No.830299

艦隊 真・恋姫無双 103話目

いたさん

後、数話……続きます。 次回の投稿は2月後半辺りになります。

2016-02-12 16:37:18 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:905   閲覧ユーザー数:810

【 明命 対 軽巡棲鬼 の件 】

 

〖 司隷 洛陽 都城 内城庭園 にて 〗

 

軽巡棲鬼「アハハッ! アハハハハハ──ッ! 北郷一刀! ナント他愛モ無イ……相手ダ!」

 

ーー

 

軽巡棲鬼は、内城の池から繋がる水路を利用して、逃げようとしていた。

 

 

★☆★  ★☆★

 

《 軽巡棲鬼の考え 》

 

 

クククッ………今頃、城内では……北郷一刀の暗殺で大騒ぎ。 

 

人の目は全て──そちらに注目され、このような四方を壁で囲まれた庭園に、敵が潜伏するなどと思わないだろう。

 

更に、都城内の通路を閉鎖して、犯人を捕らえようと検問を行う筈。 ならば、水路を利用して逃走すればいい。 水路まで検問する手間も、準備する時間も無いのだからな。 

 

それにだ。 私の足は『二足歩行』になっているが、水路に浸かれば元の足に変わる。 そうなれば、地上より此処の方が早く移動でき、距離も通路より遥かに短い。

 

標的の殺害で任務完了したのだ、この不自由な足を変え、逃走するのみ──

 

★☆★  ★☆★

 

 

──そこまで計算しての犯行。

 

だが、その軽巡棲鬼の予測を上回り、追跡していた者が居た。 

 

ーー

 

??「────貴女ですねっ!!」

 

軽巡棲鬼「…………? 誰ダ………貴様…………?」

 

明命「───応える理由なんかありません! 一刀様を手に掛けた──不快な愚か者! 大人しく縛されなさい!」

 

軽巡棲鬼「…………ナンダ……他カガ人間如キガ? ………身ノ程知ラズガァ!」

 

明命「────!?」

 

ーー

 

軽巡棲鬼は、声がした方角に6inch連装速射砲を向けて発射! 慌てて横転して回避すれば、すぐ後ろにあった樹木の幹が粉砕、音を立てて倒れて行く!

 

明命は、冷や汗を流しながら……その驚異的な攻撃力を確認、その正体に思い当たり問いかけた。

 

ーー

 

軽巡棲鬼「…………ドウシタ? 捕ラエルノジャ……ナカッタノ?」

 

明命「……………貴女は………深海棲艦!?」

 

軽巡棲鬼「…………軽巡棲鬼」

 

明命「────やはり!」

 

軽巡棲鬼「…………我ラノ恨ミ………思イ知レ! オ前達……人ハ……死ネ! 味方スル……艦娘共ハ……沈ンデシマエ!!」

 

ーー

 

再度の攻撃準備をする軽巡棲鬼に、鏢(手裏剣みたいな暗器)を数本投げつけて対抗するが、簡単に回避!

 

だが、明命は通じないと分かっている攻撃を、三回も続けて投げるので、三回目には軽巡棲鬼により、易々と叩き落とされた!

 

ーー

 

軽巡棲鬼「児戯ニ等シキ………『チカラ』デ……対抗デキル……トデモ………」

 

明命「ならば───これならどうですっ!?」

 

ーー

 

明命が四回目の鏢を両手で投げるが、その鏢は軽巡棲鬼より大きく外れ、後ろの木々に向かって行く! 呆れた様子で窺っていた軽巡棲鬼だが、攻撃が当たらない事を知ると……片手の艤装を明命に向けた!

 

ーー

 

軽巡棲鬼「マタ………ソレカ。 完全ニ外レダ……避ケルノモ無駄。 イイ加減ニ飽キタカラ……砲撃ヲ………ウグッ!?!? ナンダ……コレハ……!?」

 

明命「…………掛かりましたね? それは普通の鏢なんかじゃ……ありません!」

 

軽巡棲鬼「────!?」

 

明命「貴女の力……特に、その武器は脅威です! だから、それを使わせないように捕縛します! ───エイッ! ハッ! トオッ!!」

 

ーー

 

軽巡棲鬼は、後ろから襲い掛かって来た鏢に気付かず、 為す術も無く巻き付けられて、身動きが取れなくなった。 明命は、軽巡棲鬼への警戒を緩めず、更に紐を付けた鏢を投げつけて、雁字搦めに巻き付ける!

