No.797906

IS〜英雄束ねし者〜 6話『転校生』

龍牙さん

この作品はpixivにも連載しております。

2015-08-23 04:06:42 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1300   閲覧ユーザー数:1246

「はいはーい、ちょっといいですか?」

 

「はい?」

 

『ピヨ?』

 

 何時もの様にバイク-何時もと違うのは、バイクの制御を任せているオトモダチメカがニワトリ型のTORIでは無くDEM社製のオトモダチメカ二号機である量産前提のヒヨコ型の『PIYO』である事だろうか?-に乗って登校した四季に一人の生徒が話しかけてくる。

 

「新聞部でーすっ。先のクラス代表決定戦で大活躍を見せた話題の新入生、五峰四季くんにインタビューに来ました」

 

「へぇ」

 

 まあ、あれだけ派手に活躍したのだから話題にならない方が不思議だろうが、

 

「本当は昨日の一夏くんのクラス代表就任パーティーでインタビューしたかったんだけどね。あ、私は二年の『黛 薫子』、よろしくねっ。新聞部部長やってまーす。はい、これ名刺」

 

 名刺を受け取って一瞥するとPIYOが咥えて回収する。偵察から名刺の一括管理までしてくれる無駄な高性能振り……無駄に技術を使った結果のメカである。

 

「ではでは、ずばり五峰くん! 何故クラス代表を織斑君……一夏君の方に譲ったのでしょうか!」

 

「事態の理由はDEMのテストパイロットだからって所だな。一兄を推薦したのは……将来性を期待してって所だな」

 

 心の中で『初見じゃないとは言え、回羅旋斬を受け止めたし』と付け加えておく。ISを使っての実戦経験と稼動データは惜しいがそれはガンダム達相手の訓練でも十分に得られる。

 

「あっ、それじゃあもう1つ。新入生最強と目されてDEMの後継者の五峰君の好きな女の子のタイプは?」

 

「……っと。ノーコメントで。適当に提造してくれていいよ」

 

 思わず『詩乃』と即答しそうになったのを押し殺す。好きなタイプとして思わず詩乃の特徴を言いそうにもなるが、流石にIS学園で彼女の存在を知られるのは拙いと判断する。……主に秋八やら千冬とかの関係で。

 

「じゃあ、適当に提蔵しておくね。じゃあ、最後に写真もらえる?」

 

「ええ」

 

 なお、その写真は後にとあるイギリスの代表候補生が纏めて大量購入するのだが……それはそれ。序でに将来的にIS学園では数名の女性の間で奪い合いになったとか……。

 

 なお、一番人気は一夏で、何故か秋八の写真はあんまり売れていなかったりする。

 

 関係ないが、何時の間にか四季の乗ってきたバイクはPIYOによって回収されていた。放課後に戻ってくる時はTORIが乗ってくるかもしれないが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふにゃ~」

 

 クラス代表就任パーティーの夜……四季と詩乃の暮らすDEMの社員寮の一室……殆ど利用者が居ないその建物の一室で四季は久し振りに腑抜けていた。

 ここ数日二機の専用機の調整や学園での事で神経が張り詰めていた為か、相応の疲労があったと改めて自覚する。

 詩乃を含めて周りいた者達全員からそれに気付かれていた。結局の所、四季にとって一番安心できるのは詩乃と一緒に居る時間である。そんな時間でさえ緩めずに居たのだから疲労は溜まる一方だろう。

 

 彼女に膝枕をして貰いながら休むように言われたのだから、遠慮なく休んでいる訳である。

 

(本気で転校したい……)

 

 それは無理な相談だと理解している。現状でも必要以上に千冬や秋八……序でに箒と関わらない為に色々と義父が政府や学園側と交渉してくれたのだ。それでも、入学までは取り消す事はできなかったのである。色々と無理は通したが、それでも政府側が絶対に譲れない点と言うのが『IS学園への在籍』なのだろう。

 

「本当に疲れてるみたいね」

 

「ああ……改めて実感した」

 

 そう言って詩乃に頭を撫でられる。いつもは逆なのだが……今はそれが心地良い。本来ならば彼女や仲間達と一緒の学園生活を楽しめるはずだったのだが、完全にISによって人生を狂わされた。

 

「……飛ぶのも好きだし、コイツの事は大事だけど……やっぱり嫌いだな」

 

