No.705253

真・恋姫†無双 異伝「空と命と夢の狭間に」第四十八話


 お待たせしました!

 益州より五胡を追い払う事に成功した

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2014-07-31 20:41:02 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:6144   閲覧ユーザー数:4374

 ~幽州・北平にて~

 

「おい、劉焉!一体何時になったらあいつらは退却を始めるんだ!?洛陽に攻め込むとか

 

 いうお前の部下とやらからは連絡は無いのか!」

 

「もう少し…もう少しお待ちください!そう遠くない内に必ずや良き報告があるものと…」

 

「その言葉、もう十回以上は聞いたぞ?お前の口はその言葉しか発せられないのか?まだ

 

 ぼけるには早かろうに」

 

 部族長にそう言われ、劉焉は屈辱に身を震わせるが、反論出来る状況ではないのでただ

 

 じっとそれに耐えるしか出来ないでいた。

 

「まあ、良い。さっさとお前の部下と連絡を取れ。それと何処かに隠してあるという兵糧

 

 は見つかったのか!?このままでは他の部族の者達からの不平を抑える事が出来なくな

 

 るのも時間の問題だ。もしそうなったらお前の首…いや、生きたままお前を引き渡す事

 

 になる事を覚えておけ。何度も言っているが、役に立たない老人を飼っている余裕など

 

 無いのだからな!」

 

 そう言って部族長は部屋を出て行く。

 

「おのれ…たかだか蛮族の長如きがこの儂に言いたい放題しおって。見ておれよ、中原を

 

 制した暁には真っ先に屠ってやるからな…」

 

 劉焉はそう呻くように呟いていた。しかし、既に潜入した孟達が捕えられ作戦が失敗に

 

 終わった事をこの時点では劉焉が知る事もその術も無かったのであった。

 

 

 

 所変わってこちらは幽州と冀州の境目にある月達の陣である。既に恋・ねね・沙和が先

 

 発隊として幽州の入り砦を築いており、そこを中心に幽州の奪還作戦を行う為の準備が

 

 行われていた。

 

「董卓様は此処まで来た我々に対して後方でじっとしていろと仰せか!」

 

「夏侯惇殿、落ち着いてください。今ただ闇雲に攻め寄せては損害が広がるのみ、よって

 

 我らが先に州境を固めるのでそれまで出撃はお待ちくださいと申し上げましただけです」

 

 こちらに援軍としてやってきた曹操軍の留守部隊であった夏侯惇・夏侯淵・荀彧は月よ

 

 りこの場での待機を命じられ、それに夏侯惇が一人激昂していたのであった。

 

「そうだぞ姉者、我らの役目は五胡の連中にこれ以上南に来させない事、向こうに攻め寄

 

 せるのは董卓様からの指示があるまで待つように華琳様よりも言われていたであろうが」

 

「そうよ、そんなに攻めていきたいんだったら勝手に一人で行ってくれば?あんたが死ん

 

 だら華琳様の寵愛は私があんたの分まで受けといてあげるから、むしろ勝手に突っ込ん

 

 できて。華琳様には『立派に死んだ』って言っといてあげるから」

 

「…忌々しいが今此処で立派に死んでも華琳様は喜んで下さらないだろうから董卓様の言

 

 う通りにしておく」

 

 夏侯淵と荀彧にそう言われた夏侯惇は不満気な表情のままそう言って腰をおろす。

 

「ありがとうございます。それでは改めまして…我々はもう少し此処に留まり、前線から

 

 の連絡を待って出陣します。何時連絡があるやもしれませんので皆さん気を緩める事の

 

 無きようにお願いします」

 

(さて、これでこっちは何とか…後は孫策さん達の動向次第。よろしくお願いします)

 

 

 

「はっくしゅん!」

 

「どうした、雪蓮?風邪でもひいたか?」

 

「そんなんじゃないけど…ちょっと寒いのは事実ね」

 

「確かにこれだけ北方まで来るとさすがに寒いぉ…儂のような老いぼれには少々きついの

 

 じゃが」

 

「おやおや、何時もは『儂はまだまだ若い』とか仰られている祭殿がこういう時だけ年寄

 

 ぶるとは…やはり無理などせず建業に残っておられれば良かったのではないのですか?」

 

「何を言うか!少々きついと言っただけで儂はまだまだ大丈夫じゃ!」

 

 ちなみに今現在雪蓮達がいるのは海の上、厳密に言えば青州より幽州へ向かう海の上で

 

