No.799669

艦隊 真・恋姫無双 74話目

いたさん

次回からの投稿は、当分の間不定期になります。

2015-08-31 22:37:28 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1293   閲覧ユーザー数:1068

【 目撃者は語る の件 】

 

〖 洛陽 都城内 練兵場 にて 〗

 

私は………目を疑うしかなかった。

 

祭殿が使用される弓と、ほぼ同一形状にも関わらず……空中に投げ出され矢が炎と化した! ────だが、驚くのはそれだけではない!

 

炎が消えると、先ほど上空を飛んでいた物が姿を現したのだ!

 

数体の飛行する物は、陣形とおぼしき形を整えて、規則正しく一方向に向かう。 一糸乱れず陣形を運用する事、よく訓練された水軍の動きに似る。

 

だか、それもまた……当然の事なのだろう。 水上と空中──地上とは、理も法も異なる運用先の場なのだ。 ならば、似てくるのも必然なのだろう。

 

その美しさに──暫し我を忘れ見続けるが、同じように見入る視線に気付き、その視線の主を探った。

 

───そこに居たのは、銀髪の髪を持つ将!

 

号令を掛し、矢を放った後でも、その端整な顔を厳しくさせ上空を睨む。

 

それだけ、今の状況が切迫している事を示すのだが、驚く事に………目は優しく慈愛に満ちていた。

 

まるで、我が子の活躍を楽しみにしている母のような顔で!

 

蓮華さまと私達は、北郷の将が飛ばす鳥のような物を、興味深く眺めていた。

 

---

 

小蓮『すっごいなぁ! 鳥の様に自由自在で飛べるなんて───お、お姉ちゃん、あぁぁ、アレ、アレェ!! あそこの飛んでる奴! 危ないっっっ!! 』

 

蓮華『あっ! あの飛ぶ物が──衝突しちゃう! ど、どうしよう! ──思春、何とかならないのっ!?』

 

思春『………申し訳ありませんが、御命令でも無理かと! 高さ、距離が既に私の行動範囲を遥かに越えています! 』

 

明命『わ、私も無理です! あんな速い物に、追い付くことさえ出来ません! それに、ぶつかる先は皇帝陛下の居城の塔です! この多数の目がある中、塔内に侵入など───不可能ですよ!?』

 

蓮華『どうしよう! どうしよう!? 冥琳、どうしよう!?』

 

冥琳『…………運を天に任すしか………』

 

---

 

私は……自分自身薄情だと思いつつ、その様子を最後まで見続けた。 飛行する物が破壊され、どれだけの被害が出るか知りたかったのだ。

 

蓮華『きゃあああああ───ッ!!』

 

小蓮『危なぁぁぁぁぁい!!』

 

あの時、横一列に並ぶ絡繰りの進路方向には、天を衝かんとばかりに聳え立つ塔があり、そのまま進めば───激突は必至!

 

蓮華さま、小蓮さまは顔を隠され、思春、明命は、その後の惨劇を予測して、此方に被害が被らないように、注視していたのだ!

 

『『『 ──────!?!? 』』』

 

だが、予想に反して衝突すると思えた飛ぶ物は、難なく塔を避けて、回避運動を行ったのだ! しかも、衝突の惨事を免れただけでなく、元の陣形の位置に移動し、何事もなかったかのように、飛び立っているではないか!?

 

─── 《---》 ───

 

その瞬間、私の目に……信じられないモノが見えた!?

 

冥琳『────んっ? 今、何か人らしいものが!? いや、そんな馬鹿な事! 私らしくもない! それよりも、この様子を早く──蓮華さま方に御覧頂かなければ──!!』

 

私は、頭を左右に振った後──二人に声を掛けた!

 

---

 

冥琳『蓮華さま! 小蓮さま! ───あれを御覧下さい!』

 

蓮華『ど、どうなった───えっ? ええぇぇぇ───っ!?』

 

小蓮『なんでよぉ! 何でなの!?!?』

 

明命『はわわわっ! わ、 私にも分かりませんっ!!』

 

思春『──────!』

 

---

 

蓮華さま、小蓮さま、思春、明命が……その様子を目撃し、声を上げたり、唖然と眺めたりと………各々何も対応できず注視するのみ。

 

驚愕する蓮華さま達を裏腹に……私は冷静だった。

 

私の見たモノは……あくまでも一瞬である。

 

何かの見間違いとの事も考えられるし、雪蓮の奴に日頃から振り回されて、疲労が溜まっている為に見えた幻覚かも知れない。

 

確か……この前、眼鏡の度数も合わせた。

 

しかし、あの速さで動く物を、簡単に判断できる武など私は持ち合わせて居ない。 祭殿のような武を……私は持っていないのだ!!

