No.822460

とある傭兵と戦闘機    IS編第16話   ”理解と真実と”

お久しぶりです。雪下です
ながらくお待たせ致しました・・・続きですどーぞーーーー・・・

2016-01-02 03:00:21 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:2172   閲覧ユーザー数:2087

 と、その前にフィリアの実の設定とそれを取り巻く世界の状況についておさらい

 

 

 

 フィリア・フェイリールド・・・本名、フィレイア・ヴィリタニイ・リーファフロイス

 

 イギリス皇室の中でもトップシークレットの重要人物であり、

 

 唯一、皇室の血をそのまま受け継いでいるたった一人の娘だが

 

 三十年以上前に行方不明になり、イギリスの”英雄”の血統は途絶えたと思われていた

 

 しかし、ベルカ戦争の勃発ーーーそしてその戦火の空を切り裂くように飛んだ一機の紺色の剣を握っていたのは

 

 他でもない、彼女だったのだ

 

 だがベルカ戦争終結後、彼女はある一つの世界を見た

 

 彼女が見た世界は、この世界を裏返しにしたかのような世界だった

 

 その世界で出会った仲間、敵、そしてーーー世界そのもの

 

 そして、彼女は未来へ進んだ

 

 そこで待っていたのは、新たなる翼と世界の状況だった

 

 その未来で、彼女は奇しくも世界最強の力を扱う学校にかくまわれる形で生活するが

 

 未来は・・・彼女から平穏を奪ってゆきつつあった

 

 

 

 

 

 「俺達は、元々各国からの支援で行っただけだったんだ

 

  当時のウスティオ最後の基地・・・地形的に難を逃れていたヴァレー基地に配属されたのは

 

  各国の半民間軍事企業の中堅クラスのパイロット達

 

  その中の割り振りによって・・・俺はコイツの二番機につく事になったんだ」

 

俺は、あの頃の記憶を呼び覚ます

 

忘れられないーーーあの時の感情と記憶が溢れ始める

 

 

 

 

 「おいおい、こんなカワイイ御嬢ちゃんが俺の相棒だってのか?冗談は止めてくれ」

 

配属された基地で一番機を待っていた俺に渡された写真に写っていたのは

 

どう考えても二十歳に達していない蒼い髪の少女だった

 

 「仕方無いだろう。だがこんなナリでも腕は一級品だ

 

  二年前に起きたオーシアの鳩殺しは知っているな?」

 

 「知るもクソも、オーシアの東海岸の操縦訓練基地が奇襲されたアレだろ?」

 

その事件は俺でも知っている。

 

 オーシア第三教育中隊基地奇襲事件ーーー通称 ”鳩殺し事件”

 

オーシアの国防訓練中だったF-16の戦闘機隊が奇襲を受け、

 

奇襲機の全機撃墜と引き換えに訓練機の99%を喪失した事件

 

国籍不明機だったらしいが、今の状況から見て十中八九ベルカだろうな

 

 「んで、それが何だって言うんだ?」

 

 「・・・24機だ」

 

急にくぐもった顔をした目の前のAWACS担当員はそう言った

 

 「あん?」

 

 「その際の飛来機は36機、訓練課程中のF-16が24機

 

  フランカー相手にだ。とてもではないが、訓練課程中の戦闘機隊が相手取るにはあまりにも大きな戦力差だ

 

  そして、彼女が墜とした機体が24機だ」

 

 「・・・嘘だろ・・・」

 

そんなの物理的におかしいだろ

 

訓練過程中のパイロットが24機撃墜だと?

 

ふざけた冗談はやめてくれよ

 

 「そして、彼女はその1%なんだピクシー

 

  彼女は、仲間一人ひとりの仇を取ったんだ。無意識にな」

 

 「・・・腕は保障できるってか?」

 

 「言ってしまえばそういう事だ」

 

 「・・・ふん」

 

 

 無意識の正義か・・・笑えるな

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・ってのが俺の最初の感想だった訳だ」

 

はははっと頭を掻きながら笑う

 

場の空気に似合わないが、まあいい。これが俺だ

 

 「さて、続きだ。ここから先の事は本人の了承を得てからだ

 

  いいか?ーーーーーーサイファー」

 

