No.799206

第七十二回 第五章A:御遣処刑編①・御遣い殿は真正の大馬鹿者と言えます

stsさん

みなさんどうもお久しぶりです!初めましてな方はどうも初めまして!

今回から本編再開です!

シリーズ名が不穏すぎますが、まずはプロローグをば

続きを表示

2015-08-30 00:21:37 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:4116   閲覧ユーザー数:3476

 

【荊州、江夏郡】

 

 

ここは荊州江夏郡にある、とある孫策軍の拠城。

 

時は、涼州の群雄、馬騰が、潼関で曹操軍と対峙する際、益州の北郷軍に対して援軍を求めに出向いていた頃。

 

真夏の日差しが空気を熱し、風もないせいかうだるような熱気に包まれた室内では、

 

しかしダレた様子など一切見せずに、険しい表情で議論が繰り広げられていた。

 

 

 

周瑜「ふむ、こちらは劉備殿の兵と合わせても約7万といったところか・・・恐らく劉表が曹操に兵を提供することを見込めば20万は

 

超えてくるだろう・・・やはり、まだまだ心許ないな」

 

 

 

中でも、中心的に話を進めているのは、膝のあたりまで伸びる長い艶やかな黒髪に、

 

肩から胸、そしてお腹にかけて大胆に南部特有の褐色の肌を露出させた、紅を基調にした服に身を包んだ女性である。

 

知的さを一層引き立てる眼鏡をかけた彼女の名前は周瑜。

 

孫策軍の筆頭軍師であり、大都督をも兼ねる孫策軍の中枢的人物である。

 

周瑜は豊満な胸を支えるように腕を組みながら、険しい表情で圧倒的な兵力差を憂いていた。

 

 

 

劉備「周瑜さん、やっぱり、天の御遣い様にも声をかけるしか―――」

 

 

孫策「確かに御遣いの軍は強力だわ。何といっても、私の妹の軍を圧倒的な兵力差があるにもかかわらず叩き潰したんですもの。でも、

 

そう簡単にいくかしらね?」

 

 

 

そして、ここ孫策軍の居城には、現在劉備他数名の者が密かに訪問しており、

 

来たる曹操軍の大規模な南征に備えて密談を交わしているところであるのだが、

 

周瑜が苦言を吐露するように、孫策軍と劉備軍を合わせても、到底曹操軍の兵力には敵わないというのが実情であった。

 

そのため、劉備は予てから案のあった、北郷軍にも援軍を要請してみてはと提案したのだが、

 

部屋の上座に座っていた女性が劉備の意見に対して難色を示した。

 

ポニーテイルに結った薄桃色の髪を膝のあたりまで伸ばし、紅を基調にした服は、

 

肩から胸、そして背中にかけて褐色の肌を大きく露出させ、さらに大きなスリットによって、両太ももをも大きく露出させていた。

 

額に孫家特有のビンディーをあしらった彼女の名前は孫策。

 

江東の虎と謳われ恐れられた孫堅が死んだ後も、その凄まじい武力や政治力、そして、人望を活かし、

 

孫家の目覚ましい躍進を成したその実力を称え、かつての楚王項羽の再来とまで謳われ、

 

小覇王と称される、江東一帯を支配する孫策軍頭首である。

 

 

 

劉備「え?それってどういうことですか?」

 

呂蒙「確かに御遣いの軍は強力です。個々の武将の実力もさることながら、寡兵で大軍を破る知をも兼ね備えています」

 

陸遜「ですが、合肥の件がありましたからねぇ~」

 

 

 

劉備の問いかけに、呂蒙は両手を長い袖の中に隠したまま、胸の前で合わせながら話し、

 

陸遜が間延びした口調でニコニコしながら呂蒙の言葉を引き継ぎ答えた。

 

 

 

劉備「それは仲間たちを殺した人なんかに背中は預けられないってことですか?」

 

 

孫策「違うわよ。どの国も生き残るために必死で戦っての結果なのだから、それについては何も言うことはないわ。もちろん、感情的な

 

