No.802766

とあるギルドの死神様?

piguzam]さん

EP3~呪われた悪魔の子?

2015-09-17 22:19:30 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:5546   閲覧ユーザー数:4934

 

 

 

前書き

 

 

仕事忙しい(-_-;)……MGS5欲すぃ……

 

 

 

 

 

 

どもどもちゅいーっす!!みーなさんのユーキですよぉ~ん。

 

いや~、時が経つのは早いものでして。

エルザちゃんが妖精の尻尾に来てからもう二年の月日がな~がれましたわん。

 

そーの間にけっこー色々あったり無かったりしちゃったんだけど、その辺少しご紹介しましょうかねぇ。

 

まずひとぉおつ!!

 

エルザちゃんが妖精の尻尾に入ってから二週間くらいして、彼女の潰れていた右目が治ったんだー。

 

とは言っても、右目が元通りになったんじゃなくて、精巧な義眼を作って魔法薬で神経と同化させただけ。

つまり本物に限り無く近い義眼ってわけ。

その治療の経緯なんだけど、俺がマスターに頼んだのがそもそもの始まり。

折角可愛い顔してるのに片目が見えないなんて可哀想じゃん?

そー言ったらマスターも同じ事を思ってたらしくてさ。

要請の尻尾の顧問薬剤師であるポーリュシカさんの所に頼みに行ってくれたんだ。

ポーリュシカさんは人嫌いで人里離れた森の中でひっそりと暮らしてる。

なので、そこにエルザちゃんも暫く泊まり込んで治療をしてもらってたの。

勿論俺も頼むだけじゃなくて、俺の転生特典をフル活用した技術でエルザちゃんの義眼を作ったりなんかもしたしねぇ。

ちゃんと目が見える様になって、眼帯を外したエルザちゃんがとっーても可愛い笑顔でお礼を言ってくれたのが報酬です。

ポーリュシカさんにも感謝したらにべもなく「帰れ」なんて言われちゃった。

人嫌いなのにマスターの頼みは聞いちゃうなんて、ツンデレ乙。

まぁそう言ったら箒で追い掛け回されちゃったけど。

 

それにエルザちゃんは魔法の腕もグングン上達してきて、今じゃギルド内上級より少し下、中級の上位クラスの実力者になってます。

 

最近じゃ良く俺に模擬戦を挑んできてるけど、まーだ負けてあげる訳にはいかないので勝ち越し中。ぶい。

 

まぁ、クエストが休みでも魔法図書館や本屋さんで勉強を欠かさずというたゆまぬ努力。

そんで各上との模擬戦も欠かして無いから、成長しなきゃ嘘だーよねぇ。

グレイ君なんかぶっ~飛ばされ過ぎちゃって若干トラウマになっちゃってるしぃ。

今じゃエルザちゃんもフェアリーヒルズでの一人暮らし、料理の腕もかーなーり上達してますよん。

でも、俺の家を出る時に寂しそうな顔はしてたっけ。

俺も手塩に掛けた妹が飛び立ってしまう様な、ちょっと寂しい心境だったのは秘密。

 

 

そしてふたぁつぅ!!

 

 

こっちは去年、つまりエルザちゃんが要請の尻尾に入って1年目。

また新たに妖精の尻尾に新メンバーが加わったんだー。

 

その新人君の名前はナツ・ドラグニル。

 

桜色の髪に鱗模様のマフラーをした元気いっぱいの男の子だよん。

そーの元気が有り余り過ぎちゃって、誰とでも喧嘩しちゃうやんちゃボーイなんだけどねぇ。

何かと「勝負だ」と言って暴れまわちゃってさぁ。

ギルドの備品を壊したりするしー、色々と困った子だーけーどー、見てて楽しいからまぁ良いんじゃないかな、とか思っちゃたり。

特に同い年のグレイ君とは良く喧嘩しちゃってるのよ。

何か特別に相性が悪いみたいで、ほんと見てて呆れるくらい喧嘩ばーっかり。

 

やれ「タレ目野郎!!」とか「ツリ目野郎!!」なんて言い合ってから拳をぶつける姿は、もうギルドの名物になっちゃってるしねぇ。

 

んで、そこに「年上らしく」喧嘩を仲介しようとするエルザちゃんに仲良くぶっ飛ばされるまでが、ギルドの日常風景です。

たまにマスターも止める(制裁する)側に回るんだけど、まぁ殆どはエルザちゃんのお仕事になってる。

 

そうそう、ナツ君の使う魔法の珍しさったらまぁ、レアなんて言葉じゃ済まないくらいでさぁ~。

 

彼は滅竜魔法っていう太古の魔法、エンシェント・スペルの使い手だった。

竜を滅ぼすと書いて滅竜、なんとも物騒な響きでしょ?

そんな珍しいなんて言葉じゃ済まない魔法を何処で学んだのかと聞けば、これまた驚き。

 

なんと彼はドラゴンに育てられ、その育ての親である火竜・イグニールから滅竜魔法を学んだらしい。

 

これはさすがに信じる人ががっくりと減ったけど、ナツ君の滅竜魔法を見た後じゃ~、あながち嘘とも言えないと思うのよ。

俺の魔力探知能力の目で見た感じ、ナツ君の魔力は他の人とは違う感じだったし。

それと、何て言うかナツ君の魔力にもう一つ変な反応を感知したんだよねぇ。

まぁ、直ぐにそれも見えなくなっちゃったけど、何だったんだろうか?

 

という以上の事から、俺はナツ君の言葉を信じてる側の人間だ。

というか”火を食べてる”時点で普通の魔法じゃなくね?そう思った俺はおかしくない筈。

この世界じゃドラゴンって各地で敬われ畏れられてって扱いだから、皆が信じられないのも無理は無いかぁ。

 

それに竜が人に自分達を滅ぼす魔法を教えるっていうのも、納得がいかないって感じなんだろーね。

と、いった波乱万丈人生を送ってたナツ君がギルドに入ったのは、そのイグニールさんが突然姿を消しちゃったからだとか。

んで、そのドラゴンの行方を探す為に、ナツ君は妖精の尻尾の扉をノックした――との事。

 

まぁ妖精の尻尾はギルドの害にならない限り、誰でも歓迎するからねぇ。

 

勿論ナツ君も、皆に迎えられて元気にギルドで暴れております。

……まぁ、俺の作った魔道具が壊されない限りは良いんだけど……お願いだから壊さないでね。

チラッと頭を過ぎった不安を押し潰しながら、俺は気持ちを切り変える。

 

 

現在、ワタクシは魔動四輪バギーで棺桶トレーラーを牽引しながらある村の前で停車中です。

 

 

まぁ理由は単純で依頼があった村に来ただけだったり。

ん~。この依頼で15万J……報酬額は良いんだけどぉ……。

 

「悪魔払い、ねぇ……聖水とか清め塩とかもーってくるべきだったかしらん?」

 

いやまぁ普通に倒せば良いだけなんだけどね。

空が雲に覆われてなんだか陰鬱な雰囲気の村の中に入りつつ、依頼書にあった村長宅を目指す。

依頼内容は教会に住み付いた悪魔一体の撃退。

今まで悪魔は相手にした事は少ししかなかったけど、まぁ今まで位の強さなら問題無いかなー。

それに、最近やっと使える様になってきた”アレ”もある事だし。

いっちょやぁーってやろうじゃあーりませんかー!!

