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真恋姫無双二次創作 ~盲目の御遣い~ 廿漆話『前進』後編

投稿104作品目になりました。
真恋姫無双二次創作オリ主呉ルート最新話です。
オリジナルの主人公及び恋姫、作者独自の解釈によるキャラの変化、etc、そういったものに嫌悪感などを覚える方はブラウザバック推奨です。

前回の大まかなあらすじ

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2013-07-04 17:50:24 投稿 / 全18ページ    総閲覧数:12427   閲覧ユーザー数:10073

「やぁっと見つけましたわ、華琳さん!! 私たちに無断で何を始めてらっしゃいますの!?」

「はぁ、やっぱり来たわね、うるさいのが……」

 

鼓膜を震わす高周波な声に、曹操はうんざりと溜息をついた。

現在、彼女の軍の大部分は洛陽の復興作業にあたっている。まずは倒壊したり焼け落ちた家屋の撤去。資材を運ぼうにも、障害物があっては非効率的に他ならない。その為、公共の道や橋もこれと並行して優先的に修繕させている。大方、そういった復興支援を、自分達よりも先に始めていることが気に食わないのだろう、大仰な螺旋に撒かれた金髪を大きく揺らしながら、我らが大将軍様は意気揚々とこちらへと歩み寄ってきた。

 

「大長秋を経由して、陛下の許可なら頂いてあるわ。問題があるようなら確認してもらっても構わないわよ、麗羽」

「んなっ、大ちょ―――どうして貴女がそんな繋がりをお持ちなのかしら!?」

「私の祖父が、何代か前の大長秋だったのよ。何か問題あるかしら、三公を輩出した名門さん?」

「む、むきいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!! こうしてはいられませんわああああああああああああああああああ!!」

 

事情を聴くや否や、直ぐに踵を返して走り去っていく(認めたくないが)幼馴染を見送って、

 

「……そう言っている時点で、目論見を隠しきれてないのよ。本当に洛陽の民を救うために来たなら、後先の難癖をつける前に、さっさと復興の支援をなさいな」

 

そう言って視線を向けるのは、炊き出しを続けている劉備陣営。文官武官、上官下官の立場無く、誰もが一丸となって食料を配布している。あの調子で大盤振る舞いを続けて、復路の分は残っているのだろうか、少々気がかりだ。まぁ、”あの”諸葛亮がいるのだから、問題はないだろうけれど。

 

「劉備、か……」

 

関羽、張飛、諸葛亮を初めとし、徐々に有望な人材が集いつつある。まず間違いなく、今後の覇道の妨げとなる一人であろう。そう、確信に近いものを、今の彼女は感じていた。

 

「来るなら来なさい。真っ向から、叩き潰してあげるから」

 

その笑みは、実に獰猛であった。愉悦という愉悦が限界まで飽和しているようで、三日月型に吊り上る唇が、その隙間から覗き見える犬歯が、怜悧に細められた双眸が、そのどれもが彼女の心中をありありと現しているようだった。

と、

 

「華琳様」

「あら桂花。どう? ”あの男”はまだ動かないのかしら?」

「はい。配給の場に姿を現していましたが、体調を崩したようで天幕に戻ったきり、出てくる気配がありません」

「そう、ありがとう。引き続き作業を進行させつつ、何かあったら連絡を」

「はっ」

 

踵を返し、再び指示へと戻っていく荀彧を見送って、曹操は再び思案に耽っていく。

 

「いつ動く? あるいは、もう既に? ふふっ、それでこそ、歩み甲斐のある覇道になるというものよ」

 

あの呂布の前に一人飛び出して生き残る。大勢の部下を引き連れて敵兵の弔問。悉くこちらの斜め上をいく男、北条白夜。これは思わぬ収穫だった。未だ嘗て、常に自分の予想を上回り、裏切り続ける者が、果たしていただろうか。解らない。読めない。それにたまらなく、心が躍る。

そう、彼女が笑みを深めた、その時だった。

 

「―――華琳様っ!!」

「あら、秋蘭」

「あ、姉者が、姉者が!!」

「っ!? 春蘭がどうしたというのっ!?」

 

常日頃の冷静沈着な側近の一人が、血相を変えて火急の知らせを持ってきたのは。

 

 

 

………………………………

 

……………………

 

…………

 

 

 