抵抗感がないと言えば嘘になるんでしょうけど、このご時世、昨日の敵は今日の友、なんてのはあって当たり前よ」

 

 

 

確かに、合肥で大量の仲間を北郷軍(ほぼ張遼一人にだが)に殺された孫策軍にとって、

 

北郷軍と手を組むなど容易に受け入れられることではないはずであったが、

 

この乱世においてはどの国も相手を殺し、また殺されているのだから、

 

利害が一致するのなら、かつて殺し合った間でも手を組むのは常である、と孫策は言ってのけたのである。

 

つまり、曹操軍という大敵を退けるために必要であるのなら、感情論を抜きにして北郷軍と組むことに異論はないと言っているのである。

 

その普段の孫策を知っている者にとっては、気味悪く、むしろ恐怖心しか覚えない、

 

孫策の落ち着き払った静かな言葉に、孫策サイドでは張りつめた緊張が走っていた。

 

 

 

陸遜「ただ、『天の御遣い』という性質上、そうコロコロと立ち位置を変えるとは考えにくいんですよねぇ~」

 

 

呂蒙「『乱世を鎮める英雄』・・・もし、御遣いが勢力上曹操軍に大陸を統一させるのが乱世を終わらせる近道と考えているのでしたら、

 

こちらには付かないでしょう」

 

 

 

そして、孫策の言葉をつなぎ、陸遜と呂蒙は続けざまに北郷軍を戦力に計算する難しさを説いた。

 

 

 

周瑜「何にせよ、我々はまだ一度も御遣い本人に会ったことがないんだ。とにかく直接本人に会って話してみなければ何とも言えんな。

 

ところで、孔明殿は御遣い本人に会ったことがあると聞くが、その辺りどうお考えかな?」

 

 

諸葛亮「そうですね・・・合肥で御遣い様が曹操軍に付いたのは、恐らくかつて下邳で呂布さんが命を見逃されたため、その借りを返す

 

ためそうなったものと思います。実際、私は一度だけ御遣い様がお仲間にとお誘い下さった際にお会いしたことがありますが、あの方は

 

曹操さんのような、武力で強引に領地を増やすやり方に同調する方には見えませんでした」

 

 

 

周瑜に促され、劉備の隣で静かに議論を聞いていた諸葛亮は、口元に手を当てながらしばし考えると、

 

やがて、北郷が曹操に協力して大陸を統一させようとするような人物ではないと、

 

かつて荊州隆中の庵で北郷と出会って話した時の印象に基づき、自身の見解を述べた。

 

 

 

孫策「でも、人は力を持てば性格も変わるものよ。かつての私の母、孫堅がそうだったようにね」

 

 

 

しかし、そのような諸葛亮の見解を、孫策は無表情をやや崩し、苦い表情で否定した。

 

孫策の脳裏には、忘れようにも忘れられない、孫家にとって運命の分岐点ともいえる光景が浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

<―――これで戦乱の世は避けられぬか。遅かれ早かれいずれは袁紹か曹操辺りに潰されていただろうが、やはりまだ生かしておくべき

 

だったかのぅ。はて、どうしたものか・・・虎視眈々とは言ったものの・・・ふむ、長沙を治めるだけで今は手一杯だと言うに・・・>

 

 

<堅殿!これを見てくだされ!>

 

<祭よ、どこで油を売っておったのじゃ?早うドブネズミが都に放ちよった火を兵たちに消させぬか>

 

<すでに手配は済ませております!それよりも、今しがた、帝の墓陵の様子を見に行っていたのですが、その時これを見つけまして>

 

<『受命於天 既壽永昌』・・・こ、これはもしや・・・!>

 

<はい、玉璽に相違ありませぬ>

 

<・・・くく・・・くくくく・・・そうかそうか・・・天はわしにこのまま天下取りに邁進せよというのだな・・・>

 

<か、母様・・・?>

 

