No.739871

寂しがりやな覇王と御使いの兄20話

あなたまさん

小さな大軍師達です

2014-11-27 09:03:50 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:10872   閲覧ユーザー数:8148

一刀「う~ん……ッハ!俺まだ生きてる……?」

 

明命「一刀様!お目覚めですか!?」

 

一刀「嫉妬神に襲われてからの記憶がないけど……多分平気」

 

明命「一刀様、それは思い出さなくていい記憶ですよ。そのままにしておきましょう」

 

嫉妬神の暴力で死の淵をさ迷っていた一刀だったが、なんとか死の淵から脱出し意識を取り戻す。

制裁を受けている時の記憶をなんとか思い出そうとするが、明命に思い出さなくて良いと言われたために思い出すのを断念する。明命としても、あの光景を一刀が思い出したら……廃人になるかもしれないと危惧しての行動だった。

 

一刀と明命が一呼吸付いたその時、部屋の扉を開ける音が聞こえる。

2人は開けた人物に視線を向けると、入って来たのは一刀にとっては意外な人物だった

 

劉備「あ、呂珂さん気が付きました?」

 

一刀「あれ?劉備さんお久しぶりです。こんな所で会えると思いませんでしたが、なぜこの襄陽に?」

 

劉備「多分ですけど、呂珂さん達と同じ理由ですよ♪それより体大丈夫ですか?道端でゴミのように捨てられてましたので……正直死んだかと思ってました」

 

一刀「……そんなにひどかったのね」

 

劉備「かなり……二度と見たくない光景でした」

 

あの劉備に二度と見たくないと思わせる程の光景……

それを彼女に見せ付けてしまった事に申し訳ないと謝罪の念を送ると共に、なんでそんな状況だったのに自分は生きているのだろうか……生命の神秘に触れた気がした一刀である

 

明命「本当にご無事でよかったです!仕えて早々に主君を失わずに済みました!」

 

一刀「心配するところそこだったのね。この部屋には明命が運んでくれたのか?」

 

明命「はい!事態が大きすぎて泣きそうになってた私に、劉備さんが的確な指示をくださったので稟さんと一緒に運ばせていただきました!」

 

一刀「そうか……劉備さん助かったよ、ありがと」

 

劉備「困ったときはお互い様ですよ!むしろ……あの状態の知人を見つけて、何もしない人は居ませんから」

 

自分が気絶した後の出来事を明命から教えてもらい、また劉備のお世話になったのだと再確認する。嫉妬神と化した愛紗を止めてくれたのも劉備だというので、しばらくは劉備に頭が上がらない思いだった

 

劉備「そういえば、関羽さんから程昱さん、呂布さんは荀家に預かってもらってると聞いた時はびっくりしました!荀家の方とは付き合い長いのですか?」

 

一刀「あーうん、色々とね。現当主の荀緄さんとはこの間初対面だったけど、その娘である荀彧とは昔から交流があるからね。大人数で旅する余裕が無かったから、好意に甘えてる状況かな」

 

一刀も曹家の次期当主として、個人用の資産はある程度持っていたのだが、恋と旅をし始めてから一気に所持金が底を着いたのだ。消えていった所持金の内訳はすべて恋の食事代だったりするが

 

一刀「ところで劉備さん、俺と同じ理由で襄陽に来たと言ってたけど、それってどういうことかな?」

 

劉備「もぉ~知らない仲ではないのですから、しらばっくれないでもいいじゃないか!水鏡女学院の諸葛亮孔明・龐統士元に会いにきたんです」

 

まさか知己に腹の探り合いをされると思ってなかった劉備は、自分の目的を素直に教えた後に、ぷんぷん!と怒ってますアピールを一刀に向ける。

向けられた一刀は、劉備が怒っても可愛らしさと言うか、天真爛漫な面が勝っているために、怒られてるのに笑顔を浮かべている。

 

劉備「呂珂さん!なんで怒ってるのに笑ってるんですかーー!」

 

一刀「ごめんごめん、劉備さんの怒ってる姿が可愛らしくてつい……ね」

 

劉備「はぁ……そんな女の子が喜ぶ台詞をすぐ言うから、関羽さんに制裁されちゃうんですよ?」

 

 

 

劉備に呆れられてる一刀はその時別の事を考えていた……

 

