No.757820

九番目の熾天使・外伝 ~改~

竜神丸さん

様々な思い

2015-02-11 20:48:49 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2573   閲覧ユーザー数:805

「ふぅ、終わった終わった…」

 

アジトの調理場にて、ディアーリーズを始めとする一部の旅団メンバー達はティーダや琥珀達の仕事を手伝い終えた後だった。支配人達が調理場の仕事を手伝っているのを見て「何もせずにいるよりは良いだろう」と考えたディアーリーズ達は、自ら調理場の仕事を手伝う事を志願した。人手が足りていないからか楽園(エデン)の調理場よりも大変な仕事だったが、普段から調理場での仕事に慣れている支配人や、料理が得意なメンバーにとってはそれほどの苦ではなかった。

 

「よう、お疲れさん」

 

「あ、ありがとうございます」

 

同じく仕事を終えたティーダや琥珀も、ダンボールを運びながらディアーリーズ達の下にやって来た。ダンボールには水の入ったペットボトルがいくつも入っており、ティーダと琥珀はそれらをディアーリーズ達に一本ずつ配っていく。

 

「ありがとな。お前逹が手伝ってくれたおかげで、いつも以上に仕事が早く終わった」

 

「いえ。働かざる者は喰うべからずとも言いますし、何もしないで時間を無駄にするよりかはこうした方が良いだろうなって思ったので」

 

「どうせしばらく滞在させて貰うんだ。何か仕事があったらいつでも俺達に言ってくれ、出来る範囲内で手伝ってやるからさ」

 

「おう、頼りにしてるぜ」

 

「それにしても、皆さん本当に何者なんですか? 戦闘だけでなく調理も何でもこなすなんて…」

 

「俺達か? まぁ、強いて言うなら…」

 

「もはや何でもありのバグ集団、でしょうねぇ」

 

「…否定出来ないのが悲しいぜ畜生」

 

「ですね……はぁ」

 

刃の言葉に支配人とディアーリーズは遠い目になり、ティーダと琥珀は「?」と首を傾げる。そんな時…

 

「およ? 皆、何時の間に戻って来てたんだ」

 

「お、蒼崎」

 

そこに、蒼崎がやって来た。

 

「どうしたんですか? 蒼崎さん」

 

「あぁうん、miriから調理場に水を貰って来いって言われたからさ」

 

「miriの奴が?」

 

「うん。miriは今、ユーリちゃんのトレーニングに付き合ってあげてるところだよ。まぁあの様子だと、確実に水は一本じゃ足りないだろうけどね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのユーリ逹はと言うと…

 

 

 

 

 

 

 

「ぜぇ、ぜぇ、はぁ、はぁ…」

 

「おいおい、だらしねぇな。この程度で倒れるなんて体力無さ過ぎだろお前」

 

地下5階、巨大なトレーニングルームにて。miriの過酷なトレーニングにより、全身汗だくのユーリが床に大の字で倒れていた。miriの課したトレーニング内容をこなそうとして頑張った結果、元々戦闘経験の無いユーリにはあまりにキツ過ぎたらしく、miriも彼女の体力の無さには呆れる事しか出来ない。

 

「お、おいおい…いくら何でもやり過ぎじゃねぇか…?」

 

「そ、そうだよ! アンタのトレーニングも内容がハード過ぎるって!」

 

「そうは言うけどな。戦闘技術を叩き込んでくれって先に頼んで来たのは、他でもないコイツだぞ? だから俺はそれに答えてやってるだけだ。それに俺の課したトレーニングなんてまだまだ生易しいもんだ。俺の仲間にはな、これよりもっとハードで地獄と言えるようなトレーニングやってる奴もいるんだぞ」

 

「じ、地獄って…」

 

「アンタのトレーニングよりハードって……アンタ等、マジで一体何者なんだい…!?」

 

miriの言葉に、テレンスとイザベルは青ざめた表情になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇーっきし!!」

 

この時、okakaと行動中だったデルタがくしゃみをしたのはここだけの話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、ユーリ。お前はどうする? ここで諦めてリタイアするか、それともトレーニングを続けるか。お前の好きな方を選…」