<・・・くくく・・・見ておれ袁術・・・すぐにお主ら袁家など平らげてみせるぞ・・・!>

 

 

 

 

 

 

孫策「孫堅は元々自領さえ安泰だったら満足な性分だったわ。けれど、洛陽で張譲を殺した際、偶然玉璽という強大な力を手にして以来、

 

天下取りという野心が生まれてしまった。結果、劉表軍なんかに虚を突かれて死んでしまったわ」

 

 

 

淡々。

 

一言で表すならまさにそれだった。

 

孫策は一瞬でよぎった嫌な思い出を頭の奥に押しやり、再び落ち着いた様子で自身の母親を、

 

巨大な力を得た末に人が変わった者の例として挙げた。

 

 

 

孫策「確か、合肥での戦いが、御遣いが益州を平定して間もない時期だったはずよね。中央から離れているとはいえ益州も立派な一国。

 

突然巨大な権力を手にして、御遣いの性格が変わることなんて十分あり得る話よ。それに、あなたに会ったのもどうせあなたの才欲しさ

 

なのだろうし、悪い印象を与えるようなことは話さないでしょうしね。ふふ、曹操軍に付いたのは案外本意だったかもしれないわね」

 

 

 

あくまで諸葛亮の見解は自身がたった一度会って話したことに基づくもの。

 

しかも、会って間もないならまだしも、それなりに時間も経過しての話である。

 

さらに、北郷が諸葛亮に会いに行った目的がその才能を手中に収めるためなのであったら、

 

当然悪印象を与えるようなことは話すはずもないのである。

 

つまり、北郷が益州という巨大な力を手にし、権力におぼれてしまったというのも十分考えられる話であった。

 

しかし・・・

 

 

 

諸葛亮「その心配もありません」

 

 

 

諸葛亮は孫策の言葉を否定するのに、一切の迷いもなかった。

 

 

 

孫策「あら、なぜかしら?」

 

 

 

諸葛亮にきっぱりと否定された孫策であったが、逆に興味を持ったらしく、落ち着き払った様子から一転、

 

若干普段通りのどこか楽しげな、それでいて悪戯っぽい不敵な笑みを浮かべながらその理由を尋ねた。

 

 

 

諸葛亮「ここ最近の御遣い様の様子は、すでに調べさせてあります」

 

周瑜「ふむ、さすがは孔明殿、手回しが早くて助かる」

 

諸葛亮「趙雲さん」

 

 

 

諸葛亮は、自分とは反対側の、劉備の隣に控えていた女性に説明を促した。

 

白を基調にした振袖姿に、スカイブルーの長い髪を後ろで一つに束ねたその女性の名前は趙雲。

 

元公孫賛軍であり、現在は劉備に仕える武将である。

 

 

 

趙雲「心得た。まずは前提として、御遣い殿は真正の大馬鹿者と言えます」

 

孫策「大馬鹿者?」

 

 

 

趙雲もまた、両腕を組んで黙って話を聞いていたのだが、諸葛亮に促され、ゆっくりと語り始めたところ、

 

語り始め初っ端から、趙雲の口から出た言葉に、理解できない孫策は疑念に満ちた表情で思わず鸚鵡返しで聞き返していた。

 

 

 

趙雲「そう、大馬鹿者です。これはまだ私が幽州を離れ、一人メンマを伝道する旅をしていた時のことです」

 

劉備「あ、前から思ってたんだけど、星ちゃんってもしかして巷で噂のメンマの伝道師だったの?」

 

 

趙雲「まぁ、一部そのような呼ばれ方をされていたやも知れませぬが、その話はまた日を改めて。そして、私がちょうど益州でメンマを

 

伝道していた時の話ですが、その時私は初めて御遣い殿に会いました」

 

 

 

趙雲が折角話を始めようとするのに、劉備が自由な発言で話を脱線させようとするが、趙雲は慣れた様子で退け、話を続けた。

 

 

 

諸葛亮「はわわ、そうだったんですか?」

 

 