孫呉陣営へは驚くほど簡単に入ることが出来た。そのための変装だと解ってはいたけれど、つい先日まで殺し合っていた相手を、それもその最たる人物を、平然と招き入れる。例え前もって知らされてしたとしても、驚かずにはいられなかった。

やがて、連れていかれた天幕は実に簡素なものだった。最低限の広さとものしかないそこには、当然ながらさして衛兵もおらず、自分たちにそれなりの武があったならば、いとも容易く逃げ果せてしまいそうである。まぁ、あくまで仮定の話であるし、そもそもあったとして、逃げる気は更々ないのだけれど。何故なら、それは裏を返せば、自分たちへの信頼でもあるからだ、と月は捉えていたからだ。

敵陣だというのに、それもここに捕らわれていたというのに、華雄がやけにくつろいでいるように見えるのが不思議なのだろう、詠は全く落ち着けずにそわそわと腰を据えられずにいるようだった。”大丈夫”という意味を込めて手を握ってあげると、少しは安心できたようで、身じろぎは少し治まったようだった。と、

 

バサッ

「っ、白夜様っ!? 思春様っ、一体どうされたのですか!?」

「落ち着け、藍里。少し”当てられた”だけだ。こいつ自身に怪我はない」

 

天幕の入り口がはためき、一人の男性が武将らしき女性に担がれて運ばれてきた。まず瞳を奪われたのは、その雲のように真っ白な衣と、空のように濃くて、とても綺麗な青色の下履き。帝都と謳われ、大陸中の様々な文化が集う洛陽に長い間いた自分たちでも、見覚えのない意匠だった。

その人は瞼を閉じたままでぐったりと両腕を垂らし、苦しそうに掠れた呼吸を繰り返していた。まるで病魔にでも犯されているかのように衰弱し切っていて、見ているだけで伝染したかのように、こちらも胸が締め付けられるようだった。

 

「どうぞ、お水です」

 

そっと男性を椅子に座らせると、彼の掌へ導くように、水を汲んだ杯を乗せる。その杯をゆっくりと握ろうとする仕草は、端から見るとおっかなびっくりそうしているようでもあって、そして、男性が瞼を開かないままにその動作を行っているのを見て、月は思わず息を呑み、把握した。この人は、目が見えないのだ、と。

 

「難儀なものだな、北条」

「ぷはっ……えぇ、全くです」

 

水を一気に飲み干す男性に、華雄は苦笑混じりにそう言った。その表情には既に警戒心の類は欠片もなく、また男性も方も冗談混じりにそう返しているのを見て、何となくではあるけれど”あぁ、この人は信じてもいいかもしれない”と直感的に思った。

そして、暫く背中を背もたれに預け、深く呼吸を幾度か繰り返すことでようやく落ち着いてきたのか、男性はゆっくりとこっちを向いて、

 

「初めまして。貴女が、董卓さんですね」

 

それはとても綺麗で、しかしとても儚げな、硝子細工のような笑顔だ、と月は思った。

 

 

 

………………………………

 

 

 

耳をつんざくような剣戟が絶え間無く続いていた。その大剣と青龍刀が交わる度に、その過激さから火花が飛び散っているようにも思えて、霞はどうしようもないほどの胸の高鳴りを感じていた。

 

(あかん。こいつ、むっちゃ強い。こんな時に不謹慎やけど、最期にこいつと巡り会わせてくれたんは、お天道さんに感謝せな)

 

実力は伯仲していた。互いに、それぞれの長所を磨きに磨き抜いているからこその拮抗だった。

霞は”神速”の異名の通り、速さに長けた将である。故に、速さでは圧倒的に勝っているものの、夏候頓の堅牢な大剣と強靱な肉体に対する決め手に欠けていた。

夏候惇はその得物から容易に察せる通り、力に長けた将である。故に力比べならば有利なのだが、その反面でその速度から繰り出される連撃の合間を掻い潜って決め手を叩き込む機会を得られずにいた。

異なる分野を極めた達人同士だからこその持久戦。互いの張りつめた糸が、撓むか切れるかしたその時に、決着がつく。何度、裂帛の気合いを入れたか、何合刃を交わしたか、如何程の時が流れたのか、そんなものはとうに忘れた。胸が騒ぐ。心が躍る。そしてそれを自覚する度に”あぁ、やはり自分は狂っている”と自覚する。

