No.673143

義輝記 雷雨の章 その弐拾壱

いたさん

義輝記の続編です。 宜しければ読んで下さい。 3/23に一部加筆しました。

2014-03-23 18:13:43 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1665   閲覧ユーザー数:1467

【 虎牢関戦 終幕間近 の件 】

 

〖 劉岱軍左翼 袁遺陣営 にて 〗

 

袁遺「来たか………!」

 

 

謙信「貴方が、あの方術の術者か?」

 

袁遺「……間違い……無い。 どうする? ………力付くで止めるか? だが……術は発動した……限り、定めた敵……葬るか、召喚した者達の………の、頭を潰して、動きを……止めるしか……無い!」

 

謙信「………どちらにしても、事の真偽は不明。 されど、この部隊の指揮するは貴方だ!! まずは、我が軍を勝利に導くため、討ちとらせていただく!!!」 

 

袁遺「………真っ直ぐな視線……羨ましいな……。 いや……このような……将と………対峙出来る事……天に感謝……しよう!!」

 

☆☆★

 

〖 劉岱軍 中央 にて 〗

 

劉岱兵1「ご、ご注進! 右翼大将『辺允』様 討ち死に!!」

 

劉岱兵2「左翼大将『袁遺』様 敵将と交戦中!!」

 

劉岱兵3「申し上げます!! 元前衛兵 敵中央隊により壊滅! 王匡、鮑信、孔ユウの三将は不明!! 敵は中衛と交戦中!!」

 

劉岱「我が軍有利の報告は、無いのかぁぁぁ!!」

 

劉岱兵4「劉岱様──────!!」

 

劉岱「おぉぉ────! 報告があるかのかぁ!?」

 

劉岱兵4「敵、敵将がぁ──「ザシュ!」───グハッ!!」

 

華雄「貴様か!! 役目を終えた武人達を使役し、己の欲のため皇帝陛下、董仲穎様、天城達を貶める不届き者は!!!」

 

劉岱「い、いつの間に!? くっ! お、お前達! 儂を守れ! 天の御遣いぞ!!」クルッ! ダッ!

 

劉岱兵1「う……、うわあぁぁぁぁ─────!!」ブン!!

 

劉岱兵2「死ね、死ね、死ねぇぇぇ!!!」シャ─ン!!

 

華雄「どけぇ!! お前達如きに討たれる……華雄では、ない!!」

 

    ブシャャャァァァ─────!!

 

劉岱兵達「「 グワァァァァ─────!! 」」

 

☆★★

 

〖 洛陽軍 右翼 にて 〗

 

歳久「劉岱軍は崩壊寸前です! 今の内に殲滅戦の隊と追討戦の隊を分けましょう!!」

 

家久「あ! でも、追討戦の部隊は『姜伯約』さんが、既に汜水関で待機してくれているって、伝令が来てたよ!」

 

歳久「では、家久! 私が殲滅戦を指揮しますので『颯馬』に報告「としねぇ行っておいでよ! 颯馬お兄ちゃん心配なんでしょう?」 …べ、別に心配など………ちょっと様子が気掛かりで………」

 

家久「なら、尚更あたしに任せて、行ってらしゃい! 颯馬お兄ちゃんも、待ってるかもしれないよ?! もし、待ってたら、期待を裏切る事になるなぁ……。 可哀想だなぁ─「わっ、わかりました!」」

 

歳久「それじゃ、いえちゃん! 無理が無いように、お願いしますね! 何かありましたら、伝令を送って下さい!!」ダッ!!

 

家久「…………全く、素直じゃないんだからぁ~。 さて! 島津隊! もう少し頑張ってね! 戦は勝利目前だからぁ!! 」

 

島津隊『ハイィィィ──────!!』

 

★★★

 

信長「義輝! 私達は大分押してるが、後方はどうだぁ!? 戦の状況は!? ここに、敵将が居た筈だが、姿が見えないと言う事は…討ち取ったか!?」

 

義輝「うむ! 手強い奴だったがのぉ!!」

 

光秀「良かった!! ですが……義輝様? 何故、後方より大分離れている前衛に、義輝様がいらっしゃるのです? まさか──!?」

 

信長「おぉぉ! また単騎で突っ込んだか!! 颯馬に叱られるぞぉ?! 『義輝様!!』と大声でぇ──!? ん? どうした?」

 

 

義輝「………そ、そうじゃ!! 颯馬が! 颯馬が!!」

 

光秀「颯馬が、どうしたのです!? 義輝様!!!」

 

義輝「颯馬が倒れたのじゃ!!!」

 

信長、光秀「「 ────────!!! 」」ガシィ!!

