No.736570

真・恋姫†無双 異伝「空と命と夢の狭間に」第五十九話


 お待たせしました!

 今回も一応拠点です。

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2014-11-11 20:47:09 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:6298   閲覧ユーザー数:4464

 

「袁紹、お主の謹慎を本日ただ今を以て解き、妾の近習を命じる。なお、文醜と顔良

 

 には今まで通りに袁紹の補佐を命じるものである」

 

 ある日の朝、呼び出された袁紹主従に命が下したのは以上の命令であった。

 

「な、何と、この私にそのような厚遇を…もはや私の犯した罪は一生涯許される事も

 

 無く、誰の眼にも触れる事も無いままに、配所でひっそりと生涯を閉じるとばかり

 

 思っておりましたのに…この袁本初、陛下のその御心に対し一生を懸けて忠誠を御

 

 誓い申し上げる所存でございます!!」

 

 それを聞いた袁紹さんはそう言って感激の涙を流していたのだが…。

 

「なあ、斗詩?麗羽様が一度でもジッとしていた事ってあったっけ?何処へ行っても

 

 誰よりも目立っていたよな?」

 

「文ちゃん…それは、姫以外皆分かっているんだから、こんな所でわざわざ口に出さ

 

 なくても…」

 

「そうじゃぞ、そもそも妾が麗羽姉様達が好き放題やっているのを放っておいたから

 

 こその事なのじゃからな」

 

「よっ、さすがお嬢様!普通に考えたら明らかに監督責任を放棄しただけのその言葉

 

 をそこまで偉そうに堂々と言えるなんて、空気の読めなさ大陸一!!」

 

「ぬははーっ!もっと褒めてたも!!」

 

 他の袁家の面々は後ろで言いたい放題であった。しかしこの面々の中だと、本当に

 

 顔良さんが可哀想になる位のボジションにいるな。

 

 

 

「というわけでして、本日より共に陛下の御為に尽くす事になりました。よろしくお

 

 願いいたしますわ、北郷さん。私の事は気兼ねなく麗羽とお呼びになって下さって

 

 結構ですわ!」

 

 命との拝謁を終えた後、袁紹さん達を宛がわれた役宅に案内する事になった俺に彼

 

 女がそう話しかけてくる。

 

「あ、ありがとう…俺の事は一刀で良いよ、麗羽」

 

「分かりましたわ、一刀さん。しかし考えてみれば不思議なものですわね」

 

「と言うと?」

 

「最初、一刀さんと私が会った時にはあなたは盧植さんの使用人でしたわね。それが

 

 次に会った時には陛下からの使者として、その次には衛将軍として反逆者となった

 

 私を捕縛し、そして今はこうして共に陛下の下で働くお仲間として此処におられる。

 

 これを不思議な縁と言わずにおられましょうか」

 

 何と瑠菜さんの使用人時代の俺の事を覚えていたとは…あまりにもの意外さに驚き

 

 を禁じ得ない。

 

「今にして思えば、盧植さんと共に現れた時からあなたには何かしら違う物を感じて

 

 いたのです。やはりあの時にもう少し一刀さんの存在に気を付けておくべきでした

 

 わね…ああ、持って生まれた物とはいえ、袁家という名家の名が恨めしいですわ」

 

 へぇ…そうですか。それは良かった。まあ、これからは命の邪魔にならない程度に

 

 頑張ってくださいねー。

 

「北郷様、私達も麗羽様共々よろしくお願いします。私の事は斗詩と呼んで下さい」

 

「あたいの事は猪々子でいいぜ!」

 

「こちらこそ、俺の事は一刀で良いよ」

 

「はい、一刀様」

 

「あたいはアニキって呼ばせてもらうぜ!」

 

 とりあえず一人で何やら言っている麗羽は放っておいて俺は斗詩や猪々子と話をし

 

 ていたのであった。

 

(ちなみにその後で美羽と七乃も『真名を預けます』と言ってきたのでありがたく受

 

 け取っておいたのであった)

 

 

 

「ところでアニキ~。そろそろお昼だし、あたい腹へってきたんだけど…だから何か

 

 奢ってくれ!」

 