 ある。何故このような所にいるのかといえば、雪蓮達は命より『船団を率いて、幽州・

 

 楽浪郡に上陸してその地を奪い返すように』との命を受けて進んでいる最中だからだ。

 

「ところで本当に儂らだけで大丈夫なのかのぉ…まったく地縁の無い幽州、後詰が来る予

 

 定も無い作戦…陛下は儂らに死ねと仰せか?」

 

「大丈夫、大丈夫、間違いなくうまくいくから。じゃなきゃこんな命令受けないわよ」

 

「ほぉ…それは策殿の勘か?」

 

「うん、勘よ。それに、蓮華達が一刀と一緒に頑張っているんだもの、私達だけ留守番な

 

 んてつまんないでしょ?」

 

「ははっ、それはそうじゃな。まあ、策殿の勘が大丈夫と言っているのなら問題無いとい

 

 う事じゃな」

 

 祭がそう笑う事によって少々不安を抱えていた兵達にも安堵の色に包まれていた。

 

 

 

「雪蓮、祭殿、もうすぐ楽浪郡です。兵達の上陸準備を」

 

 冥琳の言葉を受けて雪蓮達は兵達への指示の為に散っていった。

 

「色々と不安要素が無いわけでは無いが、此処まで来た以上は全力を尽くすのみ。もし我

 

 らの身に何かあっても孫呉にはまだ蓮華様がいるしな」

 

 冥琳はそう呟くと視線を眼の前の幽州の大地に向ける。

 

「そろそろだな…皆の者、これより上陸作戦を行う!慣れない北方での行動となる、決し

 

 て気を抜くな!」

 

 ・・・・・・・

 

 そして半刻後。

 

「とりあえず兵の上陸には成功したわね」

 

「どうやら五胡の連中にはまだ気づかれておらんようじゃな」

 

「さすがに我らの動きまでは読んでいなかったようですね…それでは『申し上げます!』

 

 …どうした!」

 

「こちらに向かってくる軍勢が…その数およそ四千、全て騎兵です!!」

 

 その報告に三人は唇を歪める。雪蓮達の兵力はおよそ二万、しかしそのほとんどが歩兵

 

 である為、四千もの騎兵を相手にした場合、その損害はかなり大きな物となってしまう

 

 からだ。

 

「くっ…どうする冥琳?迎え撃つか船に引き揚げるか…」

 

「引き揚げるなんて愚の骨頂ね。その間に追いつかれるわ」

 

 

 

 雪蓮のその言葉に冥琳は苦々しげな顔をする。

 

「確かに雪蓮の言う通り、引き揚げなど無理です。此処は迎え撃つのみ…皆、落ち着いて

 

 迎撃態勢を取れ!」

 

 号令一下孫呉の兵は陣形を組んだその時。

 

「おお~いっ、孫策~!私だ、公孫賛だ~!」

 

 その軍勢の中から出て来て声をかけてきた公孫賛の姿を見て三人共驚きの余り開いた口

 

 が塞がらない状態となっていた。

 

 ・・・・・・・

 

「いや~っ、参った、参った。五胡の連中が来るのは交流のある部族から連絡があって分

 

 かっていたから、先に人や物資を移動させていたんだけど…予想以上に軍勢が来るのが

 

 早くて時間稼ぎにと敵中に攻撃したら囲まれて戻れなくなっちゃってさ、何とか囲みを

 

 破ったはいいけど冀州とは反対方向に出ちゃったもんで、何とか山中に身を隠しつつ機

 

 会を探っていたら楽浪郡の方に向かう船団がいるっていうんでもしかしたらと思って来

 

 てみたらドンピシャってわけだったんだよ」

 

「へ、へぇ~…それは大変だったわね」

 

 合流した公孫賛より話を聞いた雪蓮はそう言葉を返すのが精一杯であった。

 

「それで、これから五胡への反撃をするんだろ?」

 

「はい、我らは陛下よりこの楽浪郡の占拠と五胡への牽制をするように命じられています。

 

 その間に董相国閣下が五胡の主力と当たる予定です」

 

「そうか、本当は私もそっちに行かなければならないんだろうけど、この戦力じゃそっち

 

 に行っても役に立てないだろうし、辿り着くのも難しいだろうから良ければこのままこ

 

 ちらに協力させてもらえないだろうか?道案内位しか役に立てないだろうけどな」

 

 

 

「とんでもありません、公孫賛様と騎兵四千が加わってくれれば何と心強い事か」

 

