No.685811

リリカルHS 38話

桐生キラさん

地味に長かった幽霊編も次回でラスト
切ない話って、意外と難しい

2014-05-11 11:17:12 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1688   閲覧ユーザー数:1540

 

 

 

 

 

 

フェイト「突然、ごめんね…」

 

士希「いや、いいさ。そろそろ来るだろうとは思っていたからな」

 

リビングには俺とレーゲン、フェイト、そして…

 

三人「………」

 

テスタロッサ家の三人。ちなみにリインさんは、気を利かせて八神家に行った

 

士希「ここに来たって事は、あの手紙を読んだんだろ?」

 

フェイト「……うん。あの手紙、どうしたの?

私、士希にあの三人の事話してなかったと思ったけど。はやてから聞いたとか?」

 

士希「いや、はやてからも聞いていない。正真正銘、本人から聞いた。お前の境遇についてもな」

 

フェイト「!?……でも、どうやって?

なんで亡くなった人から、それも全く関わりのなかった人から、手紙なんて受け取れたの?」

 

士希「そうだな、こればっかりは、偶然としか言いようがない。

俺、この時期になると視えるようになるんだ。いわゆる、幽霊ってやつがな。

こうしている今も、お前の周りにいるぜ?プレシアさんとアリシアちゃんとリニスさんが」

 

フェイト「え!?」

 

俺の発言を聞き、フェイトは辺りをキョロキョロと見回す。

俺はその光景を見て、少し寂しい気持ちになってしまった。

プレシアさんも、アリシアちゃんも、リニスさんも、

本当にすぐそばにいるのに、フェイトの瞳には映っていない。

どこか違うところを見ては、三人の名前を呼んでいる

 

アリシア「フェイト、ここだよ?」

 

アリシアちゃんは見かねたのか、フェイトの左肩に手を置いた。

その感触が伝わったのか、フェイトはビクリとした

 

フェイト「……誰?」

 

フェイトは申し訳なさそうに尋ねる。誰かわからない事に、罪悪感を抱いているのだろう

 

士希「今左肩に手を置いたのは、アリシアちゃんだ」

 

フェイト「アリシア…お姉ちゃん…」

 

フェイトは自分の左肩に手を持って行き、そしてアリシアちゃんの手と重ねる。

感触があったのだろう。フェイトの表情は少し穏やかになった

 

フェイト「お姉ちゃん、手紙、読んだよ。お姉ちゃんからの初めての手紙。

お姉ちゃんの想いが、すごく伝わってきたよ。

お姉ちゃん達がいる世界で、幸せそうに暮らしているって知れてよかった」

 

アリシア「フェイト…」

 

フェイト「寂しい思いをしていないか、全くしていないのかって言われると、

首を縦に触れないけど、それでも、その寂しさを紛らわして、

それ以上に楽しいって思える人達と一緒に過ごしてる。

泣いてしまう事もあるだろうけど、その涙を拭いてくれる人がいる。

だから、大丈夫だよお姉ちゃん。私も、お姉ちゃんと同じくらい幸せだよ」

 

アリシアちゃんは静かに涙を流して聞いていた。

その涙には、哀しみ以外にも、安堵や嬉しさにも似た感情が混じっているように見えた

 

フェイト「私がおばあちゃんになって、そっちに行くことになったら、

お姉ちゃんに迎えに来て欲しいな、なんて。お姉ちゃんといっぱい話したいから。

お姉ちゃんに、私が幸せだったよって伝えたいから。ダメ、かな?」

 

アリシア「行く…絶対行くよ!私が一番に迎えに行って、フェイトを抱きしめるよ!」

 

フェイトは俺の方を見る。俺は何て言っていいのかわからず、微笑むしかなかった。

だが、それで十分だったらしく、フェイトは頷き、ボソリと「ありがとう」と言った

 

フェイト「ふふ、じゃあ待っててねお姉ちゃん。お土産話、いっぱい作るから!」

 