帰りに報酬で豪勢なご飯食べよっかなーとか考えながら、俺は村長の家を目指して歩くのだった。

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

「おぉぉ……ッ!?お待ちしておりましたじゃ、魔導士様!!」

 

「はぁ~いドモドモ。依頼を受けて来ちゃいました、フェ~アリ~テイルの魔導士でっす。あっ、これが紋章ね?」

 

頬がこけちゃって目の隈がすんごい事になってる村長さん。こわっ。

そのギョロギョロとした目付きに少しビビりながらも、袖を捲って紋章を見せる。

たまになんだけど、ギルドの名を語った犯罪者がいることがあるのよ。

そーいう人達って紋章は持ってないからねぇ。

こーやって事前に見せておけば勘違いされなくて済むから、毎回めんどくさくてもやってんの。

 

「は、はい。確かに確認しましたぞ」

 

「じゃっ、こ~れで顔見せは完了って事で~、早速仕事の話に入らせてもらっちゃいますね~?」

 

「あっ、は、はい」

 

「えっとぉ、依頼じゃ教会にあ~くまが住み着いちゃって困っちゃってるからぁ~、退治しちゃって欲しいって事だったんだけど~。こ~れで間違い無いでぇすか~?」

 

「……」

 

「……ありゃ?どったの?」

 

軽い確認だったのに、何故か村長さんは何か言いづらそうに目を伏せちゃった。

もしかして数が増えた?だったら報酬上乗せになっちゃうんだけどなぁ。

暫くそうして黙り込んじゃったので、俺は淹れて貰ったお茶をズズズーッと啜ってます。

やがて5分程した頃だろうか?顔を伏せてた村長さんが徐に顔を上げて俺と視線を合わせる。

出来ればキャーワイイ女の子が良かったです。

 

「……実は……その悪魔はもう居らんのです」

 

「ふぇ?……それってつまりー、悪魔はどっか行っちゃったって事で?」

 

「い、いえ。何処かに行ったのではなく……この村に住んでる少女が退治しまして……」

 

「へぇ~?それって良い事じゃ無いですか~」

 

どうやら既にこの村に巣食っていた悪魔は、勇気ある少女に倒されたそうで。

ってこの場合報酬0じゃ~ん……無駄足だったわ~けね。

 

「と、とんでもありません!!悪魔は居なくなっても、まだ悪魔憑きが居るのです!!」

 

と、のんびり構えていた俺だけどそんな簡単に話は終わらないっぽい。

 

「……悪魔憑き?……誰か悪魔に取り憑かれちゃったのん?」

 

「そうです!!ですから、その悪魔憑きを退治して頂きたい!!報酬は依頼書の通りお支払いいたしますので、どうか……ッ!!」

 

「ふ~む……おっけ~、その依頼受けましょ~か」

 

ちょっと依頼内容に変更があったけど、まぁ誤差の範囲っでぇ~。

俺がそう答えると、キッチリカッチリ90度に頭を下げてた村長さんが顔を上げて目を輝かせた。

ちょっ、怖!?目玉ギョロギョロしてんのにそんな光要らないってば!!

 

「おぉおぉ……ッ!?あ、ありがとうございますぅ……ッ!!」

 

「ま、まぁまぁ。とりあえずその悪魔憑きの居る場所を教えてもらえません?早速仕事しちゃう~んでぇ」

 

それで早くその顔、いやいや、この村からおさらばしますんで。

と、隠した内心に村長さんが気付く筈も無く、村長さんは目を輝かせながら「こちらですじゃ!!」と嬉しそうに案内してくれた。

しかし、悪魔憑きね~……な~んか、雲行きが怪しくなってきちゃったよーな感じがしちゃうんだけどなぁ。

ちょっとした不安を心の隅に感じつつ黙って村長さんの後を着いて行くと、何やらザワザワという声が聞こえ、人だかりが見えてくる。

え?何これ?

 

「皆の者喜べ!!魔導士様が来て下さったぞ!!」

 

「「「おぉぉ!?」」」

 

村長さんが手を広げながら発した声に村人達は歓声をあげた。

そして口々に助かっただとか悪魔を殺せだとかを隣に要るもの同士と言い合っている。

ちょっとちょっとぉ……皆さん完全に目がイッちゃってるじゃないでぃすか~。

そんな俺の心境も知った事かとばかりに、村人達は目を血走らせて武器を振り回しながら近づいてくる、って怖!?

もうこの村誰も彼も怖すぎて嫌なんですけど~。

 

「さぁ魔導士様!!何卒お願いします。おぞましき悪魔憑きの始末を!」

 

「始末を!!」

 

「さぁ!!さぁ!!」

 

「殺せ!!殺せ!!殺せ!!」

 

ガンホー!!ガン、っていけないいけない。俺までダークサイドに呑まれるとこだったぢゃん。

怖っ、マジこの村怖っ。

な~んで普通そーな人達が口を揃えてぶっ殺せなんて言えるんだろ~ねぇ。

俺は村人の雰囲気に圧倒されながらも、道を開けて貰って悪魔憑きの居ると言う家を見る。

ん~……見た感じは普通の家なんだけどねぇ~。特に邪気が出てる訳でも無いし……なんでだろ?

俺が仕事モードに入ってるのを感知してか、少しだけ下がっていた村長に向き直る。

 

「そぉ~んちょぉ~さぁ~ん。一つ聞きたいんだけど良いですか~?」

 

「は、はい?」

 

「ん~、なんつ~の?こ~の家からは悪魔特有の邪気、って言うのがじぇ~んじぇん立ち昇って無いんだけど……本当にこの中に悪魔憑きが居るのかな~って」

 

「も、勿論ですとも!!なぁ皆!?」

 

村長さんの確認の言葉に、この場を取り囲んでいた老若男女が頷く。

 

「アタシ達が見張ってたから、あいつ()はまだ家から1歩も出てないよ!!早くなんとかしとくれよ、魔導士様!!」

 

「お、俺は見たぜ!!あのガキの腕がお、おぞましい悪魔の腕になっちまってたのを……ま、間違いねえ!!悪魔に体を乗っ取られてるんだよ!!」

 

「そうだそうだ!!」

 

と、ふくよかなおばさまは確かにあの家に悪魔憑きが居ると声を張り上げる。

青い顔で中の住人の腕が異形に変わったと震える村の青年。

それに続いて皆して「悪魔憑きはここに居る」と断言していた。

 

「ふ~んむ……ちょ~っと村長さん。よろしいかしら?」

 

「は、はい。何ですかな?」

 

「いやね~。ちょ~っと二三確認しときたい事が増えちゃったからさ~……例の悪魔を追い払ったっていう少女。何処に居るの?」

 

「……」

 

「村長さんの言った通りに悪魔を追い払ったっていう子が居るなら、ギルドに頼むよりもその子に頼むんじゃなかいな~と思っちゃった訳。なのにその勇気ある女の子の姿も見えないし話すらだ~れもしない。小さな女の子に戦わせるのは酷だって思ってるともかんがえたんだけど~。さすがに誰もその話をしないって……これって変じゃな~い?」

 

「そ、それは……」

 

改めておかしいなと感じた事を聞けば、村長さんはだんまりを決め込んじゃった。

折角他の村人に聞こえない様に誘導して、近づきたくも無い耳に口寄せて内緒話したってのに。

で~もまぁ、村長さんの苦い顔色を見た感じ、触れて欲しく無い話題だったんだろうねぇ。

けどこれって普通、依頼のちゃんとした内容を話してないって事で評議会からお咎めきちゃうレベルの問題だよ?

そう説明してあげたら焦りながらもペラペラ話してくれますた(笑)

 

 

どうやら退治して欲しい悪魔憑きってのは、例の悪魔を退治した少女とその家族らしい。

何でも早くに両親を亡くしてからは、姉弟妹3人で仲良く暮らしてたとか。

村人達もその辺りの事情を考慮してたので、特に問題無い生活を送ってたんだって。

 

 

で~も彼女が悪魔を追い払った……と思ったら腕が正に異形のそれになっちゃって大変大変。

 

 

親しかった村人達は畏怖と軽蔑の目で彼女達を迫害し遂に、『追い出さないと自分達が悪魔に体を乗っ取られる』とか誰かが言い出したのが最後の引き金になった。

その風潮は一気に根付き、哀れ村人を助けようとした少女は英雄から悪魔憑きへとランクダウン。

守りたかった人達に死ぬ事を願われてしまったそうだ。

しかも村長も早く死んで欲しい一派、というかリーダーらしく、全部話し終えたら「早くあいつらを殺してくだされ!!」って言い出してるし。

 

「我等はその為に、魔導士様をお呼びしたんですぞ!!」

 

「いや、早く殺せって言われてもねぇ~……」

 

そもそも悪魔憑きって殺すっていうより悪魔を祓うって感じなんだけど~……。

興奮する村長さんを諌めつつ、魔力感知の目で家をジーッと凝視。

……家の中から感じる魔力の反応は3つなんだけど、これって妹達も魔力を持ってるって事だよね?