「そうね…こちらの主力は歩兵だし、それに土地勘のある公孫賛がいてくれれば心強い事

 

 この上なしだわ」

 

「そうか?そう言ってくれるのは有難いけどな」

 

 そう言っていた公孫賛の顔は何だか嬉しそうだった。

 

「それはともかく、このまま此処にいては五胡にこちらの作戦行動が読まれる可能性があ

 

 ります。まずは早急に楽浪郡の制圧を」

 

「そうだな、なら五胡の奴らも知らない道がある。案内するから付いてきてくれ」

 

 公孫賛の案内により楽浪郡にいる五胡の軍勢に対する奇襲に成功した雪蓮達はそのまま

 

 の勢いで楽浪郡の制圧に成功したのであった。

 

 ・・・・・・・

 

「そうですか。孫策さん達の作戦は成功、しかも公孫賛さんも無事だったと…」

 

 楽浪郡制圧の報告を受けた月はそう言って安堵した顔になる。

 

「白蓮ちゃん無事だったんだ…良かった、本当に良かった」

 

「しかし伯珪殿も余裕ですな、桃香様への手紙に自ら『どっこい生きている』などと」

 

「きっと桃香を安心させようとわざとそんな言葉を使ったのよ…あの子は昔からそういう

 

 優しい所があったから」

 

 そしてその使者は劉備や瑠菜宛の公孫賛からの手紙も持ってきており、それを見た劉備

 

 や瑠菜や趙雲の顔にも安堵の色が見えていた。

 

「これでこちらを攻めている五胡の軍勢の士気も下がる事でしょう、この機を逃さずこち

 

 らも攻勢に出ます!」

 

 月は力強くそう宣言していた。

 

 

 

 そして所は涼州・武威。

 

 一刀達は馬騰達への援軍として赴いたのだが…。

 

「おのれ…馬岱とか言ったな、そこへ直れ!その腐った根性叩き直してやる!!」

 

「あっかんべぇ~だ!誰がお前みたいな脳筋の言う通りになんかするもんか。そっちこそ

 

 そんな金棒ばっかり振り回してないで少しは勉強とかしたら?…あっ、でももう手遅れ

 

 か。あんたの頭の中はもう筋肉しか無いもんねぇ」

 

「何だと、この野郎!もう我慢出来ねぇ、その減らず口を今すぐ黙らせてやる!!」

 

「あんた馬鹿?たんぽぽは『野郎』じゃないよ~だ。あんたの方がよっぽど野郎っぽいじ

 

 ゃない…って、そんな無駄に大きいもんが胸にあったら野郎じゃ無いか…そうか、その

 

 無駄な胸のせいで頭に栄養が回らないんだ~残念」

 

「てめぇ…いっぺん死ね!!」

 

 着いてみれば、蒲公英と魏延が盛大に喧嘩の真っ最中であった。

 

「どういう事だ、これ?」

 

「焔耶の馬鹿たれが…」

 

 それを見た一刀と桔梗の顔はかなりひきつったものとなっていたのであった。

 

「もう、蒲公英も魏延さんもやめてよぉ~。母様も翠姉様もいない時に留守を守っている

 

 私達がこんな喧嘩なんかしてたらダメだよぉ~」

 

 その二人の間に入って何とか喧嘩を止めようとしている女の子は完全に涙目になってい

 

 たりする。

 

「仄、邪魔!あっちに行っててよ!!」

 

「馬休、そこにいたら邪魔だ、どいてろ!」

 

「そんな事言ったって…ふぇ~ん、どうしよう…」

 

 

 

 見れば仲裁に入ろうとしている女の子は今にも号泣しそうな位になっていた…このまま

 

 ってわけにもいかないな。

 

「桔梗さん、俺は蒲公英を止めますから…」

 

「ああ、焔耶の方は儂に任せておけ」

 

 俺と桔梗さんは目配せすると一気に駆け出して喧嘩をしている二人を引き離す。

 

「誰よ邪魔するのは…って、一刀お兄様!?」

 

「放せこの…き、桔梗様!?」

 

 ・・・・・・・

 

「さて、それでは何故二人が喧嘩なんかしていたのかこれから聞いていきたいと思います。

 

 二人とも、何か言いたい事があればどうぞ」

 

 二人を引き離して何とか喧嘩を収めた(正確には桔梗さんが魏延さんへ、空様が蒲公英

 