劉備が襄陽を訪れたのは伏龍・鳳雛を配下に加える事。

史実でも劉備は両者を加え、特に諸葛亮が加入した時の喜びは凄まじく、後の世に水魚の交わりと伝えられるほどだ。

 

華琳を護るためにも、稀代の大軍師と呼ばれる二人の少女を確保したい。

しかし、幽州、この襄陽と世話になった劉備の人材不足を解消させてあげたい……そんな思いが一刀の頭を駆け巡っている

 

一刀「確か……劉備さんの所って人材難だったよね?」

 

劉備「そうなんですよ~。白蓮ちゃん……あ、私の友達で公孫讃って子がいるんだけど、そっちも人手が足りなくて……でもでも!頑張って勧誘活動して4人登用できました!」

 

あれ、公孫讃?

史実と前回の外史だと、公孫讃が幽州太守で、劉備さんが義勇兵を率いて世話になってたような……今回だと主従が逆転してるのかな?

 

一刀「4人は凄いな、どんな人達を登用できたの?」

 

劉備「ん~と、呂珂さんが知ってるか解らないんだけど、私の所は文官で簡雍さん、武官で遼西郡の韓当さんを登用できたよ!白蓮ちゃんに治めてもらってる北平で程普さん、徐栄さんを登用できたから白蓮ちゃんの下で力を発揮してもらってるかな?」

 

今の言い方だと、やっぱり公孫讃は劉備さんの下らしい。

それはそれでいいのだが……二人程聞き間違えか?と思える大物の名が……

 

一刀「……簡雍さんと徐栄さんとごめん、後2人の名前もう一度教えてもらえる?」

 

劉備「韓当義公さんと程普徳謀さんだよ」

 

(おいおい、孫呉四天王の2人が劉備さんの陣営ってどういう事だよ……確かにこの2人は元々幽州出身者。だから登用されてもおかしい所は無いんだけど……違和感ありすぎだ)

 

一刀「その4人の事を教えてもらえないかな」

 

劉備「いいですよ!え~と、簡雍さんはちょっと傲慢な性格があるけど、内政の手腕は高い人物なのと、徐栄さんは民からも慕われて、強い統率力を持つ武人さんだよ!」

 

劉備「韓当さんは武勇に優れてて、鈴々ちゃんの次に強いよ!程普さんは智勇兼備の将軍さんかな?私もまだ登用したばっかりだから、まだそんなに知ってるわけじゃないんですよね」

 

まだ登用したばかりの将をの実力をそこまで把握してば十分だと思うけどね。将軍と呼べる豪傑3人と内政官として簡雍か……これに万能型の公孫讃と大豪傑である張飛を加えた陣容は中々だ、後は軍師と呼べる人材が加入すれば万全か

 

一刀「ところで、劉備さんの供の人は何処に居るの?」

 

そういうと劉備はさっとそっぽを向く、その態度でバレバレなのだが、供を就けずに襄陽まで旅をしてきたらしい……

一国の主が供を就けずに旅するってどうなの……一歩譲って、武の心得があるならまだしも、武はからっきしの女の子が何してるの

 

一刀「はぁ……明命、すぐに稟と愛紗に出発するって連絡してくれ。劉備さんも早く帰らせないと、不安でしょうがない」

 

明命「わかりました!すぐ伝えてきます!」

 

劉備「呂珂さん!それはどういう意味ですか!?」

 

一刀「武を持たない女の子が1人でここまで旅するのがおかしいの!自覚を持ちなさい!」

 

流石にこれには反論出来ないと理解したようで、あう……と言葉を詰まらせていた。というか、配下の人達もなんで止めなかったんだ?意外と頑固で強かな面も持ってるから強引に事を運んだのか?

 

稟「一刀殿、起きて早々なんで叫んでいるのですか」

 

一刀「稟か、劉備さんが供を就けずに1人で襄陽まで来たって言うから、少しお説教をね」

 

稟「私と風も旅をしてましたが、星という護衛が居ましたから安心でしたが……流石に劉備殿だけの旅は擁護出来ませんね。何かあってからでは遅いのですから、もう少し上に立つ者として、危機管理能力を養ってください」

 

劉備「はぅ……ごめんなさい」

 

 

我を通す事も時には大事なのだが、それで自分を危険に晒しては本末転等。

稟の言った言葉は正論であり、劉備本人も自覚している事だったので、反論できずに素直に謝る。

 

