No.679610

英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク

soranoさん

第80話

2014-04-18 00:00:04 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3623   閲覧ユーザー数:3500

~桟橋~

 

「―――あれは10年前の事です。私やヨシュア……そしてレーヴェが故郷で共に平和に過ごしていた時です。当時レーヴェは遊撃士を目指して剣の練習をし、私とヨシュアがその様子を見守る事が日課になっていました。」

「へっ!?レ、レーヴェってあの”剣帝”の!?しかも遊撃士を目指していたなんて……というか、カリンさんとヨシュア……レーヴェと知り合いなの!?」

「ええ。ちなみに私にとってレーヴェは初恋の人で、恐らくですけどレーヴェも私の事を一人の女性として意識してくれていたと思いますよ?」

「…………………」

レーヴェとカリンの関係を知ったエステルは口をパクパクさせ、カリンは話を続けた。

 

「そしてレーヴェの日課の剣の鍛錬が終わった後……私は当時流行っていた曲で私達にとってのお気に入りの曲―――『星の在り処』をいつもそのハーモニカで吹き、レーヴェとヨシュアは傍でずっと聞いていました。そんな日がいつまでも続く……そう信じていたある日――――突如猟兵達が私達の故郷を攻めてきたんです。」

「なっ!?」

「……多くの村の人達が猟兵達によって殺されている中……私はヨシュアを連れて必死に逃げていました。しかし、逃げた先には待ち伏せの猟兵がいました。」

「そ、それでどうなったの……!?」

カリンの口から出た信じられない壮絶な話に血相を変えたエステルは尋ねた。

 

「…………猟兵はヨシュアを突き飛ばして私にのしかかり、強姦しようとしていました。」

「!?」

「そして私が必死に抵抗していると……ヨシュアは偶然落ちていた銃を拾い、猟兵に向けて引き金を引きました。」

「なっ……!?」

「……ヨシュアの銃撃によって瀕死の状態になった猟兵は自分を瀕死の状態にしたヨシュアに標的を変え……ヨシュアに襲い掛かったその時、私はヨシュアを庇って猟兵の凶刃によって心臓を貫かれました。」

「!!!」

「そして私はヨシュアにそのハーモニカを渡し……ヨシュアと駆け付けたレーヴェに看取られながら、事切れました。」

「ちょ、ちょっと待って!?その話だと、カリンさん……既に死んでいるじゃない!?どうして今ここに……い、いえ……生きているの!?」

カリンが語った壮絶な過去で既にカリンが死んでいる事に驚いたエステルは信じられない表情で尋ねた。

 

「……生を終えた私は残されたヨシュアとレーヴェの事がずっと心配で”魂”―――わかりやすく言えば”幽霊”として私の遺体が埋められた場所にずっと居続けて二人に会いたいと願っていたある日――――故郷の事を知ったイオン様が私達を供養する為にアリエッタさんと共に来たのですが、その時に霊魂となった私を見つけてくれたのです。」

「ええっ!?イ、イオンさん達が!?と、というか、カリンさん、ほ、ほほほほほ、ホントに幽霊だったの!?じゃなくて幽霊って存在したの!?」

「フフ、イオン様やアリエッタさんの話だと未練に囚われながらも清浄な魂を保ち続けている私は”極めて稀”だそうです。」

冷や汗をかいて身体を震わせて自分を見つめるエステルを苦笑しながら見つめたカリンは微笑みながら答えた。

 

「―――そして私はイオン様―――”守護騎士(ドミニオン)”のみが持つと言われる”異能”の力でこの世に蘇らせてもらったんです。」

「…………………」

カリンの信じられない話を聞いたエステルは石化したかのように固まり

「ええええええええええええええええええええええっ!?イオンさん……じゃなくて”守護騎士(ドミニオン)”ってそんな凄い力を持っているの!?」

やがて我に返って大声で驚いた後驚きの表情で尋ねた。

 

「いえ、蘇生すらも可能なイオン様の”異能”はイオン様達の話ではその”異能”を持つ”守護騎士(ドミニオン)”はイオン様のみで、歴代初かつ、既に死んだ人間を蘇生するには相当難しい条件が必要だったそうです。」

「そ、そうなんだ………あ。だからイオンさん達、カリンさんの事情を話せないって言ってたのね?」

「ええ。”星杯騎士団”が最高機密としている”異能”の件も話さなくてはならないですし、万が一人を蘇らせられる力があると多くの人々に知れ渡ったら大変な事が起こる事は目に見えていますし。」

「なるほど………じゃあ、カリンさんがイオンさん達に”保護”されている理由もその一つなんだ。」

「はい。――――エステルさん。もしヨシュアに会えたその時、どうするつもりですか?」

「え……」

カリンに突如尋ねられたエステルは呆けた表情でカリンを見つめた。

 

「…………ヨシュアが私と離れてからの事情――――”結社”に入っていた事はイオン様達を通して知っていますし、ヨシュアがエステルさん達の前からいなくなった理由もある程度事情を知るケビンさんから聞いています。ずっと一緒に笑い合って来たエステルさん達の前から姿を消す程の決意を持つヨシュアにもし会えたその時……どんな言葉をかけて連れ戻すつもりなんですか?」

