No.628047

魔法少女リリカルなのは -九番目の熾天使-

第三十話「動き出す歯車」

2013-10-14 14:03:05 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:7976   閲覧ユーザー数:4910

 

 

 

 目の前に広がるのは漆黒の闇に煌めく星々。空気の無い世界で俺は一人浮かんでいる。いつ見ても宇宙とは美しい。自然の中の芸術と言って良いほどだ。しかし、そんな宇宙で似つかわしくない光があちこちに現れる。

 

【前方に無人機30、後方に20】

 

「ちっ……キリが無いな」

 

 Hレーザーによって貫かれ爆散する無人機ことOF。そして背後の20機はHミサイルにより爆散する。運良く生き残った数機に関しては『Akatuki』により斬り裂かれる。

 

【更に敵艦から増援を確認。無人戦闘機50機及びラプター40機、マミーヘッドが10機です】

 

「くっ!」

 

 無人戦闘機に関してはHレーザーですぐに殲滅できるので問題は無い。ラプターは個々の性能は大したことの無い機体だが、複数で掛かられるとかなり厄介だ。そこにマミーヘッドが加わると尚更質が悪い。

 

 無人戦闘機はHレーザーで殲滅し、ラプターは密集してきたところにF・マインを投げつけて6機ほど爆砕。そして20発のHミサイルで爆散させ、内数機が幕発に巻き込まれた。残りのラプターは『Phalanx』で蜂の巣にし、マミーヘッドはECMスモークで姿を隠して背後からの奇襲により殲滅。

 

 全機撃破したのを確認して俺は一息吐く。だが、まだまだ終わらなかった。

 

【三時の方向、敵機動艦隊】

 

 機動艦隊。地球での軍隊の機動艦隊は戦艦クラスでも200~300m程だ。しかし、あの艦隊は宇宙での活動と侵略を目的として設計されたものだ。その大きさは1~1.4㎞。

 

 20m級の人形兵器を無数に搭載する艦なのだ。

 

 600m級護衛艦及び駆逐艦が14隻、1000m級戦艦が5隻、そして1400級が2隻。この艦隊で現代の地球を数週間で制圧可能な戦力だ。

 

 しかし、ターゲットは地球はなく俺だ。一個艦隊以上の戦力と同等の俺では少しばかり役不足だ。

 

「さあ、始めようか!」

 

 そこからは俺の蹂躙劇が始まった。先ず敵の護衛艦と駆逐艦が前方に展開、さらに無人戦闘機のモスキートがおよそ200、ラプター、マミーヘッド、サイクロプス合わせて100機の大軍。

 だが、俺はモスキートをHレーザーで殲滅し、マミーヘッドを最優先しつつ無人機を次々と撃破。雑魚が減っていくと今度は『Harberd』に切り替え、護衛艦等をチーズのように切断した。

 

 さらに戦艦からレーザー砲が迫るが問題無く回避。ここまで俺は無傷で進んだ。

 

「ハァ…ハァ…ハッ……!」

 

 だが、全くもって余裕とは行かない。これ程の数を相手にして無傷で済ませるのは手を抜いて出来る物では無い。相当な疲労が溜まるのだ。

 

 疲労困憊の俺は最後まで気をぬかず、戦艦に接敵、対空火器を破壊して艦の後部にある動力炉に到達した。

 

「これで……終わりだっ!」

 

 その後、戦艦は一筋の光によって貫かれ、轟沈したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 風景が一瞬で自室に移り変わる。

 

【シミュレーションを終了致します。お疲れ様でした】

 

「ああ……お疲れさん。で、結果は?」

 

【全盛期の97.3%です。ここのところ怠けすぎでは?】

 

「うっ……すまない」

 

 俺は腕が鈍らないように毎日シミュレーションをやっていた。しかしルシフェルの採点は厳しく、僅かに落ちたら怒られる。

 

 まあセレンほどキツイ口調で言われるわけじゃ無いけど、淡々と言われるとなんだか凹む。

 

「さて、それじゃあ皆の所に行こうか」

 

【了解】

 

 日課のシミュレーションを終えてリビングへと向かう。そこにはいつものメンバーが居座っており、さらにはメガーヌとクイントが仲良く紅茶を飲みながら談笑していた。そして二人は俺が入ってきたことに気づく。

