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真・恋姫無双 三人の天の御遣い 第二章『三爸爸†無双』 其の四十七 

雷起さん


得票数36の桂花二回目のお話です。
おまけ壱 『北郷二刃奮闘記』其の十二 リクエスト:真桜(カラクリ話) 9票
おまけ弐 『聖刀くんの日常』其の十一 リクエスト:璃々   7票
おまけ参 リクエスト:里帰り&お墓参り[幽州組] 14票

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2013-11-11 03:52:42 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:3667   閲覧ユーザー数:2784

第二章  『三爸爸†無双』 其の四十七

 

 

本城 後宮談話室                 (時報:桂花七人目 妊娠一ヶ月)

【桂花turn】

 

 昨日、遂に北郷二刃がこの世界にやって来た。

 その二刃はあいつらに連れられて城下に出掛けている。

 管輅の予言が有ってから昨日までの捜索警戒体制も解除できた。

 大体、管輅が二刃の現れる場所をもっと詳しく予言してればこんな大騒ぎをしなくて済んだのよ!

 後宮の庭に現れるんなら最初からそう言いなさいよ!

 これまでに費やした人員と費用がどれだけだと思ってるのよっ!

 

 まあでも・・・・・二刃が一番安全な場所に現れて本当に良かったわ・・・。

 二刃自身も、とてもあいつらの妹とは思えない程良い子だったし。

 

 そんな忙しくなった所で、私はまた懐妊の告知をされてしまった。

 

 それでも今回はあいつらの事を許してやるわ。

 なにせ今回は・・・・・ふふふ♪

 

 うふふふふふふふふふふふふふふふふふふ♪♪

 

 今回は念願の華琳さまとご一緒だからよ~~~~~~♪

 

 華琳さまとご一緒に告知を受けて♪

 華琳さまとご一緒にお腹が大きくなって行き♪

 華琳さまとご一緒に出産するの♪

 

 ああ♪何をするのも華琳さまとご一緒出来るなんて♪

 

「おい、桂花。楽しそうにしている所を済まんが、話を聞いてくれ。」

「何よ星。人が楽しく妄想してるのを邪魔しないで頂戴。」

 以前に似た会話を星とした様な気がするわ・・・・・これが既視感というやつね。

 

「否定するどころかボカシた所を明確にされた・・・・・いや、それよりだな、私を初め皆がお主に贈り物を持ってきたのだ。受け取ってくれんか?」

 

「贈り物・・・」

 辺りを見回すと大勢が集まっていた。

「昨日は酒の席とは言え、ちと言い過ぎたと皆も反省している。お詫びの意味も有るので受け取ってくれぬか?」

 

 それぞれが手に包みや箱を持っている。

「私よりも華琳さまでしょう?ちゃんとお渡ししたの!?」

 私がそう言うと、華琳さまが人垣の向こうからいらっしゃった。

 

「私はもう受け取ったわよ、桂花。皆の気持ちなのだから貴女も受け取りなさい♪」

 

「華琳さまが受け取っておられるなら・・・・・」

 その辺の序列はきちんと守ってるのね。

 星に向き直って、渋々だけど返事をしてあげる。

「私も受け取らないでも無いわよ・・・」

 昨日、散々『肌馬』扱いした侘びと言うなら受け取るのも(やぶさ)かでも無いわね。

「おお、そうか♪では先ず私からだ。この包みがお主にで、こちらが子供達に。」

 星が差し出した包みと箱を受け取ったけど、それ程重い物では無かった。

「なにこれ?」

「包みの方は普段から使える物だ。その方がお主も気兼ねしないと思ってな。」

 星は私がこうしたお祝いを貰う事を気に病んでいたのに気付いていたみたいね。

 何度も私一人が懐妊してるから、流石にそろそろ遠慮したいと思っていた。

 

「子供達にはカラクリ貂蝉とカラクリ卑弥呼の組み合わせ」

「そんな気持ちの悪いモノを持って来ないで頂戴っ!!」

 

「いや、これが今、子供達に大人気でな。ほれ、金桂、銀桂。頼まれていた物だぞ♪」

 え?

 

「「わ~い♪星媽媽、ありがと~♪」」

 

 いつの間に金桂と銀桂が帰って来てたの!?

「螢にも同じ物を渡して有るから、一緒に遊んでくれ♪」

「「うん♪」」

 

 この子達が下の子の面倒を見るのに役立つなら・・・でも、本当にこんな物が人気有るのかしら?

 

「金桂ちゃんと銀桂ちゃんいいなぁ。わたしも欲しい・・・」

 ま、眞琳さま!?

 眞琳さままでコレを欲しがるなんて・・・。

 この発言には華琳さまも冷や汗を流していらっしゃる。

 

「眞琳・・・貴女には・・・・・前に専用の包丁が欲しいと言っていたじゃない?一式を揃えてあげるからこっちは我慢しましょう♪」

 

 華琳さまに言われて眞琳さまは迷っておられたけど、納得して下さった。

 そうしている間にも、私の所に皆が持ってきた祝いの品が積まれて行く。

 

「この中身、枕だぁ。」

 

「え?こ、こら、金桂!勝手に開けてはダメよ!」

 もう、ちょっと目を離すとこれなんだから!

 

「こっちはおパンツが入ってたよ。」

 

「銀桂まで・・・・・パンツ?」

 普段使う物ってそういう意味なの?

 銀桂が引っ張り出したのは、確かに普段使いの質素なパンツだった。

 私が贈り物の山を良く見直すと似た様な包みばかり。

 そしてその包みには木の札が付けてある。

 何が入っているのか書いた目録と思い手にした。

 

 五角形の木の札にはこう書いてあった。

『二人目が授かりますように』

 

パンパンッ!

 

 突然手を叩く音が聞こえ、顔を上げると皆が私に手を合わせて拝んでいた。

 

「ちょっとあんたら・・・・・・これは一体何のつもり・・・・・?」

 

 私の問いに管輅が前に出て来た。

「これは北郷くんの国で、神様に子宝を祈願する時の儀式みたいなものよ♪パンツとか枕を奉納するの♪」

「それをこいつらに教えたと・・・・・」

 私が指差すと拝んでいた連中は苦笑いをしていた。

 もう・・・こんな冗談で気が済むならやらせておくわよ!

 

「私自身、何でこんなに妊娠するか解らないんだからね!責任は取らないわよ!」

 

 私は睨みつけて言ってやった。

「はっはっは♪皆もそこまで本気では無いさ。」

 星は笑ってるけど、こいつがみんなを先導したんじゃないの?

