No.837169

真・恋姫†無双 異伝「絡繰外史の騒動記」第三話

 お待たせしました!

 今回は外史に来た一刀と荀攸・胡車児との

 出会いからお送りします。

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2016-03-13 21:59:01 投稿 / 全14ページ    総閲覧数:4942   閲覧ユーザー数:3901

 

「此処は何処ですか?」

 

 青年のその質問に今度は二人が信じられないような表情になっていた。

 

 ・・・・・・・

 

「なるほど…つまりお前は急に強い光に照らされたと思ったら此処にいたというわけだな?」

 

「そ、そうです!」

 

「し、し、信じられないんだな!」

 

「待て、胡車児。俺達は此処に落ちたらしい流星を見に来たら此処にこいつがいたんだ。あ

 

 の流星の光を考えれば決してこいつの言っている事は夢物語とは片付けられんぞ」

 

「流星?」

 

「ああ、俺達はこんな真昼間に突然現れた流星の光を追って此処に来た。そうしたらお前が

 

 いたんだ。お前が強い光に照らされて此処にいたとなれば、何らかの関係があったと考え

 

 てしかるべきだろう」

 

「はぁ…ところで此処は一体何処なんですか?場所が分かれば警察に連絡して…」

 

「けいさつとやらは良く分からないが、此処は兗州の州都の陳留より西に二十里程来た山の

 

 中だ」

 

「兗州?九州じゃなくてですか?」

 

「九州などという州は聞いた事が無いな」

 

「お、お、俺も知らないんだな!」

 

 二人の言葉に青年は何かに思い当ったような顔で質問をする。

 

「あの~…一応お聞きするんですけど、この国の名前って何ですか?」

 

「は?『漢』に決まっているだろう?何を言ってるんだ、そんな事も分からないのか?何処

 

 かで頭でも打ったか?」

 

「…本当にそうだったら何と楽な事かと思います」

 

 

 

 公達のその言葉を聞いた瞬間、青年は『嘘だろう!?』みたいな顔になって頭を抱えこん

 

 でいた。

 

「おい、お前自身に何があったかは知らんが、とりあえず此処にこのままいるのはあまり良

 

 くは無い。とりあえず俺の家へ…此処にあるのはお前の荷物で良いんだな?」

 

「えっ…あれ?何でこれが…こっちは部屋にあったやつだからともかく、こっちのはじいち

 

 ゃんの家に置いてあったはず…しかも家宝の刀もあるし…しかも何故俺は制服を?部屋に

 

 いたから寝間着だったのに?」

 

「疑問は後でゆっくり考えろ、早く此処を離れないと官兵どもが来かねないぞ…奴らに絡ま

 

 れたら面倒だからな。胡車児、此処にあるのはこいつの荷物らしいから全部運べ!!」

 

「わ、わ、分かったんだな!」

 

 そして大きな箱を胡車児が持ち上げ、他の小さな箱を公達と青年が手分けして持って急い

 

 でその場を離れたのであった。

 

 ・・・・・・・

 

「ふう、とりあえずはこれで大丈夫だろう」

 

 二刻後、人目を避けながら公達の家に辿り着いた三人はどっかと座り込んだ。

 

「さて…とりあえず名前を聞かせてもらって良いかな?俺は荀公達だ」

 

「お、お、俺は胡車児なんだな!」

 

「ええっと…北郷一刀と申します」

 

「うん?姓が『北』で名が『郷』で字が『一刀』って事で良いのか?」

 

「いえ、姓が『北郷』、名が『一刀』です。字というのは無いです」

 

「二文字姓とは珍しいな…しかも字が無いだと?」

 

「お、お、俺も字は無いんだな!」

 

「お前は忘れちまっただけだろうが!少し静かにしてろ!!」

 

「す、すまねぇ…」

 

 

 

 公達に怒鳴られると胡車児はその巨体を一生懸命縮こませるかのようにしていた。巨体に

 