 

★☆★ ★☆★

 

これは、大陸に伝わる『縄鏢』と言われる暗器。 鏢の後ろに紐や縄を付けて投擲し、捕縛や侵入等に利用する物である。 中には……縄鏢の紐を操り、標的の位置を移動させたりする事もできる……達人もいるらしい。

 

余談だが、例の紐に……何故かRJ氏がコメントを入れられた。 

 

『紐を持て余す』…………この格言に何度も涙を誘われたか。 至極、後世に残る名言であろう!

 

《 新明命書房刊 『例の紐……その意味と考察、そして悲喜劇』より 》

 

★☆★ ★☆★

 

明命は、その縄鏢を使い……軽巡棲鬼の動きを止めた!

 

ーー

 

明命「これで、貴女は動けません! この紐は細いですが……春蘭さんでも引き千切る事は無理です! 私の髪の毛も編み込んでありますし、その強靱さは鎖より強いんですよ!!」

 

軽巡棲鬼「………………フッ」

 

明命「な、何が可笑しいのですか!? 念には念を入れて、何重も巻き付けましたから、逃走する事など不可能ですよ!!?」

 

ーー

 

得意げに説明する明命に、軽巡棲鬼は嗤う。

 

自分達の力を……少し垣間みたぐらいで理解した………人間を。

 

これで捕らえたと思う人間を………どう絶望させようかと考えていた。

 

ーー

 

軽巡棲鬼「……………コンナモノ………デ………カ? 人間トハ……カワイイ……ナ……」ブチン

 

明命「…………えっ?」 

 

軽巡棲鬼「私ハ……束縛サレルナド………嫌イ………ナノサ!」ブチブチブチ‼

 

明命「───そ、そんな………馬鹿な事がぁぁぁぁっ!?」

 

ーー

 

軽巡棲鬼が、両腕をユックリと左右に広げると、巻かれた紐が音を立ててブチブチと切れていく。 千切れた紐の中から、全体の白っぽい色より目立つ、黒色の糸らしいものが見える。 これが、明命の言っていた髪の毛だろう!

 

軽巡棲鬼は、易々と紐を千切った。 元々が船である、普段は秘めている力を全力で出せば、このくらいの事は簡単だったのだ!

 

驚きの表情で軽巡棲鬼を見詰める明命に、軽巡棲鬼は……もう片手に装備していた6inch連装速射砲を向けて、狙いを定める!

 

ーー

 

軽巡棲鬼「───コレデ……手妻ハ終ワリカ? 私達ノチカラ……人ヨリ遥カニ違ウ。 ソノ………自惚レガ………我々……深海棲艦ヲ……生ミ出シタノダ!」

 

明命「───!!」

 

軽巡棲鬼「今度ハ………外サナイ。 貴様モ………絶望シテ……沈メ!!」

 

 

 

◆◇◆

 

【 時事ネタ の件 】

 

〖 洛陽 都城 内城庭園 にて 〗

 

広大な庭園で軽巡棲鬼が明命と対峙! 軽巡棲鬼を捕縛した明命だが、軽巡棲鬼の力を過小評価してしまった為、逆に危機を迎えてしまう事態に!?

 

ーー

 

明命「……………くっ!」

 

軽巡棲鬼「…………ククク………貴様ノ動キハ………覚エタ! 次ハ……外サナイ!」

 

ーー

 

ニヤニヤと嗤う軽巡棲鬼!

 

そして……軽巡棲鬼の砲塔を注視する明命!

 

明命と軽巡棲鬼………二人の間に緊張感が高まる!!

 

 

 

……………………チャポン!

 

 

その時、池の中央部分の水が──盛り上がる!