「所で星。どうせくれるなら、もう少し凝った意匠の物を寄こしなさいよ。」

「ん?・・・・・ああ、パンツの事か。そんな物を渡したら、その腹の子が産まれて直ぐにまた懐妊してしまうではないか。」

「ば、馬鹿!子供が居るんだから言葉を選びなさいよっ!」

 

「話を振ったのは桂花ではないか・・・」

 

 

 

 みんなが子供の世話をする為、一度部屋に戻って行く。

 私は黄梅と來羅をあやしながらこの談話室に残った。

 

 今日はこの後宮で晩餐会となりそうだわ。

 全員ここで妊娠中から乳離れまでほぼ二年を過ごしたのだから、自然と落ち着く場所になってしまったのね。

 私は金桂を身篭った時から、もう六年半近く暮らしているわね。

 曹魏館の部屋で過ごした時間より長くなってしまったわ・・・。

 

「子供もこれで七人目か・・・あんな風に扱われるのも仕方ないか・・・」

 

「あら、桂花も丸くなったものね♪」

「か、華琳さま!お部屋に行かれたのでは!?」

 華琳さまが戻られた事に気が付かないなんて・・・私は変わってしまったのだろうか・・・。

 

「私の部屋を整える指示をしに行っただけですもの。丹桂と連翹は眞琳と金桂、銀桂が遊んであげてるけど、黄梅と來羅を同時にあやすのは大変でしょう?ほら、黄梅♪華琳媽媽が抱っこしてあげるわよ~♪」

 一歳になった黄梅を華琳さまが抱き上げて下さいました。

 

「華琳さまのお手を煩わせるなど」

「こうして子供を抱いているとね・・・」

 

 華琳さまは私の言葉を静かに遮ります。

 

「落ち着くのよ♪」

 

 華琳さまの笑顔に私は胸が熱くなった。

 

 その熱は戦乱の頃の様な猛る物では無く。

 閨での睦言に感じる物でも無い。

 

 この方に尽くすというあの日の誓いは、この笑顔の為だったのだと確信する。

 

「ふふ♪私も桂花が羨ましいわ♪六人も子供を産んで♪」

 

「華琳さままで、その様な・・・」

 

「でも、私もようやく二人目を身篭れたわ。これも桂花のお陰かしら?」

「お、お戯れを・・・」

 

「あら?だって、私と貴女が懐妊したのは、きっと一緒に一刀たちと」

「か、華琳さま!」

 

 今度は私が華琳さまを遮ってしまった。

 こんな事を子供達に聞かれたら・・・。

 

「へ~~、面白そうな話しね。」

 

「か、管輅!あなた何時から居たのよ!?」

 もう!今日の私は迂闊すぎるわ・・・。

 

「気にしない、気にしない♪それよりも、ちょっとした儲け話を思い付いたのだけど♪」

「儲け話?」

「どんな話しかしら?聞かせて頂戴。」

 

 管輅は華琳さまと私が座っている椅子の傍に、新たな椅子を用意して座った。

「さっき、北郷くんの国の話しをしたでしょう?その神社で売ってる物を桂花ちゃんの名前で売れば、子供を欲しがってる庶人にバカ売れするわよ♪」

 

 華琳さまは訝しむお顔で管輅を見る。

「それは桂花を祀った廟でも造るのかしら?」

 管輅は楽しそうに笑った。

「そこまでしなくても良いと思うけど、庶人が安心して子供を産めるっていうのは平和な証ではなくて?北郷くんたちの想いにも沿ってると思わない?」

 管輅の言葉に私自身を重ねると深く納得できた。

「それはそうね・・・」

「悪くない発想だけど、何を売るつもり?」

 

「『子宝飴』とか『さずかり飴』と呼ばれる物よ。」

 

「飴?そんな私の名前を使ったとしても、ただの飴じゃない。庶人だってそんな物に御利益なんて無いって気付くわよ!」

 

「それがねぇ、飴の形が男女の00を模した物なのよ♪説得力有るでしょ♪」

 

「・・・・・・やっぱりあいつらが居た天の国って変態だらけなんじゃないのって、そんな物に私の名前を使わないでよっ!!」

 

「・・・・・それは流石にやりすぎの様な気がするわね・・・・・」

 そうです華琳さま!もっと言ってやって下さい!

 

「駄目かしら・・・・・北郷くんが居なくてもこの飴を作って売ってる外史も有るから行けると思ったのだけど・・・」

 

「別に私達がその外史の真似をする必要は「桂花!その飴、作って販売するわよ!」無いってえええ!?か、華琳さまっ!?」

 

「いつもは他の外史が何をしていようと気にはしないけど、平和の事で遅れを取るのは我慢できないわ!」

 

 か、華琳さまが・・・・・私をいじめて下さる時の様な笑顔に・・・

 

 その目で見られると この方に尽くすというあの日の誓いは、この笑顔の為だったのだと陶酔してしまう・・・・・。

 

 

 

 

夕刻 後宮談話室

【紫一刀turn】

 

 二刃の歓迎会と華琳、桂花の懐妊を祝う宴会の二回戦が始まった。

 会場が人数に対して狭い事も有り、すっかりお馴染みになった立食式だ。

 テーブル毎にグループが出来て会話が弾んでいた。

 酒も用意されて、酒呑み達は嬉々として酒壺の周りを占領している。

 子供達も遊んだり、母親からご飯を食べさせてもらったりしていた。

 二刃は璃々に連れられ、みんなと話をする為に動き回っていた。

 俺たち三人は華琳と桂花と一緒にテーブルを囲んでいる

 

「「「本当なら二人と一日一緒にいてあげなきゃいけない所なのに、ゴメンな。」」」

 

 俺たちが手を合わせて謝ると、華琳は呆れ顔になった。

「何言ってるの、今は二刃優先でしょう・・・そうだわ、明日も二刃を街に連れて行くのでしょう?私と桂花も同行するわ♪」

 

 華琳の提案は俺たちにとって有難い物だが・・・。

「「「そんな・・・・・良いのか?」」」

 好条件すぎて思わず聞き返してしまう。

 華琳は眞琳を身篭った時も、桃香と蓮華が一緒だった。

 俺たち三人が揃って華琳一人とデートをした事は一度も無い。

 華琳が他の母親達と同じ様にしたいと考えていると思うのは、俺たちの自惚れでは無い筈だ。

 

「華琳さま!?私は残って子供達の面倒を見ますので、華琳さまが二刃を案内してあげて下さい!」

 

 桂花もか・・・・・。

「桂花。貴女は今まで一刀たち三人と一緒に、金桂達を連れて出掛けた事が無いでしょう。」

「それは・・・・・その・・・・・」

 華琳の言葉に桂花が狼狽えていた。

 

「まあ、私も無いのだけどね。だから明日は眞琳と金桂、銀桂、丹桂、連翹も連れて行きましょう♪」

 

 二刃だけじゃなく眞琳達も・・・はは♪

 そういや華琳の言う通りだ。

 シャオが身篭った時に冰蓮がこっそり付いて来た事は有ったけど。

 買い物や遊びの時はいつも俺たちの中の一人だけしか一緒に行ってないもんな。

 