アリシア「……うん、待ってるよ…フェイト…」

 

二人の手は、通じ合ったかのように動き、約束するかのように手を合わせた

 

 

 

 

リニス「フェーイト」

 

アリシアちゃんが手を下ろすと、

それに入れ替わるように今度はリニスさんがフェイトの右肩に手を置いた

 

士希「今右肩に触れたのは、リニスさんだ」

 

フェイト「リニス…」

 

フェイトは先ほどと同じように、右肩に手を持って行き、リニスさんの手と重ねる

 

リニス「大きくなりましたね、フェイト…」

 

リニスさんはフェイトの手の感触を確かめるように、もう一方の手でフェイトの手を撫でた。

フェイトもそれに気付いたのか、少し嬉しそうにしていた

 

フェイト「リニス、久しぶりだね。手紙も読んだよ。

そっちでも元気にしてるようで嬉しかったけど、

あんな事が出だしに書いてあったからビックリしたよ」

 

フェイトは少し顔を赤らめて話した。いったい、何が書いてあったんだろう

 

フェイト「執務官の任命の事、祝ってくれてありがとう。これもリニスのおかげだよ。

リニスが教えてくれた魔法と技術と知識があったから、なれたんだと思う。

リニスの優しさが、想いが、私を強くしてくれた。リニスは、本当に最高の先生だよ」

 

リニス「ふふ、フェイトは、私の最高の教え子ですよ…」

 

リニスさんは涙を我慢しようとしているのだろうが、少しずつ瞳から零れていた

 

フェイト「リニスの言うとおり、私は今を楽しむよ。

なのはや、皆と、いっぱい遊んで、楽しい思い出を作る。

そして、リニスが教えてくれた魔法で、たくさんの人を助ける。

それで、私がそっちに行ったら、今度は私がリニスに教えるね。私が経験する色んな事を。

きっとその頃には、私がリニスを教える事ができると思うから」

 

リニス「まぁ…それは、とても楽しみです…」

 

リニスさんは、とうとう我慢する事をやめ、大粒の涙を流していた。

教え子が立派に成長していて、本当にとても嬉しいのだろう

 

フェイト「待っててね、リニス。リニスが先生だったこと、誇りに思ってる」

 

リニス「私も、フェイトが教え子であることを誇りに思います…」

 

二人の手は、その絆を確かめるかのように、固く握られた

 

 

 

 

フェイト「……母さんも、いるんだよね?」

 

リニスさんと手を離したフェイトは、俺の方を見て聞いてきた

 

士希「あぁ、いるな。プレシアさん、こっちに来るんだ」

 

プレシアさんとフェイトの間には距離があった。

プレシアさん自身、過去の件もあり、どうしていいのかわからないのだろう。

少し複雑な表情をしている

 

アリシア「お母さん、フェイトなら大丈夫だから」

 

リニス「そうですよ、プレシア。ここまで来たんですから、覚悟を決めて下さい」

 

プレシア「あ!ちょ、ちょっと!」

 

アリシアちゃんとリニスさんはプレシアさんを引っ張り、フェイトの目の前に連れてきた。

だけど…

 

フェイト「えっと…どこにいるの?母さん」

 

目の前にいるのに、フェイトには視えていない。

それに対し、幽霊組三人も、俺も、悲しくなってしまう

 

本当に、なんで視えないんだよ。なんで、俺にだけしか視えないんだよ…

アリシアちゃんの時も、リニスさんの時も、そして今のプレシアさんの慈愛と寂しさを含んだ表情も、なんで一番視えなきゃいけないやつに視えないんだよ…

 

士希「………フェイト、プレシアさんなら、お前の目の前にいる。

お前の事を、しっかり見ている。だから、言いたい事があるなら、言っておくんだ」

 

俺は、教えてあげることしかできない。それが、少し悔しい

 

フェイト「そっか、ありがとう士希。それと、ごめんね、母さん。

せっかく母さんが会いに来てくれたのに、私、視えなくって…」

 

