No.840085

九番目の熾天使・外伝 ~改~

竜神丸さん

強・敵・再・来

2016-03-31 15:13:55 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:5736   閲覧ユーザー数:1622

「―――れ」

 

声が聞こえて来る。

 

「―――りしてくれ」

 

自分の身を心配してくれているかのような声だ。その声に導かれるように、二百式の意識は少しずつ闇の中から解放されていく。

 

「―――しっかりしてくれ、二百式殿!!」

 

「ッ…」

 

目覚めた二百式の視界に映ったのは、心配そうな表情で見ているアカメの素顔だ。二百式はイゾウとの戦闘で受けたダメージで、身体中に痛みを感じつつもどうにか左手で起き上がる。

 

「!! 二百式殿、目が覚めたのか…!」

 

「アカメか……今、状況はどうなってる? ワイルドハントは…」

 

「そんな事より、その傷は一体どうしたというんだ…!! 傷口が塞がってるとはいえ、長時間も放置して良い傷ではないぞ!!」

 

「そういう訳にも行かん…ッ……良いから、まずは状況を…」

 

ちょっと待て。

 

立ち上がろうとしたところで二百式は気付き、思わずそう呟いた。

 

「…アカメ、今何て言った?」

 

「何って、長時間も放置して良い傷では…」

 

「そうじゃない、その前だ」

 

「? 傷口が塞がっている、と言ったが……二百式殿の能力で、傷口を塞いだのではないのか?」

 

「…何?」

 

そう言われて、二百式はイゾウに斬られた右腕に視線を向けた。アカメの言う通り、確かに右肩にかけて斬られた傷が完全に塞がっている。そして腹部の傷口もだ。あれだけ多くの血を噴き出していた筈の腹部も綺麗に傷口が塞がれており、二百式は数秒間だけだが驚いて目を見開いた。

 

(…一体、誰が俺の傷口を塞いだというんだ?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、王都中心街では…

 

 

 

 

「会いたかったぜクソ甲冑野郎……その余裕ぶった態度に、一発ぶちかましたくて仕方なかった…!!」

 

『達者な口を聞けるだけ、元気にはなったようだな……キリヤ・タカナシ』

 

狭い路地にて、ロキ逹が黒騎士と対峙しているところだった。シュラの首を刎ねたばかりである黒騎士が剣を鞘に納める中、ロキ逹は突如現れた彼に対して一斉に身構えている。それは反管理局勢力(レジスタンス)の一員である琥珀や、先程までフリーダムな雰囲気を醸し出していた葵すらも同じだった。一方で、黒騎士の事をよく知らない瑞希が朱音とげんぶに問いかける。

 

「朱音、それにげんぶさん。あの妙な甲冑さんは何者なのかしら…?」

 

「黒騎士とかいう不審極まりない奴よ」

 

「奴の所為で、俺達の任務も何度か失敗してしまっています…」

 

「!? OTAKU旅団のメンバーでもそんな事が…」

 

「ふぅん、凄く真っ黒な殿方……そうね。まっくろくろすけとでも呼ぼうかしら?」

 

「葵さん、その呼び方は色々マズい!?」

 

葵と琥珀のコント染みたやり取りにも特に反応が無いまま、ロキは黒騎士と真正面から向き合う。

 

「俺達の獲物を横取りするとはな……一体どういうつもりだ」

 

『俺とお前達、双方にとって邪魔な存在を消してやったんだ。ありがたく思わないのか?』

 

「逆に聞くぞ。ありがたく思って欲しいのかテメェは?」

 

『…確かに思ってはいないな。それより……“眼”の調子はどうだ?』

 

(! コイツ、アイオンの眼の事を知っている…?)

 

黒騎士の発言に驚くロキ。しかしそれを表情に出したりはしなかった。ただでさえ厄介な強敵が目の前に立っている以上、下手に隙を作ってしまうようなマネだけは何としてでも避けたかったからだ。

 

「…眼の調子は良好さ……今すぐテメェをぶった斬れるくらいにはなぁ!!!」

 

「!? 待て、ロキ!!」

 

『ほぉ…?』

 

げんぶの制止も聞かず、ロキは急加速して黒騎士へと接近していき、双剣のように構えていた二本のデュランダルを黒騎士のボディに思いきり振り下ろす。

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

 

 

 

 

 

しかし…

 

 

 

 

 

 

『ならば見せて貰おうか』

 

「―――ッ!?」

 

二本のデュランダルを同時に叩き込まれたにも関わらず、黒騎士は無傷のまま平然と仁王立ちしていた。

 

『その自信が……一体、何時まで持つのかを!!』

 

「!? ぬ、ぐぅぅぅぅぅぅぅぅ…!!」

 

黒騎士が放った掌底で、ロキは一瞬で朱音逹のいる後方まで大きく後退させられた。デュランダルを×字にして防ぎはしたものの、デュランダルを通じてロキの両手にとてつもない衝撃が響き渡っていく。

 

(速い!! 今のままじゃ反応出来ない……なら!!)