 

「あら煉君、やっと部屋から出てきたのね?」

 

「そう毎日引き籠もっているとダメ人間になるわよ?」

 

 メガーヌは柔らかい表情で、クイントは苦笑して言った。

 

 そうそう、二人は数年前から監禁に近い軟禁をされていたのだが、去年辺りからこうして普通に過ごせるようにした。デバイスを取り上げ、セキュリティを厳重にしているために、二人に抵抗は無意味と悟らせ大人しくさせたのだ。

 ただ、今まで一度も外に出していない。それだけは無理なのだ。万が一という可能性がある以上、二人を外に出すわけにはいかない。だが、二人もそんな生活に慣れたのか今は普通に過ごしている。随分と適応力が高い人達だ。

 

「引き籠もりじゃ無い。立派なトレーニングだ」

 

「ククク……そんな生ぬるい事をせずとも俺が相手してやるぞ?」

 

 クイントの物言いに少し不満を覚えて言い返すと、後方の扉から一人の青年が入ってきた。

 

「冗談はよせノウマン。お前の相手は試合じゃなく死合いになる。何回殺されかけて肝を冷やしたと思ってるんだ?」 

 

「そうでもしないと面白くないだろう? ただのごっこ遊びほどつまらん物はない。やるなら楽しんでやってこその戦いだ。それに、俺はまだ貴様に勝ってはいない。精々良くて引き分けだ」

 

「……ふんっ、戦闘狂め」

 

 出てきた人物はノウマン。つい最近にこの世界へやって来たイレギュラーの一人だ。こいつ、隙あらば俺と戦おうとしやがる。っていうか俺相手に引き分けに持ち込むのは凄いと思うのだが……。

 

「相変わらずの戦闘狂だな、ノウマン。貴様には戦う事しか能が無いのか? だとしたらただの獣と変わらんな」

 

 次に銀髪イケメン青年が反対方向の扉からやって来た。

 

「ふん、虫けら如きがほざくな。そんなセリフを言うのは俺に勝ってからにしろ、テルミドール」

 

 そう、彼の名はマクシミリアン・テルミドール。ORCA旅団長を務め、大勢の命と引き替えに人類に新しい可能性を示した男だ。

 

「ふんっ、ゼロシフトとか言ったか? あんな反則な武装をした機体に勝てるわけがないだろう。戦うなら同じ土俵で戦え。変態戦闘狂(バトルジャンキー)め」

 

「ククク、変態で結構! 戦闘狂、大いに結構! 俺は欲望のままに生きているのだ。縛られた人生なぞつまらん! 楽しんでこその人生だ!」

 

 ついに開き直ったかノウマン……。自覚している上の変態ほど質の悪い者はない。

 

「しかし、さすがの俺もレン=シノザキを裏切ったりはしない。これでも一応は義理堅いつもりだ。多少は助力してやるのも吝かではない。貴様も世話になった身。それくらいは心得ているだろう? なあ、水没王子?」

 

 あ……こいつ、今ブラックワードを言っちまった。

 

「……貴様、どうやら死にたいようだな。いいだろう……今此処で決着をつけるとするか。貴様の体に風穴を開けてやるぞ変態」

 

「クハハ! 俺に一度も勝ったことのない貴様が言っても負け犬の遠吠えにしかならんぞ、水没王子!」

 

「貴様……一度ならず二度までも口走ったか!」

 

 これは少しマズイな……。テルミドールの奴、完全にキレてやがる……。大体、何でこの二人は毎回毎回顔を合わせる度に喧嘩になるんだ? もう少し温和に出来んかねぇ……。皆も又かという顔をしている。最初はチンクが止めに入っていたが、今はほら、諦めてクアットロとドゥーエの3人で紅茶を飲んで……あれ? なんでドゥーエがいるんだ? お前、今管理局に潜入中じゃなかったっけ?

