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魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第百四十八話 垣間見える闇とMO☆MO☆KOスパイス

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2016-01-31 08:55:31 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:10186   閲覧ユーザー数:9139

 「メリークリスマース!!」

 

 「「「「「「「「「「クリスマース!!!」」」」」」」」」」

 

 翠屋店内で若き男女の声が大きく響く。

 翠屋への九尾&酒呑襲来から時が経ち……今日はクリスマス。

 ケーキが非常によく売れる日であり、カップルがイチャイチャしたり独身の面々が妬んだり子供がサンタさんにプレゼントを貰ったりするめでたい(?)日なのである。

 

 「テンション上がるのは良いけど、もう少し声を抑えような。他にもお客さんいるんだから」

 

 俺は料理の乗った皿をテーブルの上に置き、この場を離れる前に浮ついてる皆に軽く注意する。

 パーティーで盛り上がるのは悪い事じゃないんだけど、今は貸切って訳じゃなく他のお客さんもいるんだから多少は自重しないと。

 今パーティーに参加してるのはアリサ、すずか、テレサ、アミタ、キリエ、チンク、セイン、ノーヴェ、ウェンディ、遥、葵、優人、野井原、九崎、静水久、くえす、飛鈴ちゃん、委員長、謙介、誠悟、直博、泰三、宮本といった大所帯だ。

 ルーテシアやジークといった年下組にメガーヌさん、グランツさん、ジェレミア、ウーノさん、トーレさん、クアットロの年上組は翠屋とは別の場所でパーティーを開いている。

 で、

 

 「ディエチ、このパーティーセットを4番テーブルのお客さんに。リズは出来たてのケーキを店頭で販売してる松尾さん達に持っていって」

 

 「「はい」」

 

 俺とディエチ、リズはパーティーには交わらず調理、接客の手伝いに勤しんでいる。

 理由は簡単。

 このお客さん達を対応するのに人手が圧倒的に足りないのだ。

 翠屋の店員さんの中には恋人と過ごすためバイトのシフトを外してる人もいるため、仕方ない。

 

 「ゴメンなさいね勇紀君。せっかくのパーティー中なのに」

 

 「いえいえ。良いんですよ」

 

 翠屋でのヘルプは今にでも始まった事じゃないが、今回はパーティーを初めて数分も経たない内に手伝わなければならない程の客数になってしまったのだ。

 現在は店内も店外のテーブル席も満席。どこも和気藹々とした雰囲気で楽しんでいる。

 

 「桃子さん、追加の食材買ってきましたー」

 

 買い物に行っていたバイトの子が4人戻ってきた。

 

 「ありがとう。早速厨房に運んでくれる?」

 

 「「「「はい!」」」」

 

 バイトの子達が厨房に入り

 

 「桃子さーん。調理と食器洗いに人手回せませんか―?」

 

 厨房で働いてる人から声が飛んできた。

 

 「困ったわね。去年はここまで忙しくなかったんだけど…」

 

 店からすれば嬉しい悲鳴なんだろうけど、人手が足らず、料理が遅れたり接客が疎かになれば店の信頼や評判に関わってしまう。

 

 「桃子さん、ウチの連中から何人か引っ張りましょうか?首を縦に振ってくれたらですけど」

 

 「……申し訳ないんだけどお願い出来る?バイト代は弾ませてもらうから」

 

 「ういッス」

 

 早速俺はパーティー中の友人を呼び寄せる。

 

 「アミター、キリエー、葵ー。ちょい手伝えないか?人手が回りきらなくて結構キツイんだよ」

 

 「私は別に良いですよ」

 

 「私もオッケーよん♪」

 

 「構いませんよ」

 

 アミタ、キリエ、葵は嫌な顔せずに即答でOKを出してくれた。

 桃子さんにその旨を伝えると

 

 「ありがとう3人共。早速だけど、着替えて手伝ってくれる?着替えは休憩室にサイズ別で置いてあるから自分のサイズに合う服を選んでね。仕事の内容だけどアミタちゃんは店頭販売の担当をしてるまっちゃんのヘルプ。キリエちゃんは店内と店外の接客。葵ちゃんは勇紀君と一緒に厨房で皿洗いをお願いね」

 

 「「「はい」」」

 

 3人は店員用の休憩室に入り、着替えを始める。

 基本翠屋は店のエプロンを羽織るだけだけど、今日はクリスマスという特別な日であるため、サンタの衣装で仕事する事になっているのだ。

 男は普通のサンタ服。女はミニスカサンタ服で。

 調理、食器洗い班は袖を捲くらないと多少仕事の邪魔になるけど、だからといっていつもの服装で作業するという妥当は有り得ない。

 それが桃子さんの方針だし、皆も不満が無いので俺も特に言う事は無い。

 5分も経たない内に3人は出てきた。

 肩を露出させ、僅かに覗かせる胸の谷間とスカートの先から見える健康的な太股のせいか3人共妙にセクシーに感じる。

 

