No.759243

真・恋姫†無双 裏√SG 第28話

桐生キラさん

こんにちは!
Second Generations洛陽サイド

司馬昭の過去話はもう少し先の予定になります

2015-02-18 17:00:05 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1644   閲覧ユーザー数:1486

 

 

 

 

 

洛陽 城内廊下 華琳視点

 

 

 

ガッシャーン!

 

 

斗詩「麗羽様!?」

 

何かが割れる音が聞こえた。

音のする方へ目を向けると、そこには激情した麗羽と、それを宥めようとする斗詩がいた。

その足元では、先程割られたに違いない花瓶の残骸が散らばっていた

 

華琳「落ち着きなさい、麗羽。貴女一人が動いた所で、事態は良くはならないわ」

 

麗羽「わかっています。わかっていますわ!けれど!」

 

麗羽は頭を片手で抑え、声を荒げる。瞳には殺意が滲み出ていた

 

華琳「えぇ。こっちだって、怒りを抑えてるんだから、落ち着きなさいと言っているのよ。辛いのは貴女一人じゃないわ」

 

目の前で一刀を殺される幻覚を見せられた。

 

そう、あれは幻覚。本物は生きている。

それでも、一刀が殺された瞬間、私の頭の中は真っ白になった。

目の前で起こった事が理解できなかった。したくなかった。

愚かな事に、私は何もできなかった。動けなかった。仇を討つ事も、逆らう事も。

気付いてしまった。私は、私達は、一刀がいないとこうも脆いのだと。

 

一刀が生きていると理解した今でも怖い。一刀を失う事が、堪らなく怖い。

そして私達は、一刀を引き換えに服従してしまった。

覇王にあるまじき、愚かなまでに無様な姿を晒す事になってしまった。

一人の男の為に、国を賭けてしまった

 

華琳「私はいつから、こんなにも弱くなってしまったのかしら…」

 

きっと、昔の私が今の私を見たら、大いに笑った後に首を跳ね飛ばすでしょうね。

少し、平和な世界で生き過ぎたのかもしれない。

居心地の良い緩い空気に身を委ね過ぎ、いつしか牙を磨ぐ事を止めていたのかもしれない

 

蓮華「華琳、兵の配置、済んだわ…」

 

蓮華の報告はとても暗いものだった。かつてこれ程まで、暗い迎撃準備はあっただろうか

 

蓮華「来るかしら?」

 

華琳「来るでしょうね。少なくとも、あいつらは」

 

一刀が人質として囚われた事で、三国が無闇に動くとは思えない。

さらには、五胡からも大軍が押し寄せて来ていると言う報告も入っている。

恐らく、五胡の迎撃を優先するだろう

 

だがあいつらは、【晋】はそんな事を気にしない。

あいつらはただ家族の為に戦うだけだ。

しかも、運が良いのか悪いのか、猪々子は傷付いてしまった。

それを知った【晋】はどうなるだろう?

 

想像し、びくりと体が震える。頭の天辺から足のつま先まで、ビリビリとした刺激が全身に走った

 

気付けば、私の口角はつり上がっていた。

こんな最低最悪な状況でも、愉しもうとしている、歪んだ自分がいた

 

蓮華「私達は、どうしても戦わないといけないのかしら?なんとかして…」

 

華琳「なんとかできたら、今頃一刀はここにいるわよ。きっと、もう止まらない。しかも、私達は負けられない」

 

もし私達が敗れたら、一刀達は死ぬ。それが徐福の命令だ。

一刀達をなんとか助け出すまで、私達は負けられない

 

華琳「麗羽、斗詩、貴女達も虎牢関に行きなさい。上手くやりなさいよ」

 

麗羽「クッ…私は、猪々子の家族になんと言えば…」

 

麗羽と斗詩は出て行った。その顔には怒りと罪悪感で満ちていた。

 

あれではきっと、いかに難攻不落と謳われた虎牢関で構えても抜けられるだろう

 

一刀を救うのが先か、それとも【晋】がここに辿り着く事が先か。恐らくは後者だろう。

だがそれでも、私達だけで何とか救う手立ても考えなければいけない。【晋】を頼りにしてはいけない

 

華琳「咲夜…貴女に私達を救う気はあるかしら?」

 