生きるというのは元来、ありとあらゆる生物に共通であるはずの願望である。生きている限り、死に瀕するその瞬間まで”生きたい”と願うのが普通であり普遍。しかし、そうであるはずの自分は今、例えこの戦いで命尽きようとも構わないと、心の底からそう思っている。

無論、むざむざ死ぬ積もりはない。死のうと思ってに戦場に赴く兵士など、本来はいるはずがないのだから。しかし、人間には時として、喜々として死を選ぶ者がいる。それは時に家族のためであったり、友人のためであったり、国のためであったり、そして己のためであったりする。

この場所で、これほどの軍勢を留めていたのだ、本来の目的は果たせたであろう。後は”あの二人”が無事に逃げ延びる事が叶うのを願うのみ。そして、

 

「目の前のこいつを、ぶっ倒すだけやぁ!!」

「やってみろっ、ぜやあああああああああ!!」

 

そう、決意を新たに、眼前の敵を屠る為に青龍刀を握る手を強めて、いざ切りかかろうとして、

 

―――ヒュッ

 

それは微かに、そいて密かに、恐るべき速度で視界の端から忍び寄っていた。

仄かに風を裂く音を立てながら、余りに見慣れた”それ”は、認識した瞬間に明瞭に輪郭を帯びて迫り来る。それが”矢”だと解った時には、もう遅かった。

とっさに避けようと試みる。突撃の為に前のめりになり、それも既に慣性に任せていた身体を無理矢理に捻り、軌道上から逃れようとする。が、当然のように強引に体勢を変えようとすれば釣り合いは崩れ、そのような隙を夏候惇が見逃すはずもなく、こちらの動きに合わせて身体を傾け、大剣を振り降ろす軌道を修正しようとしていて、

 

(ざっけんなやっ!! こちとら覚悟しとったんや!! 腹ぁ決めて死合うとったんや!! 最期の最期に一対一で、正々堂々、真っ向から戦って死ねる思うとったんや!! せやのに、結局こいつもあの糞爺共と同じなんか!! 他人にはさんざっぱら血ぃ流さしといて、自分は安全な場所から手柄だけかっさらってく下種共と、同じなんか!!)

 

悔しい。歯痒い。腹立たしい。

青龍刀(これ)で飯を食うと決めた時から、初めて人の命を奪った時から、望む場所で安らかに死ねる事はないと、覚悟はしていた。だが、それにしたってこれはあんまりだ。一介の武人どころか、追いつめて罠にかけて、まるで狩人に狩られる畜生のような扱い。風評通りの暴君に、理解の上で荷担していたならば、それも甘んじて受け入れられただろう。だが、しかし、

 

(ウチが、あの娘らが、一体何をしたっちゅうねんっ!!)

 

罪を犯してしまったなら、幾らでも罰は受けよう。傷を与えてしまったなら、幾らでも報いは受けよう。恨まれなければならないなら、幾らでも恨まれよう。殴られなければならないなら、幾らでも殴られよう。

でも、欠片も、その覚えがないにも関わらず、貶められるばかりか、命を奪われなけれはならないような、それほどの濡れ衣を被せられなければならないような過失が、負い目が、果たしてあの娘たちにあっただろうか。

否、断じて、まったくもって、有り得ないと断言する。

 

(畜生、畜生っ!!)

 

歯を食いしばり、精一杯の罵詈と怨嗟を込めて苦し紛れに悪足掻きの一撃を叩き込もうとして、

 

 

しかし、次の瞬間には、霞はその青龍刀を止めていた。

 

 

「―――は?」

 

時間が制止したかのようだった。目の前の光景がこの上なく信じ難くて、惚けたような声だけが唇の隙間からこぼれ落ちた。

放たれた矢は、霞に届くことはなかった。しかしそれは、狙いが外れただとか、十分な飛距離でなかっただとか、打ち落とされただとか、そういった理由で、ではない。

それは余りに明快で、しかし同時に、余りに奇妙な光景であった。

 

「ぐ、ぐあああああああああああああああああああ!!」

 

霞へと真っ直ぐに向かっていたはずの矢は、夏候惇の左目へと突き刺さっていたのである。

 

 

 

………………………………

 

 

 

「初めまして。貴女が、董卓さんですね」

「は、はい。初め、まして?」

 