そうしてベッドの方向を向く

 

そこには、うずくまる相棒の姿があった

 

頭を抱え、耳を塞いでいる

 

 「・・・・・・・もう察しだとは思うが

 

  こいつは、イギリスの姫君でありながらアメリカの戦闘機乗りだ

 

  それも、お前らの持ってるIS学園の教科書にも記載される程のトップエースだ」

 

と、全員が顔を見合わせた

 

成る程、こいつらも伊達に国の名前を背負ってないな

 

まあ、ブリュンヒルデ曰く既に感付き始めていたって言ってたし

 

まあ世界的知名度の高い戦闘機乗りの一人だしな

 

・・・唐突なんだが、俺って知名度低くね?

 

言うのもなんだが、円卓の鬼神の相棒なんだぜ?悪い意味で有名な方(ナターシャ曰く)とか言われるとぐうの音も出んが

 

まあいい、そんなつまらん事より現状だ

 

 「さて、この中で一番知ってそうなのは・・・ボーデヴィッヒ」

 

と、銀髪のチビを見る

 

 「知っているという問題では無い。わが国を一度”リセット”してくれた英雄だ

 

  知らない国民が居るとすれば、そいつは私が直々に教鞭を取ってやろう」

 

 「いいね~。相棒の知名度が高いってのは何か誇れるものがある」

 

 「貴様もだぞ。”片羽の妖精”」

 

と、全員がこちらを向く

 

 「・・・へぇ?」

 

 「お前は、世界をリセットしようとした。確かにお前が述べたあの言葉は考える選択肢を増やしてくれた

 

  だが、今だから言える事だが・・・お前もまた、間違っているとは言えないだろう?」

 

 「容姿に似ない大人びた発言をする・・・やはりドイツの中堅士官は優秀って事だ。それは今も昔も変わらん」

 

 「お褒めに預かり光栄だが・・・周りの人間がついて来てないぞ」

 

まあ、大丈夫だろ。そんな理解の硬いやつはこの中にはいねぇだろ

 

 「?????」

 

そーいや居たな。

 

同じようなくそ硬い正義心持ったやつが

 

 「理解できないのなら外に出ろ。織斑一夏」

 

 「理解できねぇって・・・アンタさっきから何を言ってるんだよ!!」

 

感情のままに叫ぶ織斑は、拳を硬く握り締めていた

 

 「いきなり何を言い出すかと思えば、何だよ一体!!

 

  フィリアがイギリスの姫様?、アメリカのパイロット!?

 

  三十年前の戦争で、アンタの横で戦っていた!?

 

  知らねぇよそんな事!!フィリアはフィリアだろ!!

 

  IS学園に居るうちはそうだろ!?」

 

・・・・・我慢できねえな

 

 「いい加減に感情そのまま考えずに首を突っ込むんじゃねぇっつってんだよ

 

  いいか、お前の手でどうこうできる自体ならとっくの昔に何とかなってる

 

  一番手っ取り早く解決する方法はあるぞ?教えてやろうか?」

 

 「何だよ!!何だってやってやるよ!!」

 

 「じゃあ教えてやるよ・・・それはなーーーー」

 

 

 

      こいつを・・・”フィリア・フェイリールドという人間をこの世から消すんだよ”

 

 

                                             」

 

 

 

 

 場が凍りつく

 

 そんな結果は判りきっていたし、覚悟の上でそれを突きつけてやった

 

 「ほら、やってみろよ。簡単だろ?

 

  競技という枠組みで保護された”武器”がお前の腕に装備されてんだろ」

 

 「そんな事ーーー」

 

 「できる訳がねぇよなぁ・・・そうだよなァ優しき勇者様さんは

 

  お前はずっとこのまま守られてろ・・・その方がお似合いだ」

 

話の腰を折ったな・・・だが、事実だ

 

こいつは、まだ”世界の流れ”を知らない

 

 「部屋を出ろ、織斑一夏。

 

  お前だけには到底こいつを預けられねぇ。俺の相棒を任せられねぇ」

 

そうして織斑に背を向ける

 

後ろで扉を開ける音がして、それから静かになった

 

それでいい。知らないからこそ、お前はまだ強くなれる

 