 

信長「いつ! いつだぁ!! 答えよ!! 義輝!!!」

 

光秀「義輝様! 颯馬の具合は!?!?」

 

義輝「……………わらわ達が、中央突撃した際に倒れ、信廉が看病しているのを見たが………最後じゃ………!! 様態等は、一切不明なのじゃよ…………………」ググゥゥゥ!

 

光秀「…………そんなぁ…………」ヨロヨロ

 

信長「光秀! ここは私と義輝に任せ、お前は颯馬の様子を見に行け!! 詳細を聞き、私達に使いを送り知らせるのだぁ!!!」

 

光秀「はい!!!」ダッダッダッダッ!!

 

信長「義輝! 今は落ち込んでいる暇はない! ここの勝負事を早急に付けて、颯馬を見舞おう!! 日の本の名高き将達が惚れ抜いた、『憎らしきおのこ』じゃ! そう簡単に………居なくなって、たまるものかぁぁぁぁぁ!!!!」

 

義輝「─────そうじゃな! こんな輩に時間を掛けるなぞ許されぬ!! 本気の本気で討ち滅ぼしてくれようぞ!!!」

 

 

◆◇◆

 

【 新しき仲間 の件 】

 

〖 虎牢関 負傷者収容所 にて 〗

 

颯馬「今…………戦は…………?」

 

運び込まれて、どれほどの時が経ったのだろうか? 

 

気が付けば………信廉殿と楽文謙が、心配そうに覗きこんでいたが。

 

そ、そう言えば、信廉殿は楽文謙殿を『真名』で呼んでいた……?

 

      バサッ!!  ──スッ! ─スッ!

 

信廉「颯馬! 体調はどうですか?」

 

凪「信廉様! 隣室には別の患者が入っています! あっ! あまり大声を出されるのは、些か礼儀に反すると……思われます………」

 

信廉「うふふふふ………凪もね?」

 

颯馬「………二人共、ご心配おかけしました……ゴホッ!」

 

信廉「駄目ですよ! まだ安静にして貰わなくては!!」ウルウル

 

凪「そうです! 天城様は……本来起き上がる事が、許されぬ身なのに……命に関わりますよ!!!」グスン

 

颯馬「分かった! 分かりましたから……!! そのような、涙目で訴えないで下さい!! こう、心の奥底から『罪悪感』と『嗜虐感』がごちゃ混ぜに湧き上がってくると言うか……ご免なさい!!」

 

信廉、凪「「 !?!? 」」

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

凪「私は…………正式に、曹猛徳様の下から去る事になりました。  天城様をこのような目に合わせ、そして、自分自身の武の道に、限界が見えてしまっていたので…………」

 

颯馬「────では、曹猛徳殿の下に残る御親友の二人、貴女の元主「曹孟徳」殿や他の皆さんと争うおつもりですが!?」

 

凪「………必然的にそうなりますね。 他の皆さんも反対されたのですが、意外にも後押ししてくれたのが、親友だったのです……! 」

 

 

☆★☆   ☆★☆   ☆★☆   ☆★☆

 

 

真桜「凪───! アンタは仰山悩んだ。 多分ウチらの一生分悩んだんじゃないかっつうほど、悩んだと思うんや………」 

 

沙和「だって凪ちゃん、ちょこっと、こっちに戻って来た時、お目々は真っ赤っ赤(まっかっか)で、肌がカサカサしてて……もの凄く落ち込んでいたの………。 今まで……見たことが無いくらい……」

 

真桜「あの『天城はん』の戦いの後……沙和と相談したんわや。 真面目な凪だから、悩んでるから慰めに行かんと……とな。 だけんど、ウチらじゃあかん! 凪をこんな目に合わせた『天城はん』に責任取らせにゃ! 』

 

沙和「真桜ちゃんも沙和も………凪ちゃんと離れるのは嫌。 凪ちゃんと戦うなんて、もっと嫌! だけど………凪ちゃんを……何も救う事が出来ないまま、見殺しにするなんて……絶対嫌なの!!」

 

真桜「凪! 『天城はん』とこへ行け! 『天城はん』は、大陸中を幸せにするちゅ『天の御遣い』の中心人物や! 凪がそこまで心服する人なら、ウチらも仲良うなって、皆で暮らせるよって!!」

 