「華琳さまがそこまで仰るのなら・・・」

 

 桂花の返事はどうも煮え切らないな。

 よし、ここは援軍を呼ぶか♪

 

「「「眞琳!金桂!銀桂!丹桂と連翹を連れてこっちへおいで。」」」

 

「「「はーい!」」」

 

 子供達の輪の中から五人が笑顔でやって来る。

「「「明日は華琳媽媽、桂花媽媽、それに二刃お姉ちゃんと一緒に街にお出かけだ♪」」」

 子供達は驚いた顔で固まってしまった。

 その中で眞琳が遠慮がちに訊いてくる。

 

「本当に?」

 

「「「ああ♪媽媽達に赤ちゃんが宿ったお祝いだ♪」」」

「えっと・・・爸爸たちは?」

「「「俺たち三人も一緒だよ♪」」」

 

 子供達に笑顔が咲いた。

「「「うわ~~~~い♪」」」

 

 眞琳、金桂、銀桂が両手を挙げて喜ぶと、丹桂と連翹もお姉ちゃん達の真似をしてバンザイしていた。

 金桂と銀桂は桂花に駆け寄って抱きついた。

「媽媽!いいんだよね?爸爸たちとお出かけできるんだよね!?」

「媽媽!媽媽!銀桂は爸爸たちに肩車してほしいの!してくれるかな!?してくれるかな!?」

 娘のはしゃぎ様に桂花は驚いていたが、直ぐに笑顔になって頭を撫でた。

 

「金桂、嘘じゃないから安心しなさい。銀桂、そういう事は爸爸たちにお願いしなきゃ♪」

 

 桂花もこれで観念した様だ♪

 

 さてと、明日は子供達も居るから護衛を増やさないとな。

 

 

 

 

翌日 房都商店街

【桂花turn】

 

 昼前の商店街はかなりの賑わいを見せている。

 その中を華琳さまと眞琳さま、そして私と娘四人、二刃とあいつら三人。

 そして護衛役に璃々とあいつらの親衛隊と・・・・・・・・・・・貂蝉と卑弥呼。

 更に管輅まで付いて来ていた。

 

「子供がいなくて一番身軽なのが護衛に付きました♪」

 

「ちょっと、管輅。あんた誰に向かって話しかけてるのよ?」

 貂蝉と卑弥呼の仲間なだけあって、突然変な行動を取るわね。

 

 華琳さまと二刃が眞琳さまの右と左で手を繋いでいらっしゃいます。

 私は丹桂の手を握り華琳さまの横。

 紫一刀が銀桂を、緑一刀が金桂を、赤一刀が連翹を肩車している。

 璃々が一刀たちを気にして声をかけた。

 

「ご主人さまたち、いつでも代わるから疲れたら言ってね。」

「「「これくらい大丈夫だって♪」」」

 

「ご主人さまが疲れたら~♪」

「私と貂蝉が御主人様を肩車してやろう♪」

 

「「「全力で拒否するっ!!」」」

 

 何を馬鹿な事言ってるのかしら。

 

 私達が最初に向かったのは、華琳さまが昨日眞琳さまと約束した包丁を買う為の刃物店だった。

 この店は日用の物を中心に扱っていた。

 刀剣などの大型の物は別に専門店を構えている。

 それでも護身用の懐剣くらいは置いていた。

 華琳さまと眞琳さまが包丁を吟味している間、私達は二刃に懐剣を選んでいた。

 

「必要なんですか・・・やっぱり・・・」

 

 二刃が困った顔をしている。

「そうね、年頃の女の嗜みとして持っておくべきよ。いくら治安が良くなったとは言え、男なんて直ぐに獣になるんだから。」

 私は目線を一刀たちに向ける。

「そうですね。」

 

「「「おい!」」」

 

 一刀たちが何か抗議してるけど無視。

「こういうのは私より璃々の方が得意でしょ。選んでくれる?」

「はいはい♪そうだ、名前が『二刃』なんだから二本買っちゃおうか?」

 そんな冗談を交えながら刀身を二つ選び出した。

 これに柄と鞘を拵え、後日城に納品する様に店主に頼んだ。

 

「璃々ちゃんお疲れ様でした♪お姉さんがご褒美にイイモノあげましょう♪」

「え?こ、これっ!」

「これはねぇ・・・・・」

 

 管輅が店の奥で、コソコソと璃々に何かを渡している。

 時々私をチラチラと見るので気になった。

 

「ちょっと、管輅。何してるのよ?」

「昨日話した飴の試作品をあげたの♪」

 

 昨日の飴?・・・・・・・・・って!!

 

「(あんた!なんて物持ってくるのよっ!!)」

 

 昨日の説明の通りなら、こんな街中で持ち歩くなんて信じられない!

「(璃々!そんな物突っ返しなさい!)」

「(う~ん・・・でも、桂花お姉ちゃんの傍でコレ持ってたら御利益が増しそうだし・・・)」

 

「「「どうした?何かあったのか?」」」

 

「こっち来んなっ!!」

 危うく手近に在る物を投げつけそうになったけど、流石に堪えて声と眼光だけで追い返した。

 

 いくらあいつらでも包丁を投げる訳にはいかないわ。

 

 

 

 

夜 後宮 桂花私室

【紫一刀turn】

 

 子供達ははしゃぎ疲れたらしく、今日は早々と眠りに就いた。

 俺はあどけない寝顔の金桂達を眺めている。

 食事をして、服を買って、他にも色々な店を回って・・・・・こんな普通の事が、金桂には滅多にないイベントになってしまっているんだな。

 子供が多いのを言い訳にはしたくない。

 これからは街の視察を増やして子供達を何人か連れて行く事にしよう。

 

「金桂達も眠ったみたいね。黄梅と來羅も眠ったわ。」

 

 桂花が隣の部屋から戻って来た。

 その顔に少し疲れが見える。

 

「お疲れさん、桂花。」

「ええ、ホント疲れたわよ。」

 文句を言いながら金桂達の様子を確認しに、俺の隣へ来て椅子に座った。

 

「でも、この寝顔を見れたのなら疲れ甲斐もあったわ♪」

 

 子供達の寝顔を見るその横顔は、母親の慈愛に満ちていて、つい見とれてしまった。

 

「なによ?」

 

 振り向いて口を尖らせているが、それすらも愛しく感じる。

 

「足をマッサージしてやろうか?」

 前ならこんな事を言えばひと暴れある所だ。

 だけど今は

 

「そうね、今日はまだ言う事を聞いてくれるんですものね。こき使ってあげるわよ。」

 そう言って寝台に上がり、うつ伏せになる。

 俺は苦笑して桂花の疲れが取れる様に指圧を始めた。

 

「私の足に欲情しても私は相手しないわよ。」

 