「ちょっと文ちゃん!いきなり何言ってるのよ!!お昼ご飯位、自分のお金で…」

 

「いや、いいよ。今日は麗羽達の復帰祝いって事で俺が奢ろう…何でもっていうわけ

 

 にもいかないけどね」

 

 俺がそう言うと猪々子は大喜びしており、対する斗詩は何だか申し訳無さそうな顔

 

 をしていた。

 

 ・・・・・・・

 

「この私が食事を奢ってもらう日が来るとは…生きていれば色々体験出来るものです

 

 わね。一刀さん、次は私があなたに奢らせてもらいますわ」

 

「そう?それじゃ期待しておくよ、麗羽」

 

 俺達は店を出た後、世間話をしながら街を歩いていたのだが…。

 

「てめぇ、蒲公英…今日という今日は許さねぇ、此処で決着つけてやる!!」

 

「それはこっちの台詞だ、バカ焔耶!!」

 

 …またかあの二人は。真名を何時の間にか預けあっていたから、さぞかし仲が良く

 

 なったのだろうと安心していたのに…はぁ。

 

 声のした方に行ってみると、予想通りに道の真ん中で蒲公英と焔耶(彼女からも一

 

 応ではあるが真名を預かってはいる)が得物を構えて一触即発の状態になっていた。

 

(ちなみに焔耶は桔梗さんのお供で洛陽に来ている。桔梗さんの話では鈴音達も後日

 

 来る予定との事らしい)

 

 

 

「あらあら、随分と血気盛んな方がいらっしゃるのですわね。街中であのような決闘

 

 をしようとは」

 

 それを麗羽は涼しい顔で見物している…完全に他人事って顔だな、これ。間違って

 

 も無いんだけど。

 

「ところで、あれはそのままで良いのですか?私はおもしr…頭脳労働専門ですので

 

 止められませんけど」

 

 七乃さん、今『面白そう』って言いかけたように聞こえるのは気のせいですか?

 

「いけいけ、思い切りやっちまえ~」

 

「ぬははーっ、派手な喧嘩は見ていて面白いのじゃ~」

 

 美羽と猪々子は完全に面白がってるし。

 

「一刀様、どうするんです?幾らなんでも、街中でこのままってわけにもいかないん

 

 じゃないかと…」

 

 斗詩だけだよ、普通に心配してくれるのは。やはり彼女は『袁家の良心』だな。今、

 

 俺が命名しただけだけど。

 

「とりあえずこのままってわけにもいかないし…斗詩、手伝ってもらっても良いか?」

 

「はい、私で良ければ」

 

 俺と斗詩が二人を止めようと前に出たその時、

 

「お二人ともそこまでです!!これ以上、街中での騒ぎはやめにしてください!!」

 

 そこにやってきたのは史那だった。

 

 

 

「何よ史那、邪魔だからどいて!」

 

「確か文鴦殿とかいったな、何の権限があって私達の邪魔をする!!」

 

 蒲公英と焔耶は勢いのままにそう文句を言うが、

 

「私は司隷校尉です!!」

 

 史那がそう言った途端に少し怯んだ表情を見せる。そういえば、史那には空位にな

 

 っていた司隷校尉になってもらっていたんだったな。さて、このまま傍観ってわけ

 

 にもいかないし…。

 

「そこに俺が加わればさらに文句は無いよな?」

 

「えっ…一刀お兄様!?」

 

「北郷様!?」

 

 そこに俺が声をかけると二人は完全に戦意喪失する。

 

 ・・・・・・・

 

「さて、それではこれから二人に何故あんな所で喧嘩を始めようとしたのかを聞こう

 

 と思います」

 

 一応喧嘩を収めた後、俺達は城内に戻って蒲公英と焔耶に事の次第を聞こうとした

 

 のだが…。

 

「そんなの全て蒲公英が悪いに決まっている!!」

 

「何言ってんのよ!そもそも最初に喧嘩売ってきたのは焔耶の方でしょう!?」

 

 当然…と言ってしまっては身も蓋も無いのだが、二人とも相手が悪いと言うだけで

 

 まったく話の進展が無かったりする。

 