 

しかし、説明させた諸葛亮本人が、趙雲の話をまるで初めて聞いた情報かのような独り言を発していた。

 

 

 

周瑜「・・・・・・孔明殿?」

 

諸葛亮「はわわ!?いえ、どうやら本題に入る前の前置きだったようで―――」

 

趙雲「・・・コホン、よろしいですかな?」

 

 

 

当然、趙雲の話す内容を知っているはずの諸葛亮のこのような反応に、何だか心配になり思わず問いかけていた周瑜であったが、

 

どうやら諸葛亮が想定していた話にまだ入っていないだけだったようで、

 

慌てた様子で弁解を試みたが、そのような周瑜と諸葛亮のやりとりを雑音と捉えた趙雲は、

 

わざとらしく大げさに一度咳払いすると共にジトッと一睨みすることで、各国を代表する軍師たちを見事に黙らせて見せた。

 

 

 

趙雲「で、その時出会った御遣い殿というのが、部下の女子が、雨で流れが急になっていた川で溺れそうになっているところを、自らの

 

危険も顧みず飛び込み、見事に救出してみせたのだが、運悪く流木で頭を打ってしまい気を失い、あと一歩のところで死にかけたという

 

間抜けな男だったというわけなのです」

 

 

 

二人の軍師が黙ったのを確認すると、趙雲は改めて北郷と初めて出会った時の様子を思い浮かべながら説明を続けた。

 

 

 

趙雲「まぁ、その女子というのも、何だか煮え切らぬ感じでして、せっかくなので私が後押しをしてやったのですが―――と、話が脱線

 

してしまいましたな。とにかく、今の話を聞いて御遣い殿とはそういう性質の男だとお分かりいただいたと思うが、ここまでが前提です。

 

そして、ここからが本題。最近、今度は劉備軍の間者として、成都に潜入していたのですが、その時出会った御遣い殿というのが、これ

 

また身を挺して、前とは別の部下の女子を、盗人が放った矢から守ろうとする、という既視感を覚えるほどの、まったく清々しいほどの

 

大馬鹿者ぶりだったのです」

 

 

 

趙雲は以前と現在という二つの情報を合わせて説明することで、現在の北郷が変わることのない、

 

いい意味での愚か者であり、孫策が心配するような考えを持ち合わせるような人物ではないということを示したのである。

 

 

 

趙雲「これらのことから想像するに、御遣い殿は権力に溺れるといった類の話とは縁遠い人種と言えましょう」

 

孫策「身を挺してねぇ。ふーん、そんなのが乱世を鎮める救世主だっていうの?」

 

陸遜「とても上に立つ人間とは、まして、この乱世を生き抜けるとは思えませんねぇ~」

 

 

 

しかし、北郷が権力におぼれるような人物ではないということについては納得を得られたようであったが、

 

今度は別の問題として、北郷が本当に世間が騒ぐほどの人物なのかという疑問が生まれているようであった。

 

 

 

周瑜「けれど、そういう考えなしの大馬鹿者、どこぞの誰かさんに似ていなくもないがな、孫策?」

 

 

 

一方、周瑜はまた別の意味で思うところがあったらしく、

 

孫策を横目でニヤニヤしながら見ながら、あからさまに含みのある言葉を告げた。

 

 

 

孫策「あら、私が命知らずとでも言いたいわけ?私の場合は実力あっての最前線よ?」

 

 

 

周瑜の指摘に対して、孫策は若干頬を膨らませ気味に反論した。

 

確かに、孫策は大将なのに最前線で武を振るうスタイルを貫いており、

 

一見命知らずなことこの上なく、仲間のために自身の身を危険に晒す北郷とは同一ではないまでも、

 

類似しているという周瑜の指摘は、ど真ん中ではないが的を射ていると言えた。

 

しかし、孫策自身の化け物じみた実力を加味したら、孫策の反論もまた納得のいくものであった。

 

 

 