姉を超えられる、唯一になれるはずだ

 

俺がそう断言できる理由は簡単だ

 

さっき述べた正義の定義が、こいつと同じだからだ

 

こいつと同じようにならないように

 

こいつと同じ罪を背負わないように

 

俺が背負った事を繰り返さないように

 

俺はーーー再び悪魔になった片羽の妖精を名乗ろう

 

 「オルコットはもう既に片足を踏み込んでしまって逃げることができないだろう

 

  だから俺の説明の補佐をしてくれ」

 

 「・・・解りましたわ」

 

・・・恨まれてんな

 

まあいい。いつもの事だ

 

 「本人の扱いは、IS学園側が招待(雇い)入学したので

 

  正式なIS学園の生徒としての保護恩恵を受ける事ができる

 

  しかし生徒と傭兵の二つを兼任しているのは、IS学園側の”通常防衛機能”が

 

保持しにくいという点からだ

 

  彼女を学園に迎え入れた横の織斑千冬は、学園の防衛戦術士であるが

 

  ISは兵器としての利用を公には禁止されている為、それ以外の戦力を欲していた

 

  IS学園に課せられた条約を無視する事ができる自由な戦力

 

  織斑千冬はフィリアの持つ圧倒的空対空格闘能力に頼るほかなかった

 

  結論として、フィリアはIS学園で唯一たる通常戦力としてその力を発揮していた

 

  更に、IS学園が持て余していた起動不可能だったIS・・・打鉄零式を起動

 

  フォーマッティングを完了させる事により、自動的にフィリアはIS学園所属特務戦闘員に登録された

 

  更に、米国からの防空支援・・・新型戦闘機二機と搭乗員一名・・・まあ俺なんだが

 

  だがーーー横に居るセシリア・オルコットというクラスメイトとの英国への帰国から変化し始めた

  英国訪問の際、本人がその事を始めて自覚した時から始まり

 

  英国側が取った行動、そしてIS学園側の情報隠匿

 

  学園側は知らなかったという認識で通せばいいが、とある条約と世界各国に課せられているものが特上に厄介でな

 

  国家最重要事項として世界各国が結んだ協定ーーー国家最優先特殊人物保護法

 

  本来、戦争で行方不明になってしまった国家最重要人物を保護するための協定だったのだが

 

  そのリストの戦災行方不明、かつ唯一たる皇族という10段階中10という最高レベルの保護確保対象にされている

 

  そのレベル10での協定内容は、”その対象を発見、もしくは保護・・・死亡していた場合はその遺体の確保

 

  何らかの形で接触できた場合は即時にその対象が所属する国家に最優先で情報を送る義務を課す”

 

  そして、これはアラスカ条約よりも優先される世界でただ一つの協定である

 

  だが、これに関してはまだ条約自体に微細な部分が明記されていない部分があり

 

  非常に曖昧で白黒判別ができないグレーな部分が多く存在している

 

  だが、この条約を違反した場合、”その国家は国連会議の場から永久にその席を剥奪される”

 

  条約自体が曖昧なのにも関わらず罰則自体があまりにも重過ぎる故

 

  どの国も、この条約に表立って関わる事ができないでいる

 

  しかしーーーここからがグレーの中のグレーな部分

 

  フィレイア・V・リーファフロイスの身柄を預かるIS学園

 

  その身柄を捜し求めるイギリスの政府

 

  彼女が一度イギリスに入国したという事実を英国政府が知ってしまった

 

  IS学園側がフィレイア・V・リーファフロイスの情報を引き出し

 

  全世界の回線を使い、更にはコア・ネットワークまで用いていたという事

 

  英国側は彼女の存在を抹消しようとし

 

  IS学園側は、彼女を守ろうとしていた

 

  だが、日本に属するIS学園は非常に特殊な”特別国家”という扱いでアラスカ条約に制定されている

 

  故に、IS学園単体は”日本であり、一つの独立国家”として国連に参加している

 

  そして本来効力を発揮するはずの、IS学園自体の特別規則に記載される

 

  ”IS学園に在学する生徒もしくは教員は、IS学園に在学もしくは在籍している限り

  

   国連に参加するあらゆる国家、企業等その他の団体から一切の干渉をも受けない

 