 聞こえない様にそう呟くと、突然虚空に通信用のディスプレイが浮かび上がる。TORIを通じての緊急用の連絡手段なのだが、これが出来る者は限られている。

 

 何事かと思い意識を其方へと向ける。

 

『ハロハロー、しーくんのアイドル束さんだよー♪』

 

 唯一緊急用の連絡手段で普通に連絡してくる人が映し出されていた。それに呆気に取られる四季と詩乃……。

 

「…………た、束姉…………」

 

 辛うじてその一言のみ搾り出されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

現在のIS学園の教室……

 

「ふぁ……」

 

「五峰くんおはよー」

 

「おはよー」

 

 そう言って挨拶を返す。今でも他のクラスの者達からの注目は集めているが、同じクラスの生徒達からの反応は落ち着いたものになってきていた。

 

「ねぇ、織斑くん、五峰くん、転校生の話聞いた?」

 

「転校生? 今の時期に?」

 

「まあ、代表候補生って言うなら専用機の関係って可能性も有るけど……」

 

 一夏の疑問に四季が可能性を挙げる。四季の様にラボで毎日調整を行なっていれば話は別だが、専用機は大半がその国に於ける最高にして最新の技術が使われている。四季のHi-νガンダム・ヴレイブやセシリアのブルー・ティアーズ等は良い例だ。同時に世界でも希少なISのコアを当然ながら使っている。

 国外への輸送途中の強奪等の危険性を考えると直接扱う事の出来るパイロットに渡してから一緒に送り出すべきだろう。……護衛対象が護衛のための戦力と言う事が出来るのだし。

 

(……転校生か、確か束姉の頼みは……近々IS学園に転向して来るであろうドイツの代表候補の専用機を……)

 

 『破壊して』。四季や一緒に通信を聞いていた詩乃の背筋が寒くなる様な表情で告げられた束からの依頼。笑顔だったが、逆にその時の二人にはその笑顔が逆に恐ろしかった……。憎悪を初めとする様々な負の感情が混ざり合ったどす黒い物が笑顔と言う仮面に隠れている……。思わず、その時の事を思い出す。

 

 

 

 

 昨夜の社員寮の一室……

 

「VTシステムの破壊、か」

 

 思わず束からの依頼に好戦的な笑みを浮かべる。……過去のデータとは言え織斑千冬の領域に居る者を倒せればそれだけ、四季にとっての目的……完全な決別を千冬の敗北と共に叩き付ける事に近づけるのだから。なにより、これは束からの依頼だ。受けない理由など無い。

 

 

『……いや……』

 

 

「詩乃?」

 

 隣に居る彼女から震える様な声が聞こえてきた。それには覚えが有る。同時に何故とも思う。……“それ”の原因になる物など無いはずなのに。そう考えながら彼女を落ち着かせる様に抱きしめる。

 

「って、それか」

 

 テレビへと視線を向けると、テレビの画面にはISの試合の映像が映っていた。

 

「…………あー」

 

 単なるスポーツニュースなのだが、ISが広まってからこう言う物が増える傾向にある。……各国の思惑としてはISと言う『兵器』を扱える人間を多く集め、同時に戦争に向けての訓練も『スポーツ』と言う手段で実戦訓練も行なえる。

 クリスマスの一件でデジモンやエルガのモンスターに対応できたのが価値を高めてしまったのだろうが……。

 

(……そんなに綺麗な世界じゃないだろう……)

 

 一見華々しい世界だが、その裏側はどんな闇が潜んでいるのかは想像もできない。……想像したくないと言うべきだろうか。現にVTシステムやナノマシンによる強化もその闇の一端と言えるだろう。

 だからこそ、腕の中に居る少女や、仲間達を関わらせたくは無い。最悪、自分達に関わりが無ければ放置していても構わないとも思っていた。

 『好奇心は猫を殺す』と言う訳ではないが、下手な正義感で己だけでなく周りまで犠牲にしてしまったら、後悔しても仕切れないだろうと考えていたのだから。

 

 半ば現実逃避の様にそんな事を考えながら、己の迂闊さを呪いながら彼女が落ち着くまでの二時間の間抱きしめ続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在……IS学園

 

 昨日の事……主に束からの依頼から始まる詩乃の発作の事について思い出していると、件の転校生が中国からの留学生で有る事が分かった。このクラスでは無いらしいし、束からの依頼とは関係ない相手なので対して気にする必要は無いだろうと判断する。

 

「それにしても今の時期に転校生って珍しいよな」

 