 似合わぬその仕草に一刀はつい笑みをこぼしてしまう。

 

「む、何がおかしい」

 

「申し訳ない…荀攸さんと胡車児さんは随分と仲が良いのだなぁと」

 

「ほぅ…」

 

 一刀の言葉に公達の眼が細まる。

 

「えっ…ええっと、何かおかしな事言いました?」

 

「ああ、俺は『荀公達』って名乗ったのに何故俺の『攸』って名を知ってるんだ?少なくと

 

 も俺とお前は今日が初対面、しかも自分で言うのも何だが俺みたいな隠者じみた生活をし

 

 ている奴の名が世の中に広まってるはずもない。それを初対面のお前が知っていたらそれ

 

 は不思議っていうか色々疑いたくなってしまうんじゃねぇかなって事さ」

 

 公達の言葉に一刀が言葉を詰まらせる。

 

「も、も、もしかして、こ、こ、こいつは妖術使いなんじゃないか!?」

 

 胡車児は困惑した顔でそう叫ぶ。

 

「落ち着け、胡車児。わざわざ妖術使って俺の名前を知るだけなんざ、ただの無駄遣いだろ

 

 うが…だが、お前さんには何か俺達とは違う何かがありそうだな。北郷、お前は一体何者

 

 なんだ?」

 

「何者というか、俺自身、何が起きているのかがさっぱり分からないんだけど…おそらく俺

 

 はこの時代より1800年位の未来から来た人間なんじゃないかと」

 

 一刀のその言葉にさすがの公達も驚く。

 

「1800年!?…確かにそれが本当ならとんでもない話だな」

 

 

 

「こ、こ、公達の兄貴、せ、せ、1800年ってどの位の、み、み、未来かな?あ、あ、明後日

 

 位か?」

 

「胡車児、お前は少し静かにしてろ!お前には俺から後でちゃんと説明してやる!!」

 

「わ、わ、分かったんだな」

 

 公達は胡車児を黙らせると改めて一刀に向き合う。

 

「さて…さすがに今の話は驚くしか無かったんだが、何か未来から来たって証明出来る物と

 

 かはあるのか?」

 

 公達に言われ、一刀は自分の服や箱の中を探る。

 

「そうだな…ええっと、これなんかはどうかな?」

 

 そして一刀が取り出したのはメモ用紙とボールペンであった。

 

「これは…紙?紙ではあるが…確かにこんな紙は見た事が無い。おそらく大陸中歩き回った

 

 ってこんな紙をすける職人はいないだろう…もう一つのは?」

 

「これは俺の時代の筆かな?中に見える黒いのが墨だと思ってくれ。このまま書けるぞ」

 

 公達は一刀に言われるままにボールペンでメモ用紙に字を書く。

 

「おおっ!?本当にこんな細っこいので字が書けてる!!しかも墨に比べて全然字がにじん

 

 でないぞ!!」

 

「す、す、凄いんだな!!」

 

 二人はボールペンに大興奮し、メモ用紙に次々といろんな字を書いていく。

 

「続いてこれはどうかな?」

 

 一刀が次に取り出したのは望遠鏡であった。

 

 

 

「これは何に使うんだ?」

 

「これをこう伸ばして…こっちから向こう側を見てくれ」

 

「おおっ!?遠くの物が凄ぇ近くに見えるぞ!!」

 

「お、お、俺にも見せて欲しいんだな!!」

 

 当然の事ながら、望遠鏡にも大興奮の二人であった。二人はそのまま一刻程、飽きる事無

 

 く望遠鏡で辺りの景色を見ていた。

 

 ・・・・・・・

 

「ええっと…とりあえず俺が違う時代から来たって事は信じてもらえただろうか?」

 

「ああ、こんな物を見せられたら信じるしか無いな」

 

「す、す、凄いんだな!お、お、俺も信じるんだな!!」

 

 一刻後、ようやく興奮から覚めた二人は一刀の言葉に肯定を示していた。

 