 

miriが言い終わる前に、ユーリはガクガク震える足を押さえながら立ち上がる。

 

「ッ……まだ、まだ…!!」

 

「ユーリ…」

 

「おいおい、大丈夫かよ…!?」

 

「あぁ、問題ない……miriさん…トレーニング、を…続けてくれ…!!」

 

「…血反吐、吐く事になっても知らねぇからな」

 

miriはニヤリと笑みを浮かべ、拳をゴキゴキ鳴らすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、数分後…

 

 

 

 

 

 

 

「う、ぐぅ…!!」

 

「―――で、結局トレーニング中に倒れたと」

 

「…いくら何でもやり過ぎでは?」

 

「悪かったな。俺は手加減出来るほど器用じゃねぇんだよ」

 

結局、miriのトレーニングで完全に倒れてしまったユーリは、医務室まで運ばれる羽目になってしまった。ディアーリーズや蒼崎、支配人や刃から冷たい視線を受けるも、miriは涼しい顔でそれらを流してみせる。

 

「うぅ……お前達のいた組織は、いつもこんなに地獄だったのか…?」

 

「まぁ、地獄とまではいかな……いや、やっぱり地獄ですね。ソラさんの訓練が」

 

「うん、地獄だね。ソラさんのが」

 

「まぁ、確かにな…」

 

「「?」」

 

「あ、いたいた! お~い!」

 

ソラの訓練内容を思い出したのか、遠い何処かを見つめるかのような目になる三人。現時点でまだソラの事を知らない刃と何も知らないユーリが首を傾げる。

 

「それにしてもユーリさん、どうしていきなりトレーニングなんかを…?」

 

「確かに。一体どういう心境で?」

 

「…我慢ならなかったんだ」

 

「え?」

 

ユーリがゆっくりと身体を起こす。

 

「直死の魔眼……と言ったか。これほど便利って思えるような力だって、敵に近付かなければ役に立たない。今の私が敵に挑んだところで、近付く事も出来ないまま殺されるのが目に見えてる。そうだろう?」

 

「あぁ、その通りだ」

 

「…無力だった所為で、私は危うく死にかけた。そんな私を助けようとしてウルに無茶をさせてしまった。楓達にも心配させてしまった……そんな自分が嫌だった。弱い所為で何も出来ず、周りの皆に助けられてばかりの弱い自分が我慢ならなかった」

 

「ユーリ…」

 

初めてユーリの本音を知ったのか、テレンスとイザベルは何も言えずじまいだった。そんな彼女を見かねて、支配人は話を進める。

 

「お前さんの気持ちは分からなくもない。だが、焦ったところで戦闘力は身に付きやしない。それはお前さんも分かり切ってる事じゃないのか?」

 

「あぁ、分かってる。分かってるんだ……それでも、何もせずにはいられない自分がいる」

 

「…とにかく、そんな状態で無理にトレーニングなんかしたら確実に身体がぶっ壊れる。今はしっかり休め、話はそれからだ」

 

「それじゃユーリさん、また後で」

 

「私はユーリの事を看てるよ」

 

イザベルがユーリをベッドに寝かせる中、一同は医務室から退室していく。しかし、通路を歩いていたテレンスがその場に立ち止まり、それに気付いた支配人が声をかける。

 

「ん、どうした?」

 

「…ユーリの言う事、分かる気がするぜ」

 

「?」

 

「俺もさ。レジスタンスに入ってから、ずっと戦い続けてたけど……正直に言って、誰かの役に立てたような試しが全くと言って良いほど無ぇんだ。いっつもレイモンズさんやダニーさん、それに葵さん達に助けられてばっかりで……そんな弱い自分が、マジで嫌になる」

 

「……」

 

「なぁ、教えてくれ。俺は……俺は、一体どうしたら良いんだ…?」

 

テレンスの言葉に、支配人は髪をポリポリ掻く。

 

「…まぁ、それは自分で考えなきゃいけねぇ事だ。赤の他人の俺達が答えを教えたって、それはお前やユーリの為にはならねぇ」

 

「…そう、だよな」

 

「ただ……敵を倒す事だけが強さじゃないってのは、知っておいた方が良い」

 

「…!? それって…」

 

「ここから先は、自分で考えてくれ」

 