 「「「「ブラボーーーー!!!ブラアアァァァァボオオォォォォォ!!!!!」」」」

 

 そんな3人の姿を拍手喝采で出迎えた謙介、誠悟、泰三、宮本。

 スタイルの良い3人のサンタ姿にテンションが更に急上昇中だ。

 

 「お前等、勇紀に注意されたばっかりだろうに」

 

 呆れた表情で言う直博。

 

 「……世の中体型が良ければ良いってもんじゃない、なの」

 

 「全くだな。小さい体型は小さいなりに需要があるものだ」

 

 不機嫌にアミタ、キリエ、葵を睨みつけるのは静水久とチンク。

 この2人は通じ合うものがあり、すぐさま仲良くなっていた。何が通じ合うのかは考えなくても分かるだろう。

 

 「ちょっとセインちゃん!それ私が食べようとしてたエビフライだよ!」

 

 「油断してる遥さんが悪いんですよー♪」

 

 遥の目の前にあるエビフライを掻っ攫い、頬張るセイン。

 

 「ゴメンねいいんちょ。店内の飾り付け手伝って貰っちゃって」

 

 「良いのよ別に。凜子にも救援要請されたし」

 

 アリサといいんちょはコップを片手に話している。

 朝早くから翠屋店内の飾り付けを手伝ったのは美由希さん主導の元、アリサ、すずか、九崎、委員長なのだ。

 

 「ハァ…姉様がいないと盛り上がる気にもならないわ」

 

 「えと…誘ったのは迷惑だったかな?飛鈴ちゃん」

 

 テンションの低い飛鈴ちゃんの相手はすずかがしている。

 飛白さんは私用で今日は来れないらしい。

 飛鈴ちゃんも飛白さんに着いて行こうとしてたらしいが、飛白さん本人の言いつけでこのパーティーに参加してるという訳だ。

 

 「勇紀君勇紀君。早くお仕事のお手伝いに行きましょう」

 

 「ん?そうだな」

 

 人手が増えたのに、仕事せずにここに居ちゃ駄目だな。

 俺は葵を連れて厨房の方へと向かい出した………。

 

 

 

 カチャカチャカチャカチャカチャ

 

 スポンジと洗剤を用いて食器を洗い続ける俺と葵。

 洗っても洗っても店内、店外から回収された皿が次々に厨房に運ばれてくる。

 

 「中々終わりませんねぇ」

 

 「そりゃ空いた皿はすぐに新しい料理を盛ってお客さんに差し出さなきゃいかんからなぁ」

 

 ある程度減った絶妙のタイミングで追加されるから気分的には終わる気配が見えなく感じる。

 

 「もう1人、誰か呼ぶべきか?」

 

 「これ以上、キツくなるならその方がいいと思います」

 

 会話をしつつも、皿を洗う手は止めない。

 

 「2人共ゴメンなさい。コレ追加で」

 

 厨房に戻ってきたディエチから新たな食器を受け取った。

 今回は然程多くないのでまだ頑張れるな。

 

 「それにしても……」

 

 「???」

 

 「もうすぐ今年も終わりますね」

 

 「そうだな。あとは大晦日を迎えて…今年は終わりだ」

 

 「勇紀君達と出会ってからの1年は色々あった気がします」

 

 「正確に言うなら8ヶ月程だけどな」

 

 まだ1年は経ってない。

 何せ俺達が出会ったのは高校生になった4月からだし。年を越して9ヶ月ってとこだ。

 

 「…………勇紀君達と出会ってからの8ヶ月は色々あった気がします」

 

 「言い直した!?」

 

 別に訂正しなくても…。気にする程の事でも無いだろうに。

 

 「今年は今まで過ごした中で特に濃い年でした」

 

 そりゃツインエンジェルの原作時期だったからね。原作と違って7つの聖遺物(セブンアミュレット)はディオスとその仲間達に奪われちまったけど。

 あの一件後、姓が同じだった事もあってミッドチルダにいるユーリに一応聞いてみたけど、当の本人は首を横に振るだけだった。

 後は『この世界の本来のユーリ』に確認が取れれば『偶々姓が一致した』という確信になる。

 もしくはディオス本人に問い詰めるか…。

 今あの連中は管理局により次元犯罪者として各次元世界に指名手配されている。

 ただ連中の居場所を掴めた場合は勝手に動かないとの厳命が出ている。

 連中は1人1人がとんでもない実力者だから、逮捕に踏み切る際には管理局のエース格魔導師数人の同行が必須だからだ。

 もっとも連中の情報は未だに入ってこないけど。

 それとあの時、7つの聖遺物(セブンアミュレット)を奪おうとした管理局員達の中心核だった少将も既に管理局員としての資格、地位を剥奪され現在は次元犯罪者………お尋ね者の仲間入りだ。