沙和「沙和も真桜ちゃんも、お仕事頑張るし……沙和も北郷さんの事……気に掛かって……ね。 凪ちゃんの気持ち分かるのー!」

 

真桜「まぁ、ウチもな……。 北郷の兄ちゃんの事、意識してもうてるんよ。 結構、面倒みぃ…いいさかい。 まぁ、ウチら二人も……そんなワケや! 華琳様には、承諾を既に得てる! 早よぉ行って……幸せになるんやで!!!」

 

沙和「凪ちゃん! 元気でね…………なの!!!」

 

 

☆★☆   ☆★☆   ☆★☆   ☆★☆

 

 

楽文謙殿………真名を許可され『凪』殿………は、大粒の涙を流しながら、俺に謝罪をする。 

 

《あの『蹴り技』のため、俺は激しい武術が出来なくなった事》 

 

《凪殿は、俺を倒す事しか考えなかったのに、俺は大陸を救う大望を抱いて行動していた事》

 

《仲間の為に、命を懸けれる俺の行為を見て、自分の矮小さを感じ取り、嫌気が差した事》

 

その上で、『天城颯馬』自身に仕えたい! 自分の犯した罪を償うためにも、護衛として傍に居させてもらいたい! と、願い出した!?

 

その事により、ボンヤリしていた俺の頭は、急速に目覚め自体を把握! 凪殿に、思い止まるようにお願いしたが、頑として聞き入られず……………。

 

話を先に聞いていた信廉殿は勿論、俺の体調を聞きつけ飛び込んで来た光秀、歳久殿も……若干渋い顔をしながら、賛成に廻られた。

 

歳久「………今更、女誑しの颯馬に言うべき事はありません! ただ、今回の事で、颯馬が戦えなくなったのは、護衛の案件を提案しなければなりません!」

 

光秀「………そうてすね。 今になり、護衛を任命出来る程の武に秀で、尚且つ忠義に厚い人物を推挙するとなれば、到底一日二日では無理です。 楽文謙殿なら、『陳留の武神』なる肩書きと、高潔な精神は洛陽にも届いていますし!!」

 

歳久「………様子を見ながら、颯馬の護衛をお願いしましょう! 他の姫武将や将には、連絡しておいて…………」

 

光秀「…………月様が……なんと申されますか………!?」ハァ…

 

…………トントン拍子に、凪殿が董卓軍に加入する事が決まった。

 

ただ、凪殿から、一つお願いされた。

 

『自分は、曹孟徳様に信頼され将として任務を請け負いました! だから、鞍替えしたからと言って、曹操陣営の機密事項は、一切話す事は出来ません! これは、例え天城様に頼まれても、武人の矜持に掛け、漏らす事など致しません!! 御承知を下さい!!!』

 

俺達は、その条件を飲み、凪殿を迎え入れたのだった!!

 

 

◇◆◇  

 

【 袁遺 天に帰す の件 】 

 

〖 虎牢関付近 にて 〗

 

袁遺「……では………行くぞ!!」

 

袁遺は、白装束のかなり弛みのある袖の中に、両手を引っ込める。 

 

そして、次の瞬間……両手に長さ一尺(約23㌢)余りの黒と白の鉄扇を持っている。 表に陰陽太極図、裏に八卦図が描かれている。

 

謙信「仕掛けられる前に………斬る!!」

 

謙信が、八相の構えを取り、一足飛びに飛び込みながら、袁遺を右袈裟斬りにするために、太刀を振り落とす!!

 

袁遺「甘い…『黄龍翻身』!」

 

上段より迫る太刀を、左鉄扇で受け流し身体を回し、謙信の右側に廻りこむ! そして、右鉄扇が謙信の頭上に閃く!!

 

   バッ!!  シュッ────ン!!

 

慌てて身体を半身に開き、その攻撃を避けると、横より水平に動く扇子を見て、慌てて頭を下げ後ろに退く。

 

謙信「驚いた! これほどの武人が、簡単に討たれたなんて!!」

 

袁遺「お前達……の、将に依る……策に………掛からねば……まだ奮迅………出来た………のだ!!」

 

謙信「……確かに、颯馬の策のお陰なのだろう! だが、それを招き入れたのは、貴方自身に隙があったからでないか!?」

 

袁遺「………正論だ。 だから、俺も……今回、勝利を確実に……するため……策を弄した………」

 

謙信「どんな策だか分からないが…負ける私では……クッ!? た、太刀が、握れない………!!」 ガタン!!