「………………………………。ひっぱたいても連れ戻すって思い込んだこともあるけど……。さすがに、そんな無茶が本当にできるとも思えないし……。正直言うと、あたしの言葉はヨシュアに届かないかもしれない。」

カリンに尋ねられたエステルは悲しそうな表情で答え、溜息を吐いた。

 

「それが分かっていても……ヨシュアを追いかけるんですね?」

「うん……。ヨシュアの背負った事情とかあたし自身の至らなさとか色々なことを考えたんだけど……。結局、いくら考えてもヨシュアに何て言ったらいいか思いつかなかったの。だから―――その言葉は会ってから見つけることにする。」

「え……」

エステルの答えを知ったカリンは驚いてエステルを見た。

 

「だって、あたしの想いはあたしだけのものじゃないから。ヨシュアと一緒にいる間に自然と育ってきたものだから。だから……ヨシュアに会えたら初めてそれは浮かんでくると思う。あたしだけが伝えられるヨシュアへの言葉を―――」

「………………………………」

「だから、会えないうちからウジウジ悩むのは止めにしたの。えへへ、さっきみたいに感傷にひたることはあるけど……。それは乙女の特権ということで同じ女の子同士、勘弁してくれないかな?」

「………………………………」

照れた表情で自分を見つめるエステルをカリンは呆けた表情で見続け

「フフ、ヨシュアには本当に勿体ないくらい、素敵な女性ですね、エステルさんは……」

やがて優しげな微笑みを浮かべてエステルを見つめた。

 

「ア、アハハ……やだなあ。カリンさんと比べたらまだまだよ~。というか比べるのもおこがましいわよ。」

「そんな事はありませんよ。………そうだ、お礼になるかどうかわかりませんが、そのハーモニカを貸してくれませんか?エステルさん。」

「あ、うん。というか元々カリンさんのだし。」

そしてエステルはカリンにハーモニカを渡した。

 

「フフ、ハーモニカを吹くのは10年ぶりですから、下手になっていたらごめんなさいね?」

渡されたハーモニカを持ったカリンはエステルに視線を向けて苦笑した後ハーモニカでかつて自分が吹いていた曲――――『星の在り処』を吹き始めた。

 

~~~~~~~~~~~♪

 

(あ…………………)

カリンが吹いている姿がヨシュアと被ったエステルは呆けた後ジッとカリンを見つめた。

 

~~~~~~~~~~~♪

 

カリンは決して間違える事無く、『星の在り処』を吹き終えた。

「フウ。久しぶりでしたけど、意外と吹けるものですね……え。エ、エステルさん!?どうしたんですか!?」

自然と涙を流して自分を見つめるエステルに気付いたカリンは驚いてエステルを見つめ

「あ……えへへ……カリンさんとヨシュアの姿が被っちゃって、勝手に涙が出て来ちゃった。ハーモニカを吹いているカリンさんの姿……ヨシュアとすっごく似ているし。」

カリンに声をかけられ、我に返ったエステルは涙をぬぐって苦笑した。

 

「そうですか。……でも、私とヨシュアって、そんなに似ていますか?」

「うん!特にヨシュアが女装した時と見比べたら瓜二つと言ってもおかしくないんじゃないかしら?」

「え……?ヨ、ヨシュアが女装、ですか?一体どうしてヨシュアがそんな事を?」

弟が女装をした事があるという信じられない話を聞いたカリンは冷や汗をかき、表情を引き攣らせた。

 

「えっと実は遊撃士の依頼でクローゼが通っている学園祭の出し物で劇をする事になってね。その時生徒会長のジルの提案で、男子と女子の本来やるべき役割を交換するって趣向でね。あたしとクローゼが騎士役をやって、ヨシュアがお姫様役をやったんだ!」

「まあ……そんな事が。フフ、その場面を観れなかったのは非常に残念です。……あ。ハーモニカを返すのを忘れていましたね。」

エステルの説明を聞いたカリンは目を丸くした後微笑んだ後、エステルにハーモニカを渡した。

「え。でも、このハーモニカってカリンさんのでしょ?」

「そのハーモニカは私がヨシュアに託し、そしてヨシュアの手によってエステルさんに託されたのですから今はエステルさんの物ですよ。だから遠慮しないで受け取って下さい。」

「……わかったわ。でも、このハーモニカはヨシュアを連れ戻した時にヨシュアに返すね。だってヨシュアにとってお姉さんの形見の品なんだから。そんなもの簡単に渡されても困るわよ!」

「フフ、でもその私自身が生きていますから、もはや形見の品にはならないのですけどね。」

「アハハ、確かに。……あれ?何か近づいて来ていない?」

「え……?」

エステルとカリンが湖を見つめると、人が倒れているボートが桟橋に近づいてきた。

 

「クルツさん!?」

ボートの中で倒れているクルツを見たエステルは驚き

「と、とにかく引き上げて治療をしないと……!私は皆さんを呼んできます!」

「うん、お願いっ!」

そしてカリンは慌てた様子で助けを呼びに行った。

 

 


 
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