「いや、一兄。さっきも言ったけど代表候補生なら有り得るって」

 

 先ほど考えた考察を一夏にも分かる様に簡単に説明した後、『単に手続きの都合の可能性も有る』と付け加えておく。

 

「あら、でしたら私や四季さんの存在を危ぶんでの転入かしら」

 

「いや、なんでそこでオレの名が挙がるんだ?」

 

 主にクラス代表決定戦での大暴れくらいしか考えられる要因がないのだが、高々一クラスのイベント程度で話題になるとは思えない。

 

「あら、後存じないのですね? DEMのホームページで先日の試合の映像が無料で公開されてますわ」

 

「はぁ?」

 

 聞いていない。慌ててスマフォを取り出して義父に連絡しようとした所……丁度詩乃を抱きしめていた時間帯に不在着信とメールが一件入っていたのが気が付いた。不在着信の相手は義父であり、メールも当然同じ人物。内容は『編集が終ったから、クラス代表決定戦の映像をHPに公開する』と有った。

 

「しまった……その事についての連絡だったか……」

 

 要するに『お前の友達もお前の勇姿が見たいだろうから』と言う理由で編集するそうだが、態々呼ぶよりもプロモーションを兼ねた一般公開にしたそうだ。……当然、全員に連絡済とある。

 

「でも、転校生って言うのは気になる話だね」

 

 何時も通りの爽やかな笑顔を浮べてそう呟く秋八。その笑顔の奥では、

 

(彼女か。まあ、ぼくにはどうでも良い話だね。……寧ろ、ボクにとって必要なのは次の転校生の二人だよ)

 

「このクラスに転入してくる訳ではないのだろう? 騒ぐほどの事ではあるまい」

 

 そんな事を考えていた秋八とそんな秋八に対してそう言う箒……辛うじて間に一夏が入っている事で落ち着いた会話を交わしているが、険悪な空気は近寄りがたいものが有る。其処に平気で入れるダボダボの制服の癒し系の空気を纏った少女は大物なのだろう。間違いなく。

 

「織斑君っ、クラス対抗戦頑張ってね! 織斑君が勝つとクラス皆が幸せだよー!」

 

 そんな彼女を中心とした仲良し三人組が話しかけてくる。最初に一夏にそう言ったのは彼女自身。妙に言葉に熱が入っているのが印象的だ。

 

「今のところ専用機を持ってるクラス代表って一組と四組だけだから余裕だよ」

 

「織斑君が勝てばクラス皆が学食のデザート半年間フリーパスだもんねー」

 

「っ!?」

 

 『半年間学食のデザートフルーパス』と言う所で四季が反応する。

 

(……それは是非とも一兄には勝って貰わないと……)

 

「そう思うと四季くんが代表になってくれなかったのが残念だね」

 

 当然ながら四季が代表にならなかったのを残念がっている。

 

 

『その情報古いよっ!』

 

 

 そんな声が教室中に響き渡る。

 

「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから」

 

「鈴…………? お前、鈴か?」

 

「久し振りだね、|凰《ファン》さん」

 

 其処に居たのはツインテールの小柄な少女……。そんな彼女に親しげに話しかける一夏と秋八。……一夏の方は兎も角、鈴と呼ばれた少女は秋八に対して何処か警戒しているようにも見える。

 序でに秋八に対して複雑な表情を向ける箒。

 

「そうよ、中国代表候補生『|凰 鈴音《ファン リンイン》』。今日は宣戦布告に来たって訳!」

 

「鈴…………。何、格好つけてるんだ? 全然似合ってないぞ」

 

「んなっ……!? なんて事言うのよ、アンタは!?」

 

 そう言う一夏の様子はどこか楽しそうにも、嬉しそうにも見える。珍しい兄の姿に鈴との間柄……恐らくは己が引き取られてからの知人なのだろうと四季は思うが、その辺で止めて置いた方が良いだろう。

 

 ……後ろに|大魔王《織斑千冬》が居る……。

 

「あー……凰さんだっけ? 後ろ……」

 

「おい」

 

「何よっ!?」

 

 運悪く四季の警告の声と共に千冬の声が響いてしまった。当然ながら振り下ろされる出席簿。

 

「もうSHRの時間だ。教室に戻れ」

 

「ち、千冬さん……」

 

 出席簿で殴られた衝撃に蹲っている鈴の図。

 

「織斑先生と呼べ。さっさと二組に戻れ、そして入口を塞ぐな、邪魔だ」

 

