No.830567

真・恋姫†無双 異伝「絡繰外史の騒動記」第二話


 お待たせしました!

 今回は時を遡って(?)一刀が外史にやってくる

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2016-02-13 21:28:40 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:4187   閲覧ユーザー数:3273

 

「かずピー!今日も預かってきたで!!」

 

「…おい、及川。何度も言うようだが、俺は時計屋じゃないんだ。毎日毎日そんなに時計の

 

 修理を持ってくるな」

 

「ええやん、かずピーは『時計修理技能士』とかいう資格を持っとるんやから。使わな損々」

 

 悪友である及川が今日もまた箱一杯に入った壊れた時計を持って俺の部屋にやってくる。

 

 そもそも何故及川が俺の所に時計の修理を持ってくるのかというと、お嬢様学校であった

 

 聖フランチェスカ学園が昨今の事情により共学となり、男子学生の受け入れ第一弾として

 

 俺と及川を含む十数名が入って来たその日にまで遡る。

 

 ・・・・・・・

 

 ~回想~

 

「…此処が聖フランチェスカか。ついこの間まで此処に足を踏み入れる事など一生涯無いと

 

 思っていたのだがな…うん?何だ、あれ…あいつ何かしたのか?」

 

 校門をくぐって少々感慨に浸っていた俺の眼に飛び込んできたのは、怒り心頭の数人の女

 

 子に囲まれて絶賛土下座中の一人の男であった。制服からして俺と同じ転入組のようだ。

 

「すんまへん、ホンマにすんまへん!!決してそないなやましいつもりは無いんです!本当

 

 にちょっとぶつかっただけなんです!」

 

「そんなの嘘よ!こいつ思い切り私のお尻を鷲掴みにしたんだから!!」

 

「幾ら何でも鷲掴みなんて…もしかしたらぶつかった拍子に少し当たってもうたんかもしれ

 

 んのやけど、決してそういう事をするつもりは無いんです!!」

 

 どうやらそいつの言葉が正しければ、誤って女子にぶつかった挙句にそのお尻に触れてし

 

 まったみたいなのだが…相手の女子はヒートアップし過ぎて完全に痴漢扱いだ。何とも初

 

 日から運の無い奴もいたものだ。

 

 

 

「だから私は共学なんて反対だったのよ!!男なんて皆こんなのばかりなんだから!!」

 

「そうよ、男なんて今すぐ全員学園から叩きだせば良いのよ!!」

 

 …予想はしていたが、在学生の中には男を受け入れるのに反対している人もいるようだ。

 

 本来なら関わり合いにはなりたくないのだが、このままでは俺や他の男子にまで飛び火し

 

 かねない…やれやれ。

 

「あの~、ちょっと良いですか?」

 

「何よ、あんた!あんたも男ね!!もしかしてこの男の肩を持つ気!?これだから男という

 

 のは…」

 

「いえいえ、もしこの人が本当に痴漢行為をしたならばそれは厳正に罰せられるべきだと思

 

 うので、とりあえず生徒会か先生に言ってあの防犯カメラの映像を見せてもらえば良いん

 

 じゃないですかね?位置からして多分映ってると思うんですけど」

 

 俺がそう言って近くに設置された防犯カメラを指差すとその女生徒達は少々ひるんだ表情

 

 を見せる。

 

 しかし俺はそれに構う事無く騒ぎを聞いて駆け付けて来た風紀委員らしき人に経緯を説明

 

 する。幸いな事に風紀委員だけあって冷静な対応をしてくれて、俺達は本当にこいつが痴

 

 漢行為をしたのかを確かめる為に職員室へと向かったのであった。

 

 ・・・・・・・

 

「おおきに、ホンマに助かったで!!あんさんがいてくれへんかったら、今頃ワイは転入初

 

 日に痴漢行為で退学になる所やったわ!!」

 

 カメラの映像を確認した所、確かにぶつかってはいたがお尻に触ってはいない事が判明し

 

 たので、その男と俺は無事に解放されたのであった(そもそもぶつかった原因の一つに相

 

 手側の女生徒が携帯の画面ばかり見ていて近くにいたその男の存在に気付いていなかった

 

 事もあったからだが)。

 

 

 

「ワイの名前は及川佑や!ホンマに感謝しとるで!!」

 

「ああ、うん…俺は北郷一刀だ」

 

「一刀…ええ名前やな。かずピーって呼ばせてもらってもええか!?」

 

「何故にいきなりあだ名!?しかも何だそのかずピーって!?」

 

「ええやんか、ええやんか!これからもよろしく頼むで、心の友よ!!」

 

「待て待て、心の友ってなんだ!?多分、俺達が知り合ってからまだ二時間も経過してない

 

 よね!?」

 

「男の友情ってのは時間の長さちゃうで!!」

 

 その男…及川は何やら凄まじくハイテンションで友達宣言していた。やれやれ、初日から

 

 まだ賑やかしい話で…あれ?