「あらあら、困った人達ですわね…一刀さんもこんな者達の相手などしていては休ま

 

 る暇もありそうに無いですわね」

 

 

 

「なっ!?それはどういう意味だ!!」

 

「そうよ、何で蒲公英達がお兄様の負担になるっていうのよ!?」

 

 当然の事ながら、二人はそう麗羽に噛みついてくるのだが…。

 

「ですから、一刀さんは喧嘩を始めた理由について聞こうとしているのではありませ

 

 んこと?ならばそれまでに何が起こったのかを説明する事が先決であるはずなのに、

 

 あなた方が言っているのは自分の弁護ばかり…それで本当に事態の解決になると本

 

 気でお思いなのですか?」

 

 麗羽にそう理路整然と言われて、二人とも言葉に詰まる。それ以上に反応したのが、

 

「おおっ!?七乃、何だか麗羽姉様がおかしいぞ!!」

 

「そうですよね~、あんな正論を吐く麗羽様なんか麗羽様に見えませんよね~。何処

 

 かお身体というか頭の具合でも悪くされたんですかね~?」

 

「そうだよな…普通の麗羽様ならあんな事言わないしな。斗詩、すぐに医者に診せな

 

 いと!」

 

「三人とも…そういう言い方はさすがに麗羽様に失礼ですよ。麗羽様だって、たまに

 

 はああいう事を仰られる時もありますって」

 

 その他袁家御一行の四人であった。しかし皆好き勝手言ってるけど…意外に斗詩の

 

 言っている事もひどいんじゃないような気がするのは気のせいか?

 

「オッホン!確かに麗羽の言う通り、俺が聞きたいのは何があったのかという事だけ

 

 であって、どちらが悪いのかはそれを聞いた上でこっちが決める事だ。そうだよな、

 

 史那?」

 

「はい、一刀様の仰られる通りです」

 

 

 

「だから、何故ああなったのかというと…」

 

 蒲公英と焔耶の説明を聞いた所によると、たまには二人で食事にでもと連れだって

 

 出かけたのは良いのだが、拉麺に炒飯をつけるか白飯をつけるかで口論となり、そ

 

 れがエスカレートして喧嘩騒ぎになったという事らしい。

 

「何ですか、その馬鹿馬鹿しい理由は…」

 

「史那、それは聞き捨てならないよ!拉麺に白飯は必需品でしょう!?」

 

「何を言う、拉麺なら炒飯だろう!!しかし、それを馬鹿馬鹿しいと言うのは私も許

 

 せん!!」

 

 史那の呟きに蒲公英と焔耶は揃って反論する…さっき喧嘩しかけていたとは思えな

 

 い程に息があっているように見えるのは気のせいか?

 

「そんな事で喧嘩とは…随分と平和なお話ですわね」

 

「何だと!私の頭の中の何処が平和ボケになっているというんだ!!」

 

「いや、今そこまで言ってないでしょ…でも、たんぽぽ達の喧嘩の何処がおかしいの

 

 かは聞きたいけど」

 

 それを聞いていた麗羽がそう言ってため息をつくと、二人の矛先は麗羽に向かうの

 

 だが、

 

「そんな事、大した事ではありませんですわ。白飯も炒飯も頼んで食べ比べてみれば

 

 どちらが拉麺に合うか分かるというもの。今からでも遅くはありませんからあなた

 

 方が行こうとしていたお店に行って頼んでみましょう」

 

 麗羽にそう言われてそれ以上の反論が出来るはずもなく、少し中途半端な時間では

 

 あるものの、再び城を出てその店に向かう事にしたのである。

 

 そしてあまりにも麗羽が正論ばかり言っているので、斗詩以外の袁家御一行はすっ

 

 かり麗羽は何処かで頭でも打ったに違いないという話になっていたりしていた。

 

 

 

「さあ、此処に拉麺と白飯と炒飯を用意させましたわ。存分に召し上がれ」

 

 しばらくして、店に入り注文を取ると、何時の間にか場を仕切り始めた麗羽がそう

 

 言って試食を促す…一応言っておくと、その代金は全て俺が払ってるのだけどね。

 

