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【F-ZERO】The legend must revive!! Vol.1【ファルコン伝説】

何を血迷ったのか、今から約10年前に発行した同人誌「ファルコンハウスへようこそ ~MEMORIAL~」(2005.8.12発行)の中から、小説「The legend must revive!!」をお送りします。当時は台本形式で小説書いてたんですね……自分で見返して自分で驚きました(笑)全文書き直したい衝動はありましたが、明らかな誤植と文章の端々だけ見直して、後は見なかった事にします;;;当時のテンションの高さをお楽しみ下さいw

推奨閲覧時期 アニメのファル伝 全51話 視聴後 (じゃないと意味が通じません)

Vol.1→いまここ

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2015-04-20 20:19:12 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1151   閲覧ユーザー数:1150

★ファルコンハウスへようこそ ~MEMORIAL~ より F-ZEROファルコン伝説後日談★

 

「The legend must revive!!」Vol.1

 

【時は2202年……

 大爆発を起こし、荒廃した暗黒ガス雲の大地の上に、数人の人間が立っている。

 その中の一人が、くすんだメットを手に疲れ切った表情で立ち尽くしていた。

 彼の名はリュウ・スザク…今回の主人公の一人だ。そのメットを見つめたまま、彼は微動だにしない。

 彼は打ちひしがれていたのだ……目の前で起こった、あの出来事に。】

 

 本当…あんたは勝手だったよ……

 

 あの時はテンパっていて、ただ目の前の状況を処理するだけで精一杯だった……“その言葉”の意味を深く考える時間も、余裕も、その時は勿論無かった。

 

 …しかし、時が経ち、冷静になればなる程、俺の頭はその単語でいっぱいになった。

 

ファルコン『リュウ・スザク…君が今日からキャプテンファルコンだ!!』

 

 あんな極限状態の中で…その一言だけを告げられて、それで全てを…俺に任せてしまうなんて。

 一方的にそんな事を言って、俺の言い分なんか、聞こうともしないで……

 本当に、あんたは……

 

 世界を救ったのはキャプテン・ファルコンだ…俺なんかじゃない。

 

 俺は首を左右に振る…自分が救世主じゃないという思いと、あの出来事は嘘であって欲しいと言う思いから……

 ファルコンは…あのまま、光の中に消えて行った。

 俺は残されたメットを手にしたまま、立ち尽くすより、他になかった……

 

 ……立ち尽くすしか無かったんだよ……

 

 俺にファルコンの名を継がせる……それが彼の最後の望みとなれば、当然、それは叶えてやりたいとは思う。

 しかし……

 

 俺なんかに、本当に勤まるのか…??

 

 時間が経過すればする程、託されたメットが重く感じられ……そのせいだろうか、それ持つ手も、それを支える足も、微妙に震えているのが自分でも分かる。

 そして俺は未だに、立ち尽くす以上の具体的行動が取れずにいた。

 

 …ファルコンの名を継ぐ為の、具体的行動が……

 

 

クランク「レースは当分、中止になるみたいだよ」

 それは、俺達がミュートシティに戻って来た直後の事だった。

 俺は休暇をもらい、ハルカに会って婚約指輪を渡した後……ファルコンハウスに向かった。

 ハルカに今までの事を話すのにも、これからの事を話すのにも…この喫茶店の事は避けて通れなかったからだ。

 

 主のいなくなった店は勿論閉まっていた。

 だが、店のカウンターにはクランクが一人座り、パソコンの画面を見つめている。俺はCLOSEの看板を無視してドアに手をかけ、開けようとノブを引く…鍵は、かかっていない。鈍い音と共にドアは開き、俺達二人を迎え入れる。

 

 …そこで、その事実を知らされたのだ。F-ZEROレースが中止になると言う、その事実を。

 

ハルカ「中止って…どう言う事なの?」

クランク「要素は色々あるよ。最近、変な理由で不成立になるレースが多かった……って言うのが表向きの理由だけれど、本当の所は…実行委員会の主催者がいなくなってしまったから…ね」

 クランクは画面から視線を外さないまま、それだけ言うと、キーボードから手を離した。

 主を失った店の中は、普段の様子からは想像もつかないくらいに静かで、クランクがキーボードを叩く音だけが響いていたが、急にそれも断たれ、耳に痛いくらいの静寂が広がってゆく。

 

クランク「…おっと。何もおもてなししなくて悪かったね」

 彼は突如思い出したかのように席を立つと、俺達にコーヒーを入れてくれる。

 にんまりしたクランクの表情を横目に、俺は出されたコーヒーを一口すする……

 

クランク「ハイ、ご成婚おめでと」

 ……ごふっ!!