 

ーー

 

イク「プハァーなのっ! あっ……… 目標発見、節分戦深度に浮上!」

 

 

「「 ────!? 」」

 

イク「……………えっと………節分なの! 」

 

「「 ────!?!? 」」

 

イク「イクたちの鬼役は……軽巡棲鬼なの! てぇー!  鬼は~外!  えい、えーい!!」

 

軽巡棲鬼「………………………」プルプルプルプル

 

明命「あわわわわわっ! だ、駄目です! 早く逃げて下さいっ!!」

 

ーー

 

───なんと、庭園の池より『イク』こと『巡潜乙型 3番艦 潜水艦 伊19(い19)』が浮上、豆を軽巡棲鬼に向けて放り投げた!

 

イクが嬉しそうに豆を投げる度、軽巡棲鬼の顔や身体へと当たり……その度に軽巡棲鬼の身体が怒りに震える!

 

明命が、慌ててイクに止めるように呼掛けるが、時すでに遅く………軽巡棲鬼の顔は、中破どころか小破もしていないのに、お怒りであったっ!

 

ーー

 

軽巡棲鬼「セ………セン………潜水艦! 潜水艦ッッッ!!」

 

イク「むふぅ~! イクから目を逸らしちゃダメなのねぇ! ほらほらぁ~、鬼さんコッチなの~!!」

 

軽巡棲鬼「ウガァアアアア───ッッ!!!」

 

明命「ま、待ちなさ───『待て、明命!!』──し、思春殿!?」

 

ーー

 

イクは、軽巡棲鬼の追撃して来る様子を確認すると、池に繋がる水路から抜け出し、洛水へ向かう! 

 

当然、軽巡棲鬼は追い掛ける! 

 

正に名前へ鬼が付くだけあって、鬼の形相で。 

 

だが………果たして、イクの挑発で怒ったのか? 鬼ゆえに豆が効いたのか? 軽巡棲鬼だから、潜水艦を集中攻撃しようとしたのか?

 

これは、如何なる理由で追い掛けたのか………全く分からない。

 

ただ、分かるのは………この御蔭で明命は難を逃れ、軽巡棲鬼はイクを追い掛けて、水路を通り抜ける結末になったのだった。

 

 

◆◇◆

 

【 鳳雛の策 の件 】

 

〖 洛陽 都城 内城庭園 にて 〗

 

思春「明命、無事で良かった! 雪蓮様が心配しておられたぞ!?」

 

明命「す、すいません! まさか、予想以上の強さだったので! で、でも、思春殿、どうしましょう!? あの子が──私の代わりにっ!?」

 

思春「心配するな。 これも、何かしら考えがあっての事だろう………あわわ軍師?」

 

雛里「……………あわわわわわっ! だ、だからぁ! その呼び方は止めて下さぁーいっ!!」

 

明命「あ、貴女は………ひ、雛里さまっ!?」

 

雛里「あわ、あわわわっ! お、お久しぶりでしゅっ! あわっ! か、噛んじゃいましたぁ~! ふぇ~ん、痛いですぅうううっ!!」

 

思春「………此方に向かう途中、雛里と出会ってな。 私達と同じく記憶を持ち、北郷側の軍師も務めていると言う話を聞いた。 ならば、明命を助ける一助を頼んだところ………」

 

雛里「………はい、間に合って良かったです! 丁度、明命さんから深海棲艦を引き離す所だったんですよ!」 

 

明命「そうですか………ありがとうございます。 ですが………思春殿。 私は、個人的感情で………動き過ぎてしまいました。 本来なら、深海棲艦に単独で挑むなど……無謀に等しい行為……」

 

思春「…………そうだな。 北郷達にも敵わない者が、正面から立ち向かっても無謀と言うものだ………」

 

明命「だけど………私は…………我慢できませんでした! 華琳様と笑いながら話をされて、また……孫呉でも、あの光景が見れるのかと……眺めていた矢先に! あ、あのような───出来事っっ!!」

 

思春「………………………」

 

明命「私も……駆け寄りたかった! 一刀様の傍で……安否を確認したかった! だけど、私の役目は──刺客を捕らえる事。 それが、一刀様の為になり、私の………意義を表す事ができる行動だと………思ったんですよ」

 