 コチラも情報は入って来ない。今頃何処で何してるのやら…。

 

 「クルミさんやテスラさん、ナインさんがいなくなった事は寂しいですけど」

 

 「本人達が決めた事だし、しょうがないべ。俺達にとやかく言う権利は無いしな」

 

 クルミ、テスラ、ナインの3人はもう風芽丘には通っていない。本人達の希望でクルミはイタリアの聖ベルナルディ学院初等科へ、テスラとナインは見聞を広めると言って日本から去って行った。

 アニメ版最終話通りの展開だったが、唯一違ったのは見送りに行ったのがクラスメイト全員だった事。

 

 「クルミさんの事を名前で呼ぶようになったのも、あの時からですもんね」

 

 「本人が言ってきたし、お前の事名前で呼ぶ事になったのもあん時からだな」

 

 遥がクルミに葵の相方である事を認められ、同時に俺が『葉月』と苗字で呼ぶ事を却下され、名前で呼ぶ事を強要された。

 あの時、遥と顔を見合わせて『遂にデレた!?』と声を上げた瞬間、真っ赤な顔で怒ってきたのは良い思い出だ。

 その後すぐに葵の奴も『名前で呼んで下さい』と言ってきた。

 

 「だって私だけ苗字呼びなんて仲間外れにされてるみたいで嫌じゃないですか」

 

 別にそんな事する気なんて無いんだが…本人が気にすると言うのなら素直に従っておこう。

 もう名前で呼ぶのにも慣れちまったし。

 葵の方も俺の事苗字じゃなく名前で呼んでくれてるし。

 

 キュッキュッキュッキュッキュッ

 

 洗い終わった食器のいくつかを布巾で拭いていく。

 

 「勇紀さーん。食器洗い(ソッチ)の作業落ち着いたら調理(コッチ)手伝って下さいー」

 

 「あいよー」

 

 少し離れた所にあるコンロで調理してるリズに返事をして、食器を拭く速度を上げる。

 洗い物の追加も無く、程無くして俺は葵と共に調理の応援に向かうのだった………。

 

 

 

 「それじゃあ二次会…もとい伊東誠悟君の送別会を始めます」

 

 「「「「「「「「「「わーーーー!!!!!」」」」」」」」」」

 

 パチパチと拍手で応える面々。

 『バイトの子と交代で休憩』と言う名目で俺、ディエチ、アミタ、キリエ、葵、リズもパーティーに参加中。

 

 「誠悟、皆に一言」

 

 「……俺、聞いてないんだけど?」

 

 そんな渦中、困惑してるのは当の本人である誠悟。

 そりゃ言ってないんだから知らないのも当然だろう。一種のサプライズというヤツだ。

 泰三は誠悟の背中を押し、強引に一言言わせる。

 

 「良いから言えって。簡単にで良いんだ」

 

 「……へいへい。コホン…」

 

 軽く咳を吐いて誠悟が一言。

 

 「今日は楽しめ!以上!!」

 

 ガタタタタタッ!!

 

 全員がズッコケる。本当に一言だよコイツ。

 

 「誠悟…」

 

 「何だよ?言っとくけど、何も知らされてなかったんだから言う事も考えてねーよ。仕方ないだろ」

 

 と言ってるが誠悟の表情は『メンドくせぇ』一色で染められている。

 これ以上は何も言う気が無いようだ。

 

 「ていうか私達居て良かったのかな?」

 

 「勇紀さん、そこん所どうなんですか?私達、あの人の事何にも知りませんよ」

 

 セインとノーヴェは今更ながら遠慮がちになりつつあった。

 確かにナンバーズと誠悟にゃあ接点なんて無いけど…

 

 「気にすんな気にすんな。送別会と言ってもさっきまでのパーティーと変わらねえし」

 

 今日は皆で騒いで食べて飲めば良い集まりみたいなもんだよ。

 

 「そうッスそうッス。セインもノーヴェも遠慮なんてしてたらパーティーは楽しくないッスよ」

 

 逆にウェンディは完全にこの場の雰囲気に溶け込んでいる。

 俺もテーブルの上の料理を小皿に移してからパクッと一口。

 

 「ならばビンゴゲームで決着をつけますわよ一般人!!」

 

 「望む所よ!後、私にはアリサって名前があるのよ!!一般人っていう呼び方は止めなさい!!」

 

 んんん?

