No.685910

仮面ライダーディケイド ~Road Of Precure~ 4.5話

rairai345さん

pixivに投稿している作品です。

ハートキャッチ編で出てきた、五代雄介のその後、編

2014-05-11 17:37:57 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2752   閲覧ユーザー数:2738

第四話外伝「帰還」

 

 

 光の中を、五代雄介は歩いていた。

 

「どこへ行くんだ、五代雄介」

 

 彼の前に現れる鳴滝。その顔は険しい。

 

「あ、鳴滝さん。良かった、ちょうど頼みたいことがあったんですよ」

 

 嬉しそうに言う雄介の顔を、鳴滝は複雑そうな顔で見つめる。

 

「五代雄介、小野寺ユウスケに……もう一人のクウガに出会ったのか」

「はい。鳴滝さんが目をつけただけはありますね」

 

 ユウスケのことを褒める雄介に、鳴滝は表情を変えずに答える。

 

「ディケイドを倒すためにはクウガの力が必要不可欠だった。彼には、ディケイドを倒すための人身御供になってもらうつもりだった」

 

 最強の力を持っているディケイド、その力に対抗するためにはアルティメットクウガの力が必要だった。だが、アルティメットになるということは、ある意味で人間ではなくなるということ。そのために選ばれた、ある意味では生贄の存在、それが小野寺ユウスケ。

 

「五代雄介、君は小野寺ユウスケに出会って……何を感じた?」

「……大切なことを、思い出せました」

 

 彼は、鳴滝の顔をまっすぐに見つめる。

 

「俺が、何のために戦っていたのか。それを、彼は思い出させてくれた」

 

 あの青年の後姿を見たとき、自分の中の大事なものを思い出せた気がする。戦いが終わり、ホッとしている内に忘れてしまっていた大事なもの―――己の戦う意味を。

 

 笑顔で、彼は言う。

 

「鳴滝さん、俺にアークルをください」

 

 彼のアークルは、グロンギとの最後の戦いで砕けてしまった。今の彼に、クウガになる力がない。

 

 だが、鳴滝はそれに悲痛な表情で叫ぶ。

 

「駄目だ、五代雄介。君は、君は十分なほど戦った!」

 

 鳴滝は知っている。彼が、傷つきながらも何度も死にそうになりながらも、グロンギたちと戦ってきたことを。そして、グロンギに対してでも、彼は傷つけることに心を痛めていたことを。

 

「君はもう、戦わなくていい……!」

 

 傷つき、ボロボロになって、涙を浮かべながら、それでも誰かのために戦い続けた男。誰かの笑顔のために戦い続けた男。そんな彼が、戦いを拒否して責めるものなど誰もいない。

 

 だが、

 

 だが、それでも、

 

 五代雄介は静かに首を横に振った。

 

「鳴滝さん、今もスーパーショッカーは様々な世界で多くの人を悲しませてる。俺、戦う力がるのにそれを黙ってみておくなんて、嫌なんです」

 

 彼の顔は穏やかやった。多くのグロンギを倒し、雪山でン・ダグバ・ゼバとの死闘を演じた者とはとても思えない。だが、それが彼という人間だ。

 

「世界中の笑顔を、俺は護りたい。世界中の人に、笑顔でいて欲しいから」

「五代雄介……君は……」

「俺は、大丈夫です!」

 

 サムズアップ―――彼のトレードマーク。彼の表情と、言葉と、そしてそのサインに、鳴滝は折れるようにアークルを取り出した。

 

「ありがとう、鳴滝さん!」

 

 それを受け取り、走り出していくその背中を見つめながら、鳴滝は呟くように言う。

 

「五代雄介……私は願う。君が、戦わなくてもいい世界がくることを……」

 

 

 

 荒涼とした大地、廃墟と化した建物、人が住んでいるとは思えないような地で、8人の戦士達が戦っていた。

 

「イーッ!」

「イーッ!」

 

「じゃまだ、どけこの野郎!」

 

 剣を片手に荒っぽい言葉遣いで叫んでいる赤いライダー、電王。彼は荒々しい剣裁きで群がる戦闘員達を切り倒していく。

 

「やれやれ、荒っぽい奴だ。……品がない」

「なぁにぃ?」

 

 彼にそんな言葉を浴びせたのは赤い角を持つカブトムシライダー、カブト。電王とは正反対に彼はクナイガンを逆手に、最小限の動きで戦闘員を倒していく。

 

「おばあちゃんが言っていた……鶏と馬鹿は声が大きい、と」

「お前、喧嘩売ってるだろ? そうだろ?」

 

