No.759618

【真・恋姫†無双if】~死を与えることなかれ~20話

南無さんさん

こちらは真・恋姫†無双の二次創作でございます
一刀最期の時、彼は何を託すのか、
そして、一刀の行いに対して皆は何を思うのか。
稚拙な文章、展開、口調がおかしい所があるかもしれません。
それでも、暇な時間に読んで頂けたら嬉しいです。

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2015-02-20 16:19:12 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:7248   閲覧ユーザー数:5739

…いよいよ、最期の時ってやつだな。身体の五感が徐々に失われているのが、静々とわかる。

 

もう、感覚が麻痺して痛みは感じない。只、苦しいだけ。

 

…皆が来るまで持ちこたえられるかな。いや、持ちこたえなければならない。

 

じゃないと、何の為に冥琳にまで、あの事を伏せていたんだ。

 

ここで息絶えたら、それこそ水泡、成し遂げてきた事が無に帰しちまう。

 

後、少し、少しなんだ。

 

閉ざしていた全てを伝えれば安心して、逝ける。

 

 

「一刀!!しっかりして!!」

 

 

…ごめんな、シャオ。小さなその身に過酷な現実を押し付けてしまって。

 

でも俺は、受け止められると信じてたよ。

 

だって、シャオは芯が強くて真っ直ぐな子だから。

 

その証拠に、俺が倒れてから迅速に伝令兵を呼んで各々の将に派遣したじゃないか。

 

この状況で多少なりとも、心を乱しながらも正しい判断が出来る。

 

もう、我が儘ばかり言ってるお姫様じゃないんだな。成長の片鱗を目の当たりにして、

 

嬉しいよ。

 

 

「…シャオ。雪蓮と蓮華と協力して孫呉を守るんだよ。

 これから先、シャオの力が必要な時が必ずやって来る。

 それまで、鍛錬を怠らずに、精進、な」

 

「一刀、かず、と………」

 

「北郷!!」

 

「「一刀様!!」」

 

 

足音と声が聴こえる。この声の主は思春、明命、亞莎の三人、か。

 

 

「…来て、くれたか」

 

 

明命、亞莎は俺の直ぐ傍に近付き、思春は二人の一歩後ろの位置で

 

佇み俺の様子を窺っていた。

 

 

「どうして、どうして。この様な事に…!!」

 

「一刀様、御気を確かに!!」

 

 

既に二人の目には大粒の涙が浮かんでいた。また、胸が痛みで締め付けられる。

 

真相を隠してた事、孫呉の為とはいえ、これは皆を騙し裏切る

 

背信行為、だけど、それでも、俺は………

 

 

「明命、亞莎。ごめん、な。俺さ定められていたんだ。もう助からないって。

 でも、言い訳に聴こえるかもしれないけど、それを伝えるのは出来なかった。

 きっと、二人は…いや。絆を育んだ全ての人に伝えたら心に動揺が蔓延り、

 曹操軍には勝てないと思ったから。なら、残された刻限の中で俺に課せられた使命は、

 決死の覚悟で呉軍を鼓舞し士気を最高の状態まで高める事、

 命の輝きを皆に託し、心に勇気を与え、各々が役割を果たせば

 孫呉には約束された勝利が待っている、この二点。

 これが、俺が出来る最期の使命だと思った」

 

「ふざけるな!!」

 

「………思春」

 

 

あからさまに、怒気を携え思春は、俺の直ぐ傍に近付き、

 

立ったまま、見下してきた。

 

恐らく、俺がこんな状態でなければ胸倉を掴まれ、きついビンタでも貰っていただろう。

 

 

「さっきから黙って聞いていれば身勝手な事ばかり口にして

 貴様は残される者の気持ちが、わかっているのか!!」

 

「………」

 

「大切な奴だと思う程、魂を引きずられ、あらぬ妄執に囚われる。

 囚われたら死者の意志が正しいと確信し、自分の身を案じず、

 狂った様に戦いに身を置く羽目になるか、あるいは

 過ぎ去りし日々の中で、自分だけ時の牢獄に囚われ、一切何も出来なくなる。

 そこには、今まで形成してきた自分の意志が蝕まれ確実に壊れていく。

 貴様は今、大罪を犯そうとしているのだ…!!!!」

 

「…ごめん」

 

「謝るな!!謝る位なら、生きる気概を見せろ!!!!

 貴様は仮にも天の使いなのだろう。ならば今こそ、天に願い奇跡を起こし

 身体に蔓延る死因を取り除け!!