 ふいを突いた祝いの言葉に、俺はコーヒーを吹き出しそうになった。

リュウ「な、何で知ってるんだよ!?」

クランク「へへっ、ハルカさんの左手を見れば、すぐに分かるよ。

 …となると、今後の事とかは、ハルカさんも交えて話をした方がいいだろうね」

 …そうだな…

 急にシリアスな表情になったクランクを受け、俺は黙って頷く。

ハルカ「今後の事って、何?」

 

 俺は怪訝そうな表情を浮かべているハルカに、今までの出来事を話した。

 この喫茶店のマスター、バートには色々世話になった事。

 そのバートがジョディの兄さんであり、キャプテン・ファルコンである事。

 そして、彼が散り際に…その名前を、俺に襲名した事……

 

 短いようで、話してみると長い話だった。

 それらを一通り話し終わる頃には、入れてもらったコーヒーはすっかり冷めていた。

 

クランク「それで……」

 おもむろに立ち上がったクランクは、店の冷蔵庫の中にあるスイッチを操作し、地下への階段の扉を開ける。

 …そう、この先はキャプテン・ファルコンの愛機、ブルーファルコンの格納庫だ。

 

 俺達はその階段を降り、格納庫へと足を運ぶ。

 そこには、本来ならブルーファルコンが格納されているのだろう。

 だが、あいにく俺はその様子を見た事が無く、この場所はがらんどうな印象しか無い。

 

クランク「どうするか…だよね」

リュウ「…そうだな…」

 俺とクランクは、二人して腕組みをしながら考え込んでしまう。

 

 名前を襲名してくれと、簡単に一言で片付けられてしまったが……

 その具体的方法が、俺には分からなかったからだ。

 

 ファルコンがいなくなり、残されたのは大きなアパートと小さな喫茶店、そしてこの格納庫のみ……

 名前を継ごうにも、肝心のマシンも無く、レースも中止になってしまった。

 

 勿論、そんなファルコンの遺言など無視すると言う選択肢が俺にはあったかも知れないが……それを選択する気など、当然無かった。

 キャプテン・ファルコンは、俺の力を信じてリアクターマイトを託してくれたんだ……その確信が的外れだったとしても、俺は出来る限り、ファルコンの要望に答えたい。そう思うんだ。

 

クランク「店の方も、閉める訳にいかないしねぇ……」

リュウ「ああ……

 ………って、えぇ!?」

 軽いため息をつきながらボソボソ言っているクランクに、俺は半分同調しかけたが……

 …伝説のレーサーは、喫茶店を運営しながらマシンを駆ってなきゃならないと言う決まりでもあるんだろうか…

 

 だが、それに対するクランクの返答が意外なものだった。

クランク「店を閉めるのだって、色々細々とお金がかかるからね…

 店の運営を続けた方が、財政的には優しいってシミュレート結果も出たしさ」

リュウ「お金がかかるって……?」

 その単語に、俺は面食らってしまった。

 ファルコン…もといバートは優勝常連者だ。そんなお金に困るような事が……

 

クランク「それがさ、財政関係は全部バートのおっちゃんがやってたから、俺はノータッチな訳」

リュウ「…って、事は…??」

クランク「お金を引き出そうにも、どこの口座にいくら入っているとか、暗唱番号とか、全然分からないんだ。

 色々調べてはみたんだケド、全然データが出て来なくて…

 真面目な話、銀行に預けたりしないで独自に管理していたのかも。

 俺みたいな悪いクラッカーに全財産持って行かれたら、たまったもんじゃないだろうからね」

 

 …確かに。

 クランクは冗談混じりに話しているが、あながちデタラメな話ではない。ダークミリオンにそんな情報が漏れたら、それこそ大変な事。それくらいの管理はして当然だろう。

 

クランク「…資金うんぬんって、本当は店の為じゃなくて、マシンの再建の為に調べていた事なんだけれども…」

 そう言うと、彼は悲しそうに首を振った。

 マシンを再建するとしたら、それはもうとんでもない金額になる事は、俺にだって容易に想像出来た。

 だが、ファルコンの資金は引っ張り出す事は出来ない…

 いや、それ以前に、もし資金が何とかなったとしても、マシンの設計図も無いじゃないか!?なら、本当にどうすれば良い?