 

私の見たモノに裏付けがなければ ……所詮……空想にしか過ぎない。

 

そう考えて、私の目撃した『??』を、頭の中で理論整然と不定した。

 

そんな時、思春が珍しく興奮した様子で、私に報告して来たのだ。

 

---

 

思春『冥琳さま……お話が……』

 

冥琳『………聞こうか』

 

思春『はっ! 実は……先ほどの飛行物ですが──何者かが乗っている事を目視できました! アレには間違いなく……人が乗って操っています! 』

 

冥琳『────なにっ!?』

 

思春『私は……蓮華さまの安全を確認した後、少し前へと出たのです。 すると、飛行物の先端付近が透明になっており、そこには小さい人影が──』

 

冥琳『しかし、あの飛行物は……私達の腕より少し大きいぐらいの物だ。 そんな所に人が乗り、飛ぶ物を操る事ができると……思春は思っているのか?』

 

思春『──私も半信半疑なのですが……間違いなく見たのです。 それに、 中に居た者が私を確認すると……驚きながらも額に手を当て、陣列に加わっていきました! …………まるで、礼を言うかのように!」

 

 

───《 (^-^ゞ 》───

 

 

冥琳『────!?』

 

思春『………今思えば、あれは北郷が行う《敬礼》では……なかったのかと』

 

 

思春の話を聞き、私の疑問は氷解した。

 

────しかし、何と不思議な事か!?

 

私は、思春を下がらせて……一人思案をする。

 

かの、飛行する物に乗り込む『あの者』は、いったい……何だったのだろうか……と。

 

 

◆◇◆

 

【 編隊特殊飛行 の件 】

 

〖 洛陽 都城内 練兵場 にて 〗

 

東西南北に飛び立ち、洛陽の郊外まで向かう艦載機たち!

 

五機で編隊で組み、アブレスト(横一列)で編隊飛行を行い、洛陽の上空を飛行する! 空に響くは……高速回転するプロペラの音、風を切り裂く風切り音!

 

聞き慣れない轟音に驚き、空を席巻する謎の飛行物を見上げ───実際に接して──口々に恐怖、怯え、叫びの言葉を上げる……洛陽住民たち!

 

〔── (; ゚ ロ゚)!?〕

 

〔 Σ((゚□゚;)) (゚Д゚≡゚Д゚)゙? ( :゚皿゚) (ノ゜ο゜)ノ〕

 

〔 !!(⊃ Д)⊃≡゚ ゚ 〕

 

噂の根源も判らずまま……漢王朝への憤り、不満、嘆きにより立ち上りし者!

 

祭り騒ぎに乗じて、利を得ようと考えた不届き者達!

 

それらが……空飛ぶ『天よりの使者』を……呆けた顔で眺める。

 

 

--- ―――

 

今回の蜂起は、民の不満を煽動して起こした物である。

 

簡単に述べれば──『対岸の火事を皆で望み、意見を煽って火元の主を非難するような物』である。 自分達は安全な場所に居て、火事の原因、火元の家の生活、家族の話を勝手に非難している──そんな状態だ。

 

始めの状態は、 城より聞こえる轟音、見たことのない物を恐れて、洛陽の民は眺めてはヒソヒソと話すだけであった。

 

そこに、楊奉が『漢王朝は天に見放された』という噂を流布させ、洛陽の民へと更に広まる! 一滴の墨が、水瓶の水を染めるかのように!

 

普段なら、このような事を口にしただけでも……官兵に罪を問われ、軽くて牢屋行き …………重くて死罪を命じられたことだろう。

 

─── だが、今回は違う!

 

洛陽に流布する話に寄れば、天は『漢王朝の存続を許さない』と言うではないか! 漢王朝を滅ぼし、新たな天の代理人を決めるのだと!

