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新・戦極†夢想 三国√・鬼善者を支える者達 第042話

投稿ですよ。
皆さん、これからより熱くなる季節です。
今のうちに水分を取る習慣をつけて夏に備えて下さい。
そういえば恋姫発売しましたね。DMMでのDL販売ですが、私はのんびりとパッケージ版を待ちますww
これからいよいよ雪蓮と白龍がぶつかります。

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2015-04-26 21:44:57 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1179   閲覧ユーザー数:1134

新・戦極†夢想 三国√・鬼善者を支える者達 第042話「襄陽の戦い・衝突」

呉軍と荊州軍が襄陽にて着陣し数日が経過した頃、相軍は相手の出方を見計らっていたように同時に出陣した。

兵の数を考えれば、荊州より広大な土地を持つ呉軍が有利であるが、将の質・数は荊州軍が上回っており、また遠征とはいえいつまでも呉軍をこの地域にのさばらしておけば、劉表自身の沽券にも関わるのだ。

それに、今の呉を脅かせる危険な脅威は無いのだ。

曹操は河北の袁紹の土地を飲み込んだ際、自らの国を魏と改めた。

隣国の魏は現在長安の影村目指して侵攻している。

実はこの裏にはとある取引が交わされており、呉の荊州侵攻の際には魏は一切の呉への侵攻を禁ずること。

対する魏は、魏の長安侵攻の際、呉は一切の手を出さないことという条約を結ばれている。

つまり、今は互いに牽制しあうことも無く、安心して一つの国に集中出来るのだ。

よって孫策は荊州侵攻に全ての力を注ぎ切ることが出来る。

賽(采)は投げられ、互いの軍は衝突し、序盤は程普の作戦通りに事が進むのである。

 

「でやぁぁぁぁぁっ!!『燕人 張飛』と呼ぶは、この鈴々のことなのだ!!弱っちい奴らの相手はいらないのだ!!強い奴出てこい!!」

張飛は自らの倍はある蛇矛を振るい、呉軍を蹴散らしていく。

「待つのです。張飛。お前の相手は私達です!!」

その張飛の前にたったのは、背中の刀を構えた周泰である。

「にゃ?お前が将なのか?そんな風には見えないのだ」

「……まだまだ見習いですけど。ここは止めさせて頂きます!!」

「うにゃにゃ~~。見習い如きに鈴々は負けないのだ!!」

張飛は獲物を振り回し周泰に襲い掛かり、周泰は刀で張飛の攻撃を受け止めるが、その力強さに徐々に押され、やがて腕を投げ出されてガードが甘くなったところにとどめを刺そうとするが、次の瞬間張飛の目の前に何か鋭利な物が飛んでくる。

咄嗟に彼女は攻撃の動作を中止し、飛んできた鋭利物を獲物で弾く。

弾いた鋭利物が地面に刺さり、それを確認すると、それは草がよく投擲武器で使うクナイであり、前ばかりを警戒していると、首筋から嫌な感じが流れ、彼女は咄嗟に武器を片手で持ち、もう一方の腕を背中に回して、掴んだモノを精一杯の力で投げる。

掴んだ瞬間感じた物は、軽い人間の重量。

飛ばされた影は飛ばされた勢いなの関係なしに、クルリと回転してそのまま着地。

その前にいたのは、口元を布で覆った呂蒙であり、いつもの眼鏡は外されている。

「……お前はいったい誰なのだ!!」

「………呉軍見習い軍師、呂蒙」

「見習い将兵に見習い軍師。呉はよっぽど人不足なのか?」

張飛は首をかしげて二人に質問した。

「そう言われれば痛いのですが。ですが見習いと言って甘く見ないことですよ。これでも私は白兵戦無敗を見出されて将にさせてもらいました。隣の亞莎は軍師となる前、部隊は言えませんがそこの小隊長でした」

かつて呂蒙は甘寧の元部下であり、孫家隠密部隊の小隊長まで上り詰めた無手・暗具の実力者であるが、知の才能を陸遜に見いだされ軍師見習いとして引き抜かれたのだ。

「貴女は一人ですが、私には亞莎がいます。私達二人を簡単に越えられると思わないことです」

「………」

当時の隠密部隊時代を思い出してか、比較的呂蒙は無口になっているが、その視線は静かに張飛の隙を伺っていた。

「面白いのだ!!10人でも100人でも鈴々の蛇矛で吹っ飛ばしてやるのだ!!」

張飛は宣言と共に二人に勝負をしかけると……

「孫家将見習い、周幼平。いきます!!」

「……呂、子明……いく――」

 