「人がそんな気分にならない様、気を散らしてるのに!却って意識しちゃうだろ!」

 

 そんな軽口も挟んで笑い合った。

 

「ありがとう・・・一刀・・・」

「ん?マッサージくらい何時でもしてやるぞ。」

「そっちじゃなくて・・・・・子供の事・・・いつもは華琳さまの手前が有るから言えないけど・・・」

 桂花は体を捻って俺の顔を見ている。

「こんなに子供をくれて・・・以前はこんな風に思わなかったけど・・・今は少し優越感も有るわ・・・」

 

 今の桂花は・・・・・こんな事を言ってくれる様になった。

 

「だからこれはそのお礼。」

 

 桂花が俺に手を伸ばして顔を近付ける。

 そしてそのまま口づけをした。

 

「きょ、今日は特別よ!私ももう寝るわ!」

 

 暗くてよく見えないが、桂花の顔は赤くなっている様だった。

 

「おやすみ、桂花♪」

 

 俺は優しく言って部屋を後にした。

 

 

 

 さて・・・・・この猛るモノをどうしたもんか・・・・・。

 

「あ、ご主人さま。桂花お姉ちゃんも寝ちゃったの?」

 

 

 

 

ひと月後 後宮談話室

【桂花turn】

 

 私は來羅を揺り篭で眠らせ、黄梅と遊んであげている。

 そこに凪がやって来た。

 

「桂花さま、華琳さまはどちらに?」

 

「華琳さまなら厨房よ。何かあったの?」

「ああ、慶事の報告です。璃々が懐妊しましたのでその報告に来ました♪」

 

 璃々が!?

 ここ二三年は間が開いていたのに、こうも立て続けに懐妊するなんて・・・。

 

「これは『子宝飴』の御利益が有ったかしら♪」

 

「管輅!だからあんたは何でいつも突然現れるのよっ!!」

 

「何ですか?その『子宝飴』とは?」

「凪!それは気にしないで!」

「先月教えてあげた北郷くんの国の風習のひとつでね♪」

 

 私の静止を無視して、凪は管輅から熱心に話を聞いている・・・。

 

 ああ・・・・・これであの飴の噂が広まって本格的な製造が始まりそう・・・。

 こうして私に『肌馬』とかいう渾名が定着して行くんだわ・・・。

 

 あれ?・・・・・でも、この場合の私の立場って、むしろ『当て馬』なんじゃないのぉ!?

 

 

 

 

 

おまけ壱

『北郷二刃奮闘記』其の十二

リクエスト:真桜(カラクリ話) 9票

 

本城 後宮談話室                 (時報:桂花七人目 妊娠三ヶ月)

【二刃turn】

 

 季節は晩秋。

 風もすっかり冷たくなって来た。

 いくら着てるのが制服の冬服とは言え、これだけで過ごすのはキツイ。

 そんな時に桃香さんからセーターとマフラーをプレゼントされた。

 兄さんたちから桃香さんの編み物の腕はお義姉さん達の中で一番だと聞いていたけど、本当に一級品だった。

 素人っぽさなど何処にも無く、あたしが去年量販店で買ったマフラーが荒縄に思えるくらい出来が違った。

 天の御遣いをイメージして色は白。

 着てみればその暖かさは桃香さんの人柄を表す様にポカポカだった♪

 

 ただ・・・一点だけ気になるのは・・・・・デザインがいわゆる『縦セタ』だった事。

 

 このデザインは桃香さんみたいな胸なら最強兵器となるけど、あたしの体型では・・・現実を突き付けられ涙が止まらないよぅ・・・・・。

 

「「「二刃、そのセーターは桃香から貰ったのか?」」」

 

「うん、スゴク暖かいけど・・・」

 デザインの事を兄さんたちに言うのはマズイかな。

 

「「「それ、あっちの世界で買うと四十万はするから大事にしろよ。」」」

 

「・・・・・・・・・・・・・・」

 あたしは恐る恐るセーターを脱いだ。

 

「「「別に脱がなくてもいいだろ。」」」

「これは特別な時に着るようにする。」

「「「そうか?まあ、今から暖房器具を設置するから大丈夫だとは思うけど・・・」」」

 暖房器具・・・あたしは壁に有る暖炉を見た。

「これじゃダメなの?初めて見た時から、これに火が燃えてるのを見るの楽しみだったんだけど。」

「「「それは真冬用だ。今から使ってたら薪が足りなくなる。そこでだ!」」」

 

「ほ~~い!おまっとぉさ~ん♪炬燵設置しに来たで♪」

 

 談話室の扉を開けて真桜さんが現れた。

「真桜さん!それにコタツ!?」

「「「炬燵に驚く事無いだろ。日本では室町時代から有るんだぞ。俺たちが居るんだからこれくらいは造るさ。」」」

 あ、そっか。コタツっていうとどうしても電気コタツだと思っちゃうから。

 電気が無くてもコタツは作れるんだ。

 

「「「因みに熱源は『氣』だ。」」」

 

「・・・・・今、あたしの中で電気コタツよりもミラクルなアイテムに進化したよ・・・」

 

「まあまあ、二刃ちゃん。これ見たってや♪」

 真桜さんが手にしてるのは電気コタツの熱源部分にそっくりな物。

「ここに金属の伝線がこうグルグル~っと入っとってな。これに氣を流すと熱くなんねん。」

「はあ・・・どうやってこれに氣を流すんですか?」

 

「これや!その名も『自動充氣式氣池』!!」

 

 何処かで聞いたようなBGMと共に真桜さんはジュースの缶くらいの大きさの物を取り出した。

「「「電池みたいに氣を入れておく物だから氣池な。」」」

 兄さんたちが補足してくれるけど・・・・・深く考えたらダメなのかもしれない。

「詳しい説明は後や。先ずは組み立てるで♪」

 

 真桜さんは慣れた手つきであっと言う間にコタツを五つ組み上げてしまった。

 

「ほい完了♪ほんなら試運転いってみよか?」

「「「よし!ちょっと待ってろ♪」」」

 兄さんたちが一度厨房に消えると、みかんの入った籠、お茶、おせんべいを手に戻って来た。

 

「「「炬燵と言えばやっぱりこれがなくちゃな♪」」」

 

 あたし達は一つのコタツを囲んだ。

 正方形のコタツの一辺にあたしと真桜さんが一緒に、残り三辺に兄さんたちが座った。

 