 出来ねば、私が……貴様の命脈を断つ!!」

 

「し、思春様!!」

 

「お止め下さい、思春様!!」

 

 

殺気を放出させながら、思春は愛用の短刀に手を掛ける。

 

明命と亞莎は思春を止めに入るが、俺は気付いてしまった。

 

目は口ほどものを言う。思春の目は本気ではない。

 

認めたくないから、そういう行動を取らせてしまったんだな。

 

本当にすまない…思春。

 

 

「………それが出来れば、どんな言い事か」

 

 

心からの肯定。だけど、そんな事は絶対に出来ない。

 

それに何より、天は、外史は俺を敵と見做したんだ。

 

この外史の絶対的なルールを破ってしまったが為に。

 

俺しか成し遂げられない、外史の改変をしてしまったが為に。

 

 

「…達観したような顔をするな!!

 だから、私は貴様が……北郷一刀が嫌いなんだ!!!!」

 

 

くるりと反転させ、思春は身を震わせる。短刀を掴んでいた手は

 

脱力感を漂わせながら離した後、次第に握り拳へと移行させた。

 

 

「~~~~~~~っつ!!!!」

 

「「…思春様」」

 

「…思春。最期の最期に北郷と心を通わせておったか」

 

「…祭、様」

 

「辛かろうが、乗り越えねばならん。でなければ悲しみにとり憑かれ

 廃人と化してしまうぞ」

 

「辛くなど……ありません」

 

「…その顔つきでは説得力がないわい」

 

「明命ちゃんと亞莎ちゃんも同じ事が言えます。

 それに、私達が今、すべき事は一刀さんを安心して送り出す、これに尽きます」

 

「…穏様」

 

「………」

 

 

足音と共に現れたのは、祭さんと穏だった。二人は肩に手を乗せたり、

 

抱き寄せたりと、思春、明命、亞莎の三人に平常心を取り戻す様努力した。

 

そして、極限の悲哀から一歩進み、雀の涙ほどだが、平常心を取り戻した三人を

 

確認した祭さんと穏は俺の近くへとやって来た。

 

 

「…逝ってしまうのだな、北郷」

 

「…うん」

 

「…やはり、仲間の死と言うのには慣れるものではないな」

 

「…当然だよ。もし、慣れてしまえば、それはもう心と血が通った人ではなくなる」

 

「…そうだな。なぁ、北郷よ。儂は仲間の死を看取る度、何故、年老いた儂ではなく、

 未来ある若人が逝かねばならぬと、常々、思うてしまう。

 順番に従えば、儂が死神に好かれるであろうに」

 

「…きっと、祭さんには、まだまだ成さねばならない使命が遺されてるんだよ。

 だから、死神が微笑まない。逆に天使から好かれてるんじゃないかな」

 

「…その天使とやらは御使いである御主か」

 

「はは、そうかも知れないね」

 

「…一刀さん」

 

「…穏」

 

「私は泣きはしません。一刀さんの死を正面から受け止め、

 次世代の子達の指針になれる様、努力いたします」

 

「…安心したよ。穏なら指針の役割を十分こなせる逸材だから。

 でも、本を読む時は注意してくれよ、あれはお手本にならないから」

 

「ふふ、肝に銘じておきます。

 …さぁ、思春さん。明命ちゃん、亞莎ちゃん。一刀さんに最期のご挨拶を致しましょう」

 

 

名を呼ばれた明命、亞莎はおずおずと俺に身体を寄せる。

 

二人の様子を窺うと火を見るよりも明らか、決心が付いていない。

 

その気持ちは俺もよくわかる。だってさ、その記憶があるから。

 

なら、先手必勝、こちらから皆に話しかけよう。

 

少しでも、心に傷を残さない様な価値ある言葉で、一人一人前に進めるように。

 

 

「…亞莎。これからも冥琳と穏を目標として邁進してくれよ。

 隣には、もう居てあげられないけど、亞莎の成長を期待してるから。

 それと、胡麻団子の味、忘れないよ」

 

「…わ、私は私、は一刀様が支えてくれたお蔭で、今日までの、

 私が、存在すると思っております。辛い時に励ましてくれ、挫けそうな時は……

 勇気を頂き、本当に、本当に……感謝しております。

 これから先、か……一刀様が…………居なく……」

 

 

亞莎の辛そうな顔、それを癒してあげられる様、頭に手を伸ばす。

 

震える腕は、俺の想いに何とか応えてくれ、

 

手に慈しみを宿して優しく頭を撫でた。

 

 