しかも3つとも中々良いレベルの魔力を保持してるし。

その中の1つに至っては、エルザちゃんと同じ位の魔力を持ってるっぽい。

家の中から感じる魔力反応に「おっかしいな~?」と首を傾げる。

前に悪魔に憑かれた人を見た時は、魔力も悪魔に汚染されておどろおどろしい物に変貌してた。

だけど、中から感じる魔力は人のそれで、特に悪魔っぽい邪気は感じないんだけど……。

で~もこのままだとさぁ。豪を煮やした村人が暴動を起こしかねないし……いっちょ入ってみますか。

 

「換装、死神様」

 

俺の言葉に応じて真下から魔法陣が浮かび上がり、俺の体を死神様を模した鎧、というか服が包みこむ。

普段は滅多に使わない鎧なんだけど、まぁ念には念を入れて被っておきましょ。

突然姿が変わった俺に驚く村人はスルーして、俺は体をコキコキと鳴らす。

 

「じゃっ、ちょっと行ってきますわ~」

 

死神様の1本足でピョンピョンと音を鳴らしながら滑る様に地面を移動して、件の家の扉に近づく。

この先に皆さんが言う悪魔さんが居るわーけーだけど……。

まっ、俺の想像通りなら、そこまで心配する事でも無いと思うんだけどねー。

一応死神様モードになってるから、”俺の身は絶対安全”なんだしぃ。

俺の装備の中で”最強”の衣服を着てるという安心感から、俺は気楽にドアノブに手を掛ける。

 

 

余談だけど、何で俺がこの”死神様”の衣服を余り着用しないのか?

 

それと何でこのモードになると”絶対安全”だと言い切れるのか?

 

 

答えは簡単。

 

 

この”死神様”の衣装。兎に角”強すぎる”――その一言に尽きちゃうのよ。

 

 

この世界の鎧には”魔法の鎧”ってのが存在してて、あらゆる魔法的効果を帯びた鎧の事をそう呼んでる。

で、俺の”死神様”も魔法の鎧ってのに”性質上”は分類されるんだけど……その効果が”神”仕様なんだねこれが。

死神様は文字通り”神様”な訳で、その力はソウルイーター内では”ある種の絶対者”という位置付けにある。

だからこそ、死神様の力を使えるこの衣服もハンパじゃない性能なんだよねぇ。

 

 

その能力の一端が、こ~んな感じですわん。

 

 

筋力:S 速度:S 防御:S 耐久:S 魔力:S ギャグ補正:EX

 

特殊能力及び状態異常の完全無効化。

 

魔法攻撃:Aランク以下の魔法攻撃を完全無効化。

 

物理攻撃:Aランク以下の物理攻撃を完全無効化。

 

 

――ね?おかしいでしょ?(白目)これでまだ一端なんだよ?(アヘ顔)

何この「ぼくのかんがえたさいきょうのしにがみさま」状態。

まぁ兎に角ぶっ壊れ性能過ぎてさぁ。普段使うのもよろしく無いの。

この性能に安心し切って修練怠ってたら、何時か生身で油断した時が目も当てられないでしょ?

だから普段は使わずココ一番~とか念には念をって時だけ使う様に心掛けてんの。

後は普段気分が乗った時とか、合羽代わりに使うとかね。

結構便利なもんですたい。

 

「じゃ、噂の悪魔ちゃんとごたいめぇ~ん、しちゃいましょ~か」

 

まっ、特に心配する事なんて無いと思うけど。

 

 

 

脳内ではこの依頼の終わりを予想しつつ、自分の装備に絶対の自信を持って、俺は扉を開けるのだった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「ひっく……うぅ」

 

「ね、姉ちゃん……」

 

一方こちらはユーキが入ろうとしている家の中。

元々5人家族が住んでいたそこそこ広めの家の隅で、幼い少年と少女が泣いていた。

外から自分達に向けられる悪意、憎悪――そして恐怖心。

未だ幼い二人の心には、余りにも辛い感情を常に向けられている状況だ。

 

「……ごめん……ごめんな、二人とも……アタシの所為で」

 

そんな状況を作ってしまったと自責に念に駆られる少女は唇を噛み締めながら、自分の大事な妹と弟に謝罪を零す。

自分の所為で、こんな事に巻き込んでしまった。

そう思うと、心が折れそうな程に軋むのを感じてしまう。

 

「違う!!違うもん!!」

 

「姉ちゃんの所為なんかじゃないよ!!」

 

大切な姉の謝罪の言葉に、弟と妹は声を張り上げて否定する。

二人はこんな状況になった事が姉の所為だ等と微塵も考えた事は無い。

自分達の村を守る為に、戦おうとしたのだから。

しかし二人の言葉に姉は力なく首を横に振る。

例えこうなるまでの経緯が”偶然”とはいえ、責任は自分にあると分かりきっていたからだ。

 

「アタシがあんな教会に近付かなかったら……」

 

姉は震える声を発しながら、頭から全身を隠している黒いローブの隙間から自身の右腕をゆっくりと出す。

二人に見えるように掲げた右手は、少女の色白な肌と同じ綺麗な腕――ではなく。

 

「――こんな事には……」

 

震え、冷や汗を流しながら己の腕を見つめる。

彼女の掲げた右腕は、肘から先が筋肉の固まったケロイドの様に膨れていた。

その腕の部分部分に不揃いに生える、紫の宝玉の様なデキモノ。

 

――これが、彼女達が村全体から迫害されている理由。

 

持ち前の正義感で教会に巣食った悪魔を退治しに行った折、まるで自身の体に吸い込まれる様に消えてしまった悪魔。

これで、村が救われた――そう思っていた少女の腕は、今までとは違った。

吸い込まれる様に消えた筈の悪魔と同じ腕が、そこにはあり……彼女は、自身が悪魔に取り憑かれてしまったと顔を青くしてしまう。

 

――教会から出た彼女を迎えた村人の顔は――恐れと、侮蔑に染まっていた。

 

お前たちは呪われている。だからこの村から出て行け。

その言葉が、投げられる石が、少女の正義感に溢れた行動の報酬だった。

 

自分は、もう人間とは違う――そう考えるだけで、体の奥から冷たくなって震えが止まらない。

 

まるで、内側からあの悪魔にジワジワと侵食される様な――そんな恐怖が彼女の内を駆け巡る。

醜くなってしまった己の体を隠す為に着込んだローブの中で、姉は震える己の身を抱いた。

アタシがしっかりしなくちゃ――誰が二人を守るんだッ!!

弱くなりそうな己の心を叱責し、挫けそうな心を強く保とうとする。

少女が村の悪意を一身に浴びようとも、決して折れなかった理由――この世でたった二人しかいない弟妹を守る。

その意思だけで、彼女は自分の心を保たせていたのだ。

だが、もうこの村に居る訳にはいかない。

このままでは暮らす事すらままならない事を少女は分かっている。

しかしこの村以外に自分達が行く宛は無いし、両親が死んでから蓄えも殆ど無い。

だが、もうそんな事を言ってられる場合では無かった。

村人達はもう止まる事は無く、このままいけば殺される――それだけは、絶対に避けねばならない。

 

だからこそ、動ける内に自分達の住める別の場所を――。

 

ガチャッ。

 

「ッ!?」

 

「だ、誰か入ってきた……ッ!?」

 

「ね、姉ちゃん……ッ!!」

 

今後の事を必死に考えていた少女の耳に、自分の家の玄関が開いた音が聞こえてくる。

普通なら泥棒の仕業と思い、何とか追い返す方法を考えたであろう。

しかし今の状況は正しく村八分の扱い。

そして窓から離れたこの部屋でも微かに聞こえてきた外の声。

もう罵声を飛ばすだけでは我慢出来ず、等々実力行使に出たのかと、少女は弟達を庇いながらも震える。

 

それも当然の反応だ……自分を殺しに来た存在が間近に迫れば、怯えても仕方無い。

 

彼女は、教会に巣食う悪魔と戦う程に勇気はある。

しかしそれは悪魔……自分達にとって異形という存在故に、だった。

もし、入ってきたのがこの村の人だったなら……今まで優しく接してくれた人達ならば。

そう考えるだけで、彼女は呼吸を乱し胸が苦しくなる。

 

ギシッ、ギシッ――という床を踏み締める音が聞こえてくる。

 

その音が大きくなるにつれて彼女達の震えも激しさを増し、瞳には少しづつではあるが涙が溜まっていく。

やがて、音がピタリと止んだ。

しかし彼女は、いや3人は感じていた――扉の向こうに、ナニカが居る事を。

ゴクリ、という唾を飲みこむ音が、弟から発せられた。

とても小さな音を感じられる程に、余分な音が一切感じられない緊張感。

 

 

 

そして遂に、ドアノブが捻られて扉が開かれ――。

 

 

 

「ちゅっすちゃぁ~っす!!みぃなさんごぉ機嫌よ~ぉお~」

 

 

 

ハイテンションな挨拶をカマす、白い仮面を被る黒っぽいナニカを視界に捉え、3人揃って目を丸くしてしまう。

白っぽい手をチョキにして間抜けな仮面の横に構えるポーズを取る変な物体。

 

……いや、ちょ……え?何あれ?