「なんか・・・まだ温かくないね。」

「温まるまで少しかかるねん、そこは勘弁な。そや、それまでに自動充氣式氣池の説明しとこか♪」

 真桜さんは話したくて仕方ないって感じ。

「お、お願いします・・・」

「これまでの充氣式氣池は一回一回氣を送り込まないかんかったんや。」

「ええと・・・どうやってたんですか?」

「凪に頼んでな。こうグワアァ~ってな感じや。」

 両手を突き出してどっかで見た様なポーズだった。

「はあ・・・・・」

「それやと効率悪いし凪が大変やから、氣池自体が氣を集められる様に改造したんや。」

「それじゃあこのコタツに使ってる氣池も今、氣を集めてるんですか?」

「そうや♪今の所人の氣しか集められんけどな。氣いうのんは普通に生活してても体から出とるモンなんや。二刃ちゃんも華佗センセのところで修行しとるから分かるやろ。」

 残念ながらあたしのレベルではまだそこまで感じられない。

「そんな無駄に消えてしまう氣を集めて利用するのがこの自動充氣式氣池なんや。」

 なんだかエコっぽい。

「掃除機とか洗濯機もコイツで動かしとるんやで♪」

「そうだったんですか・・・シスターズの舞台に使ってる装置もですか?」

「あれは妖術や。氣とはちょ~っと違うねん。」

 やっぱり深入りするのは止めよう。

「そやそや、前々から二刃ちゃんに訊こう思ってたんやけど。」

「な、何でしょう?」

「ほれ、初めて会うた時にも言ったやろ?天の国の道具を教えて欲しいって♪」

「あ!そうでしたね。」

「どんなモンが二刃ちゃんは欲しいん?」

「そうですね・・・・・」

 う~ん・・・テレビとか携帯なんかは流石に無理だと思うし・・・もっと生活に必要な・・・。

 

「あ!有りました!照明器具が欲しいです!」

 

「照明?」

「「「あ・・・・・そうか、何で今まで思いつかなかったんだろ?」」」

「兄さんたち・・・シスターズのステージには使ってるのに、何で生活に使って無かったの?」

 

「そうや・・・・・燭台に慣れとった所為で全然気が回らんかった・・・自動充氣式氣池を使えば照明は設置し放題や!」

 

「「「二刃!凄いぞ♪これだけで生活がガラリと変わる!!」」」

 

「え?そ、そうかな?」

 そんなに褒められると照れちゃうよ・・・。

 

「こうしちゃおれんで!早速研究せな・・・・・なんか暑うない?」

 

「そう言えばコタツの中が・・・」

 とか言ってる間にドンドン熱くなってきたっ!!

 

「「「うおりゃああああっ!!」」」

 

 兄さんたちがコタツをひっくり返した。

 そして見てみると加熱部分が真っ赤に光っている。

 

「ああ~、こら氣が流れすぎたみたいやな・・・」

「どういう事です?」

「「「多分俺らが興奮した所為で氣が大量に溢れたんだろ。それを全部流したもんだからこんな事になったんじゃないか?」」」

「父ちゃんたちの言う通りや・・・しっかしここまで温度が上がるんやったら他にも流用が効きそうやな・・・・・っと、それよりも先ずは照明器具や!」

 真桜さんは駆け出した。

「「「開発費は俺たちが全面的に支援する!頼むぞ真桜!!」」」

 

 入口で立ち止まって振り返る。

「任しときっ♪貂蝉と卑弥呼の人形作るのに比べたら、やり甲斐があんで♪」

 

 真桜さんは全速力で後宮の廊下を走って行った。

 その足音に驚いたのか、赤ちゃん達の泣き声が聞こえて来る。

 

「ちょっと!一体何事っ!?」

 桂花さんが泣いている來羅ちゃんを抱いて出て来た。

 その後ろから華琳さんも来ている。

 

「「「いや!実は凄い発想を二刃がしてくれて、俺たちが興奮しすぎたんだ。」」」

 

 兄さんたちは興奮冷めやらぬといった感じで説明を始めた。

 華琳さんも興味を惹かれたみたいで、あたしも兄さんたちと一緒に説明に加わった。

 

 

 

【紫一刀turn】

 

 そしてひと月後には照明が設置され始めた。

 天井に付けた照明は非常に好評で、まるで昼間の様だとみんなが驚いていた。

 

 ただ、この照明器具は俺たちが興奮した時、特に明るく光る様なのだ。

 

 お陰で俺たちがサボって城内をフラフラしてると、見つけられる確率が上がってしまった。

 

 

 

 

おまけ弐

『聖刀くんの日常』其の十一

リクエスト:璃々   7票

61)北郷聖刀 真名:輝琳  六歳

62)桂花の七女 荀倹(じゅんけん) 柊(しゅう) 六歳

63)璃々の長女 黄慮(こうりょ) 牡丹(ぼたん) 六歳

 

本城 鍛錬場

【聖刀turn】

 

 今日の鍛錬の相手をしてくれているのは璃々媽媽だ。

 璃々媽媽の獲物は槍。

 ぼくの獲物は大鎌の『影』。

 

「行くよ!聖刀くん!」

 

「お願いします!」

 

 璃々媽媽の鋭い突きが飛んでくる!

 ぼくは弾いて突きを逸らす!

 素早い突きが何度も襲い掛かるのを全て弾いて行く!

 

 璃々媽媽が一番得意なのは弓だけど、他の媽媽達から色々な武器を教えられていた。

 それはぼくも同じだった。

 槍は翠媽媽を中心に教えられている。

 同じ師から教えられているから動きが先読み出来るかというと、そんな事は無い。

 璃々媽媽は愛紗媽媽や霞媽媽の青龍刀の動きも独自に取り入れているので、その組み合わせは変幻自在と行ってもいい。

 今日の鍛錬の目的はぼくが『影』を使いこなせる様になる事。

 大鎌という武器はかなり特殊だ。

 なんと言ってもバランスが悪い。

 戦斧や戦鎚も重く、扱うのに腕力を要求されるけど、持った時のバランスは取れている。

 だけど大鎌は刃の方向を定めるだけでも一苦労だ。

 母上は『絶』をあそこまで使いこなせる様になるまで、相当鍛錬を積んだんだろうな。

 

 曹孟徳と言えば『絶』。

 『絶』は曹魏の力の象徴。

 

 曹孟徳の子である以上、大鎌は使いこなせなければいけない。

 眞琳お姉ちゃんは普段手にしないだけで、いざ手にすれば母上に匹敵する程使いこなす。

 だからぼくも・・・。

 

「はい!一旦休憩!」

「え!?まだ大丈夫だよ!」

 

 璃々媽媽は槍の石突を地面に着けて小さく溜息を吐いた。

「動きが鈍って来たよ。そんなんじゃ怪我をするし、鍛錬の目的からも外れるよ。」

 

 言われて初めて自分の息が上がってるのに気が付いた。

 持久力を上げる事が目的ならまだ続ける所だけど、確かにこれじゃあ今日の目的に合わない。

 

「「お兄ちゃん、おつかれさま♪」」

 

 見学していた柊と牡丹が駆け寄ってくる。

「はい、これで汗をふいて♪」

「のどが渇いたでしょ?はい、お水♪」

「うん、ありがとう♪」

 タオルと水筒を受け取った。

 