一刀「劉備さんも反省してるみたいだし、この話はこれでお終い。それじゃあ劉備さんを加えて水鏡女学院に行くよ!」

 

この話は完全に終り!と意図があるのか、一刀はあえて明るく号令をかける。

その号令に劉備はおーー!と両腕を高く上げ、一刀同様に明るく元気に答え、それを傍から見ていた愛紗と明命も劉備に負けじと、はい!と続く。

 

ただ1人、それに参加しなかった稟は一刀と劉備のやり取りを目の当たりにし、この2人の性質は近しい者。かつての外史で劉備の甘さを一刀が補っていればどんな強敵になっていたか……そんな事を思うと同時に、一刀と劉備が組めば国の体制が磐石になるだろうと確信していた

 

 

 

 

 

襄陽を発した一行は和やかな雰囲気で水鏡女学院に向かっていた。特に劉備と愛紗、この2人は何か惹かれあう物があるのか、話す機会が他の組み合わせよりも多くなっていた

 

一刀「仲良いな、あの2人」

 

稟「本来関羽は劉備の義妹ですからね、何か惹かれあうのがあるかもしれません」

 

一刀「そうだなあ……まぁ、その辺りの判断は愛紗に任せてるから、俺からは何も言わないけどね」

 

稟「一刀殿がそう仰るのでしたら何も言いませんが……それより着きましたよ」

 

愛紗が一刀から離れる事は絶対に無い、その事を一刀は理解していないようだった。

変な所で女性の心に機敏かと思えば、普段は鈍い所は変わらない。そんな所も一刀らしいと追求する事はしなかった

 

一刀「着いたか、大勢で行っても迷惑だろし、明命と愛紗はすまないが残ってくれ。何かあったらこちらから呼ぶ」

 

愛紗「わかりました、帰りをお待ちしております」

 

明命「いってらっしゃいです!」

 

一刀「稟は俺と一緒にきてくれ、正直あの二人相手じゃ荷が重い」

 

稟「わかりました」

 

一刀「あと劉備さんは……どこに行ったんだ?」

 

留守番を言い渡された愛紗と明命は不満を言う事は無く、素直に一刀の指示に頷く。道中から教えられていた2人の才能を聞いて、智の才には乏しい自分達が行っても仕方ないと理解しているためだ。

一刀は稟と劉備を連れて女学院の扉を叩く予定だったのだが……

 

劉備「ごめんください~どなたかいらっしゃいますかー?」

 

稟「もう行ってましたね。」

 

一刀「だな……本当に彼女は元気一杯だな」

 

置いてけぼりになった形だが、不思議と劉備を怒る気持ちが沸いて来ない。

これが劉備の持つ魅力なのか?と思いながら劉備の下へ歩み始めたその時、扉を開けて1人の女性が一刀達に姿を現す

 

水鏡「お待ちしておりました、劉備玄徳様と呂珂玲綺様」

 

劉備「わわ!私たちが来るのわかってたんですか?しかも私達の名前も知られてます!」

 

水鏡「元気の良いお嬢さんですね、貴方達の事は襄陽に来る前から知って居ました。これでも情報網には自信あるんですよ?それに……諸葛亮と龐統が襄陽での騒ぎを目撃していましたから」

 

稟「あれを見られていたのですか……恥ずかしい限りです」

 

一刀「俺なんて棒切れだぞ……第一印象最悪じゃん」

 

水鏡が早くから一刀達の来訪を察知していた事にも驚きだが、まさか襄陽での騒ぎを目的である2人に見られていたとは露程も思っておらず、恥ずかしさが一刀達を襲っていた。

 

水鏡はそんな一刀達を微笑ましそうに見つめる。どんなに才覚を持っていようが、水鏡から見たら可愛い子供なのだ

 

水鏡「ふふ、では皆様を伏龍と鳳雛の場所へ案内させていただきます」

 

 

水鏡に案内された一室には既に女の子が2人待機していた。

1人は金色の髪の毛にベレー帽を被っている子。もう1人は銀色っぽい髪の毛に髪型はツインテール、魔女っこみたいな帽子を被っていた

 

孔明「皆様、本日はお越し頂き、ありがとうございます。私の名前は諸葛亮孔明です」

 

士元「私は龐統士元です、お見知りおきください」

 

水鏡「あらあら、2人共珍しく噛まないのね」

 