 

「嘗めるなぁ!!」

 

『また突っ込むか、学習能力の無い奴め…』

 

再び突っ込んで来るロキを見て、黒騎士は呆れたように首を振ってから素早く居合い斬りを繰り出す。突き出された剣先はロキの顔面を捉え―――る事なく、ロキは首を反らして剣を回避していた。

 

『!?』

 

「ぜやぁ!!」

 

ロキの後ろ蹴りが黒騎士の装甲に炸裂し、今度は黒騎士の方が大きく後退させられた。黒騎士はブレーキをかけるように両足を踏ん張らせ、立ち止まってから興味深そうにロキを見据える。

 

『なるほど、やはり覚醒(・・)していたか……だがまだだ。能力が強くとも、能力の使い手自身が弱ければ意味が無い!!』

 

「…ッ!!」

 

黒騎士の降るう剣が、巨大な斬撃をロキ目掛けて放出。それを見たロキはデュランダルを握る力が強まった。

 

(来るか!! あの時、俺が敵わなかった一撃…!!)

 

そう、これがかつてリニアレールでの戦いで、ロキを敗北へと追い込んだ攻撃だった。かつてのロキは油断していたとはいえ、この一撃を防ぎ切れず一方的に打ち破られ、敗北してしまったのだ。

 

(確かに今の俺では、まだ“眼”の力を発揮し切れないかも知れない……それでも!!)

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」

 

『…!!』

 

ロキが×を描くように振るったデュランダルからも、×字型の巨大な斬撃が放出。黒騎士の放出した斬撃と真正面から激突し、大きな衝撃波と共に互いの斬撃が相殺される事となった。驚く黒騎士に、ロキはデュランダルの剣先を向ける。

 

「お前を倒す為に、俺は地獄(ソラ兄さんとの特訓)を乗り越えてみせた…!! 今の俺は、あの時までの俺とは決定的に違う!!」

 

『…そのようだな』

 

黒騎士の左手にボウガンが出現する。

 

『今のが防げないようなら、俺はお前に見切りを付けていた』

 

「ッ!!」

 

ボウガンから放たれた一撃が、ロキに向かって一直線に飛んで行く。それに対してロキが回避行動を取ろうとしたその時、真横から割って入って来たげんぶがアギト・フレイムフォームに変身し、フレイムセイバーの一撃で飛んで来る矢を弾き返す。

 

『む……お前か、本郷耕也』

 

「二人で盛り上がっているところ悪いが、お前の相手はロキだけじゃないぞ」

 

「私達を忘れて貰っては困るわ」

 

「ッ……げんぶ、それに朱音さんや瑞希さんまで…」

 

『…やれやれ、仕方の無い連中だ』

 

アギトだけでなく、朱音と瑞希もロキの前に立つ形で黒騎士と対峙し、黒騎士は思わずそんな呟きを零す。

 

呆れているのか、楽しんでいるのか。

 

黒騎士の呟きの意味に気付ける者は、この場には誰もいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな状況になっているとは露知らず、先に楽園(エデン)に帰還していたメンバー逹は…

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、まずは傷の手当てをしないといけませんね」

 

「すまない、わざわざこんな事まで…」

 

ユミカ、ジョシュア、サヤ、そしてマユの四人を無事に保護したディアーリーズ達は、医療室にて四人の傷の手当てを行っていた。ちなみに手当てを行っているメンバーはディアーリーズと、たまたま楽園(エデン)に滞在していたaws、FalSig、そして刃の四人だ。

 

「はぁ…」

 

そんな中、医療室のベッドに寝かされていたユミカは不安そうに溜め息をつき、awsがそれに気付く。

 

「む、どうした?」

 

「どうしたも何も、これから先が不安でしょうがないのよ。何で救援を求めた筈のOTAKU旅団に殺されかけるような目に遭わなきゃいけない訳? あの目付き悪い戦闘狂にマッドっぽい科学者め…」

 

「げ……もしかしてお前等、ZEROと竜神丸に出くわしたのか?」

 