 

「なあ、及川?お前の腕時計何かおかしくないか?」

 

「何やて!?ああっ…壊れとる!小遣い貯めてようやっと手に入れた限定版やったのに!」

 

 及川は青ざめた顔でそう叫ぶ。

 

「まあ、とりあえず放課後に時計屋に修理に出せば良いんじゃないか?」

 

 俺はそう声をかけるとうなだれる及川の肩を叩いて教室へと向かっていった。(偶然にも

 

 及川とは同じクラスだった)

 

 ・・・・・・・

 

「かずピー…どないしたら、ワイはどないしたらええんや!?」

 

 次の日、教室で会うなり及川はそう言いながら俺の所に駆け寄ってくる。

 

「何があった?」

 

「この時計…修理出来ひんって断られた。三軒も回ったちゅうのに!踏んだり蹴ったりや!」

 

 及川はそう言いながらもはやこの世の終わりのような顔をしていた。

 

 

 

「へぇ、そうなのか…それじゃちょっと見せてみろ」

 

「へ…何で?かずピーに見せたら何とかなるんか?」

 

「良いから」

 

 訝し気な顔を見せながらも及川は時計を外して渡してくれる。ふむ、これは確かに見た目

 

 以上に随分な壊れ方をしているが…これ位なら。

 

「十分程待ってろ」

 

 俺はそう言って席に着くなり鞄の中から道具を取り出す。及川は何故そんな物を持ってい

 

 るのかという疑問が顔に出ているが、今は無視。

 

 俺は時計を分解して中の部品をチェックする。随分な壊れ方だと思った割には部品の大半

 

 は無事なのは幸いだが…なるほど、この部品か。確かにこれは見つけにくい所だし並の時

 

 計屋じゃ分からないかもな。でも、確かこの部品なら予備が鞄の中に…あった、あった。

 

 俺は部品を取り換えると他の部品を元通りに組み立てていく。そして…。

 

「よし、修理完了。及川、ほら」

 

 俺は修理した時計を及川に渡そうと顔を上げるとそこには…。

 

「すご~い!本当に十分で直しちゃった!!」

 

「北郷君の特技発見~!」

 

「ねぇねぇ、私の腕時計も動かなくなっちゃったんだ~、明日持ってくるから直してよ!」

 

「ああ、ずる~い!それ私が先に予約しようと思ってたのに~!!」

 

「私も私も!!ねぇ、良いでしょ?」

 

 何時の間にやら俺の周りにはクラスメートの女子が集まってきていて、口々にそう囃し立

 

 てていた。そして、及川はその輪の外で涙目で地面にのの字を書いていたりする。

 

「何やワイのこの扱いは…う、うらやましくなんかないんやからな」

 

 

 

 それがあって三日以内には話しが学園全体に広まり、毎日俺の所に大量の時計の修理依頼

 

 が舞い込むようになり、そして何時の間にやら及川が窓口となって俺の所に持ってくるよ

 

 うになったのであった。まあ、そのおかげか初日の及川の痴漢疑惑はきれいさっぱり無く

 

 なったからそれは幸いだったというべきか。

 

「とりあえず昨日までの分は出来てるから」

 

「さすがはかずピー、仕事が早い。それで資格は三級やなんて信じられへん位やで」

 

「…三級なのは実務経験が足りなくて二級以上の試験がまだ受けられなかったからだ」

 

「ほぅ、そもそも実務経験なんて何処でやったんや?」

 

「俺の家は代々時計やその他の絡繰を作ったりそれで興行を張ったりしていたらしいのだが、

 

 時計屋はじいちゃんが戦後間もない頃に始めて、俺は中学卒業後に前の高校に通うと同時

 