 ……あ、やばい。テルミドールが今すぐに暴れ出しそうだ。……まあ放っておくんだけどね? だっていつもならここで……ああ、来た来た。おおぅ……今日はいつもより一段と恐ろしい事で。

 

「いい加減にしなさい2人共。身内同士で争う程醜い物はありません。それに、貴方達が暴れると施設の一部が損壊します。何度施設を修繕させれば気が済むのですか?」

 

 彼等の背後に現れた修羅もとい美人。腰の辺りまで伸ばした紫のウェーブのかかった髪と金色の瞳。彼女は笑顔だが、目が完全に笑っていない。そして背後には阿修羅が見えている。

 

「くっ……」

 

「むぅ……」

 

 そのあまりの迫力に2人は押し黙る。さすがはウーノ。その圧倒的なプレッシャーで見事2人を制圧してみた。彼女ならクラニアムも簡単に制圧できるだろう。

 

「まったく……。ああ、来ていたのですねレン。ちょうど良かったわ。ドクターがお呼びです」

 

「ん、了解」

 

 あの2人は彼女に任せて俺はさっさとジェイルの所へ向かう。が、部屋に入った瞬間俺は唖然としていた。

 

「やあ煉君、少し散らかっているが気にせず入ってきたまえ」

 

 部屋に乱雑するのは武器の類いであろう大量の設計図。その一枚を俺は手に取り見る。

 

「……。(スッ)」

 

 俺はその設計図を静かに戻し、見なかったことにした。

 

「どれも中々に興味深いものだよ! この機体のスペックを完全にした設計! 驚異的な火力! どれをとっても実にロマンを感じるじゃないか!」

 

 設計図を掲げながら興奮するジェイルもとい変態。ついにコイツも完全なる変態科学者に仲間入りか……。

 

「……それよりもジェイル、今回呼び出した用件は何だ?」

 

 俺が用件を聞き出すとジェイルは真剣な表情になった。

 

「ああ、そうだった。いや、大したことじゃ無いのだが少し耳に入れておこうかと思って呼んだんだよ。いや、場合によっては我々の邪魔になりかねない」

 

「……ほぅ」

 

 俺達の邪魔になりかねない……か。それは面倒なこと(面白そう)だな。

 

「管理局に新たな部隊が発足された。名前は『古代遺物管理部機動六課』、通称『機動六課』。表向きは名前の通り、古代遺失物の管理だ。だが、本当の目的は別にある。……レリックの回収だ」

 

 ふむ……確かに俺達の邪魔にはなりうる。しかし……

 

「たかが管理局の雑魚どもを寄せ集めた部隊なのだろう? そこまで邪魔とも思えんが……」

 

 管理局は万年人員不足だ。さらに俺達とまともにやり合う程の魔導師は全体の数%。そこまで脅威には思えない。だったら無視するべきだ。だが、次のジェイルの言葉で俺の考えは変わった。

 

「とんでもない。この部隊ほど異質で驚異的な部隊は他には無い。どれも化け物揃いだよ。何せエース・オブ・エースの高町なのは、高ランク魔導師のフェイト・テスタロッサ執務官、そして……魔導師の中でも僅かにしかいないSSランク魔導師、通称『歩くロストロギア』と言われている化け物。八神はやてを部隊長とする部隊だからね」

 

 ――――ドクンッ

 

「っ! ………くくく。そうか、なるほどな……」

 

 俺は胸が高鳴った。遂にこの時が来たと……。

 

「それにしても、君達は不思議な縁で結ばれているようだ。一度は離れてもいずれ交わる……。まるで何かに運命が操作されているかのように……」

 

 ジェイルの言葉を尻目に俺は感情を無理に押し込め、部屋を出た。

 

「果たして神は何を求むか……。破滅か……混沌か……あるいは変革か……」

 

 最後に呟いたジェイルの言葉は俺には届かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 ミッドチルダ中央区画湾岸地区に新しく出来た建物。その中のとある部屋で彼等は一同に会していた。

 

「皆揃ったかな?」

 

 全員集まったのを確認して長い茶髪をサイドテールにした女性が口を開いた。

 

「うん、これで全員。残念ながらはやては今日は来れないみたい」

 

 彼女の言葉に応えたのは長く美しい金髪を腰先でまとめた女性。その服装は黒く、執務官という役職の者が着ることを許されているものだ。

 

「そっか。まあ仕方ないよね。部隊が出来たばっかりだから」

 

 茶髪の女性もとい、高町なのはは苦笑してこの場に居ない八神はやてに同情する。そして周りを見る。執務官ことフェイト・テスタロッサと高町なのは以外にこの場に居るのは男女合わせて4名。

 