「うわぁ、それはドンマイとしか言いようがありませんね。まさか喰らう事が大好きなZEROさんに実験が大好きな竜神丸さんという、OTAKU旅団において最も教育に悪い二大危険人物と出くわすなんて…」

 

「に、二大危険人物って……君達、だいぶ苦労してるみたいだね」

 

「あぁ、分かるのかねジョシュア君。そうとも、ZEROと一緒の任務になるたびに始末書を大量に書かされる羽目になるわ、任務で怪我をするたびに竜神丸にウイルスの実験台をやらされそうになるわ、私達がこれまでにどれだけのストレスっが溜まって、胃に穴をあけられ続けてきた事か…」

 

「胃痛で苦しんでるのって主にawsさんと支配人さんっすけどね~」

 

「言うなFalSig、悲しくなるから」

 

「…アンタ、苦労してんのね」

 

(マジで厄介者なんだな、あの二人…)

 

ジョシュアに励まされたのを切っ掛けに、自身の苦労の日々を語り始めたaws。ユミカとジョシュアは話を聞いて苦笑いしか出来ず、FalSigが呑気にそう呟き、刃が呆れたようにそんな事を思っていた中…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「痛っ…!」

 

「あ、すみません! 大丈夫ですか?」

 

「だ、大丈夫です。消毒液が染みただけですから…」

 

ユミカやジョシュアとは離れた位置のベッドで、ディアーリーズが真優の傷を手当てしていた。傍ではサヤが心配そうに二人の様子を眺めている。

 

「ねぇねぇ、お姉ちゃん治りそう?」

 

「うん、大丈夫。大した傷じゃないから、きっとすぐに治るよ」

 

「そっか、良かった!」

 

サヤは真優の傷の事を心配していたのだろう。ディアーリーズが優しく答えると、サヤはすぐに嬉しそうな表情を見せた。それを見た真優は申し訳なさそうにディアーリーズに話しかける。

 

「あの……すみません、ご迷惑をおかけしてしまって…」

 

「いえいえ。僕達OTAKU旅団も、反管理局勢力(レジスタンス)にはお世話になっている身ですし。お互い助け合っていきましょう」

 

「…はい。そう、ですね…」

 

ディアーリーズが優しく語りかけても、真優はイマイチ元気な返事を返せなかった。もちろん、それに気付かないほどディアーリーズも鈍くはない。

 

「…私なんかに、誰かを助けられるんでしょうか」

 

「! 真優さん…?」

 

その時…

 

「おぉーい皆の衆!!」

 

「うぉい!?」

 

医療室の扉がバンと勢い良く開かれ、蒼崎が焦った様子で飛び込んで来た。

 

「びっくりしたぁ、蒼崎さんか」

 

「蒼崎、ここは医療室だぞ。あまり騒いで良い場所ではない」

 

「あ、あぁ、それは謝るよ……って、それよりも! なぁ、ランとチェルシー見てないか!?」

 

「え、ランさんとチェルシーさんですか? 僕は途中で別れたので知りませんが…」

 

「任務に出てない私達が知る筈なかろうに……それで、その二人がどうしたんだ?」

 

「ランさん、ワイルドハントにやられて重傷を負ってしまったんだ! 急いで治療しなきゃいけないのに、何故か何処にも姿が見当たらなくて…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は戻り、王都中心街…

 

「あの、良いんですか? 僕等も参加しなくて…」

 

「無関係の私達が介入して良い戦いではないわ。今は見届けましょう……あの子逹の戦いを」

 

琥珀と葵が見据える方向では…

 

 

 

 

 

 

 

 

『フンッ!!』

 

「ぐぁ!?」

 

ロキ、げんぶ、朱音、瑞希の四人が一斉に黒騎士に攻撃を仕掛けていた。しかし黒騎士は四人の繰り出す攻撃を素手のみで簡単に受け流しており、攻撃の隙を突いてげんぶの変身しているアギトに回し蹴りが炸裂。たった一撃でアギトは変身が解けてげんぶの姿に戻ってしまうが、その間にロキと朱音が真後ろから黒騎士に斬りかかり、黒騎士はすぐに振り返ろうとする。

 

「ストプガ!!」

 

『ぬ―――≪ボォーン…ボォーン…≫―――無駄なマネだ』

 

「!? 何ですって…ぐぅ!!」

 

「がはっ!?」

 