 

袁遺「鉄扇……の中に…痺れ薬……を、入れた。 扇と……お前の得物……が、ぶつかるとき、自然………に、掛かるように。 ………我が秘術……『カスミ扇の術』………!」

 

謙信「………おのれぇ…………!!」ブルブルブル

 

袁遺「……フッフッフッ………私も、このような策を……使えば…良かったのだぁ……「ホンにそう思っか?」───!!」

 

★☆☆

 

    ザッ… ザッ… ザッ…

 

霞「………正当な勝負事なら、黙っとこうか思うたが。 えげつない手を使て勝とうなんて、ウチが黙ってせへんでぇ?!」

 

袁遺「……仲間か!! 「キィ───ン!」 うおぉ……!!」

 

霞「…袁遺…やったか? あんさん、そない勝ち方して、何ぞおもろい事あんの? おのれの心を誤魔化して……喜ぶと考えとんのか?」

 

袁遺「だが………勝ってこそ………」

 

霞「勝ち負けに拘り過ぎ、そんなんで余裕なんかあっか? 無いやろぉ? あれば、自分の未熟さに気付くはずや。 勝ちは確かに絶対欲しい! せやけど……自分自身を満足させる気……あんの?」

 

袁遺「……………………………」

 

霞「……確か、この謙信の目ぇ見いてぇ……羨望していたのは…何やったんや? ………ここまで、言うても反応無しかい。 仕方無しやな…これで終いにしよか!!」

 

袁遺「……お主達に……尋ねよう。 潔し良し…死に様の負け戦…と汚き謀略…にて勝った…勝ち戦。 どちらが…尊いと想う…かね?」

 

霞「ウチやったら、『志』の判断次第やね!」

 

謙信「私もだ! 自分よりも……『民』を優先し『守るべき人』を優先する! それで全力を出しての結果なら、どちらも尊いと想う!」

 

袁遺「………結果は? 汚き謀略で……殺された者共……の残された者が……恨み事……を、述べた……場合……は?」

 

霞「ウチは、一喝するわな! 『理由はどうあれ、相手を殺す気で来たんなら、自分の死の覚悟を考えなぁあかん!! もし、立場が逆になり、同じ事を言われたら、どないすんのや!!』……てな!」

 

謙信「私は………その分民草を幸せにして………恨み事が述べられないように、精進するのみ。 その方の死は………決して無駄ではなかったのだと、証明するために…………! 」

 

袁遺「……成る程。 ……そうか、焦っていた……のか? 袁本初…や袁公路……の栄光……の眩しさに………眩んで……いたのか……? いや……私の志……私欲……に、満ちていたんだろう……………!」

 

謙信「…………やっと、動ける………」

 

袁遺「……先程は………無様な……真似を…した。 謝罪…する! そして……頼み……が……ある」

 

謙信「私に出来る事ならば………………」

 

袁遺「……私を………斬って欲しい! それだけ……だ」

 

謙信「…………承知した! 霞、立ち会い人になってくれないか?」

 

霞「武人の死に様を見届けるんやね! 了解や!!」

 

袁遺「………最後に……礼を言わせてくれ! …清廉潔白な士よ!

……豪放仁愛の士よ! ……会えて良かった! ……さらば!!」

 

       ザシュ──────────!!

 

 

★★☆

 

 

 

霞「………敵さんじゃなく、味方として……会いたかったで!!」

 

謙信「………我々に問い掛けた事、この実績を問うていたのか? それとも、己の道程を後悔していたのか?」

 

霞「……………止めや。 答えなんぞ…考えても千差万別。 相手は既に天へ帰ったし。 ウチらは、今の最良と思う事を行うまでやな」

 

謙信「そうか、そうだな…。 霞…ありがとう! 助かった!!」

 

霞「なーに、洛陽に戻ったら、一杯奢ってくれればええねん!! ほな! もう一踏ん張り頑張ろうや!?」

 

謙信「あぁ───!!」

 

 

 

◆◇◆

 

【 劉岱の最後 の件 】

 

〖 汜水関付近 にて 〗

 

劉岱兵「もう駄目だぁ!! 逃げるぞぉ!!」

 

元袁術兵「何が『天の御遣い』だ!! 俺達を贅沢させてくれるんじゃなかったのかよぉ?!」

 

元袁紹兵「五月蝿えぇぇぇ!! そんなもん、命あっての物種だ!」

 

劉岱軍が、卑怯で合理的な方法で集めた(劉岱が皇帝がなれば、欲望のまま好き放題出来るという話で)約壱拾壱万(11万)の軍。

 