思春「……………………」

 

明命「………………結局、任務は失敗。 しかも、私の未熟な行動で………雛里様の策を台無しにしてしまい、御遣いの皆様や身代りになってくれた子にも! 私は、何と御詫びすれば………いいのでしょうか!?」 

 

思春「ああ………お前は、多くの御遣い達に自分の真名を……預けたそうだな?」

 

雛里「────!?」

 

明命「はい! 皆さんは全員、御立派な方々です! だから、私は自分の真名を預けました! 決して、あの方々に取り入る為、真名を預けた不埒な行為などでは無く────っ!!」

 

思春「明命……お前の孫呉への忠義、毛頭も疑う気は無い。 寧ろ、その純心な想いで預けた行為が……御遣い達を動かしたのだ」

 

明命「……………思春殿!」

 

雛里「なるほど───だから、皆さん一生懸命だったんですね?」

 

明命「…………………?」

 

雛里「イクさんが物凄く乗り気でしたし、扶桑さんや山城さん達が、明命さんが御一人で深海棲艦と対峙しているのを知ると、血相変えて『明命を助けて欲しい!』と──懇願までされたんですよ!」

 

思春「御遣い……いや、艦娘達は……お前を仲間として認め、深海棲艦を自分達に引き付けて救った。 ───後で、礼を述べておけ」

 

明命「そ、そんな───」

 

雛里「それに……大丈夫ですよ! あの深海棲艦の事は心配しないで下さい。 扶桑さん達が必ず………捕らえてくれます!」

 

明命「あの………深海棲艦をですか?」

 

雛里「はい、私の策は………破綻どころか、予想以上に上手く進行しています! ───明命さんの御蔭で!」

 

明命「………………えっ?」

 

思春「ああ………雛里の話によると、敵を誘き寄せて対峙させて、その背後より別働隊で襲い掛かる。 これも……天の軍略だったのか……?」

 

雛里「は、はい……天の国に伝わる──『鉄床戦術』といいます!」

 

明命「鉄床戦術…………ですか?」

 

雛里「鍛冶屋で行います鍛造を模した戦術だそうです。 相手を捕捉して、その背後から奇襲を仕掛ける方法なんですが……」

 

明命「…………………」

 

思春「穏さまが聞いたら………また悶え苦しみそうだな………」

 

雛里「そして………ご、ご主人様から教えて頂いた策を、私なりに少し手を加えました。 今回は、深海棲艦を釣り出し、扶桑さん達が居る本隊と対峙させます。 そうなれば、相手は前面に集中せざる得ません!」 

 

明命「………………そ、そうですね!」

 

雛里「これが──『鉄床』になりましゅ! その背後から、他の艦娘の皆さんが別働隊を編成! この水路より神速の奇襲を仕掛ければ、『鎚』となり『鉄床』と挟まれた深海棲艦は───破壊されるか捕縛されます!!」 

 

明命「じゃ、じゃあ…………」

 

雛里「深海棲艦を私達の所に誘い込むのは……最初から決めていた事。 残っていたのは……相手への挑発行為のみ。 理想的なのは、『我を忘れさせる行動』なんですが──丁度、今の怒っている状態が最適なんですよ!」 

 

思春「それに………雛里はな。 私の話を聞いた時には、明命の救助も策の一部として既に含ませて実行していた。 つまり、雛里も……心配していたし、明命を助けたいと思っていた………そうだな?」

 

雛里「………あわわ……そ、それは………その………」

 

明命「雛里様ぁぁぁっ!!」ガバッ

 

雛里「あわわぁっ! あわわわわっ!!」

 

思春「……………フッ」

 

 

◆◇◆

 

【 桂花の運命 の件 】

 

〖 洛陽 都城 内城 一階 にて 〗

 

その頃、桂花は────

 

桂花「早く、早くっ! 下に向かわないと───!!」

 

部屋を飛び出した後、二階から一階へ向かっている。 

 

何故なら、上の階に向かう程に、高貴な人物と出会す可能性がある為だ。

 

昔からの幼なじみである…………あの二人に。

 

★☆★

 

《 桂花 回想 》

 

『桂花………』

 