「しかし…未来から来たからって何故俺の名前を?」

 

「俺の知ってる物語の登場人物に『荀攸・字は公達』っていう人がいてね…しかもその舞台

 

 は漢だったんだ。それでちょっとね」

 

「ほほぅ…その物語の荀攸は有名どころなのか?」

 

「ああ、荀彧と共にね」

 

 一刀が『荀彧』という名前を出した途端に公達の顔が不機嫌そうに歪む。

 

「どうした?何か俺気に入らない事でも言ったか?」

 

「いや、すまん…あんな女と一緒にってのは少々気に入らなかっただけだ」

 

 公達のその言葉に今度は一刀がきょとんとした顔になる。

 

 

 

「何だ、今度は俺が何かおかしな事とか言ったか?」

 

「いや、だって…今荀彧さんの事『女』って」

 

「ああ、俺の親戚にいる荀彧は女だ。ちなみにそいつの字は文若だが」

 

 公達がそう言うと一刀は何やら『そんなバカな』みたいな顔のまま呆然となっていた。

 

「荀彧が女だと何かおかしいのか?」

 

「い、いや…その、今言った物語では荀攸も荀彧も男だったもので」

 

「ほぅ…ならば単純に未来から来たというわけでは無いという事か」

 

「ど、ど、どういう事なんだな?ふ、ふ、二人の言っている事がさ、さ、さっぱり分からな

 

 い『いいからお前は今は黙っておけ、俺が後で説明する』…わ、わ、わかったんだな」

 

 荀攸は胡車児を一喝して黙らせた後、しばらく何かしら考え込む。そして…。

 

「とりあえずお前さんが余所の国から来たというのは分かった。という事は、これから行く

 

 充ても無ければ生活する充ても無いという事になるな」

 

「はい…確かに」

 

「ならばこうして会ったのも何かの縁、お前さんさえ良ければこの家にしばらく居ると良い」

 

「えっ…本当に良いんですか?」

 

「ああ、この家は俺と胡車児の二人暮らしで部屋も空いているしな…それに」

 

「それに?」

 

「お前さんと一緒にいると何だかこれから面白い事が起きそうな気がするからだ」

 

「ははっ…ご期待に添えられれば良いですが。でも、胡車児さんは良いんですか、俺みたい

 

 なのが急に同居人になっても?」

 

「お、お、俺は、こ、こ、公達の兄貴が良いんならそれで良いんだな!よ、よ、よろしくお

 

 願いするんだな!!」

 

 こうして一刀は荀攸の家に居候する事になったのであった。

 

 

 

 俺が公達の家に住まわせてもらってから数日が経った。

 

 公達からは『仕事とかはおいおい探せば良いからしばらくはゆっくりしてな』と言われて

 

 はいたが、ただ日がな一日中ぼんやり過ごしているわけにもいかないので、公達と一緒に

 

 近くの村に行ったり胡車児と一緒に狩りや山菜集めなどをしていたりしていたが…やはり

 

 と言うべきか、日々便利な生活に浸かっていた現代人の俺にとっては基本的に自分の身体

 

 を動かすこっちの生活に、全身の筋肉が悲鳴を上げるのは当然なわけで…。

 

「大丈夫か、北郷?」

 

「あいたたた…まあ、何とか」

 

「だ、だ、だらしないんだな、こ、こ、この程度で」

 

「…面目次第もございません」

 

「まあ、どうやら北郷のいた国は随分と便利な物だらけのようだし、いきなりこっちの生活

 

 に合わせるってのも大変だろうとは思うが…何時までもこれでは困るぞ」

 

「ああ、早い内に足を引っ張らないように努力する」

 

「さて、とりあえずは…『荀攸さんはいらっしゃいますか!?』…どうした、そんなに血相

 

 変えて?盗賊でも出て来たか?」

 

 そこに近くの村の人が慌てた様子で駆け込んでくる。公達は知恵者であるが故に村人の相

 

