皆さんは、幽霊の存在を信じているだろうか?
何かしらの未練が原因で成仏出来ず、この世を彷徨う死者の魂。
場合によっては生者への憎しみ等が原因で悪霊化し、生者の命を脅かしてしまう事もある。
そうなってしまえば、通常の人間にとっては恐怖かつ脅威の存在となるだろう。
しかし、それはあくまで
もしその脅かそうとしていた側が、OTAKU旅団のメンバー達だったとしたら?
その時は彼等ではなく、むしろ幽霊側の方が脅かされる側に回ってしまう事だろう…
「死者の魂が運ばれて来ない?」
『はい…』
OTAKU旅団アジト
「どういう事かね? 映姫」
『言葉通りの意味です。数日ほど前から、何人もの死者の魂がこちらに運ばれて来なくなってしまったと部下から報告がありまして……現在、小町にも調査を頼んではいるのですが…』
「それは中々に困る話だな。魂が送られないとなれば、輪廻のサイクルにも悪影響が及んでしまう」
『その事で、エリス様も相当困っている様子で……よろしければ、そちらでも原因を調査して頂けないでしょうか?』
「…そうだな、こちらでも調べてみよう」
『ありがとうございます』
緑髪の女性―――
「…竜神丸」
「お呼びですか?」
何時からいたのか、物陰に隠れていた竜神丸がクライシスの前に姿を現す。
「お前は相変わらず盗み聞きが好きなようだな」
「失礼しました。ちょうど、大変そうな会話が聞こえてきたものでして……これから私に告げられるであろう指令も、大方察しは付きます」
「…分かっているようなら話は早い」
クライシスは机の引き出しを開け、中から銀色のドライバーと『D』のイニシャルが描かれた一本のUSBメモリ―――ガイアメモリを取り出し机に置く。
「Unknownも呼べ。今回の件は彼にも引き受けさせるのが、一番手っ取り早いだろう」
「了解しました。団長のお言葉のままに」
竜神丸は小さく笑みを浮かべつつ、ドライバーとガイアメモリをその手に取るのだった。
一方、海鳴市では…
「「「死者の誘い?」」」
「そうそう、最近すごい噂になってんだって」
四人組の女子高生が街中を歩き回りながら、ある噂について語り合っていた。
「ほら、ニュースでもあったでしょ? 最近行方不明者が続出してるって。あれ、幽霊が違う世界に引き摺り込んじゃうかららしいよ」
「え~また幽霊の仕業だっての? あり得ないってそれ」
「いや、割とマジっぽいんだって。それで幽霊に狙われた人は別世界に引き摺り込まれたまま、二度と戻る事が出来ないんだって」
「マジで? めっちゃ怖くねそれ?」
「なぁ知ってるか? 死者の誘いって話」
「あぁ知ってる知ってる! 幽霊に別世界へ引き込まれるって奴だろ?」
また別の場所では、キャッチボールで遊ぶ子供達も語り合っていた。
「何か聞いた話だとさ、狙った人には予め伝えるらしいぜ。何名様ご案内って感じでさ」
「確か、狙われたらもう逃げられないんだろ? 怖えよなぁ~」
そんな子供達の会話を…
「んむ?」
木の上で昼寝をしていたガルムが、聞き耳を立てていた。
「死者の誘い、ねぇ…………暇潰しにはちょうど良さそうだ」
ガルムは小さく笑みを浮かべ、木の上から地面へと降り立つ。
更に別の場所では…
「~♪」
仕事を終えて帰路についていたユウナ・タカナシ。彼女は軽く鼻歌を歌いながら、妹であるルイの待つ家へと帰ろうとしていた。
(さて、食材は昨日の内に買い終えてるし……今日は肉じゃがでも作ろうかな?)
そんな事を考えつつ、携帯を取り出してルイに連絡しようとしたその時…
-1名様、ゴ案内デェス…-
「ッ!?」
ユウナが素早く後ろに振り返るも、後ろには誰もいない。周囲にも人の気配は無い。
「…気の所為か」
しかし早く帰るに越した事は無いだろうと判断し、ユウナは早歩きで家まで帰っていく。
『ケケケケケケ…♪』
そんな彼女の後ろ姿を、青い人魂がこっそり追いかけていた事にも気付かないまま。
そして別の場所でも…
「…シグマ」
「あぁ…」
たまたま海鳴市に滞在していたスノーズとシグマも、同じような宣告が耳に聞こえていた。そして彼等の目の前には…
「…面白いじゃねぇか」
小さな祠に出現した裂け目から、黒い瘴気が溢れ出ていた。
「どうするよスノーズ……俺様、ちょいと楽しくなりそうな気がしてきたぜぇ…?」
「やれやれ……君のその怖い物見たさ、どうにかならないのかな」
「クカカカカカ…!!」
まるで聞こえていないのか、シグマは楽しそうな笑い声を上げながら裂け目へと近づいていき、スノーズも呆れた様子で彼に続く。
『クケケケケケケケ…♪』
今宵は、どのような〝祭り”が行われるのだろうか―――
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幽霊騒動パート1