問題なんだねー?この自動車輪に色々なものを組み合わせるとどうなるんだねー?」

 

 

 

そして、極めつけは満寵が持ち出した、正確には一度物陰に消えて再び現れたときに乗っていたもの。

 

それは先ほどのガトリング式連弩砲なのだが、他の3機と圧倒的に違うのは、あたかも衝車のように車輪によって動いているところ。

 

それだけでも驚きだが、それが人力によって動いているのではなく、車輪が勝手に動いているのである。

 

固定式でない連弩砲。

 

満寵は、馬超の指摘した欠点を当然のものと、すでに改良していたのであった。

 

その刹那、涼州軍にジワリと焦燥の色がにじみ出てくる。

 

 

 

満寵「さてさてー、予算超過が怖くて発明なんてやってられないんだねー!?まだまだ試したいものがたくさんあるんだねー!?簡単に

 

死んでもらっても困るからほどほどに耐えてから死ぬんだねー!?」

 

 

 

そのような涼州軍の分かりやすい反応に満足がいったのか、満寵はグルグル眼鏡越しからでもわかるような恍惚の表情を浮かべ、

 

ウサミミをグイグイ引っ張りながら鼻息荒く、連弩砲をぶっぱなしながら前進するのであった。

 

 

 

 

 

 

【豫洲、許城side北郷】

 

 

郭嘉の合図で現れた伏兵に囲まれてしまい、北郷たちは身動きが取れない状況に陥っていた。

 

 

 

臧覇「チッ、まったくついてないぜ。アンタが鼻血なんか噴き出して倒れていなきゃ、今頃南征軍に従軍していただろうに、やっぱり、

 

神算鬼謀の天才軍師相手に出し抜くのは辛いぜ」

 

 

郭嘉「ふふ、どの道私でなくとも誰か優秀な軍師が一人は居残っていたでしょう」

 

臧覇「よりにもよってアンタがって話だぜ。荀彧あたりなら、まだ出し抜けそうだぜ」

 

 

郭嘉「彼女は一見穴だらけですが、あれでも我が軍の筆頭軍師。軍略では負ける気はありませんが、少なくとも、弁は私よりもはるかに

 

達者ですよ。さすがにその発言は舐め過ぎなのでは?」

 

 

 

臧覇は双戟を構えるも、囲まれてしまっている今、北郷と徐庶をかばいながら戦うのは困難と、

 

何か打開策はないかと考えを巡らしながら、意味のない言葉を投げかけ時間を稼いでいた。

 

 

 

臧覇「(おい、御遣い、ちょうど郭嘉の後方に一か所正方形の石床があるのが見えるぜ?)」

 

 

 

北郷は臧覇に言われるまま、視線だけを郭嘉の後方にやってみると、

 

確かに、整然と並ぶ城の床石の中、一か所だけ形の異なる個所を確認することができた。

 

 

 

北郷「(ああ、見える。長方形の石床の中に一か所だけ正方形のがある)」

 

 

臧覇「(そこを持ち上げると隠し通路の入り口になるぜ。中は急な坂になっているから迷わず滑り落ちるんだぜ。一見ビビるが、ちゃんと

 

外に繋がっているんだぜ。)」

 

 

北郷(緊急避難袋的な感じなのかな・・・)

 

 

 

北郷は臧覇の言葉から、何となく避難訓練で滑らされた緊急避難用袋を思い浮かべていた。

 

 

 

臧覇「(で、ひたすら落ちたらちょうど城の西側に出られる。あとはそこから西門を目指せば、侯成が門兵を調略して馬を用意して待って

 

いるはずだからそれに乗って脱走するんだぜ)」

 

 

郭嘉「何をコソコソと相談しているのですか?往生際が悪いですよ」

 

 

 

臧覇が会話を途中でやめ、北郷と何やら相談をしているようだったので、郭嘉はくいっと眼鏡を押し上げ、割り込みを入れた。

 

 

 

郭嘉「もうこれ以上の問答は無用ですね。かかれ!臧覇の生死は問いません!御遣いと徐庶は生け捕りにしろ!」

 

曹操兵「応っ!!」

 

 

 

そして、もう十分に時間はやったと、郭嘉は兵士たちに北郷たちを捕えるよう命じた。

 

郭嘉の命を待っていましたとばかりに、伏兵たちは気勢を上げ、ジリジリと北郷たちに迫って来た。

 

 

 

北郷「(分かった、けどちょっと待て。君はどうするんだ?)」

 

 

 

伏兵たちがついに動き、北郷は焦るも、まだ話は終わっていない。

 

しかも北郷にとってどうしても聞いておかなければならないことであり、北郷は早口で臧覇に確認をとった。

 

 

 

臧覇「(予定が変わったんだぜ。郭嘉がいなければ俺も一緒にと思っていたが、どう考えても大人しく通してもらえそうにないぜ。絶対、

 