 談にのったり、盗賊が現れた時の防衛の軍師役をしたりしているので、二・三日に一回は

 

 こういう事がある。

 

「と、とにかく来て欲しいんです。見てもらいたい物がありまして…」

 

「分かった、行くぞ胡車児。北郷は無理しないで家にいろ」

 

「わ、わ、わかったんだな」

 

「俺も行くよ、歩ける程度には大丈夫だから」

 

 

 

 公達達に付いていく事およそ十分位、そこには何人かの村人が何かしらの装置のような物

 

 の周りで途方に暮れている姿が見えていた。

 

「おい、荀攸さんに来てもらったぞ…これなんです」

 

「これは…竜骨車か。でも壊れてるみたいだが?」

 

「そうなんです。昨日までは動いていたんですが、今朝方突然壊れてしまって…皆で見たん

 

 ですが誰にも直せなくて、荀攸さんなら知ってるんじゃないかと…」

 

「おいおい、勘弁してくれ。幾ら俺でもこういうのは専門外に決まってるだろうが」

 

「そんな…荀攸さんでも無理なのか。結構無理して手に入れたのに、また今日から下の川ま

 

 で水汲みにいかなきゃならないのか…」

 

 そうか、竜骨車って何処かで聞いた事があると思ったら川や池から高台に水を運ぶってい

 

 うあれか…何処かの博物館で見た事があったが、現役(壊れているが)で稼働していた物

 

 を見るのは初めてだ。待てよ…もしかすればあれを作ればいけるんじゃないか?

 

「なあ、公達。俺にちょっと考えがあるんだが…」

 

「何だ、お前さんならこいつを直せるのか?」

 

「直すのは一回全て分解してみないと分からないけど…材料を用意してもらえればもっと良

 

 い物を作れると思う」

 

 俺のその言葉に公達だけでなく村人も訝し気な顔をするが…。

 

「ほぅ…北郷がそう言うのならいっちょやってもらおうか」

 

 公達はすぐに面白そうな物を見つけたような顔になってそう答える。

 

「ちょっ、荀攸さん!?いきなり何を…」

 

「良いから、此処は俺が責任を取る。北郷、必要な物を言ってくれ」

 

 止めようとする村人を押し留めて公達は俺がリクエストした物の準備に取り掛かったので

 

 あった。

 

 

 

「出来た!」

 

 それから二刻程後、準備してもらった材料で俺は一つの物を作り終えていた。

 

「これは何だ?」

 

「ふっふっふ…踏車(ふみぐるま)~!」

 

 俺は高らかにそう言うが、その瞬間村人達の時間が止まった(ように感じた)。

 

「オホン、とにかくこれを今から俺が言う通りに設置して欲しいのだが」

 

「あ、ああ、分かった」

 

 ・・・・・設置中・・・・・

 

「うむ、これで良し。さあ、此処に立ってこの板を踏んでみてくれ。後は歩くような感じで」

 

 未だ懐疑的な顔を見せる村人に使い方を説明して実践してもらう。すると…。

 

「おおっ、竜骨車より大量の水が汲みあがっていくぞ!!」

 

「しかも竜骨車よりずっと楽だ!!」

 

 実際の成果を見た村人達から驚きの声と歓声が上がる。

 

「これは凄いな…北郷、この踏車とやらもお前の国の文物か?」

 

「ああ、俺の国ではこれの登場で竜骨車は一気に衰退したんだ」

 

「なるほどな…確かにこんな物があれば竜骨車なんて必要無くなるわな」

 

「す、す、凄いんだな!!さ、さ、さすがは、ほ、ほ、北郷の兄貴なんだな!!」

 

「兄貴!?胡車児、いきなり何を…」

 

「お、お、俺は見ての通り、ば、ば、バカだから、公達の兄貴みたいな頭の良い人の事をそ、

 

 そ、尊敬するんだな!だ、だ、だから今日からほ、ほ、北郷の兄貴って呼ぶんだな!」

 