 何かいきなり盛り上がってるじゃないか。

 

 「なあ、すずか。何でアリサとくえすが言い争ってんの?」

 

 「名前を一向に覚えて貰えない事に腹が立ってるんじゃないかな?」

 

 …成る程、有り得そうな理由だな。

 で、くえすとしては訂正の要求で付き纏うアリサの事が鬱陶しいってトコか。

 

 「ビンゴゲームの勝者には今日一日、『この場にいる人間1人に何でも命令出来る権利』を進呈しますわ!!」

 

 「「「マジッスか!!?」」」

 

 速攻で食い付いたのは謙介、泰三、宮本の3人。

 

 「何でも…何でも良いんスね!?」

 

 「ええ。『命令された人が出来る範囲で』というのが前提ですが」

 

 「拒否権は無いんですね!?」

 

 「当然です」

 

 「じゃじゃじゃじゃあ……え、エッチな命令をしても…良かったりとか?」

 

 「勝者になる事が出来ればご自由に」

 

 男3人の質問にちゃんと答えるくえす。

 だけど良いのか?特に最後の質問に対する返答がそれで。

 

 「「「ヒャッハーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」」」

 

 ほら。脳内が欲望で染まり切り、目がギラついてる馬鹿達のテンションが天元突破しちゃったじゃないか。

 

 「これが商品のチケットですわ」

 

 何時の間にかメモ帳に『命令権』と書かれた紙切れ用意してるし。

 

 「ぐふ、ぐふふふふ…」

 

 「何て…何て素晴らしいチケットなんだああぁぁぁ!!!!」

 

 「こんな良い物、ドラえもんだって出せやしないぜええぇぇぇ!!!」

 

 ドラえもんがこんな物出したら全国の子供達に悪影響しか与えない様な気がする。

 

 「これがビンゴの用紙ですわ」

 

 3人に差し出される縦5マス、横5マスの計25マスに数字がランダムに書かれた用紙。

 3人は顔を見合わせて頷き合い、1枚ずつ受け取る。

 

 「一般人。貴女も好きなのを取りなさい」

 

 「だからアリサだって言ってんでしょうが!!」

 

 怒りながらもくえすが新しく出したビンゴ用紙から1枚選んで取る。

 

 「他の方々も好きな用紙をどうぞ」

 

 「あれ?私達も参加者にカウントされてるのかしら?」

 

 特に参加表明してもいない面々を代表するかの様にテレサが言う。

 

 「参加者が少ないと面白味に欠けますわ」

 

 「「「「「「「「「「うーん…」」」」」」」」」」

 

 女性陣は悩んでいる。

 

 「ゆうちゃんと天河優人、それにオマケの方もどうぞ」

 

 珍しく俺への呼び方がフルネームじゃなくて昔の呼び方になってる。くえすもちょいと浮かれてるって事かいな。

 

 「俺オマケ!?俺の送別会なのにオマケなの!?」

 

 誠悟は逆にショックを受けていた。

 主役どころかオマケ扱いは堪えたらしい。

 

 「ゆうちゃんはもし勝った場合、誰に何を命令しますの?」

 

 「んー……」

 

 誰に何を命令………かぁ。

 

 「わ、私で良ければエッチな命令でも受け入れますわよ////」

 

 「マジで!?」

 

 頬を赤くしながら言うくえすの言葉に食い付いてしまった。

 

 「ゆうちゃんが望むならビンゴゲームを抜きにしてでも…////」

 

 しかも俺に抱き着いて上目遣いで。

 うぅ……胸元にあたる柔らかいオムネ様の感触といい、くえすから漂う甘い匂いといい、とんでもない誘惑が俺の理性に攻撃してくる。

 くえす……何て恐ろしい子!!

 高校生の俺にこの状況は非常に抵抗し難い…………ハッ!!?

 

 「「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」」

 

 周囲の女性陣から発せられる黒いオーラと射殺す様な視線の集中砲火ががががが!!