孔明「はわわ!そんな簡単にかまないでしゅ!」

 

士元「あわわ!噛まないでし!」

 

水鏡「あらあら、やっぱり噛んだわね」

 

2人「あぅ~~~~」

 

この2人がカミカミ属性なのと、このやり取りからこの三者の絆の深さが感じ取れる。

一刀は小動物のような2人と恋を組み合わせたら、ヒーリング効果が凄まじいのではないか!?と変な結論に行き着いていた

 

稟「一刀殿、顔がたるんでます」

 

一刀「おっとすまない、ついつい変な考えが頭を過ぎった」

 

稟「一刀殿が変な考えを起こすのは毎回です。今更すぎるので驚きもしませんね」

 

稟にバッサリ切られた一方で、孔明達は未だに恩師である水鏡とのじゃれ合いの最中だった

 

孔明「せっかくカッコ良く決められたと思ったのに~水鏡先生のバカ~~!」

 

士元「台無しです」

 

水鏡「ごめんなさいね。それでは皆様私は失礼します。朱里、雛里しっかりね」

 

水鏡は2人とのじゃれ合いを止め、自らの退室で本題に入るように促す、それに応じて一番最初に口を開いたのは劉備だった

 

劉備「それじゃあ私も自己紹介させてもらいます!私は劉備玄徳、幽州で太守をやってます!」

 

一刀「俺は呂珂玲綺だ。よろしくね2人共」

 

稟「私は玲綺殿の付き添いの郭嘉、字は奉孝です」

 

諸葛亮と龐統は一刀及び劉備が来るのは把握していたが、自分達に匹敵する存在である稟を把握してなかった。諸葛亮達が名を馳せているように、荀彧・郭嘉の名前も知者の間では鳴り響いているのだ。風は自分の才の底を見せた事が無いので、名前はそこまで知れ渡っていない

 

孔明「よろしくお願いします。それでは単刀直入にお伺いします、本日の来訪は私たちを配下に加えたいということでしょうか」

 

劉備「私も単刀直入に返答します!私は有名な諸葛亮さんと龐統さんが仲間になって欲しいと思って来ました!」

 

孔明「なぜ私達なのでしょうか?」

 

劉備「私は民が平穏に、そして笑顔が自然に出るような、夢物語かもしれませんがそんな世界を作るのが理想です。幽州太守になったとはいっても、私達は兵力・人材・資材すべて弱小です。どんなに理想を掲げようとも、実行出来る力が無ければ民を守ることも、笑顔にすることも出来ません。」

 

「私と幽州に居る仲間と、仲良くしてくれている匈奴の人達がいれば、現状は守ることはできますが……これから先、強大な敵が現れた時に慌てるようでは、強敵に潰されるだけだと思っています。強大な敵が襲ってこようと、天災に襲われても、決して挫けることの無い力のある国を造る、それが今の私の目標です」

 

「でも……悔しいですが、私達の力ではその目標に届くことすらできません。目標、そして理想を実現させるためにも、大陸屈指の智謀を持ち、先を見通す力があると言われる諸葛亮先生と龐統先生に幽州の頭脳に、柱石になっていただきたいと思い、幽州から会いに来ました!未熟な私達に力を貸してください!」

 

劉備は自分の理想、本音を包み隠さずに諸葛亮、龐統にぶつける。

大きな理想を掲げているが、自分達の力ではそれが実現困難な事をしっかりと把握し、実現に足りない部分を的確に補おうとしている……自分達を客観的に見て判断を下す。以前は仲間にすべて丸投げしていて、理想だけを謳っていた劉備では無い。その事を稟を再確認する事となった

 

稟(以前の世界の劉備殿は甘い理想を掲げ誘惑し配下にすべて丸投げするような君主でしたが……一刀殿の言う通りこれは別人ですね……風からも聞いていましたが、実際に会ってみてこれ程とは思っていませんでした……恐らくこれは分が悪いです、一刀殿)

 

稟の予想通り、劉備の演説は確実に諸葛亮、龐統の心に響いていた。

 

自分の理想を甘いと自覚しつつも、それに溺れずに自分達の現状を把握して行動する。言うのは簡単だが実行するのはとても難しい。それに、現状に満足せず、常に先を見て成長しようする姿勢を見せる劉備に諸葛亮と龐統は共感出来る部分が多くあった。

 