「楽しみにしてるよ。だけど一つだけ訂正、俺は亞莎に勇気を与えていない。

 勇気とは与えるものでも、授かるものでもない。

 心にその感情が宿っていて、亞莎は自らの殻を破ったんだ。

 だから、これは、亞莎の成果。自信を持って誇ってくれ」

 

「か、一刀様…」

 

「立派な軍師になれる様、祈ってる。

 …明命」

 

 

名を口にすると明命は、身体が一瞬痙攣を起こし。既に目に一杯の涙が溢れていた。

 

いたたまれない気持ちを抱きつつ、亞莎と同じ様に頭を撫でる。

 

 

「…一緒に強くなろうって約束したけど守れなくてごめんな。

 切磋琢磨して同じ風景が見たかったけど、それが叶わなくて本当に無念だよ。

 だから、明命。我が儘を言うけど、俺の分まで強くなってくれ。

 今、それが成就出来るよう、託すから」

 

 

頭を撫でていた手を離し、明命の手を軽く叩く。

 

 

………バトンタッチ

 

 

明命ならこんな事しなくても強くなると思うけど、残されてる

 

意志を出来れば継承して欲しい。また、我が儘を押し付ける形になってしまうが…

 

 

「………一刀様の想い、しかと、しかと承りました。

 私は今の自分を更なる高みへと目指して、一刀様の為に大切な人を守れるようになります」

 

「…頼むな。明命」

 

「……ですが、ですが…!!私が一番守りたかった御人は…一刀様、でした。

 一刀様を、御守りしたかった…です……」

 

 

零れ落ちる悲しみの結晶。そこには俺の罪が凝縮している、

 

そんな鏡に映し出されている様に見えた。その涙で見えない鎖に四肢を縛り付けられる

 

感覚に襲われる。

 

…今、罪の意識に支配されてどうする、覚悟は決めていた筈だ。

 

もし、それでも続きがしたいなら地獄でするとしよう。

 

 

「ありがとう。そういう風に想ってくれて」

 

 

喜と哀、矛盾した二つの感情の中で感謝を述べる。

 

誰かに大切に想われる。それが何よりも嬉しく、そして切ない……

 

 

「皆を守ってくれよな、明命」

 

 

そっと明命の涙を手で拭き、次なる、大切な人の名を口にする。

 

 

「…思春」

 

 

呼んでも先程と同じく、反転したまま、振り返る素振りも気配もない。

 

だが、声は届いている筈、なら、このまま話しかけよう。

 

その方が思春にとっても都合が良さそうだし。

 

 

「…蓮華を頼むな」

 

「…貴様に言われずとも守る」

 

「ああ、わかってる。だけど、自分の身も案じてくれよ。

 前にも言ったけど、思春は守ると決めたら、自らの命を軽んじる傾向にあるから」

 

「…今の貴様にだけは、その様な忠告、言われたくないわ」

 

「…確かに、そうだ。…っつ!!ゴホッ!!ゴホッ!!!!」

 

「「北郷!!」」

 

「「一刀様!!」」

 

「一刀さん!!」

 

「一刀!!」

 

 

咳をした分だけ、赤い飛沫が宙に舞う。とっさに手を押さえたけど、

 

隙間から流れてしまった様だ。瞬間的な力はまだ出せるんだな。

 

中々にしぶとい男だ、俺は。

 

…命の刻限が迫ってきている。

 

 

「…やだ、やっぱりやだ!!!!」

 

「…目を逸らしてはいけません、小蓮様。私達には見届ける義務がございます」

 

「でも、でも…うわあああああああああ!!!!!」

 

 

支えてくれていたシャオが癇癪を起こし、年相応の少女に戻り泣いてしまった。

 

今日だけで二度目の大泣き、まるで、貯水していたダムが決壊したかの如く、

 

悲しみの水が広がっていた。これを見兼ねた祭さんは穏に目で合図を送り、

 

シャオに変わる形で俺を支えてくれ、穏は、シャオを優しく抱きしめ、

 

背中を擦りながら諭していく。

 

場が泣き声主導となり、嗚咽を漏らし泣く者、

 

行き場のない感情に抵抗せず、魂無き器の様に虚ろになる者。

 

皆が悲しみに同調していた。

 

もう、何も言えなかった。只、ひたすら心で謝るばかり。

 

 

「…一刀!!」

 

 

…待ち焦がれた人、命を賭けて助けた人の声が耳に入った。

 

残り僅かな命刻、俺に残った全てを伝え、

 

そして……因果を貰うとしよう。

 

 

 


 
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