 

 「勇紀ゴルァァァァァ!!!!!」

 

 「そういうのはビンゴゲームの勝者の特権だろうがあぁぁぁぁ!!!!!」

 

 「まあ、勝った所でそんな命令出したらブッ殺すけどなあぁぁぁ!!!!」

 

 ……吼えてる3人は逆に何も怖くない。今にも飛び掛かってきそうだけど来るなら返り討ちだ。

 そんな事を思っていたら俺とくえすが同時に背後から引っ張られたせいで引き離されてしまった。

 俺をすずかが、くえすを遥が。

 

 「ちょ!?何をしますの!?離しなさい、胸の薄い一般人!!」

 

 「薄いって言うなぁぁ!!!」

 

 くえすの言葉に即座に反応したのは遥ではなく九崎だった。

 『うぅぅぅぅ…』と野犬の様に唸り、凄い形相でくえすを睨み付けている。

 

 「ほら!さっさとビンゴゲーム始めるわよ!!」

 

 「「「「「「「「「「勝負!!!」」」」」」」」」」

 

 いきなり皆の参加する気が満々に!?

 アリサの号令で用紙を片手にギラついた目で気合の入ってる女性陣。

 その背後にはメラメラと炎が燃え盛ってる様に見えるぜ。

 

 「てか数字はどうやって確認するんだ?」

 

 「あぁ…この箱に数字の書いたクジがありますのでそれで」

 

 くえすが何処からか出した長方形の箱。

 

 「じゃあ俺引こうか?俺非参加だし」

 

 この中で唯一ビンゴ用紙を取っていない直博が立候補し、誰も反対する者がいなかったので直博は片手を箱に突っ込み、クジを取り出す。

 こうして『誰かに命令出来る権利(基本拒否不可)』を掛けたビンゴ大会が開催された………。

 

 

 

 「えーっと……び、ビンゴしちゃった……かな……」

 

 その言葉を発した人物に視線が集中する。その一言はこのゲームの勝者を意味するからだ。

 ビンゴを見事揃えたゲームの勝者は………委員長だった。

 

 「うーん…後1ヶ所でビンゴ出来たんだけどなぁ」

 

 「ダブルリーチになってたんだけど…当たらないものね」

 

 「ま、運が無かったって事よねん」

 

 セインにテレサ、キリエは然程落胆してはいないが他の面々はそれなりに肩を落とし、残念がっていた。

 

 「「「ぐや…じぃ……ぐやじぃよぅ……」」」

 

 謙介、泰三、宮本は特に残念がっていて悔し涙をボロボロと零している。

 

 「…女に二言はありません。これが景品ですわ。どうぞ、この中の誰かを好きになさってくださいな」

 

 くえすの手書きで作られた券を委員長は受け取ったが顔色が少し優れない。

 

 「う……私、何か死亡フラグっぽいの立てちゃった?」

 

 いや…ビンゴで勝っただけなんだから、この程度でフラグは立たんと思うが…。

 

 「それで委員長さんは誰にどんな命令を下すんスか?」

 

 ウェンディが聞いて委員長は腕を組んで少し考える。

 

 「じゃあ……天河君で」

 

 「へ?俺?」

 

 委員長のご指名は優人だ。

 そのまま優人の正面まで移動して

 

 「…………ハグ!!////」

 

 「んなっ!?」

 

 顔を赤くしながらも優人に抱き着いた。

 突然の行為で優人は驚いている。

 

 「「ひいいぃぃぃっっっっ!!!!!」」

 

 その光景を見て悲鳴を上げたのは九崎と静水久。

 

 「普段全くそんな気無さそーな女子からのハグだとぉ!?」

 

 「コレはヤバいよ!効果絶大だよ!」

 

 「ガッデム!何故俺じゃないんだ!神はいないのか!?降誕祭(クリスマス)だから休暇中なのか!?」

 

 泰三、謙介、宮本が順に喋る。

 

 「あぅ……(これ…私の死亡フラグ強化しちゃったかも)////」

 

 「うぅ……(い、いいんちょって意外に大きい)//」

 

 2人の現状に俺達だけじゃなく翠屋店内の客の視線がほとんど集まってる。羨望の視線やら嫉妬の視線やらが。

 

 「あれ?野井原は?」

 

 よく考えりゃ優人の事でいの一番に反応する筈の野井原からの反応が無いから不思議に思った俺が店内を見渡したが、野井原の姿が何処にも無い。

 

 「緋鞠さんなら先程外へ出て行くのを見ましたよ」

 

 ん?外だと?