 

さっきまで殺されるという恐怖に怯えていた筈の少女は、目の前の動く変な物体の登場に頭が追いついて来なかった。

それは姉だけではなく弟と妹も同じらしく、揃って口を半開きにしたおかしな表情をしている。

空気が死んだ――と言えば良い流れが止まった方に感じるが、今回は殺伐とした恐怖が死んだのでそこまで悪い表現では無いだろう。

 

 

 

ともあれ、緊張に包まれていた空気は、ものの見事に空気を読まない死神が殺してしまったのである。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

部屋の奥に魔力の反応があったので、その部屋に赴いて挨拶一発。

ふっふっふ、この癒しの塊の死神様でこれだけフレンドリィにしとけばいきなりバトル勃発!!なんてならないよね~。

そう思って陽気に警戒させない挨拶をやってみたんだけど……。

 

「「「……」」」

 

「……」

 

すごく……死んでます(空気が)。

ど~やら外しちゃったっぽい……どうしましょ?

 

「ふ~む?もっかいいっとく?」

 

「――ッ!!」

 

「……あ!?リ、リサーナ!?」

 

「ッ!?リサーナ、待て!!」

 

「ほへ?」

 

と、この微妙な空気をどうしよっかなーって考えてた俺の前に、銀髪ショートの女の子が両手を広げて立ち塞がった。

な~んかキッ!!とか擬音付きそうな位の目~で睨んじゃってます。

 

「……ミ、ミラ姉は……悪ぐない゛も゛ん」

 

「ほえ!?」

 

ちょちょちょ!?な、泣き出しちゃったんですけどー!?

何でそんなに俺を見る目が怖そうなの!?

こ、この癒し溢れる素敵なフォルムがそん~なに怖い!?

しかももう一人の男の子まで女の子の横に並んで睨んじゃってるー!?

後ろの方で黒いローブ被ってる女の子が焦ってるけど、俺も焦って良いですか!?

予想外の光景にアタフタする俺の目の前で、ショートヘアの女の子はポロポロと泣きながら俺を睨み続ける。

 

「ミラ姉は村の皆のために悪魔を退治したのに……ッ!!……こんなの、ヒドすぎるよぉ……ひっく……ううぅ」

 

「リサーナ……うっ、うぅ……」

 

「……ありゃりゃ~」

 

俺を睨みながらみら姉?という子の事を弁護したかと思えば、そのまま泣き崩れてしまうりさーな?ちゃん。

そんな彼女を横から支える男の子も、涙をポロポロと零して泣いてるし。

ん~……こりゃ~かなり心のダメージが深いかな?

でもま~……これも仕事だからねぇ。

俺は泣き崩れる二人の横を素通りして、ローブをすっぽり被った少女の目の前で屈む。

その行動を見たローブの少女は身を固くしてしまう。

 

「ちょ~っと失礼。ほりゃ」

 

「ッ!?嫌!!」

 

「ま~ま~。ほんとちょっとだけだから!!さきちょ!!さきっちょだけだから!!」

 

「嫌!!止めて!!」

 

おかしい。軽くローブを捲って悪魔っぽくなってた腕を取っただけなのに、何か変なふいんき(変換できない)になってませんこと?

目の前でジタバタと暴れる少女を無視して、俺は悪魔っぽくなってる腕を見つめる。

 

「ッ!?止めてぇ!!ミラ姉に酷い事しないで!!」

 

「ね、姉ちゃん!!姉ちゃんを離せぇ!!」

 

と、後ろから二人の弟妹がポカポカと殴ってくる。

でも死神様の衣服にそんな攻撃が効いたりはしませんのよ。

この状況で止める様に言っても無駄だろうし、少しの間無視して少女の腕をじっくりと拝見。

 

「ふ~んむ……や~っぱりねぇ」

 

「は、離して……ッ!!」

 

「このこのこの!!姉ちゃんに変な事するなぁ!!漢らしくないぞぉ!!」

 

「ばか!!えっち!!すけべ!!変態!!痴漢!!変態!!」

 

「あの~弟君は良いんですけど~、妹ちゃんはちょ~っと酷くない?」

 

「嫌がる女の子に変な事しようとしてる癖に!!変態変態変態!!」

 

腕を触っただけで変態扱い。昨今の女尊男卑はこんなとこまで浸透してたとは、何てこったい。

まっ、別にな~んにもしないんだけどね。

しかしこのままでは話が進まないので、一度手を離す。

そうするとローブを被った少女は急いで手をローブの中に引っ込め、弟君達は俺と少女の間に立ちはだかった。

うんうん、美しき兄弟愛。好きだねぇ~。

 

「まっ、そう警戒しなくても良いよん?俺はなぁ~んにもしないからさ~」

 

「う、嘘だ!!」

 

「ホントホント。このつぶらな目を見てよ~」

 

「穴しか開いてない!!」

 

「なんかグルグルしてる!!」

 

失礼な。この渦巻くカラッポの目が節穴だと?中々上手い事言うじゃない。

震えながらも俺に言い返す弟君から視線を外し、震えながらも俺を倒そうと覚悟を決めそうな少女に視線を向ける。

 

「ほ~んとに何もしないんだけどねぇ。だって君って”悪魔憑きじゃない”しぃ」

 

「――え?」

 

弟君と妹ちゃんを守る為か、戦おうと目に力を籠めてた少女にそう言えば、彼女は目を丸くして動きを止めてしまう。

それは弟君達にも衝撃的だったらしく、二人もポカンと口を半開きにしてた。

まぁ、そうなっちゃうのも無理は無い、か……あれだけ悪魔呼ばわりされてたのに、実は悪魔でも何でも無いって言われちゃ~ね。

衝撃的事実に呆ける3人を見ながら、俺は指を立てて言葉を並べ始める。

 

「君は悪魔に憑かれてなんていないしぃ、悪魔でも無ぁい。れぇっきとした人間だよぉ」

 

「……ど、どういうこと?」

 

「じ、じゃあ、何で姉ちゃんの腕は……」

 

と、ここであくまで警戒を怠っていないが、弟君と妹ちゃんが俺の話に食いついてきた。

お姉ちゃんの方は……一応話は聞いてるみたい。呆けてるけど。

 

「君達のお姉ちゃんの腕がああなっちゃってるのはね~え。お姉ちゃんの”魔法”が原因なんだ~」

 

「え!?」

 

「ミラ姉の……魔法!?」

 

「ん~。その様子じゃあ、今まで魔法の力があった事を知らなかったんだね~」

 

驚く二人を他所に、俺は成る程成る程と頷く。

 

「魔……法……?」

 

「そう。君のその腕は接収(テイクオーバー)っていう魔法の一種が暴走しちゃってぇ、そうなっちゃってるわ~け~」

 

右腕が異形になっちゃってるお姉ちゃんは恐る恐ると言った雰囲気で俺に話しかけてくる。

今の今まで話を信じられなかったみたいだけど、魔法という希望を聞いてお姉ちゃんの目にも涙が浮かんでいた。

接収(テイクオーバー)は魔法の中でも少し珍しい部類に入る魔法なんだよね~。

倒した相手の力をその相手と自身の適正が合えば、その力を体に宿して自分の力として扱う事ができる。

 

「ってわけでー。君は悪魔の力に適正があったから、倒した悪魔の力を宿したんだけどぉ。初めての魔法でちょぉっとばかし暴走しちゃって、その腕になっちゃってるんだねー」

 

「……悪魔」

 

ありゃ?何でそんなに沈んだ顔しちゃうんでしょ~か?