「え、ええっと…公達?」

 

「好きなようにさせてやってくれ。こいつはこれでも色々苦労してきてな…俺が引き取って

 

 るようなものなんだよ。そんなこいつが俺以外にも友が出来るのなら、な」

 

 

 

「まあ、そういう事なら…改めてこれからもよろしく、胡車児」

 

「あ、あ、ああ、こ、こ、これからは、ほ、ほ、北郷の兄貴の為にも働くんだな!!」

 

「北郷の事も良いが俺の事も忘れるなよ?」

 

「わ、わ、わかってるんだな!!」

 

 こうして俺と公達と胡車児の三人は家族のような関係になった。見も知らぬこの世界で共

 

 に過ごす事の出来る人がいるというのは心強い話だ。これで何とかこっちで生きていく事

 

 が出来そうだ。

 

 ちなみに俺が作った踏車の技術が村の外に広がっていくのにそう時間はかからなかったそ

 

 うなのだが…田舎の片隅でひっそりと暮らしていた俺がそれを知るのはしばらく先の事で

 

 あった。

 

 ・・・・・・・

 

 それからしばらくは平穏な日々が続いていた。俺は踏車の件以降、村人の農具の修理や改

 

 造を行ったり、村の祭りの時には時間に余裕のある時に作った絡繰人形を見せたりで結構

 

 充実した毎日を送っていた。時には街に出て作った絡繰を色々な店に売ってみたりして結

 

 構な額の収入もあったりしていたのであった。ちなみに一番高く売れたのは、記憶を頼り

 

 に作った『無尽灯』である。たまたま立ち寄った店に来ていた学者か役人のような人に見

 

 せたらびっくりするような値段で買ってくれたので、その日の夕食は普段の三倍増しで豪

 

 華な物となったのであったが。

 

 ただ、街に出かけた人や時々村にやってくる商人から聞く『黄色い布を付けた賊』の話に

 

 は皆おびえていた。おそらく黄巾党の乱の事だな…幾らこの村が山奥とはいえ、何時来る

 

 か分からないからすぐに対応出来るようにしておかなければならないだろうな。

 

 

 

 とか思っていたのだが、そのしばらく後…。

 

「黄巾は鎮圧された?」

 

「ああ、聞いた話じゃ、何でも黄巾の頭領が突然姿を消したとか…どんなに大きい集団でも

 

 頭が無くなりゃ終わりって事だろうな」

 

 近くの街に行商に行っていた村人から聞いたのは『黄巾党鎮圧』の話であった。

 

 しかし頭領が姿を消したというのはどういう事なんだろう?俺の知っている話の中では頭

 

 領である張角は病死だったはず…しかし、もし張角が死んでも確かその下に張宝と張梁が

 

 いたはずだし、軍として機能しないという事は無いはずなのだが。まあ、黄巾が壊滅した

 

 というのならとりあえずは村も安心だし、細かい事を考えていても仕方ないか。

 

 ・・・・・・・

 

 ~???~

 

 時は少し遡って、此処は青州のとある山の中。昼間でも薄暗い山道を三人の少女が何かか

 

 ら逃げるかのように必死に歩いていた。しかし…。

 

「天和姉さん、人和、こっちの方にも追手が来てる!」

 

「そんな~、それじゃ何処に逃げれば安心出来るの~」

 

「元来た道からも既に兵が迫ってる…姉さん達はそこに隠れていて」

 

「何をする気、人和!?」

 

「姉さん達は無事に逃げて…私の事なんかには構わず」

 

「ダメ!人和ちゃんを犠牲にする位なら三人で死んだ方がマシだよ!!」

 

「言い争っている暇は無いの!」

 

 人和と呼ばれた少女は姉二人を窪地の中らしき所に押し込める。そして…。

 

「姉さん、こっち!こっちの方に道があるわ!!」

 

 わざとらしくそう叫ぶとその反対側の方へと駆けていく。追手は皆そっちの方へと向かい、

 