 ひょっとして店外の接客対応でもしてんのか?アイツ今日はシフト外してるってパーティー始める前にリズが言ってたけど。

 俺は店の外に出てみた。

 そこで見たのは…

 

 「畏れるな人間!今宵は聖夜。主達が(まつろ)う神への祝宴!全てを許し、全てがが許され罪は消える!皆、存分に愉しむが良いっ!!」

 

 翠屋の屋根の上で安綱を振るい、テンションが高くなっているネコ耳少女(のいはら)だった。

 

 ざわ……ざわ……

 

 しかし店外で食事を取っているお客さん達は困惑気味である。

 何より…

 

 「(おいおい…そりゃマズくないか?)」

 

 野井原の周囲には彼女によって斬り伏せられた妖の死体がわんさかと。

 認識阻害の類による処置も何も行っていないので一般人もバッチリ認識してる。

 このままだと面倒な事になりそうだ。

 ……一か八かだが、やってみるか。

 俺は息を軽く吸い込み、大きく声を張り上げる。

 

 「ご連絡が遅れて申し訳ありません!!翠屋の看板娘の1人が立体映像の怪物相手に立ち向かうクリスマス限定のイベント『猫姫の剣舞』を心行くまでご堪能下さーーーーーーーーーーーーーい!!!!」

 

 野井原の行動を翠屋のイベントとして押し通す。

 あの妖とかについて立体映像で通すのは流石に無理があるかもしれないけど…

 

 「何だぁ。イベントだったのかー」

 

 「あの化け物、リアル感のある映像だねー」

 

 「ネコ耳おねーさんカッコイイー」

 

 お客さん皆信じちゃった!?てか自分で言って何だけど、そんな簡単に納得しちゃっていいの!?

 野井原は野井原で叫んだ後はコチラの事等気にせず再び剣を振るい始めるし。

 

 「……何をしてますの、緋鞠のヤツは」

 

 「ひ、緋鞠?」

 

 「の、野井原…さん?」

 

 「駄猫め…」

 

 店内からくえす、優人、委員長、飛鈴ちゃんも出てきた。

 

 「どうした?4人共」

 

 「俺はその…委員長を駅前まで送る事になって」

 

 「うん。私が天河君に頼んだんだけど…」

 

 ……ああ、ビンゴゲームで勝った特権か。

 

 「緋鞠の奴、何でこんな……人目に付く場所で戦ったらリスクが高いぐらい分かる筈なのに…」

 

 「駄猫の奴、人気の無い場所に移動しないどころか嬉々として妖斬ってるじゃない」

 

 動揺する優人とは違い、飛鈴ちゃんは鋭い視線を野井原に向けている。まるで野井原を敵と定めたかの様な…。

 

 「はぁ……目の前の光景はゲームとかマンガでしか有り得ない様な光景の筈なのに、当たり前の様に受け入れてる私ってどうかしてるのかしら」

 

 この中で唯一一般人の委員長。この光景を見た以上、裏の世界について教える必要があるのかもしれない。

 次々に現れる妖も先程から野井原しか狙っていないとはいえ、人目も憚らず襲うのには理由有るのか?

 

 「(…何ですのあの戦い方は?メチャクチャな斬撃の上に自身の妖力で抉り、すり潰すなんて)」

 

 「(天河優人(みそっかす)の前で獣の本性を出すとは流石に思わないけど…とりあえず飛白姉様にこの事は報告しとかないと)」

 

 やがて野井原に襲い掛かる妖もいなくなり、お客さん達は最後までイベントだと思い込んでいるので、野井原に向けて歓声と拍手を送っている。

 野井原は屋根の上で俺達に背を向けたまま立っており

 

 「緋鞠…」

 

 優人は自身の護り刀に声を掛け、優人の声が聞こえたのかゆっくりと野井原は振り返る。

 

 「やあ、若殿」

 

 振り返った野井原の瞳には……狂気染みたモノが含まれている、と俺は思った。

 そのまま屋根の上から飛び降りて優人の前に降り立つ。

 

 「うぅ……」

 

 「「……………………」」

 

 委員長は気圧され、くえすと飛鈴ちゃんは変わらず厳しい視線を野井原に向けているが、当の本人は気付いていて受け流しているのか気付いていないのか……。

 

 「野井原、この現状は何だ?」

 

 誰も口を開かないので俺が聞くと、野井原は顔をコチラに向けて答える。

 

 「勇紀か。何、こやつ等は九尾に生殺を握られた死徒。倒さねば退かぬ者共よ」

 

 「……………………」

 

 「だが案ずるな。如何に妖が徒党を組み、百鬼夜行として立ち塞がろうとも我等の()く道、切り開いてみせようぞ。のぅ、若殿」

 

 「……………………」

 

 再び優人の方に向き、手を差し出すが、優人は手を取ろうとはしなかった。

 …優人のヤツ、躊躇ってるのか?