 

 俺が困っていると、クランクは格納庫の設置された巨大モニターの前に立ち、キーボードを操作する。

 

『PASSWORD?』

 

 画面にはそう表示されるが、そこから先には何を入力しても、一向に画面が切り替わらなかった。

 

クランク「…パスワードが分からないんだ…

 何度解析しようとしても、あまりにブロックが強くてハッキングで中に入る事も出来ない。

 手当たり次第に色々入力しても、全く反応しないんだ。

 リュウも当然…パスワードなんか知らないよね……」

リュウ「ああ……」

 俺はこう答えるより仕方がなかった。

 

 大体、俺がこの場所の存在を知らされたのは割と最近の話だ(しかもファルコン本人に聞いた訳ではなく、クランクの案内によって…だ)当然、ファルコンからそんな話を聞かされた事も無く、パスワードの事など、勿論話された事はない。

 恐らく、マシンの設計図等のデータも、ここに蓄積されているのだろう。

 となると…このパソコンの中を見ない事には、何も進展しないと言う事だ。

 

 俺も思いつく限りのパスワードを入力してみたのだが……

 結果はクランクの時と同じ、全く先に進める事が出来なかった。

 駄目元でハルカにも色々いじってもらったが、やはり、駄目元は駄目だった……

 

リュウ「…まいったな…」

 俺達はため息をつきながら、その場に立ち尽くす以上の行動が取れずにいた。

 どうしようも、なかったのだ。

 

 

 気がつけば、それから一週間も時が流れていた。

 まだ一週間と言うべきか、もう一週間と言うべきか……

 そして俺は、未だにそのパスワードが分からずにいた。

 頼みの綱のクランクですら、頑張ってはくれているが未だに解読出来ていない。

 永久にパスワードなんか分からないのではないか?と俺は思うんだが、俺としては、それでは済まされない。

 …これも、キャプテン・ファルコンに試されている……と考えるのは、少しオーバーだろうか?

 

 ……で、もう一つの問題の店の運営の話だが…

 何かクランクとハルカの方で、勝手に盛り上がってるみたいなんだよな…

 俺のいない所で、話がどんどん進んでいるようなんだが……気がつけば、俺は蚊帳の外だ。

 クランク曰く、俺にやらせると三日もしないうちに店が潰れるとか何とか…

 …まぁ、何かハルカも乗り気らしいから…いいか。

 

クランク「リュウ点またここにいたの?」

 俺は何かと時間が出来ると、大抵この格納庫にいるようになっていた。

 高機動小隊の方は、レースが中止になると同時にダークミリオンも姿を消してしまった…から、俺達が出動しなきゃならないような事件が今の所起こってなくて、正直、時間は余っていた。

 

クランク「…それは…」

 格納庫に降りて来た彼は、俺の旨の中にある“物体”の存在に気がついたようだ。

 

 俺は…その胸の中に、ファルコンのメットを抱いて、ここに来ていた。

 あの日以来、どうして良いものか分からず…ずっと俺の部屋に置いていたんだが……どうにも、違和感があって……それで、こっちに置いておこうと思って持って来た訳さ。

 

 全体的に若干光沢を失ったメットが、最終決戦の激しさを物語っている。

 俺もクランクも、こいつの前では言葉を失ってしまう。言いようのない感情に襲われ、あの時…あの決戦の時、本当にあれ以上の行動が取れなかったのかと、俺の頭の中で色々な事がぐるぐると回る。

 …このメットは、俺にはあまりに重すぎる。

 だから、今まで自分の部屋に閉じ込めていたんだ……

 

クランク「……あれ……??」

 クランクは、格納庫の中央に立っている俺の脇を通り過ぎ、ディスプレイの前に立つ。

クランク「リュウ…これ、何かいじった!?」

リュウ「え??…俺は何もしてないぞ!?」

 クランクの瞳は驚きに満ち、只ならぬ雰囲気を湛えていた。

 慌てて俺もディスプレイに目をやると……

 

『NOW LOADING……』

 

 …見間違い…

 ではなかった。

 確かにディスプレイにこう表示され、中で何かが唸るような音が静かに響いている。

 

 俺は呆気にとられ、馬鹿みたいにその画面を見つめるより他になかった。だって俺は本当に何もしていな……

クランク「それだ!!」

 いつの間にかノートパソコンを広げ、何やらキーボードを叩いていたクランクが、突如俺の胸元を指差す。

 

 それって……

 このメットの事か!?

