No.78373

真・恋姫無双~魏・外史伝13

こんばんわ、アンドレカンドレです。
来週、また試験があるので今週中に出来る限り、早く投稿しています。
今回は第七章・前編。前回は呉の人達が主に登場したので、今度は華琳さん達が中心に登場します。結局、一刀君とすれ違いとなり、また会えなかった華琳さんの心中は如何なものなのでしょうか?

2009-06-11 02:08:40 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:6785   閲覧ユーザー数:5656

第七章~あなたを求めて・前編~

 

 

 

  「・・・以上が調査報告です。」

  「・・・・・・。」

  呉の建業の王宮内、そこでは調査から帰還した蓮華が雪蓮に調査報告を述べていた。

  「ありがとう、蓮華。あなたも大変だったわね。」

  「そんな・・・、私が不甲斐無いだけです。」

  「もう、あなたは真面目すぎよ・・・。」

  「そ、そんな事は・・・!」

  「・・・でも、その正体不明の戦闘集団も気になるけど、あなたを助けたっていう男も

  気になるわね・・・。」

  雪蓮は、蓮華を助けたという男に興味を抱いていた。

  「結局、正体を明かさぬまま私達のもとを去って行きました故、彼が何者なのかは・・・。」

  「う~ん・・・、その男に大きな借りが出来てしまったって事ね。正体が分かんないんじゃ

  探しようがないじゃない・・・!」

  雪蓮は愚痴るように言った。

  「は、はぁ・・・。」

  そんな子供ように頬を膨らませる姉の姿に、妹は少し呆れ気味になる。

  「そ~ですね~・・・。調べなくてはいけない事が増えてしまったのは、少し痛いですよね~。」

  穏が何気ない発言に、苦虫を噛んだ表情になる蓮華。

  「・・・済まない。」

  「あ・・・!いえ、別に蓮華様の事を言ったんじゃなくてですね~・・・。」

  穏は慌てて、取り繕うとする。

  「いや、気にするな、穏。お前の言うとおり調べ無くてはいけない事が増えてしまった事は

  変えようのない事実。それを言われたからといって私は気には止めない。」

  「は、はいぃ・・・。」

  逆に、慰められてしまいた立場が無い穏。

  「あと、姉様・・・。」

  「何?蓮華。」

  「あの・・・その・・・。」

  「?」

  「い、いえ・・・何でもありません。では、私はこれにて失礼ます。」

  「あ、ちょっと蓮華・・・!」

  自分の言葉も聞かず、やや早歩き気味にその場を去る蓮華。

  「何を言おうとしたのかしら?ねえ、冥琳。」

  「私に聞かないでくれ。・・・それはともかく、蓮華の調査で分かった事がある。」

  「え?そうなの・・・。」

  何が分かったのか皆目見当がつかない雪蓮。

  「ええ。」

  「何々?教えて、冥琳。」

  王の座から身を乗り出しながら尋ねる。

  「・・・この大陸に、再び動乱が起こる、と言うだ。」

  「・・・!」

  冥琳の言葉に、表情を一変させる。

  「天の御遣いである北郷一刀が再びこの地に降り立ってから、建業で暴動が起き・・・、

  次に五胡が魏に侵攻・・・、そして今度は謎の戦闘集団に、謎の男剣士の登場。これらの出来事は

  果たして偶然によるものなのだろうか?」

  「・・・・・・。」

  「かつて北郷一刀がこの地に降り立った時、この大陸は乱世へと向かっていった。

  そして、乱世が終息した時、彼はこの地を去った・・・。」

  つまり、北郷一刀の登場は、動乱が起きる前触れである、と言う事である。

  「今回もそうだっていうの?」

  その問いに、冥琳は首を縦に振る事で返答する。

  「最も、まだ憶測の域ではあるが・・・。」

  「とはいえ・・・、この地で何かが起きようとしているのは間違いないでしょうね。」

  「では、どうなさいますか~?」

  緊張感のない伸びやかな声で雪蓮に尋ねる穏。

  「来るべき戦いに備えて、準備をしておきましょうか♪」

  そんな穏に合わせる様に、雪蓮は軽い声で返す。

  一方、王宮から少し離れた長い一本の廊下、そこに蓮華はいた。

 一人歩きながら、何かを考えごとをしていた。

  (あの男・・・、結局正体は分からなかった。でも・・・)