それだけ言って、支配人はディアーリーズ達の後を追っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、医務室から移動していたディアーリーズ達だったが…

 

「あ、いたいた!」

 

「良かった、ここにいたんですねウルさん」

 

一同の前に、楓と愛華が駆け寄って来た。

 

「楓さんに愛華さん? どうしたんですか突然」

 

「それが、ウルっちにお礼を言いたいって子がいてさ」

 

「お礼を?」

 

誰の事だろうと考えたディアーリーズだったが、その疑問もすぐに解消される。楓と愛華の後ろから出て来た人物の顔を見たからだ。

 

「! 君は…」

 

「ど、どうも…」

 

ディアーリーズが数時間前に助けた女性―――佳弥は、ペコリと頭を下げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、別の部屋では…

 

 

 

 

 

 

「……」

 

上半身に包帯を巻かれたまま、ダンベルで筋力を鍛えている二百式の姿があった。そこに替えの包帯を持ったはやてがやって来る。

 

「ん? あぁ、また勝手に動いとる!! しばらくは安静にするようにって、シャマルからキツく言われたばかりやろ!!」

 

「そうは言ってられん。何時また戦う事になるか分からんからな」

 

「まず戦う事を前提にしちゃあかん!! また傷口が開いたらどうするつもりや!!」

 

「しかしだな…」

 

「しかしも何もあらへん!! 良いから早く横になり!!」

 

「む…」

 

はやては二百式を無理やりベッドに寝かせ、その上から布団をかける。普段なら他人の意見など聞き入れようとしない二百式だったが、目の前にいるのがはやてだからか、どうにも今までのように反抗する気になれないでいた。

 

(違う、ここにいるのは別世界のはやてだ、俺が守ろうとしているはやてじゃない。なのに……どうして俺は…)

 

「…ん、どうしたん? 何か私の顔に付いとる?」

 

「あ、いや……何でもない」

 

ジッと見つめていた事を気付かれ、すぐに顔を逸らして誤魔化す二百式。はやては特に怪しむ事もなく、彼の上半身の包帯を変え始める。

 

(俺が戦うのは他でもない、はやての為……なら、俺がするべき事は…)

 

「あ、あれ…?」

 

そんな中、はやてが驚きの声を上げる。

 

「う、嘘やろ……傷が、もう治っとる…!?」

 

巻かれていた包帯を外したところ、二百式の身体の傷は完全に治り切っていた。

 

「…いつもより治りが早いな。まぁ良いか」

 

「え、ちょ、何処に行く気や!? 傷が治ったからって、まだ安静にせんと…」

 

「問題ない。そんなあっさり倒れるほど俺もヤワじゃないからな。安心しろ、無理の無い程度に済ませる」

 

「ちょっとぉ!? だから動いたらあかんってばぁ!!」

 

傷の治りが早くなっている事には二百式も驚いていたが、治ったのならばちょうど良い。そう考えた二百式ははやての言葉も無視して、トレーニングルームへと向かって行ってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、アジトの出入り口付近にて…

 

 

 

 

 

 

 

「うし、何とか帰還っと」

 

レイモンズ率いる生存者捜索部隊が帰還していた。しかし今回の捜索で彼等が救出出来た生存者、最初に助けた子供を含めても4,5人とかなり少ない。

 

「結局、今回助けられたのは彼等だけか…」

 

「他の生存者は見つからないか、見つけても既に死んじまってる後だったしな」

 

「…本当に無力なものだな。俺達は」

 

「今は、彼等を助け出せただけでもよしと思おう。シュナイズ、生存者達を医務室まで連れて行ってくれ。まずは彼等を休ませなくては」

 

「了解」

 

「ダニーは至急、彼等の分の食事を用意してくれ。フェイトさんは彼等が住む部屋の確保を―――」

 

レイモンズが部下のシュナイズ逹に指示を出している中、ロキは床に座りながら、Blazは壁に寄り掛かりながら話していた。

 

「ロキ…」

 

「あぁ……酷ぇもんだよな。手伝ってやるとか偉そうな事を言っておきながら、助けられた生存者はたった4,5人。過去の自分を一発ぶん殴りに行きたい」

 