しかし、洛陽軍の奇抜な策と将兵達の奮戦振りのお陰で、敗走の憂き目に合っていた。

 

 

 

***   〖 翻竜鳳翼の陣 〗 ***  

 

最後に劉岱兵へ仕掛けた策は、最初に鶴翼の陣形を構築、武を極めし者を両端に伏兵で置く。 

 

劉岱軍が攻め寄せて、伏兵の配置場所に中衛の軍が来た時に、三太夫側が合図をし、光秀に火縄銃の発射を促す。

 

そして、断続的な音の合図で劉岱軍に『策の恐怖』を思い出させ、進行を止める。 そして、更なる伏兵で恐慌させ、島津お家芸『穿ち抜け』を成功しやすいように、態勢を整える。

 

島津義弘隊を先陣にした隊を繰り出して、劉岱陣営を抜けきる。

 

その後、穿ち抜けした後に後方より攻めて、『包囲網』が完成する。

 

 

 

火計を大規模に出来なかったのも、この策略に支障をきたす可能性があるためという理由もあった。

 

***  ***  ***  ***  

 

劉岱兵「ハァ! ハァ! 汜水関まで行けば……!?」

 

元袁術兵「な、何だよ!! あれは!!」

 

元袁紹兵「逃げても………駄目かぁ…………」ガクッ

 

汜水関に行けば、留守役の軍が居る! その者に事情を話せば逃げる事は出来る!! そう高を括って来てみれば……………。

 

左右の汜水関門前に、『土嚢』で出来た壁が『八の字状』に、成人男性の腰の高さに組んである。 勿論、狭い方が汜水関の門口に向いている。 

 

そして、その『土嚢』の壁に、弓と竹槍を持つ兵士が…………!!

 

姜伯約「ここは、私達が占拠しました!! 大人しく投降するなら捕縛の上、罪を問いましょう! もし、強制的に逃走するのなら容赦はしません!! 」

 

汜水関の関上にて、姜伯約が宣言する! 

 

『命が惜しい者は投降せよ! 命の要らない者は挑んで来い!』

 

多数は……投降したが、脛に傷持つ者は、強行突破を試みた。

 

─────捕まれば死罪は確実! ならば一か八か!!

 

その様子を見ていた元捕虜は語る。

 

『あれは………《 生 》を餌にした、残酷な処刑場だった!』

 

逃走を企む者は、徒党を組み入り込む! そしてなるべく『内側』に潜り込もうとする。 他の奴を犠牲にして、自分だけが助かりたいために………。

 

洛陽軍 右陣営陣営隊長「 放て! 」

 

洛陽軍 右陣営陣営隊長「 やれ! 」

 

壁の『八の字』の末に侵入してきた兵団に、弓隊が矢を射る!

 

シュン! シュン! 「痛!」「おわっ!?」

 

まず狙われるのは、『 足 』。 逃走をなるべく阻むためと、『肉壁』を剥がし、内側に居る者達も『平等』に味わってもらうため。

 

足を射抜かれた者は、一応捕獲。 『壁』として強制的に連れて来られた可能性もあるため。

 

『 べ、別に《 脛に傷を持つ 》という意味合いから、思い浮かべた訳じゃありませんよ!! ムッ…信じていませんね! 颯馬!!』

 

と、颯馬と策の話し合いに、この策を提案した甲斐の虎殿は……顔を赤らめて抗議したという。

 

話が逸れたが、入り口に近付くにつれ、関上からも矢、横から竹槍が飛び出し、逃れる者は殆どいない。

 

無論、こんな事を繰り返すと、『学ばれる』ため、時には変わった物も準備する。

 

例えば、『荒縄』を両側で持ち、入ってきたら一斉に引いて『将棋倒し』。 菱の実を乾かした『マキビシ』をまいたり色々と。

 

 

そして……その中に、かの『天の御遣い』の姿が!

 

 

(極秘伝令……劉岱だけ、門の外へ逃せ!!)