 

すると、その利益にありつける者は……我ら民が一番ではないか?

 

つまり───『天の御遣いさまは、我ら民の味方だ!』と。

 

何があっても、漢王朝を滅して我らを導いて下さるのだと、信じていたのだ!

 

 

漢王朝の政策に飽きている──『閉塞感の打破』を!

 

今に生きる者たちが渇望している──『未来への希望』を!

 

誰もが望む──『漢王朝断罪の答え』を!

 

 

そして、長年積もりに積もった怨みを、不満を爆発させながら蜂起へと結び付けた───結果である。

 

 

--- ―――

 

 

 

───しかし、怒りの権化とされる『天の使者』が──洛陽の街に現れたのだ! 民の味方だと……信じられていた飛行する物が、編隊を組んで進んでくるではないか!?

 

皆が皆、人生初めて聞く音、初めて見聞する物、初めて味わう……天の御遣いの力! 漢王朝を破滅に追い込もうとしている物が!

 

あろう事か───今、頭上を高く───飛行しているのだ!!

 

普通、味方ならば──自分達を怯えさせる事はしない。

 

無用な圧力は、恐怖を呼び、疑心暗鬼を生み出し、味方を敵に容易く変化させるのだ。 それを判らない天の御遣いでは無い筈だ。

 

すると、つまり───敵?

 

 

『───ザワッ!?』

 

 

 

───洛陽の民が、顔を青ざめて騒ぎだす!

 

 

『 ────話が違うのではないかと───!?』

 

 

ーーー

 

 

確証の無い噂を簡単に信じた洛陽の民を…………

 

───愚か者として嘲笑うべきか?

 

 

それとも、このような手を張り巡らせた…………

 

───楊奉の策謀を褒めるべきか?

 

 

蜂起に加わる多くの民が、怯えて眺めるしかなかったのは……間違いない事実! 後悔をしても──既に遅きの状態である。

 

正に『対岸の火事と思っていた火が、此方に向かって来ちゃた現象』………とでも言っておこうか。 『笑う角には福来たる』………とでも。 いや、根源の意味は正解だが、内容自体は真逆の答え故……違うけど。

 

ーーー

 

 

先程まで漢王朝を貶し、皇女の即位を反対していた者たちも……色を失い隠れたり、どこかに逃走を始め出した!

 

他の者も、腰を抜かしたり、身体が緊張で動けない!

 

喜怒哀楽の表情を……目まぐるしく変えて……覚悟をするのみだった!

 

だが──艦載機達から変化が起きる。

 

艦載機の後方より───『色付きの煙』が帯状に伸びていったのである!!

 

 

◆◇◆

 

【 様々な反応 の件 】

 

〖 洛陽 都城内 練兵場 にて 〗

 

月「え、詠ちゃん! あ、あれぇ───っ!!」

 

詠「う……嘘! どうやって……………っ!?」

 

---

 

華琳「──五色の雲………瑞雲!? 」

 

桂花「か、一刀! 貴方………吉兆を自分達で!?」

 

---

 

蓮華「────!」

 

冥琳「ふむ………だが、それだけでは足りないぞ!?」

 

---

 

風「これはこれは………綺麗ですねぇ。 ですがぁー?」

 

稟「ええ………これだけ終わり……では無い筈ですよね?」

 

---

 

アブレスト隊形(ラインアブレストととも)の艦載機から、五色(白、赤、青、黄、緑)の『カラースモーク』が噴出されて、洛陽上空に描いて行く。

 

色鮮やかなに並び伸びる五本の線は、洛陽の街からもハッキリと見えた。

 

学識ある者は、吉兆の意味を悟る!

 

新興宗教である『仏教』を信仰するも者は、来迎の奇跡に伏し拝む!

 

純朴なる者は、その瑞兆の奇跡を目の当たりにして、ただ畏れるしかなかった! 天の御遣いの絶大な力を────!!