説明の仕方間違えた?でもちゃんと魔法の暴走だって言ったんだけどな~。

 

「……ぐすっ」

 

「姉ちゃん!?」

 

「ミラ姉!?」

 

「あれぇ!?」

 

何でそんなに泣いちゃってんのぉ!?

え?俺泣かせる様な事した?

いやーしてないよねぇ!?俺頑張って説明しただけだよホント!?

またも目の前で涙を零して泣いてしまう女の子。

しかも何か理由が俺の所為っぽいので余計に慌ててしまう。

 

「……やっぱり私は……悪魔なのかな……私の所為で、お前達も……」

 

「違うよ!!ミラ姉は悪魔なんかじゃないもん!!」

 

「そ、そうだよ!!この……へ、変な人っぽい人も違うって言ってるし……そ、それに!!姉ちゃんの所為でこうなったなんて……ッ!!」

 

変な人っぽい人って……まぁ、この格好じゃ人間なのかも怪しく見えちゃうか。

一応声で男ってのは分かってもらえてると思うけど。

にしても、この子の中では悪魔って言葉には結構深い根が張っちゃってるっぽいねー。

でも、この子は間違い無く人間だ。

 

理由は単純。

 

「悪魔はねぇ……泣いたりしないよ?」

 

「――」

 

堰を切ったかの如く涙を流す少女の目元を拭いながら、俺は彼女と視線を合わせる。

 

「悪魔っていうのはねぇ、誰かの為に涙なんか流さない。自分の為に人を陥れ、蔑み、嘲笑う。そーんな後ろ暗くて陰険な事ばーっかりしてるのが悪魔な~のさ」

 

「……」

 

「誰かの為に涙を流せて、心を痛めてる君は、間違いなく、正真正銘の人間だね」

 

「……ほん、とう?」

 

「んーマジマジ。このつぶらなお~目々が全てを物語っちゃってるでしょ?」

 

目元を指しながらジーッと見つめてみる。

すると少女はいきなりポカンとした表情を浮かべ――ぷっ、と頬を膨らまして、クスクスと笑った。

 

「つ、つぶらって……自分で言う事かよ……ッ!!」

 

あっ、それがツボだったの。

目の前で耐え切れないって感じに笑う少女に、さっきまでの暗さは感じられない。

弟君と妹ちゃんは可笑しそうに笑ってるお姉ちゃんの事を見て嬉しそうに微笑む。

それだけお姉ちゃんの事が大事って事だね。

一頻り笑ったお姉ちゃんは目元の涙を拭うと、瞳を潤ませたままに微笑んだ。

 

「ありがとう……人間だって言ってくれて……本当に」

 

「いやいやどーいたしまーして」

 

うむ、まぁ少しだけ、この子の闇を祓えたって感じかな?

でもまぁ、思ってた通り魔法の影響で良かったよ。

これなら、まだもうちょっとだけサービスできるし。

 

「換装、解除」

 

とりあえず危険な事はもう無いと思ったので、俺は死神様の衣装を解除する。

そして衣装が消えて俺の姿が顕になると、3人揃ってまた呆けた表情になっちゃってました。

 

「……ッ!?なっ……なぁ!?」

 

「い、一瞬で変わった……ッ!?」

 

「男の人!!やっぱり痴漢さんだったんだよ!!」

 

「妹ちゃんそ~ろそろ心のダメージ酷いから止めてね~」

 

驚きで口をパクパクさせるお姉ちゃんと、割と普通に驚いてくれる弟君。

そして相も変わらず心に直接響く言葉をぶつける妹ちゃん。ほんっとブレないねぇ。

まぁ兎に角、俺は換装を解いた状態でニッコリと笑いながらお姉ちゃんの手を軽く握る。

 

「ひぅ!?」

 

いやいやそこまで驚かんでも良くない?

っていうか顔真っ赤にしちゃってま~……初心だねぇ。

 

「ちょ~っとビリッとくるかもだけど、すこ~し我慢してね~?」

 

「え?え?な、なに!?」

 

笑顔でパニクッてるお姉ちゃんを放置して、俺は手の平に魔力をすこーしだけ篭める。

ぶっつけ本番だけどー、まー多分なんとかなるっしょ。

問題無しと判断を下した俺は、手に集めた魔力をそのまま――。

 

「魂威(弱)」

 

「きゃん!?」

 

手の平から放出して、少女の腕に魔力を流した。

するとバチッという弾ける様な音が鳴り、一瞬だが電気の様な光が奔る。

 

「姉ちゃん!?な、なにをするんだ!!」

 

「ミ、ミラ姉!?」

 

「うぅ……ビ、ビリってきた……ッ!?」

 

お姉ちゃんの悲鳴を聞いた弟君が俺と彼女の間に入り、妹ちゃんはお姉ちゃんに駆け寄る。

まー確かに、ちょいと荒っぽ過ぎたかもねぇ。

でもこの方が”手っ取り早い”し、サク~ッと話が進むからなぁ。

その証拠に、俺の目の前に立ちはだかる弟君の奥で、”魂威”を受けたお姉ちゃんの右手――。

 

「いきなり何――え?」

 

ちゃ~んと、元通りの”人間の腕”に戻っちゃってるし。

 

「ッ!?エ、エルフ兄ちゃん!!ミラ姉の手が……ッ!?」

 

「ど、どうし――も、戻ってるッ!?元の腕に……ッ!?」

 

「――……ぇ、え?……な、なにが……?」

 

急に元に戻っちゃってビックリしたのか、お姉ちゃんは目を白黒させて自分の腕を見つめる。

そ~りゃいきなり嫌ってた手が治っちゃったらビックリしちゃうか。

 

「……ア、アンタが治してくれたのか?」

 

「んー。治したってゆーはちょっと違うんだけどねー?まっ、ビックリさせて暴走してた君の魔法を打ち消したって感じかなー?」

 

”魂威”を打ち込んだ手をプラプラしつつ、混乱する3人にヘラっと笑ってみせる。

――ソウルイーター原作で「魂の波長を直接打ち込む技」という”魂威”。

ブラックスターやシュタイン博士の得意とするこの技がこの世界風にアレンジされたのが、今の”魂威”なんだ。

俺が今使ったのはねーえ。”自分の魔力の波長を相手に直接叩き込む”っていう技なのよ。

 

自分の魔力を手の平から放出して、それをそのまま相手に打ち込む。

 

そうする事で純粋な魔力のみのダメージを防御無視で相手に叩きこめる。

更に魔力で手をコーティングしてるから、魔法に触れたり、反らしたりも可能。

まだ最近習得したばっかなんだけど~、かなり使える技な訳。

 

彼女の手が元に戻ったのは、暴走していた魔法を”魂威”で相殺して解除(ディスペル)したからなのよ。

 

そんな風に彼女の手が元に戻った理由を説明すると、弟君と妹ちゃんは目を輝かせていた。

こーどもの純粋な視線ってぇ、眩しいのよねぇ。

 

「……こんな……あっさり……」

 

「ん~。まぁ解除(ディスペル)の仕方はちょっと力技だったけどね~?本職がやったらもっと簡単に出来ちゃったと思うよん」

 

「……」

 

「ま、魔導士ってすごいんだ……ッ!!」

 

「私達にも、魔法って使えるのかな?」

 

「も~ちろん。俺の見た感じ、君達も魔法の才能を持ってるからねぇ~」

 

「「ホント!?」」

 

「ホントホント。このつぶらなお目」

 

「「それはもう良いから」」

 

天丼くらいは受け付けてくれても良いじゃな~い。

この世界ってホントにギャグには優しくないんだもんねぇ。

声を揃えてネタの拒否をされちゃったからちょっと不貞腐れたいけど、まぁこの家に入ってそ~こそこ時間が経っちゃってるしぃ。

そろそろこのお仕事終わらせないとさ。

 