 

クランク「そうか!!

 リュウ、そのメットの中にはチップが組み込まれてる!!

 それに共鳴して、こいつが動き出したんだよ!!」

リュウ「何?じゃあ、パスワードって……」

クランク「…そのメットそのものだったんだ…」

 

 俺達が唖然としている事を無視するかのように、そのディスプレイには淡々とデータのロードの様子が映し出されている。

 数字や英文や…俺には幾何学模様にしか見えないそれが、物凄い勢いで画面上に流れて行く。

 俺達は、その様子をずっと見つけ続けていた…宝箱を開けるかのような心境で。

 

 数分…いや、数十分だろうか……

 その幾何学模様の洪水がディスプレイから過ぎ去った後……

 

リュウ「…これは!?」

 

 その後に映し出された映像に、俺は驚きを隠せなかった。

 

 そこに映し出されていたのは……

 バートであり、アンディでもあるキャプテン・ファルコンの姿だった。

 深い色のバイザーにより、相変わらず表情は分からなかったが…そこには、あのキャプテン・ファルコンの姿が確かにあったんだ。

 俺はあまりの事に言葉を失い…クランクも同じだったのだろう、異様な静けさの中、その姿を見つめていた。

 

 “リュウ、クランク……”

 最初に口を開いたのは、そのディスプレイ上のキャプテン・ファルコンだった。

 “見せたいものがある”

 彼は一言それだけ言うと、プツリとディスプレイから姿を消した。

 

 と同時に……

クランク「…見てよ、あれ!!」

 格納庫の端の方に光の幕が見える。あれは……ワープゲートだ!!

 

 思わずそちらの方向に走り出そうとした俺を、クランクが止めに入る。

クランク「リュウ~?まさか徒歩で行こうって気じゃ、ないよね…?」

リュウ「へ?あ、あぁ……」

 

 俺達は上にいたハルカに簡単に事情を説明して外出し、高機動小隊の格納庫に急ぐ。

 そこには、いつでも出動可能な状態でドラゴンバードが止めてある。

 側にいたルーシーへの説明もそこそこにマシンに乗り込み、キーを回す。ルーシーが何かギャーギャー文句を言っている様子だったが、悪いが構っている時間はない。

 キーを回し、アクセルを踏み込み、眠っていたマシンの鼓動を呼び覚まして……俺達は発進する。

 

リュウ「しかし…ドラゴンバードに乗って、どうやってあの格納庫のワープゲートに行くんだ?」

クランク「リュウは何も考えないで、ここの地下にあるワープゲートに向かってよ。

 そこから、あの格納庫のワープゲートを強制的に接続するから」

リュウ「へっ!?そんな事、出来るのか!?」

クランク「へへっ、そんな事、俺には簡単に出来るよ」

 俺の後ろで、クランクがキーボードを叩く音が響き渡っていた。

 俺はクランクに言われた通り、銀河警察の地下にあるワープゲートに向かい…そのまま、異空間に投げ出される。

 

 

リュウ「…ここは…ぅわ!?」

 異次元空間から脱出した先は、どこか分からぬ場所…明かりがなく、洞窟の中のような状態である事を考えると、地下である事は恐らく間違いない。

 俺は危うく正面の岩にぶつかりそうになり、慌ててステアリングを切り、ライトを照らす。

 

 ライトに徐々に目が慣れてくる……

 よく見ると、そこには、どこかで見たような光景が広がっていた…

 

 この鍾乳洞の洞窟…

 ここは、もしや……

クランク「惑星タンカルの地下……」

 俺が言うより早く、彼がそう叫んだ。

 

 …そうだ…

 かつて、ブラッド・ファルコンとキャプテン・ファルコンが戦い、二人纏めて暗黒空間に飲み込まれた、あの惑星だ。

クランク「相当地下深くみたいだね…マグレットのパルスが、銀河警察まで届きそうにない場所だよ」

 クランクがパソコンをかちゃかちゃやっている脇で、俺は視界の中に何か不自然な物が入り、そちらに向かって走り出した。

 

 不自然な物……地下の鍾乳洞に、明らかに人工的に作ったと思われる建物があったのだ。

 実際に近くに行ってみると、それは俺が思っていた以上に大きな建物だった。

 その建物の脇にマシンをつけ、そこを注意深く探る。これは建物と言うよりは……まるでパドックだ。

 一通りのマシンの整備工具が揃っている。

 

リュウ「こりゃ、凄ぇや……」

 俺達がマシンから降り、そこに立った時、急に辺りが明るくなった。

 その明かりの正体は、パドックの隅にあるディスプレイだった。

 例によってそこには、ファルコンの姿が映し出されている。

 

“そこから、この洞穴の見回してみろ”

 ……??