周瑜「まぁ、今はそういうことにしておこう。とにかく、まだ不確定要素が多いが、今は少しでも戦力が欲しいところだ。ここは御遣い

 

にも同盟を持ちかけるとするか・・・どうだ、孫策?」

 

 

孫策「何よ、私に確認なんて、らしくないわね。まぁでもいいんじゃないこの際。天の御遣い、いろんな意味で興味が出たし」

 

諸葛亮「では、私たちの将に、北郷軍と面識がある者が何人かいますので、交渉には私たちが行くということでいいですか?」

 

周瑜「ふむ、確かに、我らでは未だ北郷軍に対して思うところがあるものも多いか・・・了解した、お願いするとしよう」

 

 

 

まだどこか思うところがあるのか、周瑜は納得のいかない険しい表情をしていたが、

 

孫策の賛成によって諸葛亮が話を先に進めたため、渋々了承する形となった。

 

 

 

周瑜「まぁ、お分かりかとは思うが、くれぐれも曹操軍の偵察にはご注意願おう。この会談も、恐らく曹操軍は偽の情報をつかまされて

 

別の場所を偵察しているだろうから、気取られてはいまい」

 

 

諸葛亮「・・・はい、もちろんです」

 

 

 

同盟を組んでいるとはいえ、やはり軍師にとって頭の切れるものと話していると、

 

どうしてもその裏を読もうとしてしまうきらいがあるのか、

 

その刹那、規格外の頭脳を持つ軍師たちの、不敵に静かに燃える視線が交錯した。

 

 

 

 

 

 

【涼州、漢陽郡、馬騰集落】

 

 

北郷たちは馬騰に夜が更けるまでもてなされ、あっという間に朝日が顔を出していた。

 

どうやら宴の最中に疲れたのか、あるいは酔いつぶれたのか、とにかく眠っていたらしく、北郷が目覚めたのは宴の会場の床であった。

 

そして、北郷を覚醒へと導いたのは、両サイドからすーすーと定期的に聞こえてくる寝息であった。

 

北郷が寝ぼけ眼で左右を確認してみると、その寝息の正体は、北郷同様にその場で寝落ちしたであろう陳宮と高順のものであった。

 

一瞬どういう状況になっているのか理解が及ばなかった北郷の時間は、両サイドから種類の異なる、

 

女の子特有のほんのりとしたあまり香りが、鼻孔から脳内へと染み渡ることで、

 

クラクラと思考停止状態に陥ると共に、完全に止まっていたが、やがて、この状況を、

 

つまり、北郷が大の字になって眠っていた両サイドで、見事に左右対称に添い寝のような格好で、

 

陳宮と高順が眠っていたという状況を理解し、ガバッと勢いよく起き上がろうとするものの、

 

そんなことしたら二人とも起きちゃうし折角気持ちよさそうに眠ってるのにいやいやむしろオレの方がこの状況は気持ちいいとかしばらくこのままでいたいとかそういう話ではなくてだな、

 

などと一人ブツブツつぶやく様子は、傍から見れば怪しいことこの上ない状態であった。

 

しかし、次の瞬間何者かの視線を感じ、えも言われる不安に襲われた北郷は、恐る恐る振り返ってみると、

 

爆睡状態でぐちゃぐちゃになっている馬騰一家の隣で、馬岱がニヤニヤしながら北郷たちのことを見ているのが目に映り、

 

また、別の方に目をやると、たまたま宴の後片付けをしていた鳳徳と目があい、無表情にジーッと見つめられ、

 

嫌な汗をこめかみ辺りに感じたその刹那、「不潔っ!」などと言われてしまったものだから、

 

北郷は音速をも超える勢いで起き上がり、紳士的に優しく二人を揺り起した。

 

幸いと言うべきか、二人は無意識のうちに添い寝をしていたらしく、

 

目を覚ました時には本人たちが北郷と一緒に寝ていたなどという記憶はない訳で、

 

目覚めた瞬間、いやこれには深い訳が別にやましい考えがあって一緒に寝ようなどとっていうか何勝手に隣で寝てやがるですかぁ!