「で、今更になっちゃうんだけどさぁ……君の腕が治っても、それでハイ解決とはならないの」

 

「ッ……」

 

「え?」

 

「ど、どういう事?」

 

「……んー……やっぱさー。人間一度思い込むと長いってゆーか……君達のお姉ちゃんの腕が魔法によるものだったって説明しても、村の人達は納得してくれないと思うんだよねぇ~」

 

「そ、そんな……ッ!?」

 

困った顔で説明した俺に弟君と妹ちゃんは呆然としてしまう。

お姉ちゃんの方も苦虫を噛み潰した表情してるけど、これは多分間違って無い。

あれだけ「殺せ殺せ」って息巻いてた人達に「これは魔法です」なんて説明しても効果無いと思うのよ。

っていうか下手したらこのまま暴動に発展しちゃうかもしれないし。

根本的な事がまだ何一つ解決していない状況……だ・け・ど。

 

「んでさ~。君達さえ良かったら、ウチのギルドに来ちゃったりしちゃったりしない?」

 

ま~だ何とかなる道が残ってるんだよねぇ。

 

「ギル、ド?」

 

「うん。俺が所属してる魔導士ギルドに、さ」

 

「えっと……ギルドって何なの?」

 

ありゃりゃ。まずはそこから説明が必要か。

首を傾げるお姉ちゃんに頷いて返すと、横から妹ちゃんが質問してくる。

 

「ギルドっていうのはね~、魔導士が仕事を斡旋してもらう、仕事の仲介場みたいな所だよ」

 

「……そのギルドに入って、仕事を紹介してもらうのはどうか?って事?」

 

「そーゆーこと!!ついでに魔法の勉強も出来るから、君の力が暴走しないよーに制御法を学ぶ事だって出来ちゃったりするんだけどどうかしらん?」

 

「ッ!?ホ、ホントか!?」

 

「もちもち。まぁ~村を出なきゃいけないけど、ここよりは生活がしやすいのは間違い無いと思うのよねぇ」

 

納得がいったという表情で俺の説明に相槌を打つお姉ちゃん。

まぁ無理してこの村に残るよりかは絶対に良い選択肢だろーけどねー。

問題は、この子達がそれをどう思うかという事だけど……。

 

「……私は、ギルドに入ろうと思う……二人はどうだ?」

 

「行く!!私もギルドに入りたい!!」

 

「お、俺も……ッ!!」

 

「そうか……そういう事なんだけど……良いか?」

 

心配する必要は無かったみたい。

弟君と妹ちゃんもかなり乗り気だし、お姉ちゃんもそんな感じだ。

 

「おっけーおっけー!!俺達のギルドは来るもの拒まずが信条だから、ドーンと歓迎しちゃうよん」

 

「あ、あぁ……その……ありがとう、な」

 

「はーて?お礼の意味が判りかねますなー」

 

「……嘘つけ」

 

わざとらしく、わざとらーしく首を傾げる俺に苦笑いするお姉ちゃん。

まっ、別にこれぐらいはどーって事無いからねぇ。

とりあえずこの子達のこれからの問題は片付いたし、後は村人の説得をしないとなぁ。

多分納得してもらえるとは思うけど。

 

「そんじゃ、俺は村の人達にこの事を話してくるから、荷物を纏めておいてね?」

 

「分かった。今から準備する」

 

「出発は何時にする?今日でも明日でも全然構わないけど」

 

「いや、今日中に出発したい。ここに居ても邪魔者扱いされるだけだからな……二人とも」

 

「大丈夫だよ、ミラ姉」

 

「荷物自体は結構纏めてたから、後少し片付けたら出れるよ」

 

出発するのを後ろの弟君達に伝えると、二人もそれを喜んで了承した。

そりゃま、居ても嫌な思いしかしない村なんて早く出たいよね。

ここからマグノリアまでそこそこ離れてるけど、今からならバギー飛ばせば夕方には戻れる。

少なくとも嬉しそうに荷物を纏めに行った弟君達を見ると、出発を遅らせる必要は無さそうだね。

 

「ん~じゃ、ちょっくら行ってきますわん」

 

「……な、なぁ!?」

 

と、村長に話をしに行こうとしたら、後ろからお姉ちゃんに呼びとめられた。

 

「ん~?なんじゃらほい?」

 

「え、えっと、その……アンタの名前、まだ聞いて無いんだけど……」

 

「え?……おぉ!?」

 

「忘れてたのか!?」

 

そういえば、ってな感じで手をポンと叩いて思い出す俺にお姉ちゃんのツッコミが刺さる。

いや~、あ~んまりにも自然に話が纏まってたから、名乗るのス~ッカリ忘れてたわ。

 

「いや~ごめんごめん。忘れてたよ。俺はユーキ。ユーキ・ヤスダっていうの」

 

「お、おう。ユーキ、だな?」

 

「そぉ~そぉ。マグノリアにあるギルド、妖精の尻尾の魔導士どぅえ~っす。よ~ろしくねぇい♪」

 

「あ、あぁ……わ、私はミラ。ミ、ミラジェーン・ストラウス……ミラって呼んでくれ……さっきの二人は、リサーナとエルフマンだ」

 

少し恥ずかしそうにどもりながら深々と被っていたフードを取り、少女……ミラちゃんは俺と視線を合わせる。

弟君達と同じ銀の髪色。

そしてあどけなさと女らしさの中間にある顔つき。

成長すれば、誰もが放っておかないぐらいの美人さんになるだろうねぇ。

エルザちゃんとも甲乙付け難いくらいじゃない?

 

「じー」

 

「な……なな、なんだよ……ンなにジロジロ見んじゃねぇ……ッ!!」

 

と、どーやら見つめすぎて照れちゃったみたい。

ちぃ~っとばかし乱暴な言葉遣いだけど、まぁ別に気になるほどでもないかぁ。

 

「じー」

 

「だ、だからジロジロ見るなっての!!な、なんか文句でもあんのか!?あ゛ぁ!?」

 

「いやいや~。きっと将来は、美人さんになるだろ~な~って思っちゃったりなんかしちゃって」

 

「ッ!?び、びび……ッ!?う、うっせぇよバーカ!!さっさと行って来いやぁ!!」

 

「あいさ~」

 

ガーッと顔真っ赤にして怒鳴るミラちゃんに敬礼して、俺は家から出る。

すると、目の前には武器を構えてこちらを警戒している村人たちがわんさと現れる。

さ~て、と……ちゃっちゃと説明して、帰りますか。

何時迄もこの村に居る訳にはいかないしねぇ。

俺は軽く首をほぐしながら、村人の先頭に立って報告を待っている村長さんに近付くのだった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

あの村での一件から時間が過ぎて翌日の昼、俺はバギーを飛ばしてマグノリアへの道を爆走なう。

でもこのぺ~すなら、後20分くらいで着くかな。

昨日から若干残ってる疲れを感じつつ、俺はアクセルを捻って速度を少しだけ上げていく。

 

俺の懸念してたとーり、村人への説明は難航した。そりゃも~大変だったよ。

 

何とか説明して、彼女……ミラジェーンちゃんの腕は魔法の力の暴走だって説明したけど中々信じてもらえなかったんだよねぇ。

しかも彼女達をウチのギルドで引き取るって話も、これまた拒否されちゃうし。

理由を聞いたら、村から悪魔憑きの恥さらしを出したら村の沽券がうんぬんかんぬん。

何とも呆れて物も言えないって感じだったね。

まぁ最終的に、報酬は一切無しで誰にも村の事を他言しないって事で何とか落ち着いたけど。

やれやれ、まさか報酬無しとは……まっ、いーけどさ。

ミラちゃん達を倒して報酬貰っても、嬉しくも何とも無いし。

 

「なぁユーキ。FAIRY TAILってどんなところなんだ?」

 

と、後ろの棺桶トレーラーの中に座るミラちゃんが質問してくる。

現在さすがに3人は蓋を閉めては乗り切らなかったので、蓋を開けて座ってもらってたり。

俺の運転してる方に近い棺桶のスペースに座ったミラちゃんは、やる気マンマンな目で俺を見てる。

更にその後ろには不安そうな目つきの弟君と、それとは逆に楽しそうな妹ちゃんも居ました。

 

「どんな所、か~……ん~。基本殺伐だけどウキウキライフを送れる所、かな~?」

 

「いや、矛盾しまくってるだろそれ」

 

「さ、殺伐だけどウキウキって……」

 

「楽しそ~!!」

 

「お?妹ちゃんは分かってるねぇ。ごほーびにスイーツ(笑)キャンディをあげちゃう♪」

 

「良いの?ありがとー!!」

 

不安そうな二人と違ってウキウキしてる妹ちゃんに懐から出した飴ちゃんを投げ渡す。

それを嬉しそうに受け取った妹ちゃんは早速袋を開けてパクリ。

 

「ん~♪甘、くない!?しょっぱいよーな酸っぱいよーな……変な味だよこれ~!?」

 

「そりゃ酢昆布味だね」

 

「何で飴にそんな味があんだよ……」

 

いや、だってスイーツ(笑)だし?

