No.784291

SAO~黒紫の剣舞~ 第三話

bambambooさん

お久しぶりです。本当にお久しぶりです。
ここまで投稿が遅れてしまい誠に申し訳有りません。

この作品は原作一巻の流れに沿って進めていくので今回はラグー・ラビット回です。
短めですがどうかよろしくお願いします。

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2015-06-18 08:27:28 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1226   閲覧ユーザー数:1174

 

第三話 〜 ラグー・ラビット 〜

 

「セイヤッ!」

 

リザードマンロードの振り下ろす曲刀を、真下から振り上げた刀で受け止める。一瞬の均衡の後、力で勝った俺がリザードマンロードの曲刀を跳ね上げるとその身体が大きく仰け反り無防備な脇腹を晒す。

 

「ヤアッ!」

 

その致命的な隙に、俺と入れ替わるようにして前に出たユウキが黒曜石のように輝く左右の直剣で斬りつける。刀身に薄紅の光を纏わせた一撃は何の問題も無くリザードマンロードの残りHPを削り尽くし、その身体をガラスのような粒子に変えてしまった。

 

最後の一体であったそいつを倒すと、俺とユウキは小さく息を吐きながらそれぞれの得物を鞘に収める。そして、示し合わせたようにハイタッチをした。

 

「さて、今日の探索はこんなもんかな」

 

「そうだね。もう全体の八割は終わってるんだし、無理する必要も無いよね」

 

元々この程度で終わらせるつもりだった俺の提案に、ユウキも頷いた。

 

 

踵を返して来た道を戻る道中では、特に敵に襲われることなくダンジョンを脱出することができた。ダンジョンから出ると、そこには鬱蒼と生い茂る密林が広がっている。俺たちは、その中に伸びる一本の小径を歩いていた。

 

七十四層の主街区へは、この道を三十分くらい歩けば辿り着くことが出来る。転移結晶を使えば一瞬で帰宅できるのだが、転移結晶は異常に高価であるため無駄遣いは出来ない。それに、なにより風情が無いというものである。

 

夕暮れの薄暗い森の中は普段と比べてより一層不気味だった。まだフィールドの攻略をしている頃に何度も体験した俺にとってはもう慣れた光景であったが、基本的にアスナと共に行動をしているユウキは少し緊張しているようであった。自分で言うのも何だが慣れ親しんだ相手と行動しているとは言え、普段とは違う状況に戸惑っているのだろう。

 

戦闘では天才的なセンスと反応を見せる彼女であるが、それでも中身は年齢が二桁になったかどうかという少女である。

 

そんな事を考えていた時、俺の索敵スキルがナニカの存在を感知した。隣のユウキもそれに気付いたらしく周囲を警戒している。

 

俺たちは一旦立ち止まり、それぞれの武器に手を添える。見逃しの無いように辺りを見渡すが、思い思いに生い茂る植物のせいで上手く視線が通らない。

 

「キリトっ。あれ見て」

 

数秒間視線を走らせていると、反対側を見ていたユウキに肩を少し興奮気味に叩かれる。俺が振り返るとユウキは唇の前に人差し指を一本の立てて「しーっ」と言い、その指先を太めの枝の上に滑らせた。

 

ユウキが指差す先には、mobの存在を知らせる黄色いカーソルがあった。そして、それが指し示すmobの姿を見て俺は驚愕で目を見開いた。

 

全身を覆うクリーム色の体毛。ややずんぐりした身体はウサギの姿をしており、耳は体長程に長い。

 

まさかと思い何度も瞬きするが、その姿は消える事なくそこにあり続ける。

 

激レアS級mob《ラグー・ラビット》がそこにいたのだ。

 

口には出さず興奮する俺。しかし、直ぐに俺はユウキと目を合わせて思案顔になった。

 

初めて会うためその実態ら分からないが、噂によればラグー・ラビットら臆病かつ逃げ足が恐ろしく速いらしい。どういう訳かレア小型mobとのエンカウント率の高い竜使いの少女によれば、視線を合わせただけで瞬く間に逃げてしまったそうだ。

 

そのような噂が事欠かないのだから、敏捷振りの俺やユウキでもラグー・ラビットが逃げ出す前に一撃を加えられるか心配なのだ。それ以前に、攻撃圏内に入れるかどうかすら怪しい。だからこそのSレアなのだが。

 

しばし考えたあと、俺とユウキはほとんど同時に投擲武器を取り出した。俺の手元には、現実では小柄小刀笄(こづかこがたなこうがい)に該当しそうな小さな小刀、ユウキの手元には、細く鋭い鉄杭がそれぞれ握られていた。

 

「恨みっこなしだぜ?」

 

「もちろん」

 

挑発的な俺の視線に、不敵な笑みで返すユウキ。そして、俺とユウキは投擲スキル基本技《シングルシュート》を発動させた。

 

俺たちの手元を離れた二本の投擲武器が黄色の線を引きながら空を切り裂く。あまり投擲スキルを使っていない俺とユウキだったが、これまで培ってきた敏捷値の補正によりラグー・ラビットに向かって一直線に突き進んでいく。

 

二つの風切り音を耳にしたラグー・ラビットは慌てて逃げようとするが既に遅く、小刀と鉄杭が深々とクリーム色の身体に突き刺さった。

 

逃げ足と引き換えに、ラグー・ラビットのHPは高く設定されていないようだった。二発のシングルシュートを受けたラグー・ラビットのHPは減速することなくゼロになり、本体は粒子となって消えた。

 

俺とユウキはパーティであるため、mobを倒した時のコルや経験値は平等に振り分けられる。しかし、ある一定以上のレアドロップアイテムはパーティ内で一つしかドロップしない。今回俺たちの望んでいるドロップアイテムは最高クラスのレア度であるため、当然どちらが獲得するかはランダムである。

 

目の前に表示されたウィンドウを、経験値とコルの欄をすっ飛ばしてドロップアイテムの欄を凝視する。

 

「はぁ…」

 

「やったあ!」

 

肩を落として溜息を吐く俺と、満面の笑みを浮かべてVサインをこちらに向けるユウキ。今回、カーディナルに愛されたのはユウキであった。

 

 
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