『桂花姉上───』

 

『ほらっ! あんた達、危ないじゃない! もう……急に抱きついてくるんだもの。 派手に遊ぶのは良いけど……護衛の目の届くとこに居なさいよ! あんた達は、大事な身体なんだから──』

 

『桂花姉上も、皆と同じ事を言うんだ………。 自分の身体なのに──何か貴重な置き物みたいな扱いされるの。 もっと……お外で遊びたいのに!!』

 

『…………………』コクコクッ

 

『馬鹿ね………あんた達が身体を怪我して、一番痛い思いをするのは誰だと思うの? ───あんた達でしょ?』

 

『『……………………』』

 

『いい? まず、怪我した本人は勿論、御父様、御母様、周りの人………そして、私。 これだけの人が心配するのよ? だから、皆が心配して世話を焼くじゃない! それに……残った姉妹まで……心配して泣かせる気なの?』

 

『────!』

 

『───さすが、桂花姉上! うん、桂花姉上も姉上も大好きだもん! 言う事ちゃんと聞くっ!! だから………遊んでぇ!!』

 

『…………ふぅ、本当に分かってるのかしらねぇ。 はいはい………それじゃ、何で遊ぶの? あやとり? 御手玉? それとも────』

 

★☆★

 

 

桂花「──駄目っ! あの子達に会えば、私の決意は鈍るわ! 今度こそ、今度こそ一刀の元に………………ハッ!?」

 

背後から聞こえる大音声、騒がしい足音が耳に届く。 その音に気付いた桂花は、直ぐ側の隙間に身を潜り込ませた。 

 

ーー

 

桂花「………………」

 

春蘭「桂花、桂花っ!! どこだぁーっ! 何処に居るんだぁあああっ!!」

 

桂花「………………」

 

春蘭「くっそぉっ! 此処までの足取りは間違いないのに、何処へ行ったんだ!? この私に一言の相談も無く、姿を眩ますとは卑怯者めぇ!!」

 

桂花「 || ・-・)スゥ~ 」

 

季衣「───春蘭様っ!」 

 

桂花「 ∥彡サッ! 」

 

季衣「ボク達も捜します! ───桂花様を、早く見つけ出さないとっ!」

 

春蘭「おおっ! お前達も来てくれたか! 有り難い、ここは広すぎて私一人では捜しきれん! お前達も来てくれれば──早く桂花を見つけだせる!!」

 

流琉「そ、それから……春蘭様、朗報ですっ! 秋蘭様と……華琳様の記憶が………蘇りましたぁ! 兄様の事を思い出してくれたんですよっ!!」

 

春蘭「な、何だとぉ!? それは………本当なのかぁっ!?」

 

桂花「∥ ゚ ロ゚)エッ⁉ 」

 

季衣「ボクも聞きました! 華琳様も、それに……秋蘭様も! 無事に記憶が! 兄様の横で、記憶が戻ったと二人で話されていました!!」

 

春蘭「────そうか。 やっと………二人に…………!」 

 

「「 …………………!?」 」

 

ーー

 

春蘭は、季衣達から事情を聞くと、目を閉じ顔を天井に向ける。 その双眸より……泪が一条……流れ落ちた。 

 

何時もと違う春蘭の様子に……二人はあたふたし出す。

 

ーー

 

季衣「しゅ、春蘭様ぁぁぁっ?」

 

流琉「どうしたんですかぁっ!?」

 

春蘭「アイツが、桂花が聞いたら………………さぞ、喜んだろうに! そして、北郷が生きていればぁ……………っ!!」

 

季衣「で、でも………兄ちゃんですよ? もしかして………生き返ってくるかも知れないじゃないですか? だって、兄ちゃん………天の御遣いだもん!」

 

流琉「取り合えず、桂花様を捜しましょう! 今は直ぐにでも、桂花様の身柄を確保しなければ! それに、兄様の関係者の方々も、一緒に探して下さってくれています! 私達も早急に動かなければっ!!」

 

春蘭「…………そうだな。 桂花ばかりに苦労させて来たのは───私達の責任でもある! 急いで捜しに向かうぞ!!」

 

「「 ────はいっ!! 」」

 

ーー

 

こうして、春蘭達は………一階の周辺を捜す為に、他の空き部屋へ向かった!

