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ドラゴンクエストⅤ~紡がれし三つの刻~コラボ版・第十五話

さん

スクエア・エニックスのRPGゲーム「ドラゴンクエストⅤ~天空の花嫁~」を独自設定の上、キャラクターを他の作品のキャラをコラボさせた話です。
それが駄目だという方にはお勧めできません。

コラボするキャラクター
リュカ=タダオ(GS美神・横島忠夫)

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2016-03-02 21:58:06 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:733   閲覧ユーザー数:713

第十五話「スラリンとの語らい、そして運命の城へ」

 

妖精の国での闘いは終わり、サンタローズも春の陽気が包み込んでいた。

タダオも妖精の村から帰ってきた当時は暗い表情をする事が多かったが、最近は笑顔で村の中で走り回っている。

そしてパパスはそんな息子の事を不思議そうに見つめていた。

 

 

 

「ふあ~~あ、とうちゃん、おやすみ」

「ああ、お休みタダオ」

 

夜も更け、タダオは眠りに就く為二階の部屋へと上がって行き、タマモ達も後に続く。

一時してパパスが部屋を覗くとタダオはタマモを抱きしめながらよく眠っていた。

スラリンとピエールはタダオの枕の横で寝ており、タマモもタダオの胸の中で寝ているが、何処となく顔が赤い気がする。

 

パパスはそんな微笑ましい光景を笑みを浮かべて見つめると小さな声でスラリンの名を呼ぶ。

するとスラリンは目を開き、パパスと一緒に部屋を後にする。

パパスは昼の内にスラリンに頼んでおいたのだ、夜タダオが寝静まった後に話がしたいと。

 

「すまないなスラリン、こんな夜遅くに」

「ううん、構わないよ。それで僕に話って何?」

「単刀直入に聞こう。…タダオに一体何があった?」

 

パパスの疑問は其処にあった。

サンタローズがようやく暖かくなって来たその日からタダオの様子が変わって来たからだ。

一見すると無邪気な子供の様だが数多くの闘いを潜り抜けて来たパパスからして見れば明らかに違って見えた。

何と言うか、戦士として一段階先に進んだとでも言うべき感じなのだ。

 

スラリンは少し悩んだが隠さずに全てを話す事にした。

妖精の国での出来事を、タダオが体験したあの悲しい闘いを。

――スラリンが話してくれた事は私にとって驚愕に値する物だった。

私ですら何かを犠牲にしなければならなかった闘いは成人してからの物だった。

当然と言えば当然なのだろう、あの子とは違い私は王室で育ち成長して行ったのだから。

だがあの子はあの幼さでそんな闘いを経験し、苦しみ、悲しみ、そして前を向いて進む事を選んだ。

あの汚れの無い笑顔がその証拠であろう。

 

そんな息子が誇らしくもあり、そして悔しかった。

あの時マーサを護れなかったばかりにタダオにこの様な運命を歩かせる事になった自分が情けなかった。

あのまま城に残しておけばその様な苦しみを味わせずに済んだのではないか?

しかし、マーサとの絆を離したくは無かった、傍に置いておきたかった。

我儘だとは解っていたがそれでもタダオを連れていく事を選んだ。

そんな後悔が顔に出ていたのだろうか、スラリンは言ってくれた。

『そんな事は無い』と。

 

「パパスさん。多分タダオを旅に連れて来た事を後悔してるんだと思うけどタダオはパパスさんと一緒に居られた事が良かったと思うよ。パパスさんと一緒だからタダオは真直ぐに育ったんだと僕は思うよ」

「そうか…そう思ってくれるのか。ありがとう」

 

スラリンが言ってくれた事に私は素直に感謝して頭を下げた。

ははは、私が魔物相手に頭を下げるとはな。

しかし悪くない気分だ、心の底からそう思う。

 

「それでパパスさん……、この事は」

「ああ、安心しなさい。勿論タダオには内緒だ。妖精の国での事はお前達しか知らない事なのだからな」

「うん。じゃあ、お休みなさい」

「お休み」

 

二階のタダオの部屋へと上がって行くスラリンを見送りながら私はあの青年が持って来てくれたルラフェンの地酒で喉を潤した。

 