「聖刀くん、眞琳ちゃんより上達が早いわよ♪焦らず着実に物にしなさい♪」

「はい!」

「うん、いい返事だ♪」

 

 お姉ちゃんより・・・・・うん、頑張ろう♪

 

「所でわたしにはタオルと水は無いわけ?」

 璃々媽媽がわざと拗ねた様に言うと、柊は慌てて新しいタオルを持って璃々媽媽の所に持って行く。

「はい、璃々媽媽!」

「ありがとう♪柊ちゃん♪・・・で、牡丹は水をくれないの?」

「媽媽はお兄ちゃんをいじめたからお水あげない。」

 牡丹がそっぽを向いて口を尖らせている。

「璃々媽媽は別にぼくをいじめてた訳じゃないよ。」

 牡丹も判ってるクセにそんな事言うんだから。

 

「そういう生意気な事を言う子はビシビシしごいちゃおう♪ほら牡丹!槍を持ちなさいっ!!」

 

「ええーーっ!お兄ちゃん!柊ちゃん!たすけてー!」

「今のは牡丹が悪いよ。柊もそう思うだろ?」

「・・・・・・」

 あれ?柊が璃々媽媽を見上げたまま止まってる。

「どうしたの、柊?」

「え?ええと・・・璃々媽媽のおっぱいが柊の媽媽と違ってすごいなぁって思って。さっきお兄ちゃんと鍛錬してる時もブルンブルン揺れて・・・」

 柊はそんな事に気を取られてたんだ。

 

「柊ちゃん・・・・・お願いだから桂花媽媽にはその事言わないでね・・・・・」

 

 璃々媽媽・・・・・鍛錬中より今の方が凄い汗をかいてるよ・・・。

 

 

 

 

おまけ参

リクエスト:里帰り&お墓参り[幽州組] 14票

2)桃香の長女 劉禅(りゅうぜん) 香斗(かと)九歳

5)愛紗の長女 関平(かんぺい) 愛羅(あいら)九歳

11)恋の長女 呂刃(りょじん) 恋々(れんれん)八歳

24)白蓮の長女 公孫続(こうそんしょく) 白煌(ぱいふぁん)七歳

37)星の長女 趙統(ちょうとう) 螢(けい)六歳

44)霞の長女 張虎(ちょうこ) 雰(ふぇん)五歳

 

幽州 涿郡涿県           (時報:桂花 十人目 妊娠三ヶ月)

【緑一刀turn】

 

 今回の旅でやって来たのは桃香の生まれ故郷。

 三国志演義では劉備の家の近くで、かの『桃園の誓い』が行われたが、読者諸兄もご存知の様にこの外史ではここでは無い。

 俺が加わった所為か?

 桃香の生家にも桃園が有るので、真名の由来はこれだろう。

 今は丁度実が旬を迎えて、甘い桃の香りに辺りを満たしていた。

 

「どうです、お義母さん?久しぶりに戻られてみて。」

「はい♪もう十年以上経ちましたけど、以前のままで安心しました♪」

 

 桃香の母親、名前は劉玄さん。

 劉玄さんは風になびく長い髪をそっと押さえて微笑んでいる。

 その容姿はひと目見ただけで桃香の母親だと判る・・・・・顔立ちと胸元で。

 お義母さんは現在、徐州下邳で暮らしていた。

 桃香が徐州の州牧となった時にここから引越したのだ。

 俺が初めて会ったのもその時だ。

 しかし、俺たちが官渡の戦いから直ぐ様対五胡戦に突入し、益州を手に入れ本拠地を成都に移してしまった。

 お義母さんが徐州に引越して僅か数ヶ月で今度は成都に、というのは流石に申し訳ない。

 そもそもこの外史では、桃香から華琳に徐州の統治を頼んでいる。

 正史の様に攻め取られた訳ではないのでお義母さんの事も華琳に託してあった。

 

 今回の旅でご一緒したのは、ただ昔を懐かしむ為ではない。

 お義母さんは房都へ移り住む事になり、今後来る事が難しくなると思われたからだ。

 

 

 

 桃香の父親。劉弘さんのお墓に手を合わせる。

 

 お義母さんの横には桃香と香斗。

 その後ろに俺と愛紗、鈴々、白蓮、愛羅、爛々、白煌。

 更に後ろに星、恋、霞、螢、恋々、雰。

 

 お義母さんが顔を上げ、俺に微笑んだ。

「この人が他界したのは桃香が雰ちゃんくらいの頃でしたねぇ・・・」

 稼ぎ頭を失ったこの家は次第に貧しくなり、桃香が草鞋や筵を編む様になって行ったのは正史と同じ・・・。

 

「この人ったら仕事帰りに一杯呑んだらしく、足を滑らせてそこの川で溺れて死んだんですよ♪」

 

「・・・・・・・・あ、あの・・・そこは笑って言う所じゃないですよ・・・」

「昔からうっかり屋さんだったから・・・そういえば桃香を高い高いしてる最中に間違えて川に放り投げた事もあったわ♪懐かしいわね~♪」

「・・・・・そ、そうですか・・・」

 桃香・・・お前よく無事に成長出来たな・・・。

 他の母親達も俺と同じ感想を持った様で、顔が引きつっていた。

 

「お、お母さん!思い出すんならもっと楽しかった事にしてよ!」

 

 桃香も墓前でこんな話題では複雑だろう。

「私は楽しいと思うけど・・・そうねぇ、あの人が亡くなった後だけど、家の前に生えている桑の木に桃香が・・・」

 

 これはもしかして「大きくなったら天子の馬車に乗る」って言い出すエピソードか?

 桃香がそんな事言い出すとは思えないが・・・。

 

「蚕を育てて絹糸を取るんだって言って毛虫だらけにした事があったわ♪」

 

 桃香・・・・・・。

 

「そ、それは蚕を見たこと無かったから取り敢えず集めて探し出すつもりだったのっ!」

 桃香が慌てて説明を加えたけど。

「蚕って野生は居ないって事は・・・?」

「その時初めて知った・・・」

 

 身をもって勉強をしたって所か。

 

 落ち込んでる桃香にお義母さんが笑って肩を叩いた。

「あの毛虫の中にクワコが沢山いたのよ♪繭になった時に売ったら結構なお金になったから、桃香は盧植先生の所に勉強しに行けたのよ♪」

「ええ!?そうだったの!?」

 

 桃香も知らなかったのか。

 

「桃香が毛虫を集めなかったら、白蓮と出会えなかった訳だ。」

 俺が言うと白蓮が笑った。

 

「桃香だったら毛虫を集めてなくても、きっと私と出会っていたさ♪」

 

「白蓮ちゃん・・・」

 