 

 「どうした若殿?」

 

 「………いや(これが俺の選んだ鬼斬り役としての道。緋鞠はそれを見せつけたんだ)」

 

 優人は何度か頭をブンブンと振ってから今度は野井原の手を取った。

 

 「(野井原の緋剣……その代々の祖先については以前天河の実家に行ったって言う静水久から聞いたけど…)」

 

 嘗ては人を喰らう邪悪な妖とされていた野井原の遠い祖先。

 時が流れ、代をいくつか()てもその中に眠る本性…闇は決して晴れていないのか…。

 あの瞳に垣間見えた狂気が本格的に表立ち、野井原が暴走した場合…

 

 「(優人は…野井原を斬り伏せる事が出来るのか(・・・・・・・・・・・・)?)」

 

 手を取り合う優人と野井原を見て、俺は一抹の不安を感じずにはいられなかった………。

 

 

 

 「「「「「「「「「「はふぅぅぅ~……//////」」」」」」」」」」

 

 「「「……………………」」」

 

 翠屋店内。

 あの後委員長を駅前まで送り届けるために優人、野井原を見送り店内に戻ってきたのだが…

 

 「何があったんだよ…」

 

 アリサ達は何故か頬を上気させ、蕩けた表情を浮かべて椅子の背もたれにもたれかかったり机に突っ伏していた。

 いや…アリサ達だけじゃない。

 店内のお客さん達皆が同じ様な状況に陥っていた。

 

 「「「はひゃひゃ……////」」」

 

 特に酷いのが謙介、泰三、宮本。

 コイツ等は蕩けた表情だけじゃなく店内の床にあおむけで倒れ、ピクピクと身体を震わせていた。

 だらしなく開いた口からは舌を出し、口元には涎が垂れている。

 エロゲーとかで言う絶頂に至った時の『アヘ顔』を惜しげも無く晒しているのだ。

 

 「醜いですわね」

 

 「キモ」

 

 くえすと飛鈴ちゃんは汚物を見るかの様な蔑んだ視線を3人に向けていた。

 

 「………オラ!」

 

 ゲシッ!ゲシッ!ゲシッ!

 

 「「「げふぅ!!」」」

 

 脇腹を蹴飛ばし3人をうつ伏せの状態に変える。

 何が悲しくて男のアヘ顔なんか見にゃならんのだ。

 これが女の子なら目の保養になるというのに…。

 

 「「「「「「「「「「ふにゅぅぅ~…//////」」」」」」」」」」

 

 …いや、蕩けた表情だけでも充分保養になりますね、うん。

 ウチのクラスメイトやご近所さんは皆、美少女ですし。

 

 「(……って、いつまでも見てる訳にゃいかんいかん)」

 

 何で皆がこんな事になったのか原因を見付けないと。

 

 「「……………………」」

 

 決して背後からぶつけられてる2つの殺気に恐れをなしてという訳ではないのだ。

 

 「すずか、すずか」

 

 ユサユサと揺すって呼んでみる。

 

 「んぅ……////」

 

 すずかはゆっくりと上半身を少しだけ上げる。

 蕩けた表情、潤んだ瞳、そしてチラッと見えるご立派なオムネ様が生み出した谷間。

 

 「(うぐっ!)//」

 

 こいつぁ……ヤベエ。

 すずかのこんな表情見るなんて事無かったから、耐性なんて全く無いも同然だ。

 俺は思わず目を逸らしてしまう。

 

 「勇紀くぅん…何かなぁ~?////」

 

 おまけにボイスまで蕩けてるときたもんだ。

 

 「な、何で皆、こんな状況になってんだ?//」

 

 目を合わせずに尋ねてみる。

 

 「それは……アレ(・・)のせいだよぉ~…////」

 

 すずかが指を指したのは隣のテーブルに置かれた

 

 「…野菜スープ?」

 

 だった。

 え?あのスープのせいでこんな事になったの?

 

 「そうだよぉ~…アレを一口口にいれただけで…ふわぁぁ…////」

 

 …激マズのスープだったとしたらこんな事にはならんだろう。

 

 「ゴメンなさいね。それ私が作ったの」

 

 謝って来たのはまさかの桃子さん。

 

 「久々に腕を振るって作った際にコレ(・・)、入れちゃって。てへっ♪」

 

 まさか桃子さんがテヘペロするとは思わなかったが、俺は桃子さんの手の中にある物体を見て目を見開いた。

 

 「ちょ!?マジでソレ入れちゃったんスか!?」

 

 「うん。桃子さんお手製の『MO☆MO☆KOスパイス』」

 

 桃子さんが手に持つ小瓶。貼り付けてるラベルには『MO☆MO☆KOスパイス』と明記されてある。

 けどコレで納得した。

 アレは世界でただ1人、桃子さんのみが作れるスパイスである。

 材料に何を使われているのかは全くもって不明。

 そしてアレを投入された料理は……激ヤバである。

 不味くて激ヤバなのではない。美味過ぎて(・・・・・)激ヤバなのだ。

 

 「(以前あのスパイス入りの料理を食べた時、一口目は辛うじて耐えられたけど、二口目は流石に自信無かったから完食できなかったんだよな)」

 

 あの時必死に絶頂へ導こうとする味に耐え、プルプル震えてる姿は生まれたての小鹿の様だったと士郎さんは言ってたっけ。

 

 「てか桃子さん。ソレ使うのマジ止めましょうって!」

 

 「はーい♪」

 

 可愛らしく返事するけど本当に分かってんのこの人?