そんなコントを走りながら繰り広げていたら、何時の間にかマグノリアに到着。

そのまま道路を駆け抜けて妖精の尻尾の前に堂々とバギーを停めた。

皆俺の車だって知ってるから悪さしないし。

 

「さぁ、着いたよん」

 

「わー!!でっかーい!!」

 

「……」

 

ギルドの大きさに驚く妹ちゃんと、その隣でポカンと口を開けて呆けるミラちゃん。

更にミラちゃんの後ろにどーやっても隠れらんない体を隠そうとしてる、あいも変わらず不安そうな表情の弟君。

 

「しぃ~んぱいしなくても、弟君と妹ちゃんと同じくらいの子達も居るから馴染めると思うよ~」

 

「そ、そうなら良いけど……」

 

俺の言葉に少しだけ体を前に出した弟君から視線をズラして、俺は3人を笑顔で迎える。

 

「Welcome(ダミ声)妖精の尻尾へ。じゃあ中に入ろっか」

 

「「「今の声どっから出した!?」」」

 

え?どんな声出したって?バイオのストレンジャーでおk。

驚く3人を適当に諌めて、俺はギルドの扉を開く。

相も変わらずの喧騒が聞こえてきて、更に俺が作ったジュークボックスの音楽も鳴りまくってる。

いやー、やっぱここは落ち着く――。

 

「ユーキィ!!勝負だー!!」

 

なんて事は無かった。

扉を開いてただいまの挨拶をしようとしたら、ギルドの向こうから飛んでくる火の玉ボーイ。

桜色の髪にウロコ模様のマフラーを付けたこの少年こそ、ドラゴンスレイヤーのナツ・ドラグニル君だ。

 

「はいはぁ~い、おぉ~つかれさぁ~ん」

 

「ほべばぁ!?」

 

拳を構えて向かってきたナツ君をデコピンで迎撃して壺の中にダイレクトシュー!!

いや~飛んできた火の玉ボーイはさっさと沈下するに限りま~すよね。

 

「ま~た秒殺かよ」

 

「ナツも相変わらずだな」

 

「つーか今のお疲れさんって帰ってきたって意味か?それともナツに?」

 

「両方じゃね?」

 

と、いきなり始まった勝負があっという間に終わったという珍事件に誰も彼もが笑っている。

な~んせナツ君が俺に喧嘩売って秒殺ってのも、ギルドの日常風景の一つだからねぇ。

そんな感じでギルドの中で和やかな雰囲気が広がっていく間にも、俺はマスターを探して視線を右往左往。

 

「おっ、居た居た。そんじゃ3人共、まずはこのギルドのマスターに挨拶しちゃおっか~?」

 

と、何時も通りカウンターの上で酒を飲んでウェイトレスにいやらしい目を向けてるマスターを発見。ブレないねぇ。

後ろのミラちゃん達を促したんだけど、何故か3人共ポカンと口を開けて俺に視線を向けてる。どったの?

 

「……ユ、ユーキってもしかして……滅茶苦茶強い?」

 

「ほえ?」

 

「ひ、人がデコピンで……」

 

「ほえ~……あの子、大丈夫かなぁ?」

 

あー、そういう事ね。俺がそんなに強いとは思ってなかったって訳か。

でもデコピン一発でナツ君をぶっ飛ばしちゃったから驚いてんのね。

 

「ん~。まぁそこそこ強いって自負はあるけどさ」

 

「何がそこそこなものか。ユーキの強さはギルドで上から数えた方が早いだろう」

 

「おろろ?エルザちゃん。ちゅい~っす」

 

驚く3人に答えていたら、今度はエルザちゃんが登場。

2年前より少し成長した背丈と、腰辺りまで伸びた髪の毛を編み、鎧を身に纏う姿。

何より、2年前には前髪で隠していた右目は左目と遜色ない義眼が入っている。

でも、ちょ~っと不機嫌そ~なのは何でかしらん?

 

「何々?な~んか機嫌悪そ~だけど?」

 

「そうか?別にそんな事は無い」

 

いや、眉間に皺寄ってますけど~?

 

「別にそんな事は無いぞ?」

 

「大事な事だから2回言ったんですね分かります」

 

「ったく、それぐらいの事は察してやらんかい。女心の分からん奴じゃ」

 

「お~、さっすがマスター。年がら年中エロ本とウェイトレスの尻を見てるだけあって、女の子の気持ちは良く分かるって事だね~!!」

 

「マスター……」

 

「お前ワシの事貶したいの?それとも持ち上げたいの?爺涙出ちゃう」

 

「まっ。そんな些末事は次元の彼方に置いといてぇ」

 

酷くね?と嘆くマスターの言葉を無視して俺は横にずれる。

その嘆きはエルザちゃんの冷たい目の所為だ~よね~。分かってる分かってる。

 

「ほい。新しいギルド加入者だよ~ん。しかも3人」

 

「おお!!そうかそうか!!また家族が増えるっちゅうのはええ事じゃのう!!」

 

「「「よ、よろしくお願いします!!」」」

 

「うむ!!ギルドマスターのマカロフ・ドレアーじゃ。よろしく頼むぞい」

 

さすがにいきなりマスターに会ったら緊張したのか、3人は声を揃えて挨拶していた。

まっ、いの一番にマスターだもんねぇ。

まだ緊張してるみたいだし、こ~こは俺が助け舟を出してあげちゃおう。

 

「まず~、この子が長女のミラジェーンちゃん」

 

「ミ、ミラジェーンだ……です」

 

「ふむふむ。喋りにくそうじゃのう。もっと砕けた感じでもええぞ。仲間内で遠慮は無用じゃて」

 

「あ……あ、あぁ……よろしく頼む、マスター」

 

人を安心させる笑みを浮かべてそう言うマスターに、ミラちゃんはオドオドしながらも口調を変えて言葉を返す。

やっぱマスターにはお見通しか。

じゃ、ついでに好好爺なマスターにお願いしとかないとね。

 

「ミラジェーンちゃんは接収(テイクオーバー)の使い手なんだけどぉ~、ま~だまだ制御が甘かったりしちゃってたりしてさぁ。教えてあげて欲し~のよ」

 

「ほう?接収(テイクオーバー)とは珍しいのう。まぁ話は分かった。明日にでも教えられる様に準備しよう」

 

「ありがとさん。初級からしぃ~っかり教えてあげて」

 

「うむ。任せとけ」

 

年がら年中(以下略)なマスターだけど、こう見えてとても博識な人なんだよマジ。

 

「ユ、ユーキ……あ、ありがとな?」

 

「良いよん良いよん。同じギルドの仲間なんだしぃ」

 

「そ、そっか……仲間、か」

 

照れくさいのか、顔を真っ赤にしてお礼を言うミラちゃんに笑顔で問題無しと返す俺。

しかし直ぐに俯いて恥ずかしそうにしちゃうんだから。

口調や性格は男勝りだけど、こ~ゆう所はか~わいいねぇ。

 

「……むぅ」

 

そしてエルザちゃん、君はな~んでそんなに面白くなさそ~なのかな?