 

ーーー

 

───大陸で譲位以外に皇帝に即位する場合、幾つかの方法がある。

 

例えば──三国志での後漢の献帝の後、三国で皇帝が輩出されたが、三国ともそれぞれ違う方法で皇帝に即位した。

 

魏では、献帝より禅譲される。

 

蜀は、献帝が弑逆された事(誤報)により、漢室の血筋という正統性で。

 

呉は──色々と経緯があるが(魏から九錫を賜り自治を認可された)、吉兆により臣下から奉じられ、それを理由に皇帝へと即位した事だ。

 

吉兆とは、賢君が現れる予兆を指す。 新しき皇帝の誕生を、天が祝福するために起こす、普段は見れない現象。

 

つまり、皇帝即位を天が頻繁に促すため、臣下が挙って推戴したと理由付けを行った訳である。

 

残りの二国より責められても……『天が選び出したからには、拒否は許されない。 嫌々ながらも、皇帝に即位した』と《言い訳》もできるのだ。

 

……… 相手に通じるかは知らないけど。

 

結果としては、蜀は自国の事情が事情なので、祝福して使者を送り、魏も一応認めたらしい。 この即位の前に、魏へ一時的に臣下として降った際、自治の認可を受けていた為、即位しても大丈夫という考えもあったようである。

 

ーーー

 

そんな、三国志の知識を知っていた一刀は、洛陽へ向かうと決まった時に、翔鶴達に頼んでいた。 ……………編隊での曲技飛行を行うようにと!

 

カラースモーク発生機の装備、アブレスト隊形の編隊飛行を行うように指示。

後から参陣した二隻には、予備器具を渡して取り付けるようにと。 そして、艦載機で作り出した吉兆(瑞雲)を、洛陽の上空で十字展開させたのだ。

 

───御遣い達にしか出来ない方法で、人工的な吉兆を作り出す事を!

 

本来は、一刀達が疑われた場合の演出であったが、その演出も……既に行う事も無いぐらい認可されている。 それに、今は一刀達よりも劉辯の即位が危ういのだ。 その為に出来るだけの事をしておきたい!

 

一刀は、この行動で劉辯の皇帝即位を承諾させる、最終手段にするつもりだったのだ。 それに、先にも述べたが一刀達が疑われた場合の策。 念には念を入れて準備された物ゆえ……続行が可能!

 

ーーー

 

瑞鶴「さて、次は難易度が上がるからね! 第二次航空隊! 発艦始め!」

 

ビッグE「アタシ達の曲技飛行を、その目で刮目しろ!!」

 

ーーー

 

空母二隻による再度の発艦!

 

一方の五機の編隊が、スモークを発生させながら急上昇を行ない、もう一方の編隊はスモークを発生せず、更に上を目指す!

 

目指すは都城の上空!

 

そして、スモークを発生したした編隊は、一定の上空まで来ると一機が速度を落として追尾。 少し上空で四機が四方に分かれ、その中央を最後の一機が、まん中を抜けて飛び出す! ( 上向き空中開花 )

 

その横では、今までスモークを出さなかった編隊が、飛行しながらスモークーを出し、巨大な五芒星を描き出した!! ( 描きもの )

 

ーーー

 

小蓮「うわぁ──凄い、凄いよぉぉぉ!」

 

冥琳「──あれは……北極星!?」

 

蓮華「……北極星って………北辰?」

 

ーーー

 

風「稟ちゃん……これで文句を言う人は、居ないでしょうねぇ?」

 

稟「北極星、即ち天帝を意味する物。 都城の上に描き表された意味は、天の御遣いより、劉辯皇女を天帝の代理人である事を正式に認めたという、意志表示になるのでしょう! 」

 

ーーー

 

他の者達が……天高く舞う艦載機達を見て、驚嘆の声をあげた!

 

だが、丁度………その頃、抜き差しならぬ事態が………進行していた。

 

 

◆◇◆

 

【 空の箱 の件 】

 

〖 洛陽 都城内 練兵場 にて 〗

 

華琳が桂花を傍に連れて、上空の様子を仰ぎ見る!