「す、すみません」

 

 乱暴では有るが正論である。

 

「また後で来るからね! 逃げないでよ、一夏!」

 

「さっさと戻れ!」

 

「は、はいっ!」

 

 鈴はそれだけ言うと千冬に怒鳴られて走って二組の方に戻って行った。

 

 その後、一夏と秋八に聞いたところ、彼女は二人の小学校からの同級生らしい。時期的に丁度箒が転校する時期と入れ替わりに転校してきて、中学二年の終わりに中国に帰ったそうだ。

 

 そもそも、箒が転校する前に義父に引き取られた四季とは会う機会がなかった相手と言う事になる。

 

(……あいつには警戒しているみたいだけど……。本性を知っている?)

 

 まあ、箒とは違い面識もなければ係わり合いも無かった相手なのだ、仲良くするのなら仲良くする、敵対するなら敵対する。それだけだと割り切る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼休み、四季はさっさと教室を抜け出して一人屋上でサンドイッチを食べていた。今日のお弁当は詩乃が早起きして作ってくれたのだから、一口たりとも無駄には出来ないと一人ゆっくりと味わっていた。

 

 普段は学食を利用しているが、味は良いのだがどうも周囲からの好奇の視線にはなれずに居る。何より秋八や箒と一緒に居る事自体四季にとってはストレスになるのだ。

 

 細く切られたハムとキュウリの食感を楽しみつつ、その味を堪能すると屋上に来る途中に買った紅茶で喉を潤すと食べ終わったお弁当箱を仕舞い、空を見上げる。

 

「……中学二年、か」

 

 家族になど戻る気は無いが、今更ながら一夏もまた四季の知らない日々を過ごしてきたのだと思う。当然、四季の知らない人間関係も有ったりするだろうが……。

 

「……我が兄ながら、妙な事になってないと良いけどな……」

 

 血の繋がりのある家族でありながら一緒に過ごした時間は驚くほど少ない……が、これだけは言える。『好きです』と告白されて『オレも好きだぞ、友達として』と真顔で返すタイプだと。

 はっきり言って、それこそが四季が何千回戦っても一夏に負けないと断言する理由でもある。

 

「……ああそうだ……。お前の為なら何にでもなってやる」

 

 それが彼女の望みならば、幾らでも力になる。逃げたいと言うのなら何処までだって手を引いて連れて行ってやる。と。正しさも過ちも関係なく、それが彼女の望みならば己の全てを持って叶えると決めた。

 

「っ!?」

 

 そんな事を考えていた後、誰かの気配に気が付いて後ろを振り向くと、懐に入れている鉄心入りのボールペンを手に取る。棒手裏剣の代わりの武器なのだが、流石に四季の腕では棒手裏剣自体命中率は良くなく、近接戦用の武器である。

 

「……気のせいか?」

 

 誰かが居た気配は消えている。……いや、寧ろ先ほどまで不自然にあった気配の空白が消えていると言うべきだろうか?

 

「……」

 

 手口から考えて千冬では無いだろうが、それを不審に思いながらボールペンを懐に戻し再び紅茶に口を付ける。

 

 

 

 

「ふーん、あれが五峰四季君か。うふふ、お姉さん、ちょっと興味湧いちゃったわ」

 

 IS学園の制服に身を包んだ上級生らしい、ショートカットの青い髪の女性の持つ扇子には『興味津々』と書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、四季、聞いてくれよ」

 

 翌日……教室に入った四季に一夏が話しかけてきた。何でも放課後に一夏の部屋に行った鈴は、一夏に約束を覚えているか聞いたそうだ。その結果、内容を覚えていた一夏を叩いたそうだが……。

 

「一兄……。これだけは行っておこう。お前が悪い」

 

「同感だね、一夏兄さんが悪いよ」

 

 何時の間にか居た秋八が四季の言葉に同意する。

 

「一兄、それって……『酢豚を毎日作ってあげる』とでも言われたんじゃないのか? 正確には」

 

「ああ、そう言われればそうだった様な……。でもそれって、料理の腕が上がったら、毎日酢豚をおごってくれるって奴だろ?」

 

 いい笑顔で宣言してくれる一夏。それには流石に険悪なはずの四季と秋八でさえ顔を見合わせて、

 

「「はぁ」」

 

 仲良く溜息を吐くのだった。一夏に対する意見の一致と言う一点に於いては気が有っていたりする。

 

 半ばプロポーズに近い言葉だったのだが、どうやら目の前の実兄は奇跡的な勘違いをしたのだと理解した。

 

(教えるべきかな、これは?)