 

などという、微笑ましい言い訳からの逆ギレちんきゅーキックという悲劇が起きるという事態は避けることができた。

 

 

 

 

 

 

北郷「なんだか忙しなくてすいません。昨日はあんなにもてなしてもらって、しかも朝食まで用意してもらってありがとうございました」

 

 

 

北郷たちは名残惜しみながらも、南蛮族のことが気がかりなため、軽く朝食をごちそうになると、すぐに暇乞いをしていた。

 

 

 

馬騰「ケホッ、いやなに、こっちこそ成都が大変だってことも知らず無理に呼んですまなかったね。大事になってなきゃいいけど」

 

 

 

馬騰は相変わらず乾いた咳をついていたが、昨日の宴で北郷と打ち解けたためか、話し方が堅くなくなっていた。

 

 

 

馬騰「それにしても、息子たちが見送りに来れなくて、本当に情けないったらありゃしないよ」

 

韓遂「馬騰殿、あなたが呑ませすぎたのだぞ。馬騰殿と同じように飲める人間など滅多にいないのだぞ」

 

鳳徳「酒豪っ!」

 

北郷「ははは、オレは全然気にしませんよ。まぁ、起きれないほど昨日はたくさん楽しめたってことですから」

 

 

 

現在北郷たちの見送りには、ちょうど昨日の宴で同席だった馬騰、馬超、馬岱、韓遂、鳳徳がいたが、馬休、馬鉄の姿がなかった。

 

どうやら昨日馬騰に大量に酒を飲まされたのがたたり、今は爆睡状態だった床から自室へと移動し、布団の中だという。

 

 

 

北郷「また、体の具合がいい時にでも是非成都に来てください。いつでもお待ちしてます」

 

馬騰「ケホッ、では娘たちをつれて、後日改めて挨拶に行こうかね」

 

馬超「やっぱあたしも行かないとダメなのか、面倒だなぁ」

 

馬岱「またまたーうれしいくせにっ♪」

 

馬超「だ、誰が!」

 

馬岱「あー、顔真っ赤だよー?」

 

馬超「★■※@▼●∀っ!?」

 

 

 

馬超が面倒くさそうに後頭部に手をあてがいながら告げた言葉に、馬岱がニヤニヤしながらからかうことで、

 

馬超は顔を真っ赤にさせながら声を裏返らせ気味に焦って反応したため、

 

もはや誰の眼から見ても馬岱の指摘が真実であることは明らかであり、馬岱の最後のとどめの追い打ちによって、

 

馬超が奇声を上げているのを馬騰サイドはホクホクといった様子で眺めているのだが、一方北郷サイドはというと、

 

なぜか北郷が刺殺されても不思議でないというほどの鋭い視線を陳宮と高順から浴びるはめになり、

 

北郷の内臓がキリキリと痛むのであった。

 

 

 

北郷「そ、それじゃあオレたちもう行きます」

 

 

 

これ以上ここに留まることは自身の寿命を縮めることに直結すると悟った北郷は、

 

口早に別れのあいさつを済ませると、成都へ帰還する途についた。

 

 

 

【第七十二回 第五章A:御遣処刑編①・御遣い殿は真正の大馬鹿者と言えます 終】

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

第七十二回終了しましたがいかがだったでしょうか?

 

さて、今回から御遣い伝説前半ラストの章となるわけですが、見ての通り思いきり第四章の続きです。

 

なぜなら本来は第四章と第五章で一つの章だからなのです(パートABCとかにしてもよかったんですけど・・・汗)

 

孫策軍・劉備軍も動き出し、例の戦いへと着々と進行しているわけですが、そんな中でも一刀君たちは相変わらずという安全地帯。

 

一刀君、南蛮軍のこともう少し気にしてもいいんだよ・・・

 

 

それでは、また次回お会いしましょう!

 

 

 

焔耶の伏線ようやく回収 汗

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
14
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択