げに難し気は女心。小生には一生理解出来そうにないんですけどー。

まぁとりあえずその辺は放置し~と~い~てぇ~。

んーで、次は弟君と妹ちゃんの紹介をしなきゃね。

 

ミラちゃんの隣でワクワクした目をしてる妹ちゃんと不安そうな弟君を前に出し、二人の肩に手を乗せながら口を開く。

 

 

 

「んで、長男の”リサーナ君”と次女の”エルフマンちゃん”だよ~」

 

「ふむふ……む?」

 

 

 

仲良くしてあげてね~と言おうとしたら何かマスターが「あれ?」って顔で首を傾げてる。キメェ。

 

「「ちっがーう!!」」

 

「へ?」

 

「私とエルフ兄ちゃんの名前逆に覚えてたの!?」

 

「何で俺達の名前呼ばねーのかと思ってたらそういう事かよ!?」

 

「ユーキ……それは幾ら何でも、のぅ?」

 

「うむ。ユーキらしいといえばらしいが……女の子にマンは無いだろマンは……」

 

二人してガビーンって表情で突っ込むリサーナ……ちゃん、とエルフマン君でした。

マスターと話を聞いていたエルザちゃんも微妙な顔してるし。

いや、女の子なのにエルフマンって名前は気にしてるかなーと思ってたんで……100%善意ですよ?

 

「んっがぁああ!!チックショー!!もっかい勝負だユーキィ!!」

 

そこに やせいの ナツくん が あらわれ(復活し)た !! 

 

んも~。しょーがないねぇ。

 

コマンド

 

 たたかう

 

 にげる

 

 じゅもん

 

→どうぐ マスター

 

さ~て、どれ使おっかな~?

 

「先手必勝!!火竜の鉄」

 

「今大事な話の最中だ大人しくしてろぉ!!」

 

「けぶりゃぁあ!?」

 

ありゃ?コマンド選ぶ前にエルザちゃんが自動迎撃してくれちゃったよ。

俺に向かっていた筈のナツ君は哀れ蹴り飛ばされて酒場のテーブル辺りに飛んでいっちゃった。

 

「……なんじゃ?今なにか、エルザに物凄く感謝せにゃいかんよーな気が?」

 

何やらマスターがブツブツ言ってるけど、どうしたのやら。

とりあえずマスターから飛んでったナツ君に視線を向けると、その辺の一角が騒がしくなってる。

その原因な~のかは分からないけど~、チラッと見えたのは、ナツ君の肘がグレイ君の後頭部にヒットしてたぐらいかな(すっとぼけ)

 

「いでぇ!?テメェ何しやがるこのクソ炎!!」

 

「あぁん!?そこに居るのが悪いんだよヒエヒエ野郎!!」

 

「んだとぉ!?」

 

「止めろよお前ら!!」

 

「喧嘩すんなら外でやれって!!」

 

「いで!?誰だ俺の頭殴ったの!!」

 

「んなもん知るかよ!!つーか誰だ俺の服に酒ぶっかけやがったのは!!」

 

あ~りゃりゃ。何時も通りになっちゃってますねぇ。

あっという間に一階の酒場を埋め尽くす喧嘩喧嘩の嵐。

飛び交う酒。交わる拳、男も女も関係なしのゴチャマンロイヤル。

そんな何時も通りの光景にマスターは額に手を当てて溜息を吐き、エルザちゃんはやれやれと首を振る。

既に戦わない組の女性や子供達(ナツ君とグレイ君除く)はバーカウンターの向こうに避難済み。

ウチのギルドって元気いっぱい過ぎじゃな~い?

 

「お、おい。これ止めなくて良いのか?」

 

「んん~?べ~つに何時もの事だしねぇ」

 

「これが日常って……」

 

ちょっと慌ててるミラちゃんにそう答えると、今度はエルフマン君がしょげた声を出す。

まっ、この荒波に揉まれて、人は強く成長するのだよ(戒め)。

っとと、後マスターにミラちゃん達の詳細を伝えておかないとねぇ。

 

「それでさぁ~マス「くたばれタレ目ぇ!!」「テメーが先だツリ目野郎ぉお!!」……」

 

「あ?なんか言うたか?」

 

「いや実は「マカオ!!俺のシャツに酒ぶっかけやがったな!?お気に入りだってのにぃ!!」「あぁ!?知らねえよ!!っつうかテメーだろワカバ!!俺のシャツに焦がし痕つけやがったのは!!」……」

 

ワーワーギャーギャー。

 

ドンガラガッシャン。

 

なんていう喧騒と叫び声に二度もだいーじなお話を邪魔されてしまう。

髪は俺に喋るなと申すか。

しかも今回は何時もよりヒートアップしてるのか、エルザちゃんの「静かにしろ!!」っていう声も届いていない。

……何時もは良いんだけど、今はちょぉ~~っと迷惑、かな?

 

「貴様等、静かにしろと……ッ!!」

 

「んま~ま~エルザちゃーん。そーんなに怒んなくても良いから、さ。ちこぉ~っとクールダウンしよっか?」

 

ふぅ、と溜息を吐きながら今にも抜剣しそーなエルザちゃんの肩を掴む。

 

「しかしユーキ……ッ!!」

 

「はいはい。そーんな眉間に皺寄せてちゃだめだめぇ。可愛いお顔が台無しよん?」

 

「な!?か、かわ……ッ!?」

 

その言葉でビクッと肩を震わせて、エルザちゃんはFREEZEしてしまう。

まーソレが狙いなんですけどねー(ゲス顔)

お顔真っ赤に染めて立ち尽くすエルザちゃんから手を離し、俺は喧騒に近付く。

はーやくミラちゃんの事を話さにゃいかんので、おっさん達にはもー少し静かにしていただきましょーか。

おにーさんは何時だって、小さい女の子の味方なのです(迫真)。

 

「……ちっ」

 

「ね、姉ちゃん……?」

 

「あん?」

 

「や、何でもないです……」

 

はて?何やら背後から不穏な空気が?キノセイだと願いたいねー。

まぁそんな事は一旦頭から離して、と。

 

「あー、皆さーん?ちょぉ~っとこれから大事な話が」

 

「うぜぇんだよ!!」

 

「てめえがな!!」

 

「あ~……もしもぉ~し?」

 

「うらぁ!!コレでも食らえや!!」

 

「食らうかバ~カ!!」

 

「あの~ちょっと?うるさいんだけど……」

 

「「勝つのは俺だぁアアアア!!!」」

 

俺の話をマトモに聞かずぶつかり合うナツ君とグレイ君。

そして周りで魔法を使った乱闘に発展しそうになってるギルドメンバー達。

 

 

 

…………むむむぅ~。

 

 

 

~しばらく☆お待ち☆下さい~

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「いー加減にしないと脳天直撃死神チョップが出ますよぉ~?」

 

 

 

静寂を取り戻したギルドの中央で、ユーキは何時の間にか換装した死神様の衣装状態で全員にそう告げる。

先程まで暴れまくっていたギルドのメンバーは、全員ユーキの言葉を静かに聞いていた。

 

 

 

――そう。

 

 

 

『…………』

 

 

 

床に血塗れで倒れ、頭からピューッと噴水ならぬ噴血しつつ、煙を立ち上らせた姿で。

 

 

 

今もドクロ型の煙を立ち上らせている死神様の手を見れば、何があったのかは想像に難くない。

あれだけ騒いでいたギルドメンバーの全員が同じポーズで倒れ伏す光景は、正に惨状と言う他無い光景だ。

そしてこの状況を一瞬の内に作り出した本人は、倒れ伏したメンバーに「いい加減にしろ」と伝える。

本人からしたら至極まっとうな事を言ってるのだろう。

 

『出す前に言って……』

 

それが順序逆だった為に、この光景は生産された訳だが。

そして、ユーキの繰り出した脳天直撃死神チョップにより倒れたメンバー全員の心の声が重なった瞬間でもある。

 

 

 

致命的に順番のズレた注意勧告により、妖精の尻尾はとても静かになったのだった。

 

 

 

 

 

後書き

 

やっと……死神チョップ第一弾www

 

 

ちなみに死神様の能力評価ですが、ドラゴンがS~Aの中間ぐらいとお考え下さいwww

 


 
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