  蓮華はあの時自分を助けた謎の男の姿を思い出していた。

  (奴が手にしていた剣、あれは・・・。)

  そして、彼がその手に握っていたそれを頭に思い描く。

  (いや、そんなはずはない!有りえないわ!・・・だけど、間違いないわ。)

  間違いなければ、あれは・・・あの剣は・・・。

  「南海覇王・・・。」

 

  所変わり、魏領北方、冀州の常山・・・。

 そこでは、霞の部隊が五胡の侵攻を食い止めていた・・・。

  「張遼将軍、右翼部隊の損害は甚大!援軍を出す許可を!」

  「何やてぇ!?くそ、一体どないなっとんねん!!」

  現状は苦しいものであった。今まで五胡が魏に攻めてくる事は

 滅多になかった事もあるが、それ以上に連中の動きが従来のそれと

 全くの別物であった事に原因があった。今攻めてきている連中は

 自分達に引けを取らぬ連携をもって攻めてくる。

  「おそらく、指揮系統がちゃんと機能してるのでしょう。」

  「連中を操っている奴がおるってことかいな?」

  「それ以外には考えられないかと・・・。」

  「あぁもう!華琳達はまだ戻って来んへんのか!?」

  「張遼将軍!」

  「今度は何や!?」

  「南方から、砂塵を確認!」

  「南方・・・?ってことは、華琳達か?!」

  「我門旗を確認したところ、夏候!」

  「春蘭達か・・・。」

  「霞、無事か!!」

  「遅いで春蘭!!来るならもっと早う来いや!!!」

  「何を言うか!私達だって、全速力で呉から戻ってきたんだぞ!!」

  「姉者・・・。」

  「呉やて?お前ら呉におったんか?」

  「そうだ、ほん・・・」

  「建業で、真桜の作った開拓機がちゃんと機能してるのか、それを皆で見に行っていたのだ。」

  春蘭の言葉を強引に遮り、代わりに話し出す秋蘭。

  「しゅ、秋蘭?」

  「何や、せやったんか?どうりで遅いはずやな・・・。済まんかったな、春蘭。」

  「お、おう・・・気にするな。」

  呆然とする春蘭を傍らに、凛と風が来る。

  「霞殿、申し訳ありませんが、現状を説明していただけませんか?」

  「稟、風!お前らも戻ってきてたんやな。よっしゃ、説明するさかい、皆天幕に来い!」

  そう言って、霞は天幕へと向かう。

  「姉者、霞に北郷の事を言おうとしたな?」

  「へ?あ、ああ・・・。でも、それはお前に邪魔されて言えなかったがな。」

  「・・・・・・。」

  「な、何だ秋蘭・・・そんな顔して?」

  「春蘭殿、北郷殿の事は今しばらく他の者達には口外すべきでないかと。」

  「な?どうしてだ、稟?」

  「呉に北郷がいて、奴を引き取りに行ったが、いなかったから連れて来れなかった。

  などと言うつもりか?」

  「う・・・。」

  妹に言われて、ようやく春蘭も理解する事が出来た。

  「そんな事を言われたら、霞ちゃん達の戦どころではないでしょうね~・・・。」

  「うぐ・・・。」

  風はさりげなく春蘭に止めを刺す。

  「その事は、華琳様からも言われておっただろう?」

  「そ、そうだった・・・。」

  うっかりな姉に、ため息をつく妹であった。

  「おい、何しとんねん!?はよう来いっちゅうねん!」

  天幕から、霞が顔を出して言う。

  「ああ、すまないな。すぐ行く。」

  その言葉に、秋蘭が答えた。

  「良いな、姉者?」

  「う、うむ・・・。」

  そして四人は天幕へと入っていく。

  

  一方、洛陽の街にて・・・。

  「桂花ぁ!こっちの隊の出撃の準備が出来たで!」

  「桂花ちゃ~ん!沙和の方もなの~。」

  出撃準備が完了したことを桂花に告げる真桜と沙和。

  「準備が出来た部隊は、そのまま出撃させなさい!