   また、前述したものに帰属する事は無い”

 

  という規則も、アラスカ条約の下に制定されているため効力を発揮できない

 

  彼女自身が”戦闘機のパイロット”であるという事実

 

  この情報に関しては既に記している為省略するが

 

  これに関しては、アラスカ条約の制定において主導権を握っていた旧オーシア・・・

 

  現アメリカの国防省が一枚噛んでいた事実

 

  たった一人の少女に関して英日米が絡む巨大な渦になったんだ」

 

 「わたくしも考えてはみたのですが

 

  現王妃様は確かにフィリアさんの存在を気にかけていらしたのですが

 

  その様子はおかしく、明らかにその人物ではなく”その存在”を危惧していたように思えましたわ」

 

 「・・・という状態だ。つまりどういう意味か判るか?」

 

 「・・・実質的に、フィリアさんの後ろ盾が無いという事ですわ」

 

 「そう言う事だ。そして今居るIS学園という”国”そのものが今、爆薬満載の火薬庫になっている

 

  イレギュラーの多い今年なのが尚更だな」

 

 「それにても・・・フィリアがそんな存在だったなんて・・・」

 

デュノアがそう感想を漏らすが・・・そうだな

 

俺だって当時、そんな身の上だったとはおもってもいなかった訳だしな

 

 「でも、あの一夏への態度は何だ!!」

 

お~お~恋する乙女が吠える吠える

 

 「なあ千冬。お前の身の回りはこんな平和なヤツばっかりかよ。くたびれないか?」

 

 「そうばっさりと言うんじゃないポートマス。割と冗談にならん」

 

 「なっ!?」

 

 「って事だ。いつまでも平和ボケしてんじゃねーよ

 

  お前が姉からもらったそのブレスレット

 

  それが意味するのが判ってないなら、お前も一夏と同じだ

  

  いい加減に直視したらどうだ。それは使い方を変えれば一瞬にして人を灰にする事ができるんだぞ」

 

ホント、報われないな

 

お前みたいな我がままなヤツが居るから、世界の平穏が揺らぐんだ

 

今までに戦い、命を賭して戦い命を落とした仲間、敵の想いはこんな無知な奴のせいで壊れるんだな

 

 「あの純情青年を慰めたいなら行け。尤も、それはあいつにとってはマイナスでしか無いけどな」

 

 「・・・・くッ!!」

 

拳を握り締めて、篠ノ乃は出て行った

 

まあいいさ。何も変わらないだけだ

 

 「さて、ここまで聞いて諸君らはどうする?」

 

 「どうするとは・・・?」

 

千冬が聞いてくる

 

 「フィリアを守るか、それとも世界を守るかだ」

 

 「・・・貴様はどうするんだ?」

 

そんな事、最初から決まってるんだよ

 

 「俺はフィリアを守る。その為に生きると決めている

 

  敵対する全てを、降りかかる全ての敵と銃弾を排除する

 

  こいつを守る為なら、何だってやってやる

 

  立ちはだかるのなら、容赦はしない。全て喰らい潰す」

 

威嚇するように、そう宣言する

 

身分がどうだろうが関係ない

 

俺は、フィリア・フェイリールドという存在をーーーー

 

 

    好きに、なったんだからな

 

 

変わらねぇなぁ・・・俺は変わらない

 

フィリアの為にも、もう変わる気は無い

 

 「さて、続きだ・・・

 

  まあこっから先の事はドキュメンタリーでも参照してくれ

 

  つっても、大方知ってるだろうけどな」

 

 「「「「・・・・」」」」

 

オーケィ

 

 「最初の出撃で、俺は相棒の潜在能力を見た

  

  並大抵のものじゃない。搭乗機の限界を全て引き出したあの空中戦は

 

  俺の網膜の裏側に焼き付く程に鋭かった」

 

 「そんなに・・・でも、今でもあの戦争での空中戦には疑念がのこりますわ」

 

 「ほう?どんなだ?」

 

 「仮にそんな飛び方をすれば、戦闘機そのものに物理的なダメージが出ます

 

  どんなに高性能な戦闘機でもそれは変わりませんわ」

 

確かにその通りなんだよな

 