足止め役が必要だぜ)」

 

 

北郷「けど―――!」

 

 

 

臧覇が殿に残ると宣言したその瞬間、北郷の声量は思わず通常のものとなっていた。

 

話が違う。

 

つまりは臧覇を捨て駒に北郷は逃げろと言うことである。

 

北郷にとって、とても容認できる提案ではなかった。

 

 

 

臧覇「いいか、まず徐庶は曹操の元に置いていたら絶対ダメだぜ。コイツの才は底が知れないんだぜ。そして何より、奉先様にとって、

 

アンタは特別なんだぜ。そして、俺の望みは奉先様が幸せでいられることだぜ。なら、俺がするべきことは、何としてでもアンタをここ

 

から逃がし、奉先様の元に帰すことなんだぜ!」

 

 

 

しかし、臧覇は北郷の言葉を遮るように言葉を重ねた。

 

こちらの声量は普通以上の大きなものとなっている。

 

徐庶を曹操軍に留めることに対する不安要素。

 

つまりは後の呂布たちに対する障がいとなる恐れのあることをあらかじめ排除しようということ。

 

そして何より、北郷を呂布の元に返すという絶対的目的。

 

臧覇にとってそれら二つの事柄を成し遂げられるのであれば、ひいては、

 

呂布にとって有益になることであるのならば、進んで自らは犠牲になろうという強い意志の表れであった。

 

 

 

北郷「それは違う!!」

 

 

 

だが、そのような臧覇の強い意志に対しても北郷は一切怯むことなく反論した。

 

もはや敵兵に囲まれているという状況を忘れているのではないかというほどの剣幕で臧覇の言葉を否定し、北郷は臧覇に掴み掛っていた。

 

突然大声で内輪もめを始めるものだから、曹操軍の兵士たちも何事かと攻撃を躊躇していた。

 

 

 

北郷「恋の幸せを望む?それなら、恋は君がオレを逃がすために犠牲になったと聞いても幸せでいられると思っているのか!?君は恋の

 

忠臣なのにそんなことも分からないのか!?」

 

 

 

確かに呂布にとって北郷は特別な存在である。

 

それは、実際呂布と北郷の関係を目の当たりにしていない臧覇でも、

 

再起は不可能と思われていた呂布の、北郷と出会って以後の活躍を伝え聞くだけでも十分わかっていた。

 

だが、本当に呂布は北郷が戻って来るだけで幸せなのか。

 

仲間の犠牲を耳にし、はたして呂布は平然としていられるのか。

 

そもそもなぜ呂布は、北郷と出会う前、我ここにあらずの、憔悴しきった状態に陥ってしまったのか。

 

 

 

??「ハァ、そういうことですよ臧覇殿。なぜ以前呂布殿があのような不甲斐ないお姿になられたのかもうお忘れなのですか?この場合、

 

当然呂布殿の元に帰るのはあなたも含まれているのです」

 

 

??「はっ!なら、足止め役は俺達裏切り者の役目だろうが!!」

 

 

 

そして北郷が臧覇に詰め寄っていた次の瞬間、城の外から何者かが次々と縄を使って城の上階から飛び込んで来た。

 

 

 

郭嘉「何!?」

 

 

 

先頭の二人のうち、一人は営業スマイルが顔から剥がれることのない、狐を思わせる切れ長の目の優男であり、

 

もう一人はアメフト選手を髣髴とさせるガタイの良い大柄の山のような男である。

 

 

 

臧覇「魏続!宋憲!お前ら・・・!」

 

 

 

予想だにしない仲間の登場に、臧覇は思わず手にした双戟を落としそうになる。

 

 

 

魏続「ハァ、居残り組の元呂布軍の兵士たちをかき集めて来ました。時間稼ぎには十分でしょう」

 

宋憲「はっ!だからさっさと脱走しちまいな!」

 

 

 

つまり、魏続と宋憲は、城内から兵士をあらかた追い出した後、北郷たちの脱走の手助けになるのではと、

 

連携のとりやすい元呂布軍の兵士である、下邳で魏続・宋憲と共に曹操軍に降伏した者達をかき集めていたのであった。

 

 

 

北郷「でも君たちは・・・!」

 

 

 

しかし、これでは殿が臧覇から魏続宋憲に変わっただけである。

 

いかに二人が裏切り者とはいえ、今は共に脱走を試みる協力者であり仲間なのである。

 

そう易々と切り捨てられるはずもなかった。

 

 

 

魏続「ハァ、ご安心を御遣い殿。我々は臧覇殿のように自身の命を投げ打つようなお涙頂戴の精神は持ち合わせておりません」

 

宋憲「はっ!そういうことだ!だから安心して逃げちまいな!俺達は俺達で上手いことやらせてもらうぜ!」

 