瑞希の繰り出した時間停止魔法“ストプガ”で、黒騎士の時間が一時的に停止。しかし振り子時計の音が響き渡ると共に、黒騎士はすぐ元のスピードで動けるようになり、ロキと朱音の剣を両腕で容易く弾き返してから朱音には前蹴りを、ロキには裏拳を炸裂させる事で容赦なく吹き飛ばす。

 

「ッ…くそ!!」

 

「隙だらけだ」

 

「!? が……ッ!!」

 

「ロキ!!」

 

『グラビティ・バースト』

 

「!? 何、これは……ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

すぐに体勢を立て直そうとしたロキだったが、それより前に接近していた黒騎士がロキのデュランダルを二本同時に叩き落とし、右手でロキの首を掴んで持ち上げ始める。げんぶが加勢に入ろうとするも、黒騎士が左手で撃ったボウガンから放たれた光弾がげんぶの身体に命中し、その直後にげんぶの身体が地面に叩きつけられて身動きが取れなくなる。

 

(これは、重力か…!? まるで動けん…!!)

 

『そこで大人しく見ていろ』

 

げんぶが地面に押さえつけられたまま動けないでいる中、黒騎士は首を絞められているロキの方に振り返る。

 

(駄目だ……このままじゃ、あの時と同じ…!!)

 

『確かにお前は強くなった……が、それもほんの少しだけだ。まだまだ俺の領域には及ばん』

 

「か、は……ぁ…ッ…!!」

 

それでもロキは諦めず、右手で何度も黒騎士の装甲や兜を殴りつける。もちろん黒騎士はその程度の攻撃では微動だにもせず、更にロキを絞め上げる力を強めていく。

 

『まだ抵抗するというのか……無様な。やはり所詮はこの程度、という事か』

 

「ぁ……か…」

 

『これが力の差だ……何も出来ぬまま、己の無力を嘆き、絶望の底へと墜ちるが良い…!!』

 

黒騎士は左手に剣を構え、その剣先をロキの顔面に向ける。そのまま剣を突き立てようとしたその時……黒騎士は気付いた。

 

ロキの口元が、僅かにだがニヤリと笑った事に。

 

『…!?』

 

ロキの両手が、黒騎士の右腕の籠手を掴む。するとほんの僅かにミシリ…という鈍い音が響いた。それにより、黒騎士のロキの首を絞めていた力も少しだけ弱まった。

 

「ぷはっ!! はぁ、はぁ……やっと捕まえたぜ…」

 

『何…』

 

「負担がデケぇから……あんまし使いたくなかったんだがなぁっ!!!」

 

『!! まさか―――』

 

-ボゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!-

 

ロキの瞳が、赤い炎のように燃え上がった(・・・・・・)。それと同時に黒騎士の立っていた地面が赤く光り始め、黒騎士がロキを手離すと同時に巨大な火柱が発生。瞬く間に黒騎士の全身が業火に包まれた。火柱が空の彼方まで届く中、力を強引に使い過ぎたロキはその場に膝を突く。

 

「ッ……へん、どうよ……俺の能力の更に先……“リミットブレイク”の味はよぉ…!!」

 

「ロキちゃん!!」

 

朱音や瑞希、そして重力から解放されたげんぶがロキに駆け寄る中、巨大な火柱はすぐに消え去り、黒騎士の立っていた周囲が煙に包まれる。すると煙の中から、黒騎士の被っていた兜がガシャンと転がり出て来た。

 

「! 黒騎士の兜…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『最初の“覚醒”から更に上を行くとはな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「!!」」」」

 

『それも今の少ない攻防の中で、しかも追い詰められるフリまでしておいてだ……流石の俺も驚いた』

 

煙の中から、黒騎士がスッと姿を現す。その姿を見て……一同は驚愕した。

 

「な…!?」

 

「「嘘…!?」」

 

「ッ……黒騎士、お前…!?」

 

『ん? …あぁ、見られてしまったようだな』

 

兜が外れた黒騎士……その甲冑の中には、誰も入っていなかった(・・・・・・・・・・)。なのに黒騎士の甲冑は当たり前のように動いてみせていたのだ。

 

「…お前、中身は空っぽだったのか。操り人形か、それとも……ますます正体が気になってきたな」

 

『俺の正体など、お前達が知ったところで意味は無い』

 

黒騎士は地面に落ちている兜を拾い、何事も無かったかのように頭の所に被り直す。すると兜の黒いスリット部分から、まるで本当に目があるかのように赤い光がギラついた。

 

『…とにかく、お前達があれから少なからず強くなっている事は分かった。ならば少々……レベルを上げてみるとしようか』

 

「「「「ッ!!」」」」

 