旋回時に何十倍というG、空気抵抗や負荷がかかるそれを行えば

 

どこかしらに皺がよってくるし、それが蓄積されていく

 

だが・・・ここからの話が重要なんだ

 

 「確かにアイツは機体の耐久Gを上回る機動を行っていた

 

  そしてその戦闘機は、元々アイツが居た傭兵団体のお古

 

  それでも・・・耐えたんだ。”フィア”は」

 

そう。そのボロボロの戦闘機に意識が芽生え

 

そのパイロットとの思い出と奇跡が生み出したのが

 

フィア・フェイリールドという”兵器”だった小さな少女だ

 

 「オルコット、お前が見たあの小さなフィリアみたいな娘は

 

  元々、あいつが戦場を超音速で駆け抜けた翼そのものなんだ」

 

 「それはどういう意味ですか?」

 

 「そのままの意味だ。大切にされるものには魂が宿る

 

  逆はどうかは知らないが、FACSのプログラムの中に生まれたその意識は

 

  パイロットを想い・・・パイロットもまた、機体を愛していたんだ

 

  その結果ーーーー非現実的に具現化したのがフィア・”イーグル”・フェイリールド

 

  フィリアが生み出した”奇跡の翼”だ」

 

 「つまり・・・フィアちゃんは戦闘機って事ですか?」

 

 「そうだな。だが今は純粋な人間の体を持っている

 

  俺自身にも説明が付かない

 

  だが、現実でそれが起こっている

 

  俺がこの姿になったのも、相棒が三十年前から飛んできたのも」

 

 「信用するには、明らかに情報が足りなさすぎるな・・・」

 

そうだな

 

だが、信じてもらうしかない

 

それしか、道は無いんだ

 

 

 

 

 

 

私は考えていた・・・

 

何故、こんな事になったんだろう?

 

何故、こんなにも私は皆に迷惑をかけているんだろう・・・と

 

私は何かしたっけ?

 

私は何をしたっけ・・・ああ、そういう事か

 

いっぱい・・・殺したもんね

 

ああ、そうだ

 

 

 

手に持った拳銃の銃口をそのまま頭に向ける

 

これでいいんだ

 

これで、誰にも迷惑にならないんだ

 

そうすれば、私も考えずに済むんだ

 

 「ッ!!フェイリールド!!やめろ!!」

 

織斑先生が、呼びかけている

 

 「やめないですよ。皆に迷惑をかけない為に、私は私を”終らせます”」

 

撃鉄を起こし、私は目を閉じる

 

これでもうーーーー考えずに済む

 

悩まずに、済むんだ

 

だけど・・・引金にかけた指が震える

 

そしてーーー涙が出てくる

 

何故だろう・・・どうして・・・

 

私は”死”を望んでいたはずなのに

 

何故ーーー私は怯えているんだろう

 

 「・・・・ひっぐ・・・ぐすっ・・・」

 

嗚咽が止まらない

 

どこにも逃げる場所なんてない

 

ずっとずっと・・・私は孤独だ

 

孤独は・・・苦しい。苦しくてたまらない

 

この引金を引けば、私は終れる

 

終る事ができるーーー

 

私は引金を絞った

 

 

   ガチンッ 

 

 

 「ーーーーーーーッ!?」

 

終らせるつもりで引いたそれは・・・不発だった

 

腕から力が抜ける・・・拳銃が手から落ちる

 

 「・・・・・・・」

 

ラリーが無言で落ちた拳銃を取る

 

スライドを引き、薬室から弾丸を抜き、それをじっと見る

 

 「プライマーをファイアリングピンが完全に叩いてる。雷管不発による撃発不良だ・・・」

 

薬室に入っていた弾丸の雷管部分にはヘコミが出ているが、弾頭部分はそのまま残っているそれを見る

 

今度こそ・・・今度こそ終れると思ったのに

 

 「それだけの覚悟をもってしても、お前は死ねなかった

 

  でも、俺は・・・お前という存在に・・・

 

  お前という、一人の”家族”に、死んで欲しくない」

 

 

 

 

そこまでしても死ねないお前は何よりも不憫だ

 

だが、俺も同じだ

 

同じようにガバメントを額に押し当て、引金を引く

 

 ガチンッ

 

 「「「「「ーーーーーっ!?」」」」」

 

流れでやった事だが、俺が引いた弾丸も不発だった

 

ほら見ろ・・・俺も同じように死ねないんだぞ

 

 「俺も死ねない。だが、死ねないだけだ

 

  なら、生きるしかないんだよ。抗うしかないんだよ」

 

俺もーーーお前も

 

 「お前が居なくなったら、フィアはどうする?