友の名を呟き、私は城を出た。この馬鹿げた内乱の準備をする為に…

 

 

 

 

 

 

洛陽 城内会議室 桃香視点

 

 

 

冥琳「桃香殿、兵の配置、並びに一般人の避難、完了したぞ。今この洛陽には、徐福の私兵か薬漬けになっている人間しかいない」

 

冥琳さんの報告に、私は頷いて反応した。

 

ご主人様や桜様、猪々子ちゃん達を人質に取られて、その命と引き換えに私達は徐福の為に動いている。それが悪だとわかっていながら…

 

桃香「でも、どうして徐福は、一般人の避難を進言したのかな?」

 

徐福の命令は、恐らく来るであろう対徐福の反乱軍の殲滅、五胡の迎撃、そして民の避難だった。それを守れないのであれば、人質の命はないと…

 

反乱軍の殲滅はわかる。徐福から見て、反抗する者は煩わしいのだろう。

 

五胡の迎撃も、恐らくそれに近しい理由だと思う。せっかく手に入れた国を傷付けられるのは見過ごせない。

ただ、五胡の迎撃に関しては、私達が動くより先に小蓮ちゃん達が動くだろうとの事で、申し訳ないけど任せる形になっている。

 

だけど3つ目、民の避難は理由がわからない。

 

徐福の目的は世界制服と言っていた。だとしたら、民は容赦無く殺すものだと思っていた。

だけど、徐福は在ろう事か、民の安否を優先させた。

 

まさか徐福は、本当に戦争のない世界を目指している?

 

朱里「それはわかりません。ですが、徐福のやり方は間違いなく間違っています。薬漬けにして人を支配するなんて、人がしていい事ではありません」

 

朱里ちゃんが冷静に答えてくれた。

 

そうだ。徐福のやり方は、どうあっても悪なのだ。それを許す訳にはいかない。

それに、今は徐福の思惑を考察するより、どうやって徐福からご主人様達を助け出すかを考えなきゃいけない。じゃないと、このままだと私達は、味方同士で争う事になる…

 

桃香「朱里ちゃん、ご主人様達が何処に囚われているか、いち早く割り出して」

 

朱里「はい。候補はある程度絞りだせているので、後は冥琳さんと風さんにお願いします」

 

冥琳「あぁ、任せろ…と言いたいところだが、隠密を得意としている明命が居たら良かったな」

 

風「ですねー。思春ちゃんにお願いしたかったんですけど、もう虎牢関に向かいましたからねー」

 

三人の軍師も、少し追い込まれているのか、顔色が優れない

 

風「やはりここは、あの人達に頼る事になりそうですねー」

 

冥琳「不甲斐ないがな。後で雪蓮にドヤされるだけだ。それぐらいは目を瞑ろう」

 

私達はまた、あの家族に、咲夜さんに頼る事になってしまった。そうならない為に、今まで頑張っていたのに…

 

桃香「これじゃあまた、バカ女呼ばわりだよね…」

 

そんな呟きと共に、私達は会議室を後にした。せめて、私にも出来ることを探しに…

 

 

 

 

 

 

汜水関 愛紗視点

 

 

 

星「愛紗、いつまでムクれているつもりだ」

 

汜水関の高台に登り、何処までも続く大地を眺めていると、星が声を掛けてきた

 

愛紗「お前は悔しくないのか?」

 

ご主人様が囚われた。

それだけでも悔しいが、今一番悔しい事があるとすれば、それは己の力不足だ

 

あの場で動けたのは猪々子と高順、そして鈴々だけだ。

私はただ、ご主人様が殺された幻覚を見せられた事による衝撃で動けなかった。

それが、堪らなく悔しい

 

何がご主人様の第一の鉾だ?肝心な時に動けず、今なお敵に服従して、何が腹心だ?私は、家臣失格だ…

 

星「悔しいに決まっているだろ。だが、悔しいと嘆いて何もしないのはもっと愚かだ。今は堪える時だ。いつか必ず、主を救う機会を得る」

 

こういう時の星の冷静さは、素直に羨ましいと思う。

私はダメだ。どうしても、落ち着く事が出来ない。

気を抜けば、誰かに当たり散らしてしまう。精神面がまだまだ脆すぎる

 