「はあぁぁぁぁぁっ!!」

「――しっ!!」

鳴り響く剣戟と大きな声の先では、孫策と関羽の戦いが始まっており、互いに一歩も譲らぬ攻防を繰り広げている。

「……くうぅぅっ。流石に天下に鳴り響く豪傑の一撃。重みが違うわね」

孫策は自らの獲物である南海覇王を右手から左手に持ち替えて、右手に伝わった剣戟の痺れを、手を振って紛らわせる。

「江東の小覇王にそう言って貰えるとは、畏れ入ります」

「でも。この剣戟、味わうのは初めてじゃないのよね」

そう。彼女は既に関椿となったかつての関羽雲長である愛紗と何度も剣を交じり合わせた仲である。

それ故、関羽雲長の攻撃に転じる細かな癖や動作などは、よく知っているつもりなのだ。

「それは孫堅殿が無くなり、常に戦いの中に身を投じてきた孫策殿ですから、私より強いものなど何人も見てきたでしょう。しかしどうにも解せませぬ」

関羽は話をしながらでもジリジリと孫策と間合いを詰めている。

「何故大将である貴女がこんな前線に来ているのですか?貴女の首が飛べばその瞬間戦いは終わり、我らの勝ちが決定するというのに」

「そりゃあ、私が戦闘狂だがらじゃないの」

孫策の問いの返しに、関羽は納得しながらも、何処か納得していなかった。

彼女の激しい剣戟と力強さ、野生の様な勘の鋭さは、戦いの際、理論的に相手を分析する自分にはない才能だと思った。

だがそれだけではないと思う自分がいることは確実であり、彼女の戦い方は冷静に分析しても本当に判らなかったのだ。

するとまた二人は同時に飛び出し、偃月刀と剣の押し合い合いが起こる。

「……!!流石『軍神 関羽』の競り合いは、他の兵士とは違う重さを感じるわね」

その台詞に関羽の心は何処かイラッとした感じを残し、そのまま背負うように孫策を投げ飛ばすと、彼女は何事も無かったかのように一回転して着地をした。

「”軍神”ではない……我は『鬼戦姫 関雲長』!!冥土の土産にこの名を持っていくがいい!!」

その名を聞いた瞬間、雪はハッとする。

その通り名はかつて雪の母である恋歌の若かりし頃の通り名。

日ノ本時代、母は戦場では『血鳥姫(ちしょうき)』などと飛ばれており、関羽の堅物な性格からして、自身でそのような通り名を思いつくとも考えにくい。

となると答えは一つであり、父か母がその名を関羽に与えたとしか思えない。

そんな父と母が認めた関羽を相手にすると思うと、彼女の体は高揚し始め、思わず舌なめずりしてしまった。

この高揚効果は孫堅の血の影響だろう。

「面白いわ。そんな貴女と剣を交じり合う機会をくれた神に感謝ね。名乗りはいらない。ただ武を競うだけね。行くわよ!!」

それを聞くと、関羽はただ自分に突っ込んできた孫策の攻撃を受け止めるであった。

 