そう言えばあのタダオに似た瞳を持つ青年は妙な事を言っていたな。

ラインハットでは気を付けろと、何やら語るべき事を語れないでいる様な感じがしたが。

それより何故私がラインハットに呼ばれている事を知っていたのか。

あの悲しみに満ちた瞳が心に絡み付いていた。

息子と妻マーサに似たあの瞳を。

それから数日が経ち、パパスがラインハットへと登城する日が来た。

だが、朝からピエールの様子が変だった。

 

「ピエール、どうしたんや?」

「ピイ~~、ピ~~…」

「スラリン、ピエールは大丈夫なんか?」

「大丈夫。ピエールは「ナイト」への進化に入ったんだ」

「ナイト?」

 

 

《スライムナイト》

 

大型のスライムに騎乗する戦士型の魔物。

その生態は謎のままで、どの様な魔物は詳しい事は知られていない。

剣技だけではなく攻撃呪文と回復呪文をも操れる手強い相手である。

 

 

 

「スライムナイトか。何度か闘った事はあるが、まさかスライムの進化系の一つだったとな」

「でも何でこんなに苦しそうなんや?」

「ナイトへの進化は他の進化とは違うんだ。何しろスライムの体からもう一つのナイトの体を生み出すんだから」

 

スラリンの説明はこうだった。

 

・まず、ナイトの種と呼ばれる膨らみが出来る。

・その種が成長を続け、ある一定の大きさになると本体から分離。

・分離した種はそのまま「繭」になり、内部で人型のナイトへと姿を変える。

・スライムの体も乗騎するに相当する大きさまで成長する。

・その後はナイトが本体、スライムはナイトの目となり足となるもう一人の自分になる。

 

 

「なるほどな、そう言う訳だったのか」

「ただ、問題なのはナイトへの進化は他の進化とは違ってかなり長い時間を必要とするんだ」

「長いってどのくらいや?」

「おそらく7~8年はかかると思う」

「そんなにか!?」

 

タダオはピエールを心配そうに見つめるがピエールは心配はいらないとでも言う様に軽く笑みを浮かべるとそのまま眠ってしまった。

タダオは眠りについたピエールを以前、スラリンが隠れ住んでいた洞窟に連れて行った。

スラリンが言うにはこういったある程度湿気のある暗闇の中が丁度いいらしい。

 

「じゃあ、ワイらは父ちゃんと一緒にラインハットに言って来るからな。ピエールの事たのんだで」

「うん、任せておいてよ。気をつけてね」

「コン、コココン」(まあ、私に任せておきなさい)

「あはは、タマモが付いてるなら安心だね」

 

村の入り口でスラリンはタダオ達を見送っていた。

タダオが魔物を手懐けていると言う事は前もって伝えているが、やはりスラリンは村の外に出るのが怖いらしく、ピエールの事も心配という事で村に残る事にしたらしい。

 

「ではバークよ、留守は任せたぞ」

「はい、お任せ下さいませ」

 

パパスとタダオはバークや村人達の見送りを受けてラインハットへと歩き出した。

その道中には数多くの魔物達が襲ってきたが、もはやタダオの相手になる様な魔物はいなかった。

 

シオンから貰った鉄の剣はすっかりとタダオの手に馴染み、タマモの石の爪も相手の体を切り裂いていき、パパスはそんな二人の闘いぶりを笑顔で誉めている。

タダオはパパスに誉められるのが嬉しいらしく、自分の装備をパパスに内緒で変えている事に気が付いてなかった。

 

もっとも、パパスは当然最初から気付いていて、スラリンとの約束もあるのでそこを問い詰める気も無かった。

 

日が暮れ始める頃にようやく大河の傍にある関所に辿り着いた。

目を凝らせば対岸にも同じ様な関所があり、この大河の地下通路を通じて行きき出来るとの事だ。

「うわ~、おっきな川やな~」

「うむ、この川を渡った先が正式なラインハット領だ。この関所はレヌール王家が健在だった頃の名残ではあるが今も関所としての役割は続いている」

「レヌール城か。王さま達、元気で寝てるかな~」

「ははははは、何だそれは。お前達のおかげで静かに眠りについていらっしゃるさ」

 