それに加え、辺境の地だった幽州を、漢の都である洛陽に負けず劣らずの大都市にまで成長させた内政手腕、民を愛し民から愛される仁愛の君主という前情報もプラスに働いていたのだ

 

 

 

 

一刀「孫家四天王と称された二人が仕えたのも理解できる、以前あったときより大きくなってる……やれやれ嬉しい誤算だよまったく。なぁ稟……ここから龐統を仲間に加える事は可能だと思うか?」

 

稟「恐らく無理かと。彼女達は個々の能力もズバ抜けてますが、強みお互いの弱点を補っているってところですね、2人はその仲の良さから思考を読みあい、1人では見落としてしまうかもしれない点を補っています。なにより……あの2人は一緒にいるのを望んでいるかもしれませんので、最初から分の悪い賭けだったのでしょう」

 

一刀「そこまで見抜く稟も流石だよ。確かに2人の仲からして、1人だけ陣営に引き入れようとしてもダメか。それに……劉備さんが大きい器を見せた後だし……ここで伏龍か鳳雛を見逃すのは痛いが、大事な人と一緒に居たいって気持ちは俺が一番知ってるからな……あの2人を裂くなんて真似は無理は出来ないな」

 

稟「一刀殿……」

 

劉備や諸葛亮達のやり取りを少し遠い所から眺めていた一刀と稟は、自分達の勧誘は失敗に終るだろう確信する。説得次第ではもしかしたら自分達に付いてくれるかもしれないが、親友同士を引き裂くのは忍びない。大切な人達との別れを経験している一刀にとって、どれだけ自分達が不利な状況になろうと、それだけは絶対に出来ない行為だ。

 

劉備と話していた龐統は、一刀が未だ自分達に寄って来ない事を不思議に思い、オドオドしながらも一刀に話しかける

 

士元「あわわ、呂珂さんはどうですか?」

 

一刀「俺かい?俺は龐士元に力を貸して欲しいと思ってきたんだけど……諦めて引き下がるよ」

 

劉備「え!?諦めちゃうの?」

 

稟「奪い合ってる貴方が驚いてどうするんですか」

 

劉備「あ、つい驚いちゃって」

 

まさか、一刀があっさりとこの2人の獲得を諦めると思っていなかった劉備は、思わずびっくりしたように声を上げる。そんな声を上げた劉備に稟が突っ込みを入れる、劉備からしたらもっと論戦になったりするだろうと思っていた、その為拍子抜けって心境もあるのだろう

 

孔明「私達を諦める理由を伺ってもいいですか?」

 

諸葛亮も、自分達を訪ねて来たのに、なぜそんなあっさりとしているのか気になり、一刀に理由を尋ねる

 

一刀「それは二人がよくわかってるでしょ?そんな晴れ晴れとしたやる気のある顔を見せられたら何も言えないよ」

 

孔明「はわわ!そんなわかりやすいでしゅか!」

 

士元「あわわ!朱里ちゃんかみまみでしゅ!」

 

図星だったのか、諸葛亮と龐統はカミカミ口調でアタフタと慌て始める

 

一刀「2人共かみかみだよ。龍と鳳……我主人を得たりって感じかな」

 

孔明「そこまで見抜かれてましたか……申し訳ありません。劉備様の噂での人物像と、実際お話して、私達はこのお方に仕え支えたいという気持ちが強くなりました」

 

士元「コクコク」

 

一刀「そっか……自分達が仕えたいと思える人物に会えたんだし、俺の事は気にしないでくれ」

 

諸葛亮の言葉が龐統の言葉でもあったのか、龐統は諸葛亮の言葉に同意するように首を縦に振る

対する一刀もその言葉を予想していた為に、若干悔しい思いを抱えつつも淡々と答える

 

一刀「さて、それじゃあ俺達はこれで御暇しますか」

 

劉備「もう行っちゃうんですか?」

 

劉備の表情と声の様子から、本当に別れが寂しいといった感情が込められている。それに気がついた一刀は苦笑しつつも、去ることを伝える

 

一刀「今後の事を話し合うのに、部外者の俺達が居たら話し辛いでしょ?稟、行くよ」

 

稟「はい、それでは失礼します」

 

稟を伴って部屋から出て行く前に、諸葛亮や龐統にお邪魔しましたと一礼してから部屋を出る。

諸葛亮と龐統も慌てて立ち上がり、同じようにペコリと一礼をする

 