星「それに、恐らくこの中で一番辛いのは鈴々だ。あいつは主だけじゃなく、星彩まで盗られている。それでも、気丈に振る舞い、鍛錬に打ち込んでいるぞ」

 

鈴々は黙々と蛇矛で素振りをしている。

その眼には、鈴々には信じられない、怒りと憎しみが込められていた。

遠目で見てもわかるほど、徐福を八つ裂きにしようと考えている

 

紫苑「愛紗ちゃん。少なくともご主人様は大丈夫よ。負傷しているとはいえ、ご主人様の側には翠ちゃんがいる。しかもその負傷も、もう治りかけだから、いざとなったら檻を破ってくるわよ」

 

紫苑が声をかけてくれた。その優しい声音に、少しだけ落ち着く

 

そうだ、あそこには翠がいる。なんとか翠と連携を取れば、ご主人様の解放も望めるかもしれない。

 

そう思うと、心も幾分か落ち着いてくれた。

そうだ、ここで取り乱しても仕方ないんだ。好機を待て。いかに化け物でも、隙はあるはずだ

 

愛紗「すまない、二人とも。幾らか落ち着いた」

 

星「そうか、ならいい。我々の相手は、恐らく【晋】だ。気は抜けないぞ」

 

【晋】?軍人でもないあの料理人が何故?

 

雛里「忘れたんですか?私達は、猪々子さんも囚われてしまったんです。この大陸で、きっと一番やっちゃいけないこと…」

 

………そうか。私達はあの家族を…【晋】を怒らせてしまったのか。大陸でもっともおっかない料理人達を…

 

星「元飛将軍・呂布奉先。大陸最高の武人・華雄。天界の料理人・東零士。最恐最悪の鬼・司馬師。そして大天使・月。武人なら誰もが知っている五人だな。これにさらに雪蓮殿や流琉、秋蘭に凪、咲夜や悠里もかなりの手練れだ。徐福は確かに、念密な計画を立てて、主を人質に取り、三国を乗っ取ったかもしれない。だが、唯一取り零したものがあるとすれば、それはこの大陸のもう一つの守護者を視野に入れなかった事だ」

 

ご主人様とは同郷で、さらに良き理解者である零士殿。

18年前の決戦にて、我々の背後を護ってくれたもう一人の英雄。

また、彼らに頼る事になる。それをご主人様は、良く思わないだろう。

零士殿の息子、司馬昭の件もあったのに…

 

愛紗「本当に我々は、彼らの自由を奪っているな…」

 

戦いたくない彼らを、こうして戦いに巻き込んでしまった。きっと、彼らは不満を抱えながらここへ…

 

紫苑「!三里先で砂塵を確認!みんな、来たわよ!旗印は…孫、曹、劉、華、張、楽、夏、それに…銀と漆黒の【晋】!」

 

クッ!やはり来てしまったか!?

 

汜水関内部は慌ただしく迎撃準備を開始する。

壁の上に設置された連弩砲に矢を装填し、門を固く閉ざし、武器を取った

 

星「さぁ、我々も行こうか、愛紗」

 

愛紗「あぁ…」

 

私、鈴々、星、紫苑はそれぞれ汜水関の壁の上まで登り、彼が来るのを待つ。

すると程なくして、辿り着いて来た。

 

先頭を歩くのは咲夜殿。

その後ろに、零士殿、雪蓮殿、悠里殿、凪、秋蘭、流琉、霞、詠、月、恋、華雄、華佗、さらに風香様、氷華、雷蓮も居た。

兵数は、ざっと見て3万ほどか

 

星「思っていたより少ないな。人員を対五胡に回したか」

 

とはいえ、こちらは一万弱。拠点防衛とは言え、数では負けている

 

私は代表して皆の前に立った。すると、彼らは一斉に私を見た

 

愛紗「止まれ!ここから先は、徐福の命により通す訳にはいかない!」

 

心にもない事を言う。

我々にも監視の目がついているのだ、せめて表面上は取り繕わなければいけない

 

私の言葉を聞き、【晋】は動きを止めた。すると、咲夜殿が前に立ち、私を睨みつけてきた

 

その表情が、眼が、どうしようもないほど楽しそうに、愉快に、歪んでいた

 

咲夜「来てやったぜ、このクソ野郎共!!」

 

 

 


 
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