No.750817

いぬねこ!7-虎生真梨誕生日SS 2015-

初音軍さん

普段からきついほどしっかりしてる人でもこうなることもあるんですね、たぶん。強気のある人ほど弱弱しくなるとギャップが可愛いような気がします。でも虎生さんって弱気になることあるんだろうか(◞‸◟)細かいこと気にせずちょっとでも楽しんでもらえれば幸いですw

2015-01-12 10:04:45 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:619   閲覧ユーザー数:619

いぬねこ!7 虎生真梨 誕生日SS 2015

 

「体調管理くらいしっかりしなさいよね、バカなの?」

「無理して人に迷惑かけるくらいなら、するな!」

 

 とか人に言っておいて現在私はベッドで口で計る体温計を咥えながら

冷えピタを貼って寝ていた。

 

 私もバカでしたすみません。と心の中でちょっと弱気で自傷気味に思った後

無性に乙姫に甘えたくなってきた。

 

 布団の中は熱のせいなのか乙姫のこと考えて火照ってきたせいかはわからないが

すごく暑苦しく感じた。普段はちゃんと管理していただけにこういう事態になると

慣れていないせいかひどくもどかしく感じる。

 

 ピピピッ

 

「38.5℃」

 

 確認すると尚更だるくなって脱力してしまう。

昨日いきなりの高熱に乙姫に付き添ってもらい医者に行ってみたところ

風邪やインフルの可能性は低く、どうやら過労のようだと診断された。

 

 しっかり休んでいればすぐに熱も引くらしいけど。

一人きりだとなんだかもどかしくて、何かしたくてたまらなくなる。

 

「・・・もう・・・!」

 

 イライラ

 

「乙姫のバカ」

 

 理不尽だとはわかっていても誰かに八つ当たりでもしないと気がすまない。

そんな面倒くさい性分の私が頭の中に浮かんでいた子の名前を使って軽く叫ぶと

誰もいなかったはずの部屋から反応が返ってきた。

 

「ひどいなぁ、私何もしてないのに」

「え、乙姫!?」

 

 一瞬幻聴かと疑ったけど実際に聞こえてきたからには体を起こして確かめずには

いられなかった。

 そして、上半身を起こした視界には確かに乙姫が苦笑しながら私を見ている姿があった。

今日は学校がある日だったはずだけど。

 

「ほら、ちゃんと寝てないと。汗かいてるね・・・着替えさせてあげる」

「う・・・うん・・・」

 

「真梨の汗の匂い…好き…」

「バカ!」

 

 取りやすい位置にパジャマを用意していて手際よく私を着替えさせてくれた。

こういう時、普段から脱がせたり脱がされたりしたかいがあるかもって

ぼんやりした頭で思っていたけど。

 この考えは多分通常に戻ったら死ぬほど恥ずかしいんだろうなとか考えていた。

汗もちゃんと拭きとって着替えてから布団に入るまでゾクッとした寒さを感じたが

すぐに熱の篭った布団の中に入ってホッと息を吐いた。

 

「学校は…?」

「ん、今日は早退させてもらった。真梨が心配だったからさ」

 

 嬉しいことを言ってくれるのはありがたいけど、そんな理由で仕事を放棄したのは

私の中のイライラが徐々に膨らんでいった。

 

「ちゃんと最後までやりなさいよ!」

 

 力の入らない拳で乙姫の胸元を叩きつけると、乙姫がちょっと困った顔をしていた。

 

「真梨が辛そうにしているの見たらそうはいかないよ。それに他のメンバーがフォローを

ちゃんとしてくれるって。ずっと真梨のこと見ていた子たちなんだから」

 

 それとも彼女らを信じられない?と言われて、私は小さく首を横に振った。

大体は私たちが済ませてしまうけれど、後に続けられるように後輩たちのことも見てきて

ちゃんとしてきているのを見てきて信じられないってことはない。

 

「だから真梨もしっかり寝て、ちゃんと治して一緒に学校にいこう」

 

 言いながら私の布団の中にごく自然に入ってきた乙姫は軽く私の唇に彼女の唇が

重なり、切ないような声がちょっとだけ漏れた。

 

「うん…」

 

 ありがとう、なんて恥ずかしい言葉は乙姫に対しては言えないから心の中で

思いながら目を瞑った。

 

 あれだけもどかしかった気持ちも隣に乙姫の気配と暖かさがあるだけでだいぶ違って

気持ち落ち着いて不思議なほどスッとするように眠気に誘われてそのまま眠りに就いた。

 

 

**

 

 翌日、あれだけあった熱も一気に平熱まで下がり。まだ少しだけ頭がボヤけながらも

他は全然平気で私と乙姫は家を出た、乙姫は嬉しそうにニヤニヤしながら私を見て。

 

「何よ、ニヤニヤして気持ち悪い!」

「ひどいなぁ、元気な真梨が見れて嬉しいだけよ」

 

 きつめな言葉をかけられてもその爽やかな笑顔は崩れることはなく私を見続ける。

私も照れくさいから汚い言葉も出やすくなるんだけど、そんなの見透かされているから

何か特別なことするわけでもなく、私はいつも通りに乙姫を罵倒しながらも…。

 

 ギュッ…

 

 隣にいる彼女の手を握りながら歩くのだった。

誰かに見られるのは恥ずかしくて嫌だから人気のない場所限定で。

そっと視線を戻してもまだ私を見ていて、顔が熱くなってまた視線を外した。

風邪や過労からくる熱よりも、こっちの熱のほうがよっぽど厄介だなと。

私は手から伝わる暖かさと心地良さを感じながら笑みを零した。

 

お終い


 
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