 

  あの子はお前の大切にした機体そのものだぞ

 

  フィアがああなったのもお前がやってきた事の結果なのなら

 

  その現実から逃げるんじゃねぇよ」

 

そうやって生きていくしかないんだよ

 

何か、戦闘して生き抜くという事以外の目的を

 

守る為という、明確な自分の意思を貫ける目的を持つことだ

 

俺は・・・そうだな

 

今はっきりと決まったよ

 

ある意味、そういうものを持っているのなら当たり前のものなのかもしれないが

 

俺は、それだけで戦える

 

それさえあれば、お前を救えるはずだ

 

いや、その想いでお前を救ってみせる

 

 「俺が守ってやる。肩を並べて戦ってやる

 

  だから・・・もう俺を置いて行くのはやめてくれ」

 

そうして、俺はフィリアを抱きしめる

 

強く、強く・・・ただ強く、ひたすらに強く

 

 「もう二度と、俺はお前を遠くには行かせないからな」

 

心に誓う、もう変わることの無い明確な俺自身の願いを

 

彼女に伝える

 

 

 

 

ラリー・・・

 

こんな私を・・・守ってくれるの?

 

こんな私を、家族だと言ってくれるの?

 

やっぱりラリーは・・・

 

 「・・・暖かい・・・」

 

 「・・・?」

 

相棒から感じるその温もりは、どんなものよりも暖かかった

 

 「・・・ごめん、少しだけでいいから・・・このままでいさせて・・・」

 

 「・・・ああ」

 

あんな事をしようとしたけど、誰よりも優しいんだね

 

 

 

 

私も、ラリーみたいに優しくありたい

 

 

 

 

 

 「・・・(私には判らない、この二人の間にある繋がりが

 

  だが、私の心はその繋がりを概ね理解している

 

  何故だ?何故こんなにもこの二人が羨ましいのだろうか・・・)」

 

だが、やるべきことは見えた

 

私にできることは、この少女を幸せにする事だ

 

これ以上この少女を不幸にさせない為に

 

私は、最大限の努力をしようと思う

 

この世界・・・彼女が守ってくれたこの世界に彼女の居場所が無いなんてことは

 

理屈が通ってない。そんな事はあってはならない

 

世界が守るべき事は、歴史なんかじゃない

 

この少女のような、世界の為に命をかけた・・・ひとつの”優しい存在”だ

 

武力ではない、戦闘力でもない

 

この世界に必要なものは・・・目の前の二人のように、想う事のできる人間だ

 

 「私は、フィリアさんを助けたいですわ」

 

 「僕も同じだよ。そんな理由でフィリアの居場所が無くなるなんて理不尽だよ」

 

 「第一、この子のお陰で今の私達がある訳でしょ?この子が何か悪いことした?」

 

 「恩人に手をかけようなどと考える政治家の頭は腐っているかクズそのものだ」

 

二人を除き専用機持ち達の心は一つだった

 

 「私達は、フィリアを助けたいです」

 

そうだ、恐らくフィリアと関わった全ての人間がそう言うだろう

 

既に彼女は一人の生徒として第一学年にとって影響力を持つ大きな存在だ

 

 「お前が思っている以上に、皆はお前を想っているんだ

 

  その想いを忘れるな。お前の味方はいないなんて事はありえない」

 

だから・・・

 

 「絶望なんてするな。お前の後ろには、私達が居る」

 

抱え込むな、頼れ

 

お前が思っている程、私達は弱くは無いんだ

 

 

 

 

 

 

 

 「皆さんにお知らせがあります。

 

  先日、フィリア・フェイリールドさんの正式な退学が決定されました

 

  そして、新しくこのクラスに仲間が入ります」

 

教壇の横に歩いて、そして皆の前に立つ

 

皆が唖然とした顔で私を見ていた

 

 「イギリス出身のフィリア・P・フォルクです」

 

 「皆さんが思っている通り、彼女はフィリアさんです

 

  諸事情があって本名を伏せておりましたが、先日正式に学園に認可が通りました故に

 

  このような形で再入学となりました」

 

 「先生、フィリアさんに質問をいいですか!?」

 

 「いいですよ~」

 

 「その・・・左手の薬指にはめているのは指輪ですか?」

 

この指輪?