 

ーーー

ーーー

 

三人が去った後、桂花は隙間から出て来た。

 

顔には、困惑の表情が浮き上がる。 

 

これは、春蘭達の話により………桂花の固い決意へ亀裂を入れた事を意味していたのだった。

 

ーー

 

桂花「そう……………華琳様が…………」

 

ーー

 

だが、桂花は…………この話を鵜呑みにする事が出来なかった。 

 

華琳の一言一言が、桂花の心に……刃物で切り刻むような、痛烈な痛みを与えた為である。 長年、大事にしていた宝物を………散々汚され無数の傷を付けられたような物だからだ。

 

それに、如何に思い出したとはいえ、華琳本人から真実を聞いていない。 

 

人の間接的な噂より、桂花が直接確認しなければ──信用できない情報ゆえ。

 

良く言えば『軍師の性』、悪く言えば『臆病』………そんな桂花の慎重さが……皮肉な事に新たな真実を覆い隠す。

 

 

華琳の謝罪したい心、北郷一刀の偽りの死───その真相を知らないまま。

 

 

ーー

 

桂花「………………………」─スッ 

 

ーー

 

桂花は、懐より護身用に所持していた短刀を取り出す。 

 

桂花は軍師として主に智を捧げる身ゆえに、大きな武器など不要。 だが、桂花も女、しかも美少女と呼ばれる者の一人ゆえ、身を護る最後の牙は必要。

 

ーー

 

桂花「………………一刀……」     

 

ーー

 

皮の鞘に入った、刃渡り10cmも満たない小型の刃を、桂花がじっと見詰めた。 刃は、相手に苦しみを与えない為、良い鋼で鍛練され鋭く研がれている。 

 

ーー

 

桂花「…………………私…………」

 

ーー

 

こんな短い刃でも、桂花の胸を貫き──心の臓に届かせるには充分。

 

それに、実行すれば………苦痛も少なく天の国、あの世へ………愛しの男の傍に行く事は容易いだろう!

 

だが…………桂花の心は揺れる。

 

ーー 

 

桂花「………………これを使えば、一刀の傍に何時でも行ける。 だけど………華琳様の記憶が。 私は、『信義』を取るべきなのだろうか? それとも………『礼義』を取るべきなのだろうか? どうすればいいのよ………」

 

ーー

 

桂花は、自分の心に問いかける。 

 

私が望む願いは──どちらなのか──と!

 

 

 

◆◇◆

 

【 艦娘の頼み事 の件 】

 

〖 洛陽 都城 内城 一階 にて 〗

 

★☆★

 

《 信とは、自分の心を偽らない 》

 

《 礼とは、社会秩序を遵守する 》

 

《 義とは、正しい行い 》

 

★☆★

 

桂花の呟いた言葉の意味は、概ね上記の通り。 これらは儒教の五常(仁、義、礼、智、信)の教えである。

 

ーーー

ーーー

 

漢の時代…………儒教は大事な教えであり、政治にも数多くの影響を与えた事は、その遺物、思想、その後の歴史の流れを見れば、容易に理解できる。 

 

この儒教の教えは、創始者『孔子』より始まるが、長い年月の内に教えを読み解き、独自の理解を示す者も現れた。

 

その内の一人である荀子(性悪説、礼の重要性を説いた思想家)の末裔にあたるのが、桂花の生家である『荀家』である。

 

桂花の祖父『荀淑』は、儒教を尊び清道を謳い、『神君』と呼ばれ、その子達は、八人居て全員俊英、『八龍』と称された。

 

その八龍の一人である次男『荀緄』が、桂花の父である。

 

ーーー

ーーー

 

このような名家だからこそ、儒教の影響は桂花に深く影響を与え、あれほど固く思い詰めた決意も、春蘭達の言葉により動かされ………悩んでしまう。

 

前の世では、華琳一筋の排他的な性格だったのだが、その後の長い人生、この

世界の影響が、正史に近いのか儒教の影響が出ているようである。

 