その言葉と共に、黒騎士の纏う覇気が一瞬にして強大な物へと変化する。ロキ逹は思わずそれに気圧されそうになるが、怖気づく事なく冷静に構え直す。

 

『さぁ、もっとお前達の力を試してやろう。かかって来い…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ならば、私の力も試して貰おうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――ッ!!』

 

その時だった。そんな台詞が聞こえて来ると同時に、黒騎士の全身が一瞬で巨大な氷塊に包まれ、その周囲の地面や建物なども凍りつき始めたのだ。突然の事態にロキは思わず寒がり、げんぶは周囲を見渡す。

 

「うぉ、寒…!?」

 

「これは…」

 

「随分と楽しそうな事をしているじゃないか、ナンバーズよ」

 

「その声……カンナさんか!?」

 

「その通り」

 

ロキの疑問に答えるかのように、白い軍服を身に纏った水色髪の女性―――東雲環那(しののめかんな)が四人の前にスタッと着地。それと共に彼女の長い水色髪がフワリと綺麗に靡いた。

 

「あら、カンナちゃん。久しぶりね」

 

「朱音こそな……気の所為か? 朱音がもう一人いるように見えるが…」

 

「カンナさんのお話は伺っていますわ。私、双子の姉の瑞希と申します。以後、お見知りおきを」

 

「ほぉ、双子の姉か。なるほど、確かによく似ているな……っと、今はそんな話をしている場合ではないか」

 

カンナが振り返った先では、黒騎士を包み込んでいた氷塊が豪快に砕け散り、中から黒騎士がピンピンした様子で出て来た。

 

『東雲環那か……鬱陶しいのが出て来たものだ』

 

「そういうお前が黒騎士だな? 旅団にやたらちょっかいをかけていると聞いているが」

 

『ちょっかいか……否定はせんよ、自覚はしているからな』

 

「ならば、何故ちょっかいをかけ続けているのか教えて貰いたいところだ」

 

『俺が話すと思うか?』

 

「…まぁ、話さないだろうな。むしろそう来なくては面白くない」

 

カンナがニヤリと笑みを浮かべた瞬間、元々下がっていた気温が更に低下し、黒騎士との覇気が相殺し合ってとてつもなく重い空気が出来上がる。ロキ逹が緊張した様子で見ている中……黒騎士は突如、構えていた剣を真上に掲げてみせた。

 

 

 

 

-ガギィンッ!!-

 

 

 

 

『…全く、鬱陶しいのが増えてきたな』

 

「ようやく見つけたぜ、黒騎士さんよぉ…!!」

 

「うげ、その声はZEROか…!?」

 

そう、ZEROだ。ドラークに変身したままの彼は、その両手に装備しているピタヤクローで黒騎士に斬りかかって来たのだ。ドラークの声を聞いてZEROだとすぐに分かったのか、ロキは嫌そうな表情を浮かべる。

 

『…興が醒めたな』

 

「ッ……チィ!!」

 

ドラークのピタヤクローを弾き返し、地面に着地したドラークは変身が解けてZEROの姿に戻る。すると黒騎士の全身が、突然黒い炎によって包まれ始めた。

 

『まぁ良い。今回はここまでにしておこう』

 

「ッ…逃げる気か!!」

 

『キリヤ・タカナシ。お前はその手で自らの運命を変えてみせた……これからも強くなり続けろ』

 

「! 何…?」

 

「おいおい、せっかく面白い状況なのに逃がすかよ…!!」

 

「それは私も同感だな…!!」

 

ZEROとカンナが同時に飛びかかり、それぞれ鉤爪とレイピアが黒騎士に襲い掛かる……が、それより前に黒騎士は黒い炎と共にその場から転移し、二人の攻撃は空振りに終わってしまった。

 

≪いずれまた会う時が来るだろう……それまで、お前達との勝負はお預けだ…≫

 

「チッ」

 

「逃がしたか…」

 

結局、黒騎士とは決着を付けられないまま終わってしまった一同。黒騎士に逃げられた事でZEROやカンナが舌打ちする中、ロキは心の中で更なる決意を固めていた。

 

(上等だ黒騎士……俺もその時までに、お前を超えるくらい強くなってやる…!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、楽園(エデン)では…

 

 

 

 

 

 

「ッ……ここ、は…」

 

「おめでとうございます、ラン・アルジェントさん♪」

 

竜神丸の研究室で、ランの身に異変が起こり始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたは無事に生まれ変わりました……Tウイルス完全適合者としてね♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued…

 


 
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