軽度ではあるものの、言葉尻を持ち上げてしまうほどに、彼女は珍しく混乱に陥っていた。それほどまでに、男性はこの場に不釣り合いであると、そう思えた。

歳は自分たちより少し上、だろうか。見たことのない衣服も手伝って、まったく想像がつかない。何より戦場で、殺し合っていた敵に対して、これほど穏やかな笑顔を見せられては、そりゃあ多少なりとも躊躇いはするだろう。それはどうやら詠も同じなようで、彼女は眉間に皺を寄せながら、居心地悪そうにむずむずとしつつも、取りあえずは出方を見る積もりでいるようだった。

 

「私は、北条白夜といいます。性が北条、名が白夜です。この孫策軍にて、軍師の見習いのようなものを、させていただいております」

「あ、えっと、董卓仲穎です。よろしくお願いします」

 

深々と頭を下げる男性に思わず居住まいを正し、お辞儀で返す。性も名も二文字とは随分珍しい人だ、とまずは思った。

 

「華雄さんから、概ねの事情は伺っています。そして、その上で尚、見ず知らずの我々の言葉を信じ、この場に来て下さったことに、本当に感謝します。有り難うございます」

「御託はいいわ。アンタたちの真意を教えなさい。私たちを引き込んで、一体どうする積もりなのかしら?」

「詠ちゃん」

「……」

 

このままでは本題まで長くなりそうだ、と判断したのか、詠がそう言って先を急かした。窘めると、ばつが悪そうに口を引き結んで、しかし視線は男性からまったく逸らさずにいる。そして、

 

「単刀直入に言いますと、申し訳ありませんが”董卓”と”賈駆”を生かしておくわけにはいきません。あくまで表向きは、ですが」

 

一瞬、激昂しかけた詠が腰を浮かせかけるが、最後の一言で落ち着きを取り戻したのか、直ぐに座り直し沈黙で先を促した。華雄は既に聞き及んでいるのか、さしたる驚愕は見せていなかった。そして、

 

「表向きとは、どういう意味ですか?」

「貴女方二人の”死”を演出するんです。この状況下で”董卓”の反撃や再起は、貴女の生死に関わらず、まず不可能でしょう。貴女たち二人の生死が判明しない限り、貴女たちが安心して眠れる日は来ません。これは、いいですか?」

「……はい」

 

ゆっくりと頷く月。詠は改めて他人から指摘される事で無言で不機嫌そうに表情をしかめるが、強く言い返す事もできないのだろう、悔しそうに俯いていた。

 

「その為には、何かしらの”証拠”が必要です。そこで、なんですが……董卓さん、ちょっとこっちへ来て頂けますか?」

「? はい」

(ちょっ、月っ!?)

(落ち着け、賈駆)

 

余りに無警戒に近づく月に心中で叫び声を上げ身を乗り出そうとする詠を視線で抑える華雄。

距離を詰め、その手の届く距離で座り込む月に、白夜はゆっくりと手を伸ばして、

 

サラッ

「―――へぅ?」

「あぁ、成程。これは確かに仰る通りですね、華雄さん」

「だろう。一度でも見たことがある者なら、まず覚えているはずだ」

 

その指が、そっと柔らかく髪を梳く。丁寧に、ゆっくりと、何度も、何度も。そして、笑顔のまま呟く白夜に、華雄は得意げにそう言った。

 

「あ、あの、北条、さん?」

「突然済みません。華雄さんから、貴女の髪はとても綺麗だと、そう窺っていましたので」

「へ、へぅ……」

 

面と向かって、それも異性に、未だ嘗てそんな真っ直ぐな褒め言葉を向けられた事があっただろうか。思い当たらないし、思い出せない。ふと、脳裏を過ったのは幼き日の父だった。あの逞しく無骨な手とは正反対なのに何故か、何かがかぶって感じられたような気がして、思わず身体を小さくもじらせながら俯いてしまう。

 

「本当に綺麗ですよね。淡い紫色で、ふわふわっとしてて」

(こんなに幼い、たった一人の少女を、大陸中でよってたかって、か……)

 

月と同年代である(朱里)の姿を重ねているのだろう、藍里は先程までの着せかえを思い出しながらほぅ、と魅了の溜息を吐き、対する思春はやはり風評との食い違いに驚愕を覚えざるを得ず、表にこそ出していないものの心中では盛大に呆然としていた。

