No.616157

リリカル龍騎 -深淵と紅狼-

竜神丸さん

第5話:蜘蛛退治

2013-09-05 10:46:55 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:4052   閲覧ユーザー数:3966

ミラーワールド、月村家の屋敷…

 

 

 

 

 

 

「―――ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

その屋敷の窓から一人の人物が飛び出し、地面に転がった。アリサである。

 

「痛ぁ~…!!」

 

頭から突っ込んでしまったからか、思い切り打ち付けた後頭部を抑えるアリサだったが……ここで彼女はある違和感に気付く。

 

「…え?」

 

何かと思い、近くの窓へと振り向き……そして絶句する。

 

「な、な、な…」

 

群青色のボディ。上半身のアーマー。左手に取り付けられている装置。そして彼女の頭を隠している鉄仮面。腹部のベルトに挿し込まれているカードデッキ。

 

「な……何よこれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!??」

 

 

 

 

 

彼女も、二宮と同じく“仮面ライダー”に変身してしまっていたのだ。

 

 

 

 

 

「ちょ、何で…何で私こんな姿になってんのよぉぉぉぉぉぉ!?」

 

突然過ぎる事態にいても立ってもいられないアリサだったが、更にピンチは続く。

 

-ズン…-

 

「…え?」

 

後ろから聞こえてきた大きな足音。

 

アリサが恐る恐る振り向いて見ると、そこには…

 

 

 

「キシャァァァァァァァァァ…!!!」

 

 

 

巨大蜘蛛の怪物、ディスパイダーがアリサを睨みつけていた。

 

 

 

「―――いぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

「キシャァァァァァァァァァァァッ!!」

 

一目散に逃げ出したアリサを、ディスパイダーがズシズシと走って追いかけ始める。

 

「何なのよ、あのドでかい蜘蛛はっ!! 私が何か追いかけられるような事でもした!? いや、誰もしてないでしょそんな事ぉっ!! 少なくとも私は無実!! 私は正しいの!! 私は何時だって何処でだって常に善良なる市民なのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

訳の分からない状況が連続で起こり、思考がパニックに陥っているアリサ。言っている事も大分メチャクチャである。

 

「キシシシシシ…!!」

 

ディスパイダーは追いかける途中で立ち止まり、屋敷の壁へとピョンと飛び移る。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ…」

 

ディスパイダーから逃げるべく、ひたすら街中の道路を走り続けるアリサ。

 

しかし…

 

「…あれ?」

 

アリサが後ろを振り向いてみた時、気付けばディスパイダーはいなくなっていた。

 

「もしかして、振り切った…?」

 

アリサがその場に座り込んで、一安心しようとしたその時…

 

-ドスゥンッ!!-

 

「キシャアッ!!」

 

「!?」

 

アリサの目の前に、ディスパイダーが降り立った。どうやらアリサを追い詰める為に、上手く近道をしていたらしい。

 

「あぁもう、いい加減しつこいわよアンタァッ!!」

 

「キシャッ!!」

 

「な…キャアッ!?」

 

すぐに立ち上がって逃げようとするアリサだったが、ディスパイダーは素早く口から糸を吐いてアリサの右足を捕らえ、アリサを転倒させる。

 

「キシシシシシシシ…!!」

 

「ちょ、待…タンマ、タンマ!!」

 

右足に絡みついた糸を解こうとするアリサに、ディスパイダーが襲い掛かろうとする。

 

その時…

 

 

 

-キュィィィィィン-

 

 

 

近くにある建物の窓から、一台のスクーター型マシン“ライドシューター”が飛び出し…

 

「キシシシ……ギシャアッ?!」

 

ディスパイダーを大きく跳ね飛ばし、アリサの前で止まった。

 

「…へ?」

 

 

 

 

「なるほど、変身して消滅を免れてたか」

 

 

 

 

ライドシューターのキャノピーが開き、中から仮面ライダーアビスがその姿を現した。

 

「に、二宮!?」

 

「無事だったか、バニングス」

 

アビスはライドシューターから降り、アリサの右足に絡みついた糸を解く。

 

「やれやれ……お前も散々だったな」

 

「ねぇちょっと!! これ一体どうなってるのよ、説明しなさい!!」

 

「おいおい、説明ならこの前しただろ」

 

「いやアンタ、簡潔にしか説明してないでしょうが!!」

 

「…あぁ、そういえばそうだったな」

 

アビスは簡単な説明しかしてない事を思い出しつつ、左手に召喚機アビスバイザーを出現させる。

 

「まぁお前も色々知りたいんだろうが……ひとまず後だ」

 

-ズドォンッ!!-

 

「ギシャァァァァッ!?」

 

アビスバイザーから水の衝撃波が放たれ、ディスパイダーの頭部に直撃する。

 

「さて」

 

アビスはカードデッキから一枚のカードを抜き取り、アビスバイザーに装填する。

 

≪SWORD VENT≫

 

「少し待ってろ。出来るだけ早く終わらせる」

 

「え、あ、ちょっと、二宮ぁっ!?」

 

召喚したアビスセイバーを右手に持ち、アビスはディスパイダーに突撃して行ってしまった。

 

「あぁもう……ん?」

 

アリサは仮面の下で膨れっ面になるが、ここである事に気付く。

 

(あいつ、さっきベルトからカードを出した…?)