「…俺もだよ、畜生」

 

両者共に、レジスタンスの仲間を救えなかった事に悔しさを感じていた。小さな油断で仲間の死を招いてしまった以上、生存者を助け出せたとしても素直に喜べない部分があった。

 

「…うし」

 

「? おい、ロキ?」

 

ロキは立ち上がり、レイモンズの下へと歩み寄る。

 

「ん、タカナシ君?」

 

「レイモンズさん、頼みたい事がある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい、どうしてこうなるかね…?」

 

 

 

 

トレーニングルーム。先程までmiriとユーリがトレーニングをしていたこの部屋で、今度はロキとBlazがここにやって来ていた。そんな彼等の前には…

 

「ふふふ、この私を相手取ろうだなんて良い度胸ね! 褒めてあげるわ、その蛮勇!!」

 

「…こちらの準備は万全です」

 

面白そうに回転している葵と、巨大な斧型デバイスを構えているアレクシーがいた。

 

「いきなり模擬戦をやらせてくれだなんて、あのレイモンズにいきなり大胆な事を言うものね! 一体どういう心境なのかしら!?」

 

「いや何、強い奴と戦った方が特訓になるんでな。それに」

 

≪オーライ、バディ…セットアップ≫

 

ユーズが点滅し、そこから出て来たデュランダルをロキの右手が掴み取る。

 

「もっと強くならなきゃ、救える者も救えないしな」

 

「…チッ仕方ねぇな。俺もやるしかねぇか」

 

強引に付き合わされただけのBlazも、面倒臭そうに呟きながら大剣を構える。ロキとBlazが構えたのを見て、葵とアレクシーも戦闘態勢に入る。

 

その時。

 

「その模擬戦、俺も混ぜて貰おうか」

 

「「!」」

 

ロキ逹の前に、二百式が姿を現した。

 

「二百式か。傷は?」

 

「もう治った。模擬戦も問題なく出来る」

 

「では、私も混ぜて貰うとしよう」

 

「「「!!」」」

 

更にそこへ、レイモンズもデバイスを起動した状態でやって来た。これにはロキ逹も驚きを隠せない。

 

「レイモンズさん!? 何故ここに…」

 

「私も彼等も、同じ事を考えているだけさ……そうだろう? タカナシ君」

 

「…ま、そういう事になるんだろうな」

 

ロキは若干だが冷や汗を掻く。目の前にいる鎧を纏った男から、とてつもなく強力な覇気を感じ取れたからだ。それはBlazと二百式も同じらしく、彼等も自ずと武器を握る力が強まる。

 

「さぁ、これで3対3だ。気を引き締めていこうか」

 

「上等…!!」

 

レイモンズ、葵、アレクシー。

 

ロキ、Blaz、二百式。

 

6名の戦士は、ほぼ同時にその場から駆け出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、街のとある建物の屋上…

 

 

 

 

 

 

 

「うわぉ…!」

 

「…これはまた、凄い光景だな」

 

『…ふん、雑魚共が』

 

ガルムとFalSigの二人が、驚嘆の声を上げる。二人の目の前では、デュラハン一人を相手に無様に全滅させられているモンスター達の姿があった。

 

『き、貴様…!! 我等、ヴァリアントの誇りを…忘れたか…!!』

 

『そんな物は知らん』

 

デュラハンの剣が、リザードマンの頭部をズブリと貫く。

 

『強き者と戦う、それが私の生きる道だ』

 

エクエスは剣の血を払い、剣を鞘に納めてからガルム逹の方へと振り返る。

 

『…さて、話を続けようか』

 

「あぁ、そうだな……それで、本当なのか? さっき言った事は」

 

『嘘をついて何になる?』

 

エクエスは近くにあったベンチに座り込む。

 

『我々ヴァリアントは、ある日を境にこの世界へとやって来た。時空管理局とやらを壊滅させ、この地を支配した後も人間を狩り続けている』

 

「そして、そのヴァリアントを率いているのは吸血鬼のアルカルド」

 

『そのアルカルドは私を含め、9人の幹部を従えている。ルーパス、ラディチェス、ブルク、レムレス、ボラティリア、シーハッグ、パリス、ナスティ、そして…』

 