「毛虫じゃなく、絹糸が繋いだ出会いって思えばこれも悪く無いけどな♪」

 

 この白蓮の言葉にみんな感心していた。

「ならば私と鈴々、それにご主人さまともその絹糸で繋がり、出会ったのですね。」

 愛紗がうっとりと夢見る様に言うと、鈴々が意地悪そうに笑った。

「絹糸じゃ愛紗はすぐに引きちぎってしまいそうなのだ♪」

 

「それはお前も一緒だ!鈴々!!」

 

 二人の遣り取りにみんなが声を上げて笑った。

 そんな大人達を不思議そうに眺める子供達。

 

 『運命の赤い糸』なんて言葉が有るけど、それは繋がっているんじゃなく繋げていく物なんだろう。

 

 俺がこの外史に来た時に、桃香、愛紗、鈴々と繋がった。

 それから白蓮、星と。

 朱里、雛里と。

 多くの人と繋がり、辿った先には子供達が居た。

 

 今回の旅も、荊州の房都から下邳、下邳から星の故郷冀州常山郡に行き、そこから并州の雁門郡の霞の故郷と五原郡の恋の故郷を経由してこの幽州涿郡に入った。

 実際に移動してみると、人の繋がりってデカイって改めて感じた。

 

 空間も時間も跨いで繋がっていく。

 

 俺はこの繋がった糸をもっと広げて行きたい。

 

 

「そういえば一刀さん。」

 お義母さんに何やら困った顔で呼ばれた。

 

「この間、許都から曹崇さんが来て『華琳タンが聖刀ちゃんに会わせてくれない』って泣いていかれたわよ。」

 

 こんな風に俺の知らない所でも、糸は繋がっていくんだな。

 

 俺は華琳の父親の曹崇さんに数回しか会った事が無いのに・・・。

 

 

 だけど・・・・・あの人本当に華琳の父親なのか?

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

この場を借りまして

先日始めましたSSの『黒外史』について説明いたします。

『黒外史』は本来、『三爸爸』の外伝『貂蝉と卑弥呼編』にあたります。

左慈と于吉が三爸爸の外史に何故現れないのか。

その理由が『黒外史』ですw

まだ読まれていない方で興味を惹かれた方

 

ご注意下さい!

 

最初に管輅から警告がありますのでよく読んでから

先に進むか考えましょう。

 

 

本編

『デレ桂花』もしくは『綺麗な桂花』w

推敲してる時に思わず

「これ本当に桂花か?偽物なんじゃないか?」

と、自分で突っ込んでしまいましたw

 

皆様から頂いた子宝の神様ネタを脳内編集してみました。

日本全国いろんな子宝神社が有りますね。

子宝飴に女性型が有るのを初めて知りました。

因みに管輅が言ってる子宝飴の有る外史とはアニメ版の事ですw

 

 

『北郷二刃奮闘記』

マオレツかマオえもんか・・・だんだん微妙になってきましたw

面白そうなネタがいろいろ思いつくので

真桜が出る度やりたいですwww

 

今回、最終的に完成したのは『一刀発見器』ですねw

 

 

『聖刀くんの日常』

今回は本編と少し絡む感じのキャストです。

聖刀、柊、牡丹は一番一緒に居る筈なんですが

今回で三人が揃うの二回目ですね。

 

 

おまけ参

桃香の母親登場です。

アニメ版とは違い、桃香を川に投げ入れませんでした。

代わりに死んだ父親が放り込んでましたがwww

 

お茶の葉を川に投げ捨てる話の代わりに

桑の木の話でやってみました。

桃香は毛虫をどうやって運んだのでしょうw

 

 

《次回のお話》

 

☆思春②  35票

 

という事で、次回は思春②に決定致しました。

 

【北郷二刃奮闘記】

ニャン蛮族 9票

【聖刀くんの日常】

緑、紫、赤と個別にキャッチボール 6票

【おまけ参】

天の国講座 8票

※『里帰り』は累計得票数なので一回置きにやりたいと思います。

以上も次回にお送り致します。

 

《現在の得票数》

紫苑②  34票

鈴々②  34票

菅輅   32票

璃々②  29票

翠②   27票

華琳③  24票

小蓮②  22票

ニャン蛮②21票

音々音② 21票

雪蓮②  21票

愛紗②  18票

秋蘭②  12票

冥琳②  6票

風②   5票

桃香②  5票

蓮華②  5票

音々②  5票

季衣②  4票

月②   3票

凪②   2票

炙叉②  2票

星②   1票

詠②   1票

沙和②  1票

桂花③  1票

 

【北郷二刃奮闘記】

孫三姉妹  7票

炙叉    6票

スーパーメンマタイム(おまけ弐、参、含む)3票

蜀の子供とお風呂 3票

呉の子供とお風呂 3票

貧乳党『バストアップ大作戦』(失敗w) 3票

華蝶連者 2票

斗詩+白蓮(苦労人同士) 2票

 

【聖刀くんの日常】

桂花   5票

『正義の解放団』5票

祉狼   3票

北郷親衛隊とその子供達 3票

眞琳   1票

 

【おまけ参】

里帰り&お墓参り[曹魏組、成都組、袁家組] 14票

『一刀さんの一日執事』5票

流琉母娘他による料理教室 4票

騎乗訓練その後 3票

親子鍛錬(五虎将編)2票

北郷親衛隊の結婚生活(個別)2票

超英雄大戦(華蝶連者×サン・アルジオン×見捨てない人)2票

紫苑、璃々、音々+子供によるキノコ狩り 1票

 

リクエスト参戦順番→冥琳② 思春② 紫苑② 鈴々② 桂花② 風② 雪蓮② 凪② 小蓮② 翠② ニャン蛮族② 音々音② 月② 星② 璃々② 菅輅 華琳③ 詠② 愛紗② 沙和② 秋蘭② 桃香② 蓮華② 音々② 季衣② 炙叉② 桂花③

 

おまけ壱リクエスト参戦順番→ ニャン蛮族 炙叉 孫三姉妹 スーパーメンマタイム 蜀の子供とお風呂 呉の子供とお風呂 華蝶連者 斗詩+白蓮 

 

おまけ弐リクエスト参戦順番→ 華琳 桂花 眞琳 緑、紫、赤と個別にキャッチボール 正義の解放団 祉狼 北郷親衛隊

 

おまけ参リクエスト参戦順番→ 里帰り&お墓参り 一刀さんの一日執事 天の国講座 料理教室 騎乗訓練その後 親子鍛錬(五虎将編) 北郷親衛隊の結婚生活  超英雄大戦 紫苑、璃々、音々+子供によるキノコ狩り

 

 

子供達一覧

1)華琳の長女 曹沖(そうちゅう) 眞琳(まりん)

2)桃香の長女 劉禅(りゅうぜん) 香斗(かと)

3)蓮華の長女 孫登(そんとう) 蓮紅(れんほん)