赤飛(チーフェイ)!!そっちに行きよったわ!!」

黄蓋の弓を振り切り陣中を突破しようとした趙雲を、凌統は食い止めた。

「……ほう。珍しい武器を使うな」

趙雲を武器ごと力の限り飛ばし、そんな彼の持っていた武器はククリ刀である。

「………いい武器を使っている。この一撃を喰らえば、大抵の武器は刃毀れするか、質の悪いモノは完全に破壊されてしまいかねないのだが……」

凌統の両手に持たれたククリ刀。交差にハサミを切る様に使われれば、刃が根こそぎ切られて、結果刃毀れが起こる。

そんな期待とは裏腹に、趙雲の使う直刀槍である『龍牙』には、一切の傷も無ければ刃毀れも無かった。

「当然。武器は武人の命。武器を粗末に扱うことは、自分の命を粗末に扱うことだ」

「……なるほど。さすがにあの影村が一目置くだけの事はあるのぅ」

黄蓋の一言に、趙雲の耳が動いた。

「……重昌殿が、私を?」

「儂も聞いた話だから何とも言えんのだがのぅ、ここにいる赤飛と泊地……程普曰く、影村殿は劉備軍で二人恐れている人材がいるらしい。それが関羽とお主じゃよ」

「ほほう。重昌殿にそこまで言われるとは、私もなかなか捨てたものではないですな。しかし私を褒め殺して油断させようと思ってもそうはいきませぬぞ」

その一言を真っ先に凌統が否定する。

「それは無いだろう。戦ってみて判ったが、お前は人を手玉にとって相手に油断を誘う真似はしても、決して自身は油断しない性格と見た」

「……たった数檄合わせただけでそこまで判るか?」

「俺も伊達に重昌の親父に学んだ訳じゃない」

「なるほど。お主も重昌殿に学んだクチか。呉の宿老と共に来られれば、これは油断など誘わずに己の力のみで言った方が良さそうだ」

すると彼女は槍を素振りをするかのように大きく振り回し、やがて構える。

「『常山の昇り竜 趙子龍』、いざ参る!!」

彼女はそう高らかに宣言すると、一気に二人に詰め寄った。

 

「お姉さま!!敵の陣にある大量の馬防柵のせいで前に進めないよぉ」

荊州の騎馬隊を率いる馬超と馬岱は、その騎馬軍団にて敵陣一点突破を試みようとしたが、呉軍の用意周到な策にて手詰まりとなり、その一つである馬防柵にて立ち往生を喰らって、馬岱は馬超に泣きつく。

「ちくしょう。こちらの戦術など手に取っている様だぜ。朱里が言っていたようにあちらさんはこちらの動きを封じると言っていたが、ここまでなんて聞いてないぜ」

「きっと、向こうには朱里や雛里以上の策士がいるんだよぉ」

「マジか!?ちぃ、ムカムカするぜぇ!!」

その噂の諸葛亮と鳳統はというと……

「あわわ。朱里ちゃん朱里ちゃん!!翠さん達の率いている騎馬隊の初軍が全滅したって」

「は、はわわ。ホント!?雛里ちゃん」

鳳統と諸葛亮は互いに大慌てで自らの策を振り返っていた。

「朱里ちゃん。あっちには銭姫お姉ちゃんがいるんだから、もしかしたら……」

「でも雛里ちゃん。こう言っては何だけど、水鏡塾での戦術の授業の成績は私達の方が上だったじゃない。それに将棋だって一度も負けたことないし。先生も戦術に関しては負けることないって太鼓判を押してたよ!!」

「じゃあ、なんで私たちの策が通じないの?」

「……はわわわわ……」

 

一方その頃呉軍では……

「へっくし」

「なんだ銭姫。風邪か?」

「いいえぇ。誰かがウチの事を噂ぁしとる気がしましてなぁ」

諸葛瑾はいつもの間の伸びた声で周瑜に返事をし、目の前で起きている西涼騎馬隊の徐々に自軍に押されていく姿を見物していた。

「ほな冥琳はん。そろそろ公孫瓚はんが出そうやさかい、ウチは少し体を動かして準備してきます」

そういうと彼女はそそくさと天幕へと下がっていった。

「それにしてもすごいですねぇ。泊地さんの考えた策はよく当たります。銭姫さんから諸葛亮さんと鳳統さんのことを聞いた瞬間、まるでどんな戦法で来るか全て見通してたくらいにでしたね。冥琳様もあれぐらいのことは出来るのですか?」

「……いや、恐らくあの方が一番この戦に望む姿勢が一番強いのだろう。だから失敗がないのではないか?」

「なるほどぉ。冥琳様も顔負けですねぇ」

「いや、ホントに。あの方には敵わないよ」

 

【皆は俺の作戦通り動いてくれたな。なれば、俺も行動を実行に移す時だな】

混戦の戦いを見物した後、程普は馬を走らせ一気にその乱戦を突っ切る。

 