 

 

三太夫より指令を受けていた姜伯約は、部下に指示して……劉岱だけを逃れさせた……………。

 

 

★☆☆

 

〖 汜水関より少し離れた荒野 にて 〗

 

劉岱「ハァ! ハァ! ハァ! ……おのれぇ!! 辺允、袁遺! 貴様等は儂を……儂を! 何だと思っていおる!!! それに、于吉めぇぇ!! このような能無しの部下を送り込みおって!!!!」

 

悪態をつくを劉岱。 普段着慣れない衣服のため、動きも鈍く通気性も良くない(冬服仕様)。 それでも『御遣いの服』は、大汗かきながらも、大事に着ていた。

 

??「待ってたよ! 『不倶戴天の御遣い』サマ!?」

 

劉岱「────!!」

 

汜水関より大分離れたと思っていた矢先に、声を掛けられ驚く劉岱!

 

そこには、数人な配下と共に、三人の将を縄で捕獲した

三太夫の姿があった…………。

 

三太夫「………この三人が、結構しぶとくてさ? どうも『天の御遣い』を殺さないと、成仏出来そうも無さそうなんだよ………」

 

『困った術を掛けてくれたぜぇ』と一応言っているが、顔は全然困った顔をしていない。

 

『王匡、鮑信、孔ユウ』を縄で捕獲した状態で運んでくる。

 

劉岱「まさか? 奴らに……儂を処刑させようと…しているのか? だが、そんな事は出来ん! でなければ、儂はコイツ等を率いてなどいないわ!!! 」

 

三太夫「………それがさ、袁遺を倒した時点に、統率が狂い始めてね。 『白い服』を着ている奴を狙うんだよ。 それで、他の仲間と相談した結果……おっさんを標的にしているじゃないかな? …と」

 

劉岱「何だとぉぉぉ!!!」

 

三太夫「おっさん…………アンタ、何回『天の御遣い』を連呼したと思っているんだい? コイツ等の腐った頭には、昔の記憶はあまりないんだろう? あるのは『御遣い弑逆命令』のみ、しかも…目標がわざわざ自分から名乗っていたんだ! 分かりやすいよな………!」

 

劉岱「まさか! まさか!!」

 

三太夫「………よし、解き放て!!! 」

 

       ブツン! ブツン! ブツン!

 

王匡、鮑信、孔ユウ『──────◆◆◆◆────!!!』

 

ユラユラ………  シャキン! シャキン! シャキン! 

 

劉岱「よ、止せ! 止めろ!! 俺は『天の御遣い』じゃな…「パン!」──! 」

 

劉岱は、不定しようと口を開けるが、三太夫が……遮るように、手を広げ勢い良く閉じ『合掌』を行う。

 

三太夫「………………安らかに、成仏!!」

 

★★☆

 

 

劉岱「俺は、こんな所で、死んでいい男では無い!!!」

 

『御遣いの服』が、身体に張り付く! 動きが徐々に拘束される!

 

王匡「───────!!」シャキン! シュンシュン!!

 

鮑信「…………………………!」 ザッ!! ブーン!

 

劉岱「くっ!! この───馬鹿者共!!」シューン ザクッ!

 

   バタァーン!!   ────ムクッ!

 

劉岱「くっ、くそ!! ん!? もう一人は?!?!」

 

   『ザアアァァァ─────シュッ!!!』

 

劉岱「グギャアアアァァァ━━━━━━!!!!」

 

せ、背中が熱湯を浴びせられたように──あ、熱い!!

 

後ろを振り返ると……孔ユウが顔を隠す布の奥で『嗤う』のが見える。 儂は、こんな操り人形のような「ドスッ! トスッ!!」 ……ガハッッッ!!!

 

さ、左右に……王匡、鮑信が……剣で、わ、儂の脇腹を…貫いた!

 

王匡、鮑信、孔ユウ『 ゴゴゴオォォォ━━━━!!! 』

 

さ、三将の………雄叫び…………聞こえる……………!

 

わ、儂の生…………は………こんな…もの…………か……

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

虎牢関戦………やっと、終わりましたが…………次回は、洛陽での戦いになります。 虎牢関の後始末も入れるかもしれませんが。

 

大風呂敷の広げ過ぎた感がありますが、何とかこの章も、終わりそうです。

 

雪風様 お待ちどうさまでした! 

 

やっと、三好と島と十河が出せますよ。

 

恋姫ファンの方なら、月や詠達ですね。 まだ、他にも出てもらいますよ。

 

禁玉⇒金球様 洛陽終わった後の諸侯ですが、華琳は『青州』黄巾残党の鎮圧を任せようと思います。 麗羽は罰金刑で。 雪蓮は……まだ考えていません!

 

naku様 これで、来週まで休むつもりですが………どうでしょうかね。 また、早めに投稿再開するかもしれませんが……。

 

 

また、宜しければ、読んで下さい。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
9
2

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択