 

アリサは自身のベルトのカードデッキを見て、そこから一枚のカードを抜く。カードには、一本の長剣らしき武器が描かれていた。

 

「これを……ここ、かしら?」

 

アリサは左手の召喚機ライドバイザーに気付き、そこにカードを入れてみる。

 

≪SWORD VENT≫

 

音声が鳴ると同時に、空から長剣ライドセイバーが飛来。アリサの手元には来ずに、近くの地面へと突き刺さる。

 

「やった、出てきた! これなら…」

 

アリサは地面に刺さっているライドセイバーを抜き、それを両手で持って構えた。

 

 

 

 

 

 

 

「ギシャアッ!!」

 

「おっと」

 

ディスパイダーの振るう前足をアビスセイバーで防御し、アビスは後方へ大きく飛び退く。

 

「チッ、色々と面倒な…」

 

アビスセイバーを地面に刺し、次のカードを抜こうとするが…

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

アビスの横を、アリサが勢い良く走り抜けた。

 

「…は?」

 

そんなアリサを見て、アビスは思わず唖然となってカードを抜く手が止まった。

 

 

 

 

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ライドセイバーを構えながら、アリサはディスパイダーへと突撃していく。

 

(いける、これなら私だって…!!)

 

二宮がアビスに変身して戦っているのだ、自分だって同じようにやれば出来る筈。心の中で自分にそう言い聞かせながら、アリサはライドセイバーを握っている両手の力を強める。

 

「私だって……やってやるわよ!!」

 

 

 

 

 

「馬鹿、止まれ!!」

 

後ろでアビスが叫ぶが、アリサは止まらない。

 

「うぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 

そしてアリサはライドセイバーを振り上げ、ディスパイダーに向かって斬りかかった。

 

 

 

結果…

 

 

 

 

 

 

「ギシャアッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

-バキィィィィィンッ!!-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…へ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライドセイバーの刃が、ポッキリと折れてしまった。

 

 

 

 

 

それも、ディスパイダーの振るった前足が当たっただけで。

 

 

 

 

 

「お、折れたぁぁぁぁっ!!?」

 

あまりに想定外過ぎた展開に、アリサは思わずそう叫んでしまう。

 

「キシャッ!!」

 

「え……ミギャァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!?」

 

そんな彼女を、ディスパイダーは容赦なくぶっ飛ばした。

 

 

 

 

 

 

「はぁ、やれやれ…」

 

自分に向かって飛んで来ているアリサに、アビスは溜め息をつく。そしアリサが目の前まで飛んで来たところで…

 

「ほっ」

 

-ガァンッ!!-

 

「ぎゃっ!?」

 

アビスバイザーで薙ぎ払い、横へと吹っ飛ばした。

 

「痛ッ~…!?」

 

「全く、面倒臭い事をしてくれる…」

 

地面に倒れてのた打ち回るアリサを見て呆れつつも、アビスは次のカードを装填する。

 

≪AD VENT≫

 

「「グルォォォォォォッ!!」」

 

「ギシャッ!?」

 

何処からかジャンプして現れたアビスラッシャーとアビスハンマーが、ディスパイダーに向かって攻撃を仕掛ける。

 

「さっさと終わらせる」

 

アビスラッシャー達がディスパイダーの注意を引き付けている隙に、アビスは三枚目のカードを装填する。

 

≪FINAL VENT≫

 

「フッ!!」

 

アビスはその場で大きくジャンプし、宙に舞う。ディスパイダーから離れたアビスラッシャー達は口から水流を放ち、アビスの両足に纏わせる。

 

「ハァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

「ギギ…ギシャァァァァァァァッ!!?」

 

空中から繰り出されたアビスダイブは、そのままディスパイダーの身体を一撃で粉砕するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「凄い…」

 

ディスパイダーが倒されるのを見て、アリサは思わずそう呟く。

 

そんな彼女の下にアビスが歩み寄る。

 

「全く、さっきは余計な事をしてくれたもんだな」

 

「う……ごめんなさい…」

 

先程の行為が無謀だったのは充分理解しているらしく、指摘されたアリサも素直に謝罪する。

 

「…まぁ、それについてはもう良い。さっさとここから―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「!?」」

 

突如、オオカミの遠吠えが二人の耳に響き渡った。

 

「な、何!?」

 

「チッ、あの時の…!!」

 

アビスの振り向いた先から…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガルルルルァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オオカミ型モンスター“ハウルフォレスター”が襲い掛かって来た。

 


 
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