劉備「あ、呂珂さん!愛紗ちゃんや程昱さん達によろしくね伝えておいてね~~!」

 

最後の劉備のお願いを聞き入れたというアピールなのか、背を向けたまま手を振って答える。

 

孔明「潔い人だったね、もっとごねたりするかと思ったね」

 

士元「私達の思考が読まれてると思わなかったよ、そんなに顔にでてたかな?」

 

劉備「ん~私も見てたけど、全然わからなかったよ?2人共慌ててたから、解らなかっただけかな?」

 

士元「あぅ~」

 

孔明「それもありますが……いずれあの方は大きくなります。それに負けないように頑張りましょう劉備様!」

 

劉備「これからよろしくね!」

 

孔明・士元「はい!」

 

 

 

 

 

 

愛紗「お帰りなさいませ、どうでしたか?」

 

部屋に戻って来た一刀と稟を、愛紗が出迎える。伴っているのが稟だけなので、恐らく失敗に終わったんだろうと思いつつも、一刀に結果を尋ねる

 

一刀「見ての通りだよ」

 

明命「あぅあぅ、ダメでしたか」

 

稟「先に劉備殿が話したのが失敗でしたね。彼女の噂もここまで伝わっていたようですし」

 

一刀「二人がついたのは劉備さんの実力さ、順番は関係ないさ」

 

稟「ですが……」

 

一刀は本当に伏龍、鳳雛を迎える事が出来なかった事をなんとも思ってないようだった。出来れば1人でも来て欲しいというのが本音なのだろうが、一刀自身この事を納得しているために、清清しい表情だった

 

 

一刀「それじゃあここでの用も終わったし、益州目指して出発しようか!」

 

愛紗・明命「了解です!」

 

 

 

 

伏龍・鳳雛の勧誘は失敗に終わったが、一刀達の旅は終りでは無い。次なる目的地・益州を目指して一刀、愛紗、明命は明るく出発するが、稟だけは暗い表情のままだった

 

稟「……」

 

一刀「稟、どうした?何か懸念する事でも出来たか?」

 

稟「いえ……一刀殿が力説していた割には、あの2人の事をあっさり諦めたのが気になりまして……大丈夫ですか?」

 

一刀「なんだ、珍しく稟にしては弱気だな」

 

稟「今は友好関係を築いていますが、もし彼女達が敵に回ったらどうするのですか?」

 

一刀「その時はその時かな?実際はその時になってみたいと解らないが、伏龍・鳳雛は仲間に出来なかったけど、俺には愛すべき3軍師がいるんだ。それにだ、もしもその時は、稟が全力を持って伏龍・鳳雛に打ち勝ち、俺や華琳に勝利をもたらしてくれるんだろ?なら俺は頼れる仲間を信じるだけだよ」

 

そう豪語する一刀に稟は呆気に取られるが、不思議とやる気がフツフツと湧き上がってくる。

自分の軍師としての才を信じられ、伏龍・鳳雛を倒せると断言されてるのだ。これでやる気が沸かないほうがおかしいのだ

 

稟「ふふ、誰に言ってるんですか一刀殿?この郭奉孝を舐めないで下さい!必ずや貴方達を勝利に導いてみせます」

 

一刀「あぁ、頼りにしてるよ稟」

 

明命「一刀様~稟さん~~~おいていっちゃいますよ~~?」

 

一刀「おっと遅れちゃってたか、いこう稟!」

 

稟「どこまでもご一緒します」

 

(一刀殿……私を信じ任せてくれる貴方を……この世界では私のすべてをもって護り抜き、乱世を終らせてみせます。私だって二度と貴方を失いたくはないのですから)

 

 

 

 

 

 

 

 

なんとか20話までこれました。

 

 

ひなりん加入を期待していた方には申し訳ないですが朱里と共に劉備陣営に加入させてもらいました

程普・韓当・ひなりん・朱里加入で劉備陣営に厚みが増したと思います

 

 

原作だと稟は一刀を好きよりでも嫌いよりでもないのでデレがほしくて最後の1コマを演出しました

 

 

 

呉陣営涙目とかきそうだなあ~くるよね~これだと

呉陣営はてこ入れするのは決まってるので多分・・・大丈夫なはずです。。。

 

 

 

 

次は焔耶・桔梗回ですがネタ的に短くなったらすみません><

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
40
5

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択