 にじいちゃんの店で働いていたんだ。それで試しに三級を受けてみたら受かったって話だ。

 

 父さんと母さんに無理やり聖フランチェスカへの編入試験に連れて行かれなければ、あの

 

 ままじいちゃんの店を継ぐつもりだったんだがな。ちなみに此処にある道具や部品はじい

 

 ちゃんがこっそり送って来てくれた物だ」

 

「ふ~ん…それじゃ、かずピーの両親はかずピーが時計屋継ぐのを嫌がってたっちゅう事な

 

 んか?」

 

「…多分な。時計屋というより絡繰そのものを嫌っていたような節もあったし」

 

「…色々あるんやな」

 

 俺の話を及川は複雑そうな表情で聞いていた。

 

「とりあえず、こっちは依頼して来た人に戻して来るさかい今日の分も頼むで!」

 

 及川は切り替えるかのように、そう言って部屋を出て行く…やれやれ、来た物は仕方ない。

 

 チャチャッと片付けておくとしようか。

 

 ・・・・・・・

 

 それから約三時間後。

 

「さて、これで全部出来たっと…っていうか、ほとんどがただの電池切れだっただけだし」

 

 俺は及川が持ってきた時計の修理を全て終えて一息入れていた。

 

「さて、修理し終わったのを箱に戻したらそろそろ寝るかな…あれ?」

 

 時計を及川が入れて来た箱に戻そうと思い箱の中を見ると、何故かそこには鏡らしき物が

 

 一枚入っていた。

 

「何だこの鏡?日本史の教科書で見た銅鏡とかいうのに似ているけど…なっ!?」

 

 その時、突然何もしてないのに鏡が割れ強い光が発し、視界が完全に白くなる。それと同

 

 時に意識が遠くなっていく…一体何が?その疑問の答えを得られぬまま俺の意識は途切れ

 

 たのであった。

 

 

 

 ~???~

 

「こ、こ、公達の兄貴、こ、こ、こっちなんだな!」

 

「ちょっと待て、胡車児。俺はお前程の体力は無いんだ」

 

 とある山中を行くのは、人一倍体の大きい男と少々細身の青年であった。

 

「す、す、すまねぇ、で、で、でも、こ、こ、こっちにた、た、確かにりゅ、りゅ、流星が

 

 お、お、落ちたんだな!」

 

「分かったから少し落ち着け。何もお前の言葉を疑っているわけじゃない。俺にもそれは見

 

 えたのだからな。ただ、お前の速さに合わせてたらそこに辿り着く前にへばってしまうと

 

 言っているだけだ…さて、もうそろそろ件の場所だが」

 

「あ、あ、あそこにひ、ひ、人が倒れているんだな!」

 

 胡車児の指差す方には確かに何やら大きい箱やら小さい箱の横で倒れている一人の青年の

 

 姿があった。

 

「何だこりゃ?よく分からない物ばかり…全部こいつの持ち物か?」

 

「お、お、おい、起きるんだな!」

 

 胡車児は倒れている青年を強引に揺する。

 

「おい、胡車児!倒れている人間をむやみやたらに揺するな!こいつが本当になんらかの病

 

 気だったら、それが原因で死ぬ事もあるんだぞ!」

 

「す、す、すまねぇ…『う、う~ん…あれ?此処は何処?』…あっ、お、お、起きたんだな」

 

「どうやらただ寝ていただけのようだな…おい、そこのお前、何者だ?何でこんな山奥で一

 

 人寝ていたんだ?」

 

 公達は眼を覚ました青年に質問するが、青年は何やら信じられないような表情で辺りを見

 

 回すだけで何も答えようとしない。

 

「おい、人の話を…『あ、あの~…』…何だ?」

 

「此処って何処ですか?」

 

 

                                  一応…続く予定。

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 今回は一刀が外史に来た話…というかほぼ元の世界での話でした。

 

 一刀が絡繰を作る技術を持った背景的な事の説明なのですが…分かり

 

 にくかったら申し訳ございません。

 

 とりあえず次回は荀攸達との話からの予定です。

 

 

 それでは次回、第三話にてお会いいたしましょう。

 

 

 

 

 

 追伸 一刀が外史で絡繰を使って活躍するのはもう少し後になりますので。

 

 

 

 

 

 


 
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