臧覇「チッ、お前ら後で絶対ぶん殴ってやるか覚悟するんだぜ!」

 

 

 

だが、なぜか二人の言葉には妙な説得力があった。

 

事実、二人は裏切り者という烙印を押されて曹操軍に降り、そして今もなおしぶとく生き抜いているのである。

 

臧覇は魏続のお約束の減らず口に応え、双戟を握る手を強めた。

 

 

 

臧覇「行くぜ!」

 

北郷「応っ!」

徐庶「はいです!」

 

 

 

覚悟の決まった臧覇の合図を口火に、北郷・徐庶も覚悟を決め、臧覇に追従し駆けだした。

 

目指すは郭嘉の後方にある隠し通路。

 

臧覇は魏続・宋憲の登場で混乱していた曹操兵を双戟で斬り飛ばしながら前進した。

 

 

 

郭嘉「馬鹿な!見す見す逃がすと思って―――」

 

宋憲「はっ!うるせぇ眼鏡っ子!余裕かましてると俺が喰っちまうぞあァ゛」

 

 

 

すぐさま郭嘉が臧覇を止めるべく進行方向に兵士たちを集めさせ進路をふさぎにかかるが、しかしその時、

 

宋憲が舌なめずりしながら郭嘉を睨み付け挑発すると、手にした槍をあたかもバットの素振りでもするように振りぬいた。

 

そして、振りぬかれた槍の先には、ちょうど曹操兵がおり、

 

 

 

曹操兵1「うぎゃぁ!?」

 

 

 

見事にクリーンヒット。

 

そのまま宋憲の馬鹿力によって打ち抜かれた曹操兵は吹き飛ばされ、

 

ライナーのごとく一直線に飛んでゆき、次々と兵士を巻き込み、しかしその勢いはとどまることを知らず、

 

 

 

曹操兵2「アギャ!?」

 

曹操兵3「ぐほぉあぁ!?」

 

曹操兵4「のわあぁああ!?」

 

曹操兵5「おっふぉへぁ!?」

 

郭嘉「なっ!?ちょ―――きゃあ!?」

 

 

 

ついに郭嘉を巻き込んでそのまま後方にある壁まで吹き飛んでしまった。

 

 

 

魏続「ハァ、人は球じゃありませんよ宋憲」

 

 

 

そのような宋憲の馬鹿力に、魏続はいつもの大業な身振りで肩を空かしながらため息をついた。

 

 

 

宋憲「はっ!魏続、お前は相変わらず何でもかんでも縛ってばっかだな!」

 

 

 

一方の宋憲も、魏続がため息交じりに次々と手品の如く曹操兵を縛り上げていく様子に、相変わらずと馬鹿でかい声量ではやし立てた。

 

 

 

臧覇「今だぜ!中に入るぜ!」

 

 

 

そして、郭嘉も吹き飛ばされ戦場が大混乱に陥った隙を見て、臧覇は一気に隠し通路のある床まで到達すると、一気に床石を持ち上げた。

 

中を覗き込んでみると真っ暗で何も見えない。

 

 

 

北郷「応―――ってちょっと待ってこれなんかものすごくヤバイやつじゃ―――」

 

臧覇「さっさと行くぜ!」

 

 

 

何か嫌な予感を本能的に感じ取った北郷は、このような緊急事態にもかかわらず、

 

別の意味で大量の汗を体中に感じ、飛び込むことを躊躇するが、

 

 

 

北郷「ちょま、押すなよ!絶対押すなって言ってるじゃないかぁああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

 

臧覇が有無を言わさず北郷を蹴り飛ばし、北郷は悲鳴と共に隠し通路の闇へと消えていった。

 

 

 

【第九十六回 第五章B:御遣い奪還編⑫・恋の忠臣なのにそんなことも分からないのか!?】

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

第九十六回終了しましたがいかがだったでしょうか?

 

曹操軍の援軍の存在、満寵の暴走(オーパツ的な意味で)、北郷の脱出成功

 

何だかむりやり話をまとめにかかっている感がハンパないですが、

 

長々と続いた第五章もあと三回でエピローグですのでご安心を。

 

なお、満寵さんの新兵器の補足をしますと、要は手動で後輪に付いた動力(つまりモーター)のオンオフの切り替えが可能。

 

あとは前輪を手元のレバーで操作して曲がることができる優れものです。

 

本体部分は本文説明でもあるようにガトリング式の弩砲。これもスイッチ一つでモーターのオンオフが自由自在。

 

これだけやりたい放題していますが、それでも真桜の螺旋槍に比べたらインパクトが低いという不思議。皆ドリル大好き。

 

 

それではまた次回お会いしましょう!

 

 

 

そりゃ押すなと言ったら押されるよ一刀君、、、

 


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