パパスはそんなタダオの頭を一撫ですると詰め所に居る兵士に通行証を見せ、通行の許可を取ると泊まる為の部屋を用意してもらう。

泊まる部屋は対岸の関所の物を使う事にして宿泊許可証を受け取ると地下通路を通り、対岸へと渡りきった。

 

「タダオよ、今日は此処に一泊して明日の朝早くに立つとしよう。丁度夕暮れ時だからこの上にある展望台に行こう、この時間の景色は圧巻だぞ」

「へ~、そうなんか。楽しみやな」

 

パパスの言う通り、その光景は見事な物だった。

茜色に染まる空、そしてその空の色を川面が映し出し川の流れがキラキラと光る。

タダオは暫くの間その光景に目を奪われていた。

 

余談ではあるがタマモはそんなタダオの表情に目を奪われていたらしい。

パパスはふと横を向くと一人の老人が川の流れを見つめている事に気が付いた。

俯き、溜息を吐きながらのそれは何かを耐え忍んでいる様な感じであった。

 

「御老人、何かあったのですか?」

「ん、ああ、旅のお人ですか。すまんがほうっておいてはくださらんか。儂はこの川の流れを眺めながらこの国の行方を考えておるのですよ。この国はこれからどうなって行くのかとな…」

「そうですか…。ならば、お風邪を引かれない様にお気をつけて」

「ああ、すまないね」

 

その背中に一抹の不安を感じたパパスだが、タダオを連れてその場を後にして宿となる部屋へと向かった。

 

翌日、朝日が照らし出した頃パパス達は関所を出発した。

そして此処から先には今までよりも強力な魔物が襲って来た。

 

おおきづちよりも一回り大きい「ブラウニー」

不気味な笑顔を浮かべながら力が抜ける様な笑い声で攻撃して来る「笑い草」

小型のドラゴンの「ベビーニュート」

地下に掘ったトンネルから攻撃して来て危なくなると仲間を呼ぶ「トンネラー」

魔族に作られた石人形に仮初の命を与えられた「土偶戦士」

 

そして何よりもタダオを驚かせたのは。

 

「と、父ちゃん……」

「よく見ておけタダオよ。あれがスライムナイトだ」

 

タダオとほぼ同じ大きさのスライムに騎乗する戦士は何も言わずに襲い掛かってくる。

 

戦士が被っている鉄仮面からは赤い眼が光る様にこちらを睨みつけていて、スライムの眼は最早光りは宿って無く虚ろなままであった。

そんなスライムナイトを相手にしてタダオは中々攻撃に出れず防御するので精一杯だっが、パパスの剣が戦士をスライムごと真っ二つにした。

 

「あ、あんがと、父ちゃん」

「タダオよ案じるな、ピエールなら大丈夫だ」

「わかっとるけど、何か急に怖なって」

「ピエールはきっとお前の掛け替えのない仲間になる。何があろうとも彼が邪に堕ちる事などない」

「コンコンコーーン!」(そうよ、私達は絶対にタダオを裏切らないわ!)

 

パパスに肩を叩かれ、タマモに励まされ、タダオは立ち上がると笑みを浮かべる。

 

「そうやな、ピエールは大丈夫や。あんがとな、タマモ」

「コン、コンコン」(えへへ、どういたしまして)

 

そしてタダオ達は再び歩き出す。

途中、再びスライムナイトが襲ってきたが今度は脅える事無く対処し、倒す事が出来た。

襲って来る魔物の中には宝石になる事無く逃げ出す魔物もいたがピエールの様に目が澄んでいる魔物は居らず、タダオは少し寂しそうであった。

 

その日は野営をして次の日の昼頃、パパスとタダオはラインハットに辿り着いた。

 

 

全ての運命の分岐点である場所、ラインハットへと………。

 

 

 

=冒険の書に記録します=

《次回予告》

 

 

ラインハットの城でワイは変な奴に出会った。

冷たい目をした、悲しそうな目をした奴に。

お前、王子さまなんやろ?何でそんな目をしとるんや?

決闘?何でそうなるんや?

 

次回・第十六話「キョウヤ、孤独な目の王子」

 

くそーー!負けへんで!

(`・ω・)ピエール、ナイトへの進化開始。ナイトへの進化の描写は小説版を手本としています。

 


 
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