「で? さっさと俺達を此処に呼び寄せた理由を言ってくれねぇか? 俺はさっさと寝たいんだよ」

 

 銀髪の髪をやや短めに伸ばし、肌が浅黒くて力強い瞳をもつ男性が面倒臭そうに言う。そして一番目立つのは彼の服装。彼は黒に近い紺色のパイロットスーツを着ていた。

 しかし、奇妙にも胸の中央だけ何故か包帯で巻いていた。

 

「……彼ではないが、私も用件を手短に済ませて欲しい。ただし、力を貸せと言うのなら私は即座に帰らせて貰うがな」

 

 絹のような金髪を肩口で切りそろえ、碧眼で長身の女性が睨むように言った。

 

「私も彼女と同意見です。用件が無いのならば返らせていただきたいのですが……」

 

 腰まで伸ばした銀髪に碧眼16ぐらいの可愛らしい少女が無表情で言う。

 

「そうそう! ちゃっちゃと終わらせて欲しいんだよねぇ~。私達もこう見えて暇じゃ無いんだよ? いや、暇だけどね?」

 

 明るく言うのは茶髪をポニーテールにして翡翠の瞳をした女性。彼女も他3人に同意する。

 

「あ、あはは……釘を刺されちゃったね」

 

 高町達の用件は二つあった。その内の一つである協力要請を言うも間もなく潰されてしまったのだ。

 

「えっと……どうしてもダメですか? 貴方達の力があれば多くの人を助けられるかもしれないんです」

 

「却下だ。俺はこの力を誰のためにも使わない。でかすぎるんだよ、俺の力は……。それに、お前さん達がそうでなくてもお前さん等の上の連中はそうもいかないだろうよ」

 

 テスタロッサからもお願いするが即座に却下された。

 

「彼の言う通りだ。私達はまだこの力の実態を完全に把握しているわけでもない。そのために場所を借りることがあってもそれをお前達の組織のために使うつもりは毛頭無い」

 

「ウィン・D・ファンション様の言う通りでございます。この力はあまりにも大き過ぎるのです。それに……リリウム達はこの力のせいで荒れた世界を知っています」

 

 女性達の内、2人の名前はウィン・D・ファンション、リリウム・ウォルコットだ。そして、もう1人の女性の名前はメイ・グリーンフィールド。彼女ら3人は荒廃した世界からこの世界へ迷い込んだ漂流者だった。

 彼女達は1年前に別々の場所で発見され、ウィンディを高町が、八神はやてがメイを、そしてリリウムをテスタロッサが今まで保護してきたのだ。彼女達は元居た世界よりも数年ほど若くなっており、戸惑いを見せた。そして身に覚えの無いアクセサリーと全く知らない知識が頭に流れ込んだ。その知識とアクセサリーが新しい力、ISなのだ。

 

「うん、リリちゃんとウィンディさんの言う通りだよ。いきなりこの世界に放り出された私達を保護してくれたことにはとっても感謝してるよ? でもね、それとこれは全く別の話になるんだ。この力を持ちすぎた世界がどうなったか私達は見てきたんだ」

 

「だからリリウム達はこの美しい世界を壊したくないのです。ですから申し訳ありませんが、フェイト様達の要請は聞き入られないのです」

 

 ここまで頑なに言われては高町達も無理には言えない。よってこの件は諦めることにした。そもそも高町たちの用件はもう一つがメインでこれは飽くまでサブでしかない。

 

「………そっか。うん、分かった。もう一つの用件に移るね」

 

「待った。その前にそこの嬢ちゃん達を紹介してくれねぇのかい? 俺は初対面なんだが?」

 

 高町が本題に入る前に青年が待ったをかけた。

 

「え……あっ! ごめんね、すっかり忘れてた」

 

「おいおい、ひでぇな?」

 

「うふふ……ごめんなさい、ディンゴさん。それじゃあ3人に紹介するね。彼はディンゴ・イーグリットさん。彼も次元漂流者の一人なの」

 

「ディンゴ・イーグリットだ。よく分からねぇが嬢ちゃん達と同じ境遇らしい。気軽にディンゴって呼んでくれ」

 

 彼はディンゴ。篠崎煉と共にアーマーン計画を潰した一人。イレギュラー機、『ジェフティ』のパイロットだ。

 

 

 


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