「エクエス……つまり、お前の事だな」

 

『…その通りだ』

 

デュラハン―――もといエクエスは、FalSigの言葉を肯定する。

 

「しかし分からないな。仮にお前の言った事が本当だとしても、何故それを俺達に教える?」

 

『理由など無い。それが怖いなら、何か理屈でも付けてやろうか?』

 

「…いや、良い。それを聞く意味は無さそうだ。それでどうする? お前は強き者と戦う事が生きる道だと、そう言ったな」

 

『あぁ、そう言ったさ。何なら……今この場で、お前達と戦ってやろうか?』

 

「ッ…!!」

 

「…へぇ、それも面白そうだな」

 

エクエスの放つ覇気にFalSigは思わず圧倒されるも、ガルムは怯むどころかニヤリと笑ってみせる。しかし、エクエスはすぐに覇気が収まる。

 

『…だが、今はそんな気分ではない』

 

「ん?」

 

『他に興味深い男を見つけたのでな。今はその男との勝負を望んでいる』

 

「ふぅん……どんな奴だ?」

 

『片目に眼帯をつけた魔導師だ。お前達なら、何か知っていそうだな』

 

「!? 二百式か…」

 

『ほう、やはり知っていたか。一度奴と戦ったのだが、途中で勝負を諦めて命を差し出そうとしたのでな。殺す価値も無いと突き放してやった』

 

「おっと、手厳しいんだな」

 

『奴にはまだ、かなりの潜在能力があると見た。まだ殺すのは惜しい』

 

エクエスはベンチから立ち上がる。

 

『お前達は知り合いなのだろう? その二百式という男に伝え欲しい事がある』

 

「…何をだ?」

 

『生きる覚悟が決まった時、また私に会いに来い。それまで勝負はお預けだ……とな』

 

それだけ言って、エクエスは瞬時に姿を消してしまった。エクエスがいなくなった後、緊張の糸が解けた二人はその場に座り込む。

 

「…あのエクエスとかいう奴、只者じゃないな」

 

「そうっすね……ガルムさん、どうします?」

 

「ま、合流した時に俺から伝えるさ。にしても二百式の奴、命を差し出そうとか何を考えてんだか…」

 

 

 

-ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥ…-

 

 

 

「「ん?」」

 

その時、二人の真上から何かが落ちて来た。そして…

 

「のごぁ!?」

 

「着地!」

 

FalSigの頭の上で、kaitoが盛大な着地を決めてみせた……そのおかげでFalSigは床に顔面を打ってしまう羽目になったのだが。

 

「…kaito、お前何やってんだ?」

 

「あ、どうもガルムさん」

 

「! 竜神丸。それと、支配人のところの…」

 

「ユークリッド・カールレオンだ」

 

「フレイアじゃ」

 

更に竜神丸、ユリスとフレイアもガルム逹の前に姿を現した。

 

「ガルムさんにFalSigさんだけ……まだ他のメンバーとは?」

 

「あぁ、合流出来てない。早いところ全員合流するべきなんだろうが…」

 

「あ、そうだガルムさん。ちょっと」

 

「ん?」

 

竜神丸はガルムにこっそり耳打ちする。

 

(kaitoさんが選ばれました)

 

(ッ!! …マジかよ)

 

竜神丸の報告に、ガルムは驚愕の表情を浮かべる。その様子をユリスとフレイアが眺める。

 

「フレイア、彼等は一体何の話をしているのだろうか」

 

「儂だって知らん。じゃが、どうもキナ臭い事なのは確かじゃ(何せ、あのマッドサイエンティストの事じゃからのう…)」

 

二人が怪しむ中…

 

「あり、FalSigどうしたの~?」

 

「…kaitoさんや、ちょっと的になってくれやせんかねぇ…?」

 

「だが断る」

 

「よっしゃ上等だゴラァッ!!!」

 

FalSigを相手に、kaitoはいつも通りの調子で振る舞っているのだった。最も…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(どうしよっかな……ちょっと自分も予想外だよ、本当に…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

内心では、kaitoも相当考え込んではいたのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――んむぅ? ここは、一体何処だ…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある存在が、この地へと降り立っていたのだった。

 


 
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