 

他の将は、華琳の命令により、怪我をした将兵のために動いている。

 

護衛を付けるようにと渋る春蘭に、『他の諸侯が軍師と二人で居るのに、私だけ護衛を付けていたら、臆病者呼ばわりされるわ。 覇王の名に泥を付ける気?』と言って、秋欄達共々、兵士の看護のために向かわせたからである。

 

ーー

 

桂花「蜂起した民達も、五色の彩雲を望み、尚且つ都城に浮かぶ北極星と祝福する天の花を実際に見れば、劉辯皇女即位の件に対して、不満を申す事などありえないと思われます!」

 

華琳「………桂花……貴女は疑問に思わない?」

 

桂花「………は?」

 

ーー

 

険しい顔で上空を眺めていた華琳は、顔を向き直し桂花に問う。

 

ーー

 

華琳「天の御遣い『北郷』は、類い希な英傑なのは認めるわ。 だけど、これが本当に正しいやり方だったの?」

 

桂花「───!?」

 

華琳「この蜂起は、北郷が犠牲者を出さない方法を取る事で、このような事態を招いた。 逆に考えれば………かの兵士達を……いえ、あの人質の将を見殺しにしてでも執金吾を討ち取れば、こんな事は起こらなかった筈よ!」

 

桂花「……………」

 

華琳「孫子曰く『兵は拙速を聞くも、未だ巧の久しきを賭ざるなり』……こんな悠長な救助方法で、大陸の民達を救えると思っているの? この場所の兵達を助けている間に、賊が無垢の民を襲い、命を奪っているかもしれない!」

 

桂花「……………」

 

華琳「………天の武力で事を起こし、洛陽を支配すれば……この大陸を制圧する事など早期に可能! そうすれば、執金吾の煩わしい策にも振り回されず、もっと早く大陸全体に平和が訪れる筈よ! それなのに───」

 

ーー

 

華琳としては、己の力を遥かに超えた御遣い達の力が……羨ましかった! この力があれば、大陸制覇など易々出来ると。 しかし、御遣いは……誰の命を犠牲にする事なく、着実に慎重に事を運んできた!

 

華琳としては、自分が持ち得ない力を持ちながら、それを威嚇だけで済まして終わらせる一刀に苛立ちを感じたのだ!

 

『私の志、才能、器──どれを取っても比べれる者なんか居ない! なのに、北郷は……あれほど武力を持ちながら───どうして、天の力で漢王朝を捩じ伏せ、大陸制覇への道に突き進まないの!?』

 

『争乱が巻き起こり、賊が跋扈し、強者が肥え太り、弱者が嘆きながら死んで行く──この修羅の国を! 唯一正す方法は、これしかないのよ!!』

 

煮えきらない天の御遣いの策に、華琳の苛立ちは怒りに変わろうとしていた。

 

だが、隣に居た軍師が…………その考えを静かに不定する。

 

ーー

 

桂花「華琳さま、その御言葉は………間違っています」

 

華琳「──ど、どういう事っ!?」

 

ーー

 

桂花の言葉に、苛立ちが少し抑えきれず………覇気が桂花に流れた。 だが、桂花も元の君主との体験もあり、平気な顔で話をする。

 

ーー

 

桂花「 …………もし、華琳さまに近い者が病気になった場合、どうすればいいか……お分かりになりますか? 」

 

華琳「────?」

 

桂花「何事も聡明な華琳さまなら……容易い問題です!」」

 

華琳は、桂花が真っ正面より、自分に諫言してくるとばかり思っていた。 それが、病人の養生方法だったため、少し気が抜けながら、的確な答えを返す!

 

華琳「そうね………安静にさせてから、食べやすい料理を作り、薬を飲ませる。 普通の食事や体勢なんて、取れる物ではないわ!」

 

桂花「流石ですね、華琳さま。 その通りですよ」

 

華琳「このくらい……当然の─」

 

ーー

 

桂花の褒め言葉に気を良くした華琳。 されど、頭を下げながら桂花の目が光る! 桂花の口が開き、華琳に声が掛かった!!

 

ーー

 

 

桂花「──では、この大陸の渦巻く情況は……どう見えますか?」

 

華琳「貴女──何が言いたいの?」

 

桂花「今の大陸の情勢もまた……異常な気象、争乱が絶えず行われ、重税により民が苦しむ。 ───正に人でいう病人と同じです!」

 

華琳「それは………確かに言えるわ」

 

桂花「しかし、華琳さまは……そんな病人を鞭で叩き、高級な食事と薬を与え、早く治りなさいと急かす有り様! それでは、幾ら高級な薬、食材の料理を与えたとこで、病人の治療は出来ると───思われるのですか?」

 

華琳「───そんな訳ないじゃない! 寧ろ、そんな非常識な事をすれば、どんなに軽い症状の病人も、死に至る可能性があるわ!」

 

ーー

 

自分の考えてもいない事に対して怒る華琳。

 

しかし、桂花の言葉は…… 華琳に対し更なる舌鋒を紡ぎ出す!!