「伝令!!こちらの陣に向けて、敵が単騎で突っ込んで来ます!!」

兵は慌てて劉表に伝える。

「その兵は?」

「はっ!!とてつもない強さを誇り、刃向う者は血祭りに上げん勢いで、我が方の兵の指揮は下がる一方です!!」

劉表は黄祖に視線を飛ばすと、彼も何処か判ったかのように頷き返す。

「お、叔父さん。直ぐに愛紗ちゃん達を呼び戻さなきゃ!!」

その報を聞くと、劉備は慌てて劉表に訴えるが、逆に彼はニヒルに笑って見せる。

「いや、俺の予想が正しければ、そいつは俺の獲物だな。蜘蛛(ピンイン)付いて来い。桃香、兵の指揮を頼む」

「お、叔父さん!!何を言ってるの!!もし伯父さんの身に何かあったら――」

「大丈夫だ。蜘蛛もいる。俺が下手を打つと思うか?」

「で、でも」

「心配するな。俺はこんな所で死ぬ人間じゃない。……重昌の作る世の中を見るまではな――」

「お、叔父さん、今なんて?」

「それじゃあ行くぞ。相棒。あぁそれと、白蓮ちゃん。一つ頼みがある」

まさかここで自分が呼び出されるかと思っていなかったのか、公孫瓚は慌てる様に背筋を伸ばす。

「ハハハ。そんな身構える必要はないさ。とりあえず、ウチの姪が馬鹿なことをしでかしたら、遠慮なく止めてくれ」

「と、止めるですか?」

「ウチの姪はよく流される癖に、我が強すぎるからな。何かあったら止めてくれ。殴ってもいいぞ」

「な、殴るなんて!!」

劉表は高らかに笑って、二人を横切って行こうとした時、彼は二人の肩を叩いた際、ひっそりと公孫瓚に対しては「頼む」と呟き、そのまま黄祖を連れて戦場へと向かった。

 

二人は出陣に先立って、馬小屋にて自らの馬を選んでいる最中、奥より黄祖は劉表と自分の馬を引き連れやって来ると、小屋の端にて劉表が蹲っている姿が見えた。

慌てて黄祖が駆けよると、その下には大量の吐血跡があり、彼の口元には彼から出た事を証明する血痕が残っている。

黄祖は何も語らず、ただ背中を摩ると彼に「行けるか?相棒」と聞く。

その問いに劉表は笑顔でハニカミ、口元を拭うとそのまま乗馬した。

「劉表様がご出陣されるぞ!!開聞!!開聞!!」

砦にて出陣の銅鑼が鳴らされ、兵の指揮は最高潮に達する。

その歓声の中、劉表と黄祖は兵の道を抜けて一気に駆ける。

向かう先は荊州軍を蹴散らし、劉表たちに近づく程普。

やがて三人の距離が互いに声が聞こえるまで近づくと、双方馬を止める。

互いに馬を下りると……

「白龍、蜘蛛(ピンイン)、久しいな」

「泊地………お前老けたな」

「あん?うるせぇぞ。そういうお前も娘を溺愛しすぎてすっかり腑抜けたんじゃねぇか」

白龍と泊地は近づくと、まるで飲み会帰りに出会った友人の様な会話をし、肩を組み合って笑い飛ばしあう。

その光景に周りの荊州の兵たちは呆気に捕らわれ、彼らの行動が全く理解できていなかった。

「蜘蛛、相も変わらずお前も堅気だ何とかと言って、白龍にべったりで結婚もしない。実はそっちの気があるのか?」

「……なんとでも言うがいい。何度も言うが、俺は結婚出来ないのではなくて、”結婚をしないだけ”だ」

「言い訳言い訳。結婚出来ない独身貴族は皆そう言うんだ」

荊州兵の間では『鬼教官』と恐れられており、荊州一の堅物で知られている蜘蛛も、泊地の冗談に付き合っているのだ。

そんな戦場には似合わない空気は直ぐに覚めて。

程普は自らの剣を鞘にしまって、強引に荊州の兵士から剣を奪い取り、劉表と黄祖も兵から剣を借り取る。

「さて久々だ。あの日のチャンバラの続きをやろう」

程普は子供みたいにそんなセリフを言うが、その目は既に先程の戦場を駆け抜け、荊州軍を蹴散らしていた将兵の目に戻っている。

「いいだろう。お前たち、下がっていろ!!どんなことがあろうとも手は出すなよ!!」

「俺たちの輪の中に入れば、命の保証は無いからな」

劉表と黄祖の言葉通りに兵たちは一斉に下がり、また彼らの言葉の持つ意味を考えれば、これはただのチャンバラではないことは、皆理解していた。

 


 
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