4)思春の長女 甘述(かんじゅつ) 烈夏(れっか)

5)愛紗の長女 関平(かんぺい) 愛羅(あいら)

6)風の長女 程武(ていぶ) 嵐(らん)

7)桂花の長女 荀惲(じゅんうん)金桂(きんけい)

8)雪蓮の長女 孫紹(そんしょう) 冰蓮(ぴんれん)

9)冥琳の長女 周循(しゅうじゅん) 冥龍(めいろん)

10)祭の長女 黄柄(こうへい) 宴(えん)

11)恋の長女 呂刃(りょじん) 恋々(れんれん)

12)紫苑の次女 黃仁(こうじん) 露柴(ろぜ)

13)紫苑の三女 黃信(こうしん) 崔莉(ちぇり)

14)蒲公英の長女 馬援(ばえん) 向日葵(ひまわり)

15)翠の長女 馬秋(ばしゅう) 疾(しつ)

16)麗羽の長女 袁譚(えんたん) 揚羽(あげは)

17)桔梗の長女 厳逹(げんたつ) 竜胆(りんどう)

18)凪の長女 楽綝(がくりん) 濤(なみ)

19)七乃の長女 張路(ちょうろ) 八倻(やや)

20)天和の長女 張甲(ちょうこう) 九蓮(ちゅうれん)

21)地和の長女 張大(ちょうだい) 四喜(すーしー)

22)人和の長女 張吉(ちょうきつ) 一色(いーそー)

23)炙叉の長女 迷当(めいとう) 直(なお)

24)白蓮の長女 公孫続(こうそんしょく) 白煌(ぱいふぁん)

25)秋蘭の長女 夏侯衡(かこうこう) 鈴蘭(すずらん)

26)月の長女 董擢(とうてき) 春姫(るな)

27)美以の長女 孟節(もうせつ) 花鬘(かまん)

28)トラの長女 ベンガル

29)ミケの長女 マンクス

30)シャムの長女 ペルシャ

31)桂花の次女 荀俁(じゅんぐ) 銀桂(ぎんけい)

32)朱里の長女 諸葛瞻(しょかつせん)龍里(るり)

33)雛里の長女 龐宏(ほうこう)藍里(あいり)

34)詠の長女 賈穆(かぼく) 訓(くん) 

35)焔耶の長女 魏覚(ぎがく) 焔香(えんか)

36)春蘭の長女 夏侯充(かこうじゅう) 光琳(こうりん)

37)星の長女 趙統(ちょうとう) 螢(けい)

38)大喬の長女 喬櫂(きょうかい) 愛(あい)

39)小喬の長女 喬順(きょうじゅん) 華(か)

40)亞莎の長女 呂琮(りょそう) 茜(ちぇん)

41)明命の長女 周邵(しゅうしょう) 藍華(らんふぁ)

42)華雄の長女 華剛(かごう) 树莓(しゅうめい)

43)桂花の三女 荀詵(じゅんしん) 丹桂(たんけい)

44)霞の長女 張虎(ちょうこ) 雰(ふぇん)

45)沙和の長女 于圭(うけい) 紗那(さな)

46)斗詩の長女 顔教(がんきょう) 升謌(しょうか)

47)真桜の長女 李禎(りてい) 真梫(ましん)

48)桂花の四女 荀顗(じゅんぎ) 連翹(れんぎょう)

49)猪々子の長女 文獬(ぶんかい) 虎々(ふーふー)

50)稟の長女  郭奕(かくえき) 貞(てい)

51)穏の長女  陸延(りくえん) 毬(ちう)

52)鈴々の長女 張苞(ちょうほう) 爛々(らんらん)

53)流琉の長女 典満(てんまん) 枦炉(ろろ)

54)桂花の五女 荀粲(じゅんさん) 黄梅(おうめい)

55)小蓮の長女 孫仁(そんじん) 蕾蓮(らいれん)

56)音々音の長女 陳守(ちんじゅ) 音音(ねおん)

57)季衣の長女 許儀(きょぎ) 華衣(かい)

58)美羽の長女 袁燿(えんよう) 優羽(ゆう)

59)桂花の六女 荀淑(じゅんしゅく) 來羅(らいら)

60)音々の次女 陳修(ちんしゅう) 音肆(おとよ)

61)華琳の長男 北郷聖刀(まさと) 輝琳(きりん)

62)桂花の七女 荀倹(じゅんけん) 柊(しゅう)

63)璃々の長女 黄慮(こうりょ) 牡丹(ぼたん)

A)桂花の八女 荀靖(じゅんせい)茉莉花(まりふぁ)五歳

B)桂花の九女 荀燾(じゅんとう)寿丹(じゅたん)四歳

C)桂花の十女 荀爽(じゅんそう)秦翹(しんぎょう)三歳

D)桂花の十一女 荀粛(じゅんしゅく)金鐘(きんしょう)二歳

E)桂花の十二女 荀旉(じゅんふ)橄欖(かんらん)一歳

 

引き続き、皆様からのリクエストを募集しております。

1・メインヒロインとなるキャラをご応募下さい。

2・『北郷二刃奮闘記』で二刃と絡むキャラを募集しています。

 例:「二刃視点で貧乳党」  という感じでお願いします。

3・『聖刀くんの日常』で聖刀と絡むキャラを募集しています。

 例:「聖刀視点で三羽烏」  という感じでお願いします。

4・おまけ参でのメインとなる子供達を募集しています。

 シチュエーションのリクエストも大歓迎です。

以上の四点にリクエストの集計(TINAMI、Pixiv双方の合計)を振り分けますので、

よろしくお願いいたします。

今まで通り、リクエストに制限は決めてありません。

何回でも、一度に何人でもご応募いただいて大丈夫です。

 

ここで絵師の皆様へ

この小説『三人の天の御遣い』の挿絵に皆様のイラストを是非お願い致します!

新たに描かれた作品、過去に描かれた作品を問いません。

TINAMI上で挿絵として使用しても良いという方はショートメールにてご連絡下さい。

また、こちらから使用許諾のお願いをさせて頂く事も有ると思いますので、その時はよろしくお願い致します。

お願いしたいイラストは恋姫達は勿論ですが

成長したちびっ子組やオリキャラ達

立ち絵、シーンイラストを問いません。

重ねてお願い致しますm(_ _)m

 

 

ご意見、ご感想、ご指摘などもご座いましたら是非コメントをお寄せ下さい。

誤字脱字は雷起の反省を促す為、修正後も抜粋して晒しますw

 

 

今回のマヌケ晒しw

 

 それぞれが手に包みや箱を持っている。

「私よりも華琳さまでしょう?ちゃんとお渡ししたの!?」

 私がそう言うと、華琳さまが人垣の向こうからいらっしゃった。【」】

 

 

 


 
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