 ぶしつけにそんな命令を下され、俺は疑問を抱きつつも、そのファルコンの指示通りに、パドックから洞穴全体を見回す。

 

リュウ「…これは…??」

 見回して、俺は一つの事に気付いた。

リュウ「ひょっとしてこれは…F-ZEROサーキット場なのか!?」

 よく見ると、単なる洞窟と思っていた場所が、マシンが滞りなく走行出来るような路面や道幅が整備され、ヘアピンやS字カーブまで設置されているテクニカルコースになっていた。

 

“そうだ”

 俺の声に反応するように、モニターの向こうでファルコンがそう頷く。

“勿論正式のコースではない。私が独自に作り出したコースだ”

 

 その言葉を言い終わると同時に、俺の目の前にフワッとブルーファルコンの姿が浮かび上がる!?

 俺は一瞬驚いたが…勿論、本物ではない。

 半透明のそれは、ホログラフか何かなのだろう。触る事も出来ず、質量も感じない。

 

“私のゴーストに勝ってみろ。話はそれからだ”

リュウ「何!?」

 言葉の意味を深く追求する間も与えられず、モニターはフッと消えてしまう。

 

 言葉の意味も何も…

 〝そのブルーファルコンに勝て〟

 …それ以上の、それ以外の意味など無い。たた、いきなり言われて面食らっただけだ。

 

 かと言って、この挑戦から逃れる訳にはいかず…

 否、逃れる気など無かった。

 俺はドラゴンバードに乗り込むと、そのホログラフなブルーファルコンに勝負を挑んだ。

 

 しかし……

 ……初回は、コースは分からないわ先は暗くて見えないわで惨敗だった。

 当たり前だ、初めて走るコースでファルコンに勝てと言われても、それは無理な話だ。

 だが、それはファルコンも百も承知だったのだろう。幸い、一発勝負ではなく、何度でもリトライが可能だった。俺の挑戦に、そのゴーストとやらは何度でも応じてくれたのだ。

 

 しかし、その日は…

 何の成果も上げられなかった。

 確かに走れば走る程にタイムは縮まっていたが、それでもファルコンの出したタイムには10秒近く差があった。

クランク「はぁ~…ドラゴンバードはハイスピードコースには強いんだケド、テクニカルコースは苦手なんだよね」

 くやしいが、全くもって、その通りだった。

 重量の重いドラゴンバードは、トップスピードこそ出るが、カーブになると容易に最後尾(テール)が流れ出し、その隙を突かれてしまう。

 俺はその特性を理解してマシンを操り、レースでは勝ってきた。

 

 …そう、レースでは。

 

 レースでは、混戦すれば軽量級のマシンでもカーブの処理が甘くなる事があるし、その隙を突く事も出来たのだが…

 クリアラップでは、そうはいかなかった。

 ブーストファイアーしても良かったが、ここまでカーブが乱立しているコースでは、使い所に迷う。いくらスピードが出ていても、ルート取りが甘くなっては意味がない。

 

クランク「リュウ…気持ちは分かるケド、少しは休む事も必要だって。

 第一俺達、昼ご飯も食べてないじゃないか~……」

 クランクにそう文句を言われるまで、俺は時間が流れていると言う当たり前の事が、頭から抜けていた。

 腕時計を見ると、既に午後の八時を回っている…ここに来たのは確か、昼前だったと思ったが。

 

クランク「あのワープゲートを使えば、いつでもここに来られるから、毎日通えばいいじゃん?

 マシンだって、無限に使える訳じゃないんだから」

 確かに、彼の言う通りだ。

 簡単な修理ならここで行えそうだが、総合的な点検は、この場所では無理だ。

 

 それでクランクに促されるように、俺は一時的にその場を後にした。

 …妙に名残惜しかったケドな……

 

〜to be continued〜


 
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