 

 「ふっ、相変わらずの腕前。いと美味し」

 

 店内のカウンター席で1人の爺さんが野菜スープを次々とスプーンで掬っては口に運んでいる。

 あれ?あんなお客さんいたっけ?

 てかMO☆MO☆KOスパイス入りの野菜スープを口にして平然としてられるなんて凄いな。

 …何故に褌一丁なのかは疑問だけど。足元に落ちてる服着ろよ。

 鍛え上げられた肉体の披露でもしてるつもりか?

 

 「スープだけでこの惨状に?有り得ませんわね」

 

 「今日はエイプリルフールじゃないんだけど?」

 

 しかしくえすと飛鈴ちゃんは全く信じていない様子。

 手近にあった未使用のスプーンを掴んでスープを掬い……って

 

 「ちょ!!?2人共駄目……」

 

 パクッ×2

 

 「「ひゃうううぅぅぅぅぅぅ~~~~!!!//////」」

 

 ああぁぁぁ……止めるのが遅かった。

 犠牲者が2名追加。くえすと飛鈴ちゃんも皆と同じ運命を辿っちまった。

 これで店内の生存者は俺と桃子さん、士郎さんに店内のスタッフに褌一丁の爺さんだけとなってしまった。

 

 「(この様子だと皆が平常に戻るまでどれだけ待たねばならんのやら…)」

 

 俺は深く溜め息を吐き、とりあえず客に差し出された全ての野菜スープの回収を行うのだった。

 後、くえすと飛鈴ちゃんが喘いだ時、一瞬全裸(マッパ)になった様に見えたのは俺の気のせいだったのだろうか?

 

 ~~あとがき~~

 

 緋鞠の闇堕ち化は原作通りに進行中です。しかしこの小説では最終的な展開をちょっとオリジナルにするかもです。

 それと静水久と三雁藍華のイベントは原作通りの展開なのでスルーしました。勇紀は関わらずです。

 後補足として桃子さんの腕前について。

 

 

 

 通常モード=自宅や翠屋で振舞う味付け。そこらの一般家庭の料理よりは美味い。

 

 本気モード=元十傑第一席の実力を存分に発揮。某雑誌にて三ツ星評価を下されたレストランの料理長やシェフ達がDO☆GE☆ZAをしながら負けを認める程。

 

 通常、本気を問わず『MO☆MO☆KOスパイス』を使用=「ひゃうううぅぅぅぅぅぅ~~~~!!!//////」

 

 

 

 という感じです。

 この作品内で本気モードの桃子さんと対等に食戟で渡り合えるのはKO☆YA☆SU(堂島先輩)ぐらい。

 そんなKO☆YA☆SU(堂島先輩)でも『MO☆MO☆KOスパイス』入りの料理の完食は至難……ていうか多分無理。

 意識を保って完食出来るのは某おはだけ爺さんぐらいです。

 他の人の例だと

 

 

 

 えりな様=一口食べたら完堕ち確定。『神の舌』が反応し過ぎて大変です。中村君の洗脳(きょういく)<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<越えられない壁<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<一万と二千年経ってから出直してこい<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<MO☆MO☆KOスパイス

 …てなぐらいヤバいです。

 

 アキラ君=彼の『鼻』をもってしてもスパイスに使われる材料を見極める事は不可能。

 

 叡山先輩=もうね……顔芸がね……とんでもない事になっちゃうんだよね。

 

 

 

 てな感じですかね。

 極端な話、『MO☆MO☆KOスパイス』は何にも手を加えていないただの白米にかけて食べるだけでも『ひゃうううぅぅぅぅぅぅ~~~~!!!//////』ってなっちゃいます。おはだけ必須なんです。

 故に桃子さんの学生時代、この調味料は決して食戟では使用していなかったと言っておきます。使ったら審査員が一口食っただけで勝利確定されるんで。

 十傑第一席になったのはスパイス未使用の純粋な実力です。

 前話で美作も桃子さんの技術を盗めば今頃は……。もっとも桃子さんをストーキングなんてしたら高町家の旦那と長女が斬りかかってきますけどね。

 


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