 

 何気にさっさと中学の頃には一夏と鈴をくっつけ様としていた努力していた秋八……その一点のみは警戒している鈴にも感謝されているし、四季が知ったとしても賞賛するだろう。……まあ、その裏には色々と彼個人のどす黒い思惑があっての事なのだが……。

 

「……一兄、多分その約束の意味って……日本風に言うと」

 

 彼女の反応を聞いた上での完全な推測だが……間違いなく甲言う事になるだろう。

 

「え……? そ、そうなのか?」

 

「うん」

 

 四季の説明を聞いて頷く秋八。横を見ると秋八の隣に立っていたジト目で箒も一夏の事を見ていたりする。

 

「一夏」

 

「お、おう。な、なんだ箒?」

 

「馬に蹴られて死ね」

 

 簡潔に言い切られる。続いて、

 

「乙女心をさっぱり理解していませんわ」

 

「セシリア、それが一兄が一兄たる由縁だ」

 

 呆れたように呟くセシリアに呆れた様に呟く四季。

 

 

 

 

 さて、時は流れ放課後……何となく帰る前に何か飲もうと自販機の所に行くと、半泣きの鈴とエンカウントした。

 

 無言のままジュースを買ってその場を離れようとする。……とりあえず、一夏の役目だと思って連絡して於こうとは思ったが。

 

「ちょっと、あんた! 女の子が泣いているのに何よその反応は!? 事情くらい聞く気無いの!?」

 

「いや、そう言うのは一兄の仕事かなーって」

 

「うぅ……」

 

 どうやら、半泣きの理由は一夏に有る様子だ。流石に此処で無視するのはどうかとも思うし、優しい詩乃の事だから彼女に知られたら間違いなく怒られる。そんな詩乃の姿を幻視してしまう。

 

 仕方ないとばかりに適当に一本飲み物を買うとそれを鈴に渡しながら、

 

「……とりあえず、事情くらいは聞いてやるから、話してみてくれ」

 

「……ありがとう。えっと、あんたは……」

 

「五峰四季。表むき三人目って事になっている男性操縦者。序でに一兄……織斑一夏の元弟」

 

「そう、あんたが一夏の言ってた」

 

 事情を聞くと一夏はあの後、一度会いに行ってクラスの面前で四季の推測が正しかったのか聞いたらしい。……そんな状況のために、つい一夏の問いを否定してしまったらしい。そして、とうの一夏もそれを素直に受け取ったと……。

 

(えーと、これってオレが原因? いや、一兄が問題なだけだよなぁ?)

 

 久し振りに再会した兄の鈍感振りが原因で何故自分がこんな事を思わなければならないのかとも思う。一度友人達相手に相談しようと固く心に誓う。主にデジモン関連とガンダム関連の友人達に。丁度詩乃も女子だけで遊びに行くと言っていた日が有るし、偶には男同士で集まるのも良いだろうと思う。

 

「ま、まあ頑張れ……ただ1つアドバイスするなら」

 

「するなら?」

 

「直接好きと告白しても『友達として好き』と勘違いする奴相手なんだと言う事を忘れない方が良い」

 

「うん」

 

 何処までこのアドバイスが役に立ったかは疑問だが、そのまま鈴を置いて立去る四季。不安は残るが後は当人同士の問題なのだから、当人達で何とかして欲しいと思う。

 

 次の休日には量産型νで従来の量産機を相手に試合してみせると言う企業・政府向けのデモンストレーションがあるからその打ち合わせもあるのだし、なるべくそっちに集注したい。

 

 

 

 なお、デモンストレーションは無事に終わり、四季は量産型νガンダムで日本政府の用意した純国産IS、量産型第二世代機『打鉄』相手に完全勝利を飾り、世界初の量産型第三世代機のスペックを世界中に知らしめる事になった。

 打鉄のパイロットは製造元である倉持のテストパイロット……当然ながら四季よりも稼働時間が長い人物だったと付け加えておく。

 正式に日本政府を初めとする各国の政府はDEMの量産型νを購入する事を検討するのだが、これが今後の流れに僅かながら影響を及ぼす事になる。

 

 

 

 そんな世界の動きに関係する事無くIS学園の時は流れ、クラス代表戦の時を迎えるのだった。


 
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