 

ーー

 

桂花「………華琳さま、貴女の仰る事は──この例えと同じです。 漢王朝は国の要、人で言えば体の中枢に当たります。 そんな場所を血で汚し、義を蔑ろにしてまで勝利しても、誰が王朝を心底から信じる事が出来ましょうか!?」

 

華琳「───!!」

 

桂花「それに、確かに孫子兵法は早さを優先します。 しかし、その前に──孫子始計編、冒頭の言葉をお忘れでは無いでしょうか?」

 

華琳「『兵は国の大事にして、死生の地、存亡の道なり』でしょう! 暗唱するぐらい覚えているわ! だから、私は───!?」

 

桂花「───それならば、なぜ! 一刀達に血を流させる、そのような短絡的発想を行うのですかっ!! 冒頭の言葉を読み説けば、 兵とは争いの意、これ即ち『戦を行う事、国の滅亡に通じる大事』になりますよ!?」

 

華琳「私は、その被害を少なくするために──」

 

桂花「その考えこそ──驕りです! 天の御遣いには天の使命があり! この地の事は、私達、諸侯側の権利であり義務です! それを……御遣い達に一任し、御自分が楽をして……どうするおつもりなのですかっ!? 」

 

華琳「─────!」

 

桂花「確かに犠牲は減ります。 しかし、御遣いの一刀達に血を流させ、争いの責任を被せて、自分達は無傷で領地を治める。 こんな領主、いえ、覇王に───誰が生涯の忠誠を捧げて支えましょうかっ!? 」

 

華琳「………………」

 

ーー

 

唖然とする華琳に、桂花は膝を地面に付き……頭を垂らす。

 

御遣いに対する苛立ち、桂花の 癇に障る(かんにさわる)言葉に、華琳の怒りが頂点に達した。 手許には、兵士より奪っておいた剣を握る!

 

その剣先は、桂花の顔へと───向けられた!

 

ーー

 

桂花「………華琳さま。 この意が通じなければ、どうぞ……私の首を刎ねて(はねて)下さい。 君主に楯突く事は大罪、臣下としては当然の報い。 誰も、華琳さまに対して、批判的な意見など述べないでしょう………」

 

華琳「…………そうね。 君主の意見に諫言する事は忠臣の役割。 しかし、諫言ばかりではなく、我が覇道の道まで見下す行為は許しがたいわ! ───覚悟なさい! 桂花!!」

 

桂花「私は……前に仕えていた主の……最後の願い事を果たしました。 この首は華琳さま……貴女に捧げます! されど、私の心は──前の主の心と共に、天の御遣い『北郷一刀』の傍へ───!!」

 

ーー

 

しかし、桂花の様子に動揺は無い。

 

怯える様子もなく、瞼を閉じて従容な態度を示す桂花。

 

その様子に、華琳は興味を抱いた。

 

ーー

 

華琳「いい度胸ね………。 でも、その前に一つ聞きたいわ。 貴女の前の主とは──いったい何者なの? 貴女のような忠臣を従え、天の御遣いと親交があるような言い草! 幾ら考えても──そのような諸侯など思いつかない!」

 

桂花「…………………………」

 

華琳「──素直に答えれば、処刑を中止してあげる! 答えなさい、桂花!」

 

桂花「……………………」

 

華琳「───その者の名を答えるのよ!!」

 

桂花「……………………」

 

 

 

 

ーーーーー

ーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

書いていたら、いつの間にか殺伐な空気になってしまい、この後どうしようかと……考えている最中の作者です。 義輝記の続きもあるのに…………

 

一応、次か、その次で、この章?の話は終わらせたいと思います。

 

ただ………ですが、作者が私用のため、九月から十月にかけて、かなり忙しくなるため、一週間更新はできそうもありません。

 

数週間に一回っていうのもあるかも。

 

なるべく、早くあげるように致しますので、よろしくお願いします。

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
12
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択