「うん、やっぱり炒飯だな!白飯は白飯で捨てがたい味わいだが」

 

「白飯の方が美味しいよ!でも、炒飯は炒飯で美味しいね」

 

 結局二人というより全員の感想が『両方とも美味しい』という事であった。当然と

 

 いえば当然だが。

 

「ほら、最初からこうやって両方食べたら喧嘩などせずに解決するのですわ。美味し

 

 い物も食べれて皆が幸福、まさに一石二鳥というお話ですわね。お~ほっほっほっ

 

 ほ、お~ほっほっほっほ」

 

「おおっ、何か麗羽姉様がうまい事まとめようとしておるぞ!!」

 

「これは本当に何処かで頭をぶつけられたのですね!」

 

「斗詩、本当に麗羽様を一度医者に診せなきゃダメなんじゃないのか!?」

 

「いや…皆もう少しそこは麗羽様を褒めようよ」

 

 そしてやはり斗詩以外の御一行は言いたい放題のままなのであった…しかし、麗羽

 

 も此処まで間近で言いたい放題言われて眉一つ動かなさないのだから、なかなかに

 

 良い根性をしていると言わざるを得ないな、これは。

 

 そしてその後、蒲公英と焔耶はあんなに喧嘩していたのが嘘のように、仲良く二人

 

 でまた何処かへ出かけていったのであった。まさに喧嘩する程仲が良いという事な

 

 のだろうか?

 

 

 

 そして数日後。

 

「どうやら麗羽達とは仲良くやっておるようじゃのぉ」

 

 午前の執務を終えて命への報告を終えたその後に命がそう聞いてくる。

 

「ああ、彼女達とも色々あったけど、個人で向き合えば悪い人間じゃないしね。これ

 

 からは仲間なのだから仲良く出来るに越した事も無いだろう?」

 

「仲間として仲良くなるのはまったく問題は無いのじゃが…まさか、それ以上の事は

 

 あるまいの?」

 

「あ、あるわけ無いだろう。俺だってそんなにあっちもこっちもなどという事は…」

 

「そうか?まあ、とりあえず信じておく事にしておこうか」

 

 命がジト眼でそう聞いてくるので俺はそう答えるのだが…なんか信用されていない

 

 ように感じるのは気のせいでは無いな、これは。

 

「申し上げます!先程、劉璋様御一行が洛陽に御到着されたとの事です!」

 

 そこに鈴音達の到着を知らせる報告が入り、俺達は玉座の間へと向かったのだが…。

 

「久しいな、鈴音…ところで、お主が抱きかかえているその赤子は何じゃ?」

 

 畏まっている鈴音の腕には赤ん坊が抱かれていたのであった…って、まさか?でも

 

 そんなはずは…でもあれから数えれば或いは?

 

「はい、この子の名前は一音(かずね)といいます。私の娘です」

 

「娘とな!?それで、その娘の父親は…」

 

「ふふ、一音ちゃん。この人があなたのお父様ですよ~」

 

 鈴音はそう言って子供の顔を俺の方に向けてくる…やっぱりか。

 

「ほぅ、そうなのか、そうなのじゃな。一刀、お主何時の間にか鈴音とも…さすがの

 

 手の早さよの~」

 

 そう言っている命の顔はとてもにこやかに見えるのだが…俺にはそれが余計に怖く

 

 見えたのであった。

 

 

                                    続く。

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 今回はずっとほったらかしにしていた袁家御一行(特に麗羽)

 

 のお話と…やはりと言うべきな鈴音が子供を連れて来たお話

 

 でした。

 

 とりあえず鈴音の娘は真名だけの紹介でしたが、一応名前は

 

 劉循ですので。

 

 そして本当は今回で拠点を終わりにしようと思ったのですが、

 

 このまま本編に行きづらいので、もう一回だけ拠点をお送り

 

 します。一応、今回の続きからになりますので。

 

 

 それでは次回、第六十話にてお会いいたしましょう。

 

 

 

 追伸 袁家御一行が一刀の毒牙にかかるのかは今の所はまだ

 

    未定ですので。

 

 

 

 

 


 
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