 

 「私の大切な”家族”からもらったものだよ」

 

ラリーがプレゼントしてくれたこの銀色のシンプルな指輪

 

これがどんな意味を持つのかはわからないけど

 

私にとって、これは絆の証

 

家族という、私にとってかけがえの無いつながりの証

 

 

 

 

 

 

先日未明   ラリー・P・フォルクとフィリア・フェイリールドは

 

       同じ籍に身を置く手続きを終わらせ家族となった

 

                  

 

 

 「確かに同じ籍にしてしまえば、ありとあらゆる事に関して正式に公認が取れる

 

  唯一、彼女がこの世界で自由になれる手段だとも言える・・・だが・・・」

 

 「教え子に先を越されるというのは・・・複雑です・・・

 

  それともう一人、スロックケイドさんの戸籍もフィリアさんの姉妹にしてありますので

 

  一度に二つの問題を解決できましたね」

 

ピリリリリッ

 

 「うん?・・・珍しいヤツから連絡が来たな・・・」

 

 「どなたですか?」

 

 「イギリスの代表、リフテリアからだ・・・もしもし」

 

 「”お久しぶりですブリュンヒルデ。息災いかがかですか?”」

 

 「私が病気ごときで倒れる訳が無かろうが」

 

 「”それもそうですね。失礼しました”」

 

リフテリアはモンド・グロッソの決勝で当たった選手だ

 

ひょんな事から連絡先を交換したのだが、これが始めての通話となる

 

 「それでどうしたんだ?お前から連絡をくれるとは思わなかったが」

 

 「”それだけ大切な事を伝えなきゃいけないからよ。

 

   フィレイアおばさんの事についてなんだけど・・・”」

 

ブフゥッ!!

 

 「お、織斑先生!?」

 

 「ゴホッゴホッ・・・どういう事だ?」

 

 「”フィレイア・V・リーファフロイス様は私の叔母にあたる人よ

 

  私がイギリス皇室の一員なのは知っていたでしょう?”」

 

 「それはそうだが・・・で、どうかしたのか?」

 

 「私はフィレイアおばさんと話して、そして決めたのです

 

  あの方に、私は幸せになってほしいと」

 

 「そうか・・・」

 

全ての人を惹く事ができる・・・・フェイリールドはそういう力を持っているんだな

 

 「”それでね、おばさんが六歳の時、皇子と共に出国されたのは知っているわね?”」

 

 「ああ、本人からも聞いたし裏の方も取っているが間違いない・・・それがどうした?」

 

 「”それ以降の身分隠匿の際に、皇子も偽名を使っていて戸籍を新たに登録した訳なのだけれど”」

 

 「それがどうした?今更彼女にその戸籍は適応されないだろう」

 

 「”最後まで聞きなさい。これは貴女にも係わっている事なのだから”」

 

 「・・・どういう事だ?」

 

 「”その戸籍を取る際、日本人女性との子供がフィリア・フェイリールドって事になっていて

 

   その女性の名前がーーー」

 

 

 

 

 

                 織斑 小春

 

 

 

 

 

 

 

 

織斑の名前とーーーーフェイリールドの偽装国籍は

 

ただの他人事で済ませられる程、単純なものではなく

 

私たちを巻き込む、複雑な繋がりが生み出したものだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お久しぶりです。雪下です

 

安定した投稿はしばらく後になりますが、とりあえず投稿です

 

駄文は相変わらず、そして拙い文章ですがよろしければどうぞ・・・

 

もう・・・あれから9ヶ月と経過してますがね

 

これから一応日常パートになるんで

 

気長にどぞーーーー

 

意見感想募集中

 

また今年もよろしくお願いします~

 

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
6
1

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択