  そしたら次の隊の編成をして頂戴!」

  「了解~!」

  「了解なの~!」

  現在、戦場となる常山へ兵を出撃させるべく、地方から集めた兵達から隊を編成するべく、

 凪、真桜、沙和は桂花の指揮下で走り回っていた。

  「桂花様、隊の編成が完了しました!」

  真桜と沙和とすれ違いざまに、部屋に入って来る凪。

  「さっき、真桜と沙和の隊も編成が完了したから、一緒に出撃させなさい!」

  「了解しました!」

  そう言って、部屋を出ていく。

 その姿を見送ると、桂花は記録帳に現在の編成状況をまとめる。

 その記録を見ながら、一人つぶやく。

  「まずいわね。現時点での全兵力を以てしても、およそ二十四万。敵の五十万にまだ及ばない。

  まだ到着していない地方の部隊を足しても・・・、およそ二十七万。」

  これほどまで大部隊を編成するのは、建業攻略時以来、およそ二年振りとなる。

 五胡の侵攻は蜀、涼州ほどでは無いにせよ、過去に幾度かあり、その度に撃退してきたが、

 五十万という大軍勢で、魏領北方から攻めて来たのは今回が初めてであった。だが、桂花

 はこの侵攻に、一つ疑問を抱いていた。

  「それにしても・・・、北方から攻め入って来たのは単なる偶然なのかしら?」

  無論、北方にも外敵に備え、防衛拠点となる砦は存在する。しかし、最近その砦の老朽化し、

 その修理のため、人の出入りが激しかった事もあり、他の防衛拠点に比べ、防衛機能が低下していた。

 とはいえ、五胡にその情報が流出しないように工作などは完璧にしていたはずであった。

  「偶然では無いとしたら・・・誰かが、五胡に情報を流したとしか。でももしそうなら一体

  誰が、何のために・・・?」

  それ以外にも様々な仮説を立てていくも、結論には至らない。情報が少なすぎるからである。

  「全く、ようやく戦いが終わったと思ったら、今度は五胡の脅威・・・。」

  そんな事を考えていると、ふとあの男の事を思い出す。

 自分にあれだけ世話になって置きながら二年前、挨拶もなしで天の国に帰って行った無礼者・・・。

 あいつのせいで、華琳様がどれだけ悲しまれた事か・・・。そして今、奴はこの大陸のどこかで・・・。

  「・・・って、何で北郷の事を考えているのよ、私は!!」

  そう言いながら、桂花は何度も机を叩く。

 そんな時、扉の方から視線を感じる。桂花は扉の方を見る。

  「・・・何をしているの、あなた達?」

  そこにいたのは、凪、真桜、沙和の三人組であった。

  「申し訳ありません、覗くつもりではなかったのですが・・・。」

  凪はバツが悪そうな顔をして言う。

  「せやで~凪の言う通りや桂花。出撃の準備が出来たから三人で報告しに

  来てみたら・・・。」

  「扉の向こうにいた沙和達にも聞こえたの~?」

  にやにやした顔をしながら事情を説明する、二人。

  「え・・・?」

  ぽかんとする桂花。

  「そっかそっか~・・・。表向きでは何でも無いように装っていても・・・

  分かる、うちにはよう分かるで~・・・。」

  「わ、分かるって何を・・・。」

  「何だかんだ言っても~、桂花ちゃんもいなくて寂しいんだよねぇ~・・・。」

  「ちょっと、誰が北郷の事を・・・!」

  その瞬間、二人から不敵な笑みが零れる。

  「な、何よその顔は!」

  「あれ~、おっかしぃなぁ~。うちは隊長の事だなんて言うた覚えないんやけどな~・・・♪」

  「沙和もなの~・・・♪」

  「んな!?」

  「・・・そうでしたか、桂花様も隊長の事を。」

  凪は一人うんうんとうなづく。

  「ちょっと凪!?あなた一人で何納得しているのよ?!」

  「にゃにや・・・♪」

  「にやにやなの~~♪」

  「ああーーー、もう!そんな事はどうでもいいから早く仕事をしなさーーーい!!!」

  桂花の叫びが部屋を、そして廊下の方にまで響き渡った。

  