プレシア「ッ!?この子は本当に…」

 

フェイトは、自分が悪い訳じゃないのに、謝罪からプレシアさんに語りかけた。

プレシアさんはそれに対し、罪悪感に満ちた顔をする

 

フェイト「手紙、読んだよ。母さんがお姉ちゃんに、アリシアに会えて本当に良かった。

アリシアが手紙に書いてくれてたように、ハッピーエンドとは言えないかもしれないけど、

それでも、二人が再開できて、また話せるようになって本当に良かった」

 

プレシア「でも、私は…」

 

フェイト「母さんの気持ち、凄く嬉しかったよ。

私を私として見てくれていたこと、私の事を気にかけてくれたこと。

手紙からなのに、凄く心配しているんだなって伝わってきた」

 

プレシア「でも、もう遅いわよね…」

 

アリシア「お母さん…」

 

フェイト「母さんなら、もう遅い、って思ってるかもしれない」

 

フェイトには聞こえていないはず。なのに言い当てられたことに、この場の誰もが驚く。

フェイトはそれだけ…

 

フェイト「でも、遅いなんてことはないと思う。

住む世界が違っていても、いつか必ず、取り戻せるものがあると思う。

それがいつになるかはわからないだけ。気が遠くなる程先かもしれない。

でも、私は大切な人から不屈の心を学んだ。だから、私は絶対に諦めない。

絶対に、母さんと直接話す。そしてその時に、ちゃんと母さんに言うね。

産んでくれて、ありがとうって」

 

プレシア「そんな、私にそんな資格…」

 

フェイト「私がハラオウン家の養子になっても、テスタロッサの名を残したのは、

私が母さんの子どもであることの証明。母さんと、お姉ちゃんと、リニスとの絆だから。

これから先、何があっても、私は変わらず母さんの子どもだよ。

だから母さんはこれからも、私を……母さんの子どもとして見てくれませんか?」

 

最後は、少し弱々しくフェイトは言った。

過去の経験から、その言葉を言うには、少し勇気がいるのだろう。

だが、それでもフェイトは言った。そしてそれは…

 

プレシア「うっ……ぐす…」

 

ちゃんと、プレシアさんにも届いた

 

リニス「プレシア、返事は?」

 

アリシア「そうだよ、お母さん。ここでちゃんと答えなきゃ、また後悔するよ」

 

二人に言われ、プレシアさんは少し戸惑うも、意を決したのか、恐る恐るフェイトに近づき…

 

フェイト「……あ」

 

フェイトを、優しく抱き締めた。フェイトもそれに気付き、抱き締め返す。

お互い、何かを言うわけではない。ただ、大粒の涙を流すだけ。

きっと、これだけで十分だったのだろう

 

リニス「よかった。あの二人も、ようやく和解できそうで」

 

アリシア「ほんと、やっとよね。お母さんがいつまでも意地張るから、ずいぶん遠回りしちゃった」

 

そういう彼女達も、涙を流している

 

 

 

 

士希「………あ」

 

そこで俺はようやく思い出す。幽霊を、こいつらを、視認させる方法があるかもしれないことを

 

士希「レーゲン!今すぐユニゾンだ!」

 

レーゲン「ぐす…えぐ…え?」

 

レーゲンは視えないはずなのに、フェイトの話を聞いたからか涙を流していた。

だが、今はそれどころではない

 

士希「おら!さっさとしろ!」

 

レーゲン「は、はい!」

 

フェイト「ちょ、ちょっと士希?どうしたの?」

 

俺とレーゲンがユニゾンすると、フェイトが戸惑いながら問いかける。今は一分一秒が惜しい

 

士希「話は後だ!お前ら、少し待ってろ!すぐ戻る!」

 

俺は転移魔法陣を展開させる

 

フェイト「え?転移?」

 

士希「転移!」

 

不幸な家族なんて、いちゃいけない

 

 

 

 


 
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