 へ強烈な拳骨をお見舞いしたというのが事実だが)後で、二人の尋問を始めたのだが…。

 

「そんなのこの脳筋女のせいに決まってるでしょ!」

 

「お前がいちいち気の障るような事を言うからに決まっているだろうが!」

 

 このように互いが互いを罵るだけでまったく進展が無い状態だったりする。

 

「風、一体何があった?」

 

「ぐぅ…」

 

「寝るな!」

 

「おおっ!?余りにも不毛な喧嘩を見るのに飽きて寝てしまったのですよー」

 

「おはよう…それで?何があったのか教えてくれるかな?」

 

 

 

 そして風が話してくれた所を要約すると、蒲公英と風が武威に着いた次の日に魏延さん

 

 もこちらに来たらしいのだが、来て早々に蒲公英の鍛錬にケチをつけたらしく、決闘で

 

 勝負を決める事になり蒲公英が勝ったそうなのだが、魏延さんが蒲公英が正々堂々と勝

 

 負してないだの罠にはめただのと文句を言い始め(事実はたまたま出来た地面の窪みを

 

 見てなかった魏延さんが足を取られただけらしい)、口喧嘩でも散々に打ち負かされた

 

 魏延さんはすっかり蒲公英と顔を合わせれば言い争いをするようになってしまったとの

 

 事らしい。

 

「…結局は焔耶のせいという事か、あのアホめが」

 

 それを聞いていた桔梗さんはそう言って頭を抱える。

 

「いや、蒲公英の方にも責任はあるだろう…おそらく、魏延さんの言葉尻の揚げ足取りば

 

 かりしてたんだろうし」

 

 こっちにいる時は輝里や燐里が抑えてくれていたからあまり問題にはならなかったけど

 

 蒲公英も結構毒を吐くしな…。

 

「…それで、馬騰さんと翠は?」

 

「お二人はずっと最前線に張り付いたままですねー。お兄さん達が到着したら教えてくれ

 

 との事でしたので、雫さんが早馬を出してくれましたけどねー」

 

 それじゃ、とりあえずは二人が帰ってくるのを待つ事にしよう。といっても、おそらく

 

 蒲公英と魏延さんの事は解決しないだろうけどね…はぁ。

 

 

 

「あ、あの~…」

 

「はい?ああ、確か翠の妹の…」

 

「はい、馬休と言います!北郷様の事は蒲公英から聞いていました!先程の蒲公英を捕ま

 

 えた身のこなしもさすがでした!」

 

 そこに馬休さんが何やらテンション高く話しかけてくる。

 

「い、いえ、それほどでも…」

 

「ああ、こうして北郷様にお会い出来る日が来るなんて…聞いていた以上に格好良いんで

 

 大感激です!あっ、私の真名は仄(ほのか)ですので今後はそう呼んでくださいね♪」

 

「えっ…ああ、ありがとう、仄。俺の事は一刀で良いよ」

 

「良いんですか!?それじゃ遠慮無く…か、一刀さん、これからもよろしくお願いします」

 

 何でこの娘はこんなに俺に好意的なんだろう?間違いなく今日が初対面なはずなのだが。

 

「仄…そんなに一辺に言っても一刀さんも困るだけ」

 

「へっ!?…あ、そうか、雫の言う通りだよね…ごめんなさい、一刀さん」

 

 一応そうやって謝ってはいたが、仄はそのまま俺をキラキラした眼で見つめ続けていた。

 

 そしてそれに反比例するかの如くに北郷組の面々の視線が痛くなってくる…俺、そんな

 

 に悪い事したのか?

 

「はっはっは、皆若いな」

 

 空様だけはそう余裕綽々で笑っていたのであった。

 

 

                                       続く。

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 今回は白蓮さんがどっこい生きていたという話…では

 

 なく、一刀が涼州に入った途端に騒動に巻き込まれた

 

 という話です。

 

 一応言っておきますと、馬休と馬鉄については公式で

 

 出る前にオリキャラとして出していたので、このまま

 

 オリキャラの仄と雫でいきますので…そもそも霊帝と

 

 献帝が公式とかけ離れたオリキャラなので今更な話か

 

 もしれませんが。 

 

 とりあえず次回は馬騰と翠も交えた上で五胡との戦い

 

 に入る…予定です。このままでうまくいくのか不安な

 

 状態ですが。

 

 それでは次回、四十九話にてお会いいたしましょう。

 

 

 

 追伸 白蓮さんは永久に不滅です…多分。

 

 

 

 


 
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