  その頃、洛陽の城の城壁にて・・・。

  「あのう・・・、華琳さま?」

  季衣が恐る恐る華琳に尋ねる。

  「何かしら、季衣?」

  華琳は街の方を見たまま、季衣の呼びかけに答えた。

  「凪ちゃん達に、兄ちゃんの事・・・言わなくていいんですか?」

  「季衣・・・。」

  彼女の言葉に、流琉が親友の真名をつぶやく。

  「皆、兄ちゃんに会いたがっているの、華琳様知ってますよね?」

  「・・・ええ。」

  季衣の問いに、華琳は二事で返した。

  「なら、なんで何も言わないのですか?」

  「・・・・・・。」

  季衣の問いに、華琳は答えなかった。

  「華琳様!」

  「季衣。」

  何も答えない華琳に、季衣はもう一度呼びかける。

 そして流琉はもう一度、今度は少し強めに親友の真名を言う。

  「なら、季衣?あなたならどう説明するのかしら?」

  「え・・・、ええ・・・と。兄ちゃんが天の国から帰って来たって・・・。」

  「それで、一刀は今何処にいるのかしら?」

  「そ、それは・・・。」

  「一刀が帰ってきた。でも何処に居るのかは分からない。そんな事を言われて

  誰かが喜ぶかしら?きっと、霞と凪辺りは部下を連れて、探しに行くって言い出す

  でしょうし、沙和と真桜も黙っていないでしょう。」

  「う~・・・。」

  「まぁ・・・何も無ければ、そうさせても構わないのだけれど・・・。

  私の思う通りなら、この大陸に再び動乱が近い内に起こるわ。そんな時に

  内輪もめなんてしていたら向こうに隙を見せる事となる。」

  「でも・・・。」

  「季衣、あなたの言いたい事は私も分かっているわ。でも、今は一刀の事よりも

  この国を、民達を守る事の方が大事なはずよ。」

  「でも、兄ちゃん一人だって大事ですよ!」

  「季衣、止めなって・・・。」

  華琳の言葉に熱くなり始める季衣をなだめようとする流琉。

  「華琳様!華琳様だって、兄ちゃん会いたくないんですか!?

  華琳様だって・・・!なのに、なのにどうしてそんな事が言えるんですか!?」

  「季衣、だから止めてって。」

  どんどん熱くなっていく季衣を止めようとするが、肝心の季衣は流琉の言葉に

 耳を貸そうとはしなかった。

  「兄ちゃんなんかよりも、国や皆の方が大事ですか!?

  兄ちゃんなんかよりも、戦をする方が大事なんですか!?」

  「季衣!!!」

  バチンッ!!!

  「っ!?」

  話を止めない季衣に、流琉は言葉でなく平手打ちで彼女の話を止めた。

  「な、何すんだよ、流琉・・・っ?!」

  言葉を失くした。いきなり自分を引っ叩いた親友の目からとめどなく、

 涙が頬を伝って流れ落ちていたのだから。

  「季衣の馬鹿!華琳様だって・・・華琳様だって、兄様に会いたいに決まっている

  じゃない・・・!誰よりも・・・早く会いたいって!何で、それが分からないのよ!」

  「る、流琉・・・。」

  そう言いながら、季衣の胸を両手で季衣を叩く。だが、そのその拳に力は

 入っていなかった。そんな親友の姿を見て、季衣は何も言えなくなっていた。

 そんな二人をよそに、華琳は街の先、限りなく続く大地を見つめていた。

 今、彼女の心中を知るは、他ならぬ彼女のみである・・・。


 
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