そのため、重大な事には、五常の教えに背くのか、それとも準ずるのか──その言葉を物差しにて行動していた。 

 

そして、今回、双方の大事な要を失った桂花に、現世の未練は完全に無く、自害の道を選ぶ事が出来たのだ。

 

ーー

 

桂花「華琳様………一刀…………」

 

ーー

 

春蘭達の言った事が本当であり、華琳の記憶が実際蘇ったのなら、再度この世界で華琳に仕えたい。 それは、桂花の願いでもあり、礼としても重なる。  

だけど、待ち望んだ一刀は……居ない。

 

華琳と共に夜空を見上げ流星を待ち、二人で泣き笑い慰め合い──二人の死後に漸く実現した世界が………閉じたのだ。 

 

これでは、桂花の心は満足しない。 『何の為に数十年も待ったのだ』という苦しみ。 愛する者に再び旅立たれた哀しみ。

 

桂花の心にある『信』が───納得しなかった!

 

ーー

 

 

桂花「………私……………どうすれば……………」

 

 

ーー

 

しかし、願いの両立は………既に絶たれた。

 

そのため、華琳や春蘭達の前にも出れず、自害する事も出来ないまま、悩み続ける事になる桂花。

 

ーー

 

??「あ、あの………………」

 

桂花「────誰っ!?」

 

ーー

 

そんな時───桂花の悩みを全く意に介さず、声を掛ける者が居た。

 

ーー

 

??「ご、ごめんなさい………驚かしちゃって! た、確か……貴女……曹孟徳殿の臣下の方ですよね?」

 

桂花「……………………」

 

赤城「わ、私は、北郷一刀に附属しています『赤城』と申します! 事情があり………この通り、あ、足が痺れて………立ち上がれないんですよ。 だから、恥を忍んでお願いします! 提督のとこまで……連れて行ってくれませんか?」

 

桂花「──────!?」

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

ーーーーーーーーー

 

 

あとがき

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

百話で区切りをつけて本腰入れて、黄巾の乱を描写するつもりが、幾つかの事前設定を説明して居なかったため、まだ続いております。

 

後、数話で終わる──筈。

 

他の義輝記や北斗の話も……出したいですし。

 

もう、しばらくお付き合い兼お待ちください。

 

下記のは、ボツになった話です………… 

 

鉄床戦術を説明するために作りましたが……明命の対応が気に入らなくて。 

 

 

◆◇◆

 

【 没案 の件 】

 

〖 洛陽 都城 内城庭園 にて 〗

 

明命「す、少し、解りにくいのですが、具体的には………」

 

雛里「では、一匹の猫さんが居たとします! 誰かが飼っていましたが、逃げ出してしまいました。 だけど、警戒心が強くて近寄ると逃げてしま──」

 

明命「か、可哀相じゃないですかっ! どこ、何処にいらっしゃるのですかっ!? ───その、お猫さまはぁっ!!」

 

雛里「た、例えですっ! 例え!!」

 

思春「……………………明命」

 

明命「あっ、はい! た、例え……例えですね? ええ………はい、了解しました………」

 

雛里「そこで、私が猫じゃらしを準備して、猫さんの前でフルフルと揺らして気を惹きます。 すると、片足を出て様子を窺ったり、首を左右に振ったり注目するでしょう? そうなれば……猫さんの背後が留守になりますよね?」

 

明命「───ふむ、ふむっ!」

 

雛里「そうなれば、後、思春さんや明命さんの様に、瞬発力に優れた方に捉えてもらえれば───」

 

明命「勿論、私がやりますっ! それで──お猫さまはぁ!? 保護する迷子のお猫さまは───『ゴンッ!』……痛っ!? 痛いじゃないですかぁ!!」

 

思春「いい加減にしろっ!! 雛里の話は理解できたのか!?」

 

明命「は、はい! この策を使えば───お猫さまが沢山集めれます! そうすれば、一刀様が居ない寂しい心を……慰められますからっ!」

 

思春「────雛里、離せ! もう一度、明命を叩かせろっ!」

 

雛里「───だ、駄目です~~~!!!」

 

 


 
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