 互いにそんなことを言い合いながらも、群がる戦闘員を蹴散らしていく。

 

「お前ら、無駄口叩いてないでしっかり戦え!」

 

 そんな二人を叱咤する赤と黒のライダー。Φの形のマスクをしているライダー、ファイズ。手に持った剣で同じように戦闘員を切り払っていく。

 

「うるせぇ、このスカした野郎が悪いんだよ!」

「ギャンギャン吼えるな、品が知れるぞ」

「……黙って戦え!」

 

 三人のライダーが蹴散らしていく。戦闘員にまぎれて怪人も数体混じっているが、彼らを倒すまでには至らない。

 

「にしても、本当にここがあいつらの工場なんだろうな!」

「情報が正しければ、そのはずです」

 

 それに答えるのは、吸血鬼を思わせるようなライダー、キバ。手に持ったガルルセイバーで戦闘員を切り払っていく。

 

「渡! 地下工場を発見したぞ!」

 

 遠くからの声。全員が振り返ると、そこには青と銀のもう一人のカブトムシラダー、ブレイドが立っていた。

 

「津上たちが先に向かっている!」

 

「おうおうようやくお出ましか!」

「フ……」

「行きましょう、皆さん!」

 

 ブレイドの後をついていくキバ、電王、カブト、ファイズ。長い階段を下りていく。

 

「この先だ!」

 

 ブレイドが、防火壁を指差す。――――同時に、その防火壁が内部から爆破して崩れてく。

 

「!」

 

 否、何かが壁を突き破ってこちら側に転がってきたのだ。赤紫のボディに、筋肉質な体、鬼のような顔のヒビキと、赤い体に龍を思わせるような頭の龍騎だ。

 

「城戸! ヒビキさん!」

「気をつけろ……! あいつが出たぞ!」

 

 遅れて吹き飛ばされてくる黒と金のライダー、アギト。すぐに立ち上がると、防火壁の向こう側へと構えを取る。

 

「あ、あいつは!」

 

 そこから現れたのは、純白の怪人。他の怪人とは違うその姿は怪人でありながら一種の神々しさと美しさを持っている。グロンギの王にして純白の闇と言われた存在。―――ン・ダグバ・ゼバ。

 

「ちぃ、あんな野郎まで復活してやがったとは……スーパーショッカーの野郎!」

「やるしかない」

 

 強敵を相手に、緊張が走る。だが、一方でダグバは自分達の目の前にいる8人の戦士を見つめながらも、まるでつまらないものを見ているかのような反応だ。

 

「……お前らではつまらない」

 

「あん、なんだとぉ?!」

 

 興味をなくしたかのように背を向けるダグバ。その言葉に、噛み付こうとする電王だが、彼が腕を振るうだけで吹き飛ばされる。それを受け止めるキバとファイズ。

 

「ぐぅ……畜生、野郎……!」

 

 興味をなくしたかのように歩き出したダグバの耳に、聞きなれたバイク音がする。とっさに振り返る彼の眼に飛び込んできたのは、8人のライダーの頭上を飛び越えて、降り立つ一機のマシン。そして、そのバイクに跨るのは、

 

「五代さん?!」

 

「みんな、お待たせ!」

 

 8人のライダーにサムズアップを見せるのは、五代雄介。電王が驚いた声でたずねる。

 

「お前、もう大丈夫なのかよ?!」

「ああ、ばっちり! 何でも来いって感じ」

 

 そう、彼らに笑顔を浮かべてから、五代雄介はダグバの方へと向き直る。そこには、信じられないという表情で彼のことを見つめているダグバの姿があった。

 

「お前まで、復活してたんだな……」

「君も、どうやら取り戻したようだね」

 

 ダグバの言葉に、彼は答えない。自分のバイクから降りると、構えを取る。

 

「お前が……お前達が人々の笑顔を奪うなら、俺は戦い続ける!」

 

 それが、彼が戦う理由。

 

「変身!」

 

 彼の体を、赤い鎧が包み込む。黒いヘルメットのような頭には、赤い瞳と金の角。彼の名前は、

 

「クウガ!!」

 

「おいおい、一人で盛り上がってるんじゃねぇよ」

「僕達がいることも、忘れないでください」

 

 クウガの隣に並ぶのは、8人のライダー。彼の仲間達。

 

「スーパーショッカー、お前達の野望は、俺たちがいる限り……絶対に果たさせはしない!!」

 

 彼らは戦い続ける。悪の野望が潰えるまで。

 

 続く。


 
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