 二人はそこに取り残される形となったのであった。

 

 

 

「ねぇ、ちぃちゃん。やっぱりこのまま人和ちゃんを一人には出来ないよ…」

 

「分かってるけど…このまま追っていってももう無理よ。私達まで死んじゃったらそれこそ

 

 人和のやった事が無駄になるだけじゃない」

 

「でも…でも…やっぱりごめん!!」

 

 天和と呼ばれた少女はそう言い残して妹が走っていった方へと駆け出していってしまった。

 

「天和姉さん!!うううっ…私は、私は生きる。このまま死んじゃったって何にもならない

 

 じゃない。まだやりたい事はいっぱいあるんだから…」

 

 ちぃとよばれた少女はそのまま一晩そこで過ごした後、何処かへと姿を消したのであった。

 

 ・・・・・・・

 

「さて、今日も一日頑張りましょうかね」

 

 黄巾の壊滅を聞いてから数日、ようやく皆の顔にも安堵の色が浮かび、それぞれ日常へと

 

 戻っていた。俺は村への新たな水源確保の為の水路を造ろうと近くの山に湧き水が無いか

 

 探索に入っていたのであったが…。

 

「うん?何だあれ…人か?おい、大丈夫か!?まだ息はあるな…すぐに運ばないと!」

 

 その途中に倒れていた女の子を見つけ、急いで家へと連れていったのであった。

 

 ・・・・・・・

 

「おいおい、水源を見つけに行って女の子を拾ってくるなんてお前さんは本当に山に入った

 

 のか?」

 

「バカな事言うな、公達は村に行って誰か女の人を連れて来てくれ、この娘の分の着替えも

 

 忘れるな!胡車児は湯を用意してくれ!」

 

 家に帰るなり公達に皮肉を言われたが、それに構っている暇など無く、俺は二人にそう指

 

 示すると、女の子を寝台に横たえる。

 

 

 

 

 

 半刻後、公達が村の女性とたまたま村に往診に来ていた医者を連れて来てくれた。医者の

 

 話では目立った病気や怪我は無いが、疲労と衰弱が激しいのでしばらくは安静にしておい

 

 た方が良いとの事であった。

 

「とりあえずは一安心だな」

 

「よ、よ、良かったんだな」

 

「ああ…しかし、一体何処から来たんだろう?持ち物もボロボロの服と壊れかけのこの眼鏡

 

 だけだし」

 

「何処かの妓館辺りから逃げて来たんじゃないのか?」

 

「そういうのとは違う気もするが…とりあえずはこの娘の眼が覚めるのを待つしかないか」

 

「こ、こ、この娘、な、な、何か言ってるんだな!」

 

「言ってるっていうより呻いているだけだろう…しかも良く聞き取れないし。とりあえずは

 

 北郷の言う通り寝かせておくしかないだろうな」

 

 俺達は女の子を寝ているのを確認して部屋を離れたのであった。

 

 ・・・・・・・

 

「天和姉さん…ちぃ姉さん…無事でいて」

 

 その少女はそう呻いていたのだが、それが一刀達に聞こえる事は無かったのであった。

 

 

                                       

                                       続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 長らくお待たせして申し訳ございませんでした。

 

 全てはドラ○エ ビル○ーズのせい…嘘です、ごめんなさい。

 

 今回は荀攸達との出会い、そして突如終わった黄巾の話と離れ離れに

 

 なった張三姉妹の話をお送りしました。

 

 とりあえず人和は一刀達の所に来ましたが、彼女がメインヒロインに

 

 なるかどうかは未定です。しばらくは一緒に過ごす事になるとは思い

 

 ますが。

 

 次回は眼を覚ました人和と一刀達との出会いからの予定です。

 

 

 それでは次回、第四話でお会いいたしましょう。

 

 

 

 

 

 

 追伸 天和と地和がどうなったかも次回にてお送りする予定です。

 

 

 

 


 
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