 

「……それで、撫で回し(それ)が演出云々と一体何の関係があるのかしら?」

「何を不機嫌になっている、賈駆?」

「うるさいっ、不機嫌になんかなってないっ!!」

「っと、そうでしたね。危うく本題を忘れるところでした。申し訳ありません、気安くこのような真似をしてしまいまして」

「い、いえ、その、別に……」

 

僕の月に触れるな、と思い切り顔に書いてあるようにしか見えないのだが、それはまぁ置いておいて。図星を指されて言い返す詠と、未だ気恥ずかしさから抜け出せずにいる月に、白夜は親が子に諭すような優しい口調で、こう言った。

 

「女性に対してこのような提案は些か気が引けるのですが、貴女の髪をほんの一束、頂きたいのです」

「っ……成る程、そういう事」

「え、えっと、どういう事でしょう?」

 

理解した途端、直ぐに軍師の表情への変わり身の早さは流石、賈駆である。未だ理解の追いついていない月は少々不安げに白夜の顔を見上げていた。

 

「衣服だけでは、物証としては決め手に欠けます。かといって、貴女たちの首を落としてしまっては本末転倒です。貴女たちの命を奪うことなく、相応の説得力を持つ証拠、となると」

御髪(みぐし)……確かに、一理あるわね」

 

あの着替えにはそのような意味合いもあったのか、と思いつつ、詠は相槌を打つ。加えて、彼らは特徴的な髪をしているから、というのが主な理由のようだが、月の髪の色は故郷である涼州は隴西(現在で言う甘粛省南東部)独特のものだ、と以前聞いたことがある。その点を抜きにしても、有効な手であることは間違いない。

 

「後は、追い込まれた後に最期に火を放って自害を試みた、とでっち上げます。今、貴女の屋敷へは穏さん、陸遜将軍が向かっていて、手筈を整えている頃です。後は表舞台に名を出さず、隠居という形をとれば、まず気付かれることはないでしょう」

「……どうして?」

「はい?」

「どうして、私たちを助けて下さるのですか?」

 

それは自然に、口からこぼれ落ちた言葉だった。

彼らに対する感謝の念は絶えない。どれほど積み重ねても足りはしない。一歩間違うだけで自分たちも踏み外し地に落ちてしまうような綱渡りをしてまで手を差し伸べてくれているのだ、最早疑ってなどいない。何人もの将がこうして動いている時点で、これがこの人たちの総意なのは疑いようもないのだけれど。

でも、それでも、もう一歩、駄目押しの王手が欲しい。何がこの人たちをそうさせるのか。何がこの人たちにそうさせるのか。

そして、

 

「そうですね。端的に言うなら―――」

 

 

 

………………………………

 

 

 

「ぐ、ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「あ、アンタっ、一体何をしとんねんっ!?」

 

もがき苦しみ膝をつく夏候惇を見てようやく状況を飲み込めた霞は、まず最初に不可解の意を露わにした。

矢を放ったのは彼女と同じ、曹操軍の出で立ちをした兵士だった。それを視認したからこそ、霞は彼女に対して落胆し、激昂した。しかし今、目の前でうずくまっている夏候惇の立ち位置は、明らかに自分を庇うためのそれに、他ならなかったのである。

突然の事態に、周囲の兵士たちの混乱は如実であった。矢を放ったのが誰であるかには気付いていないのだろう、誰もが”誰が放ったのか?”ではなく、”どうして庇ったのか?”という疑問が圧倒的に勝っていた。

しかし、

 

「あ、あがっ、くっ、きっ、貴っ様あああああああああああああああああああああああああ!!」

「―――ひっ」

 

痛みを凌駕した彼女の怒りに、微かに聞こえた、短く息を呑む声。途端、夏候惇は力強く七星餓狼を握り直し、その兵士へと突進して、

 

「”武人”同士の一騎打ちを、愚弄するなあああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

一刀両断。薪を割るかのように真っ直ぐに降り下ろされたと同時、断末魔すら上げさせずに立ち上る血飛沫。その後ろ姿を、霞は茫然と見つめていた。

 

「ぬ、ぬぐっ、あ゛ああああああああああああああ!!」

 

強引に引き抜く一矢。その(やじり)にはありありと血塗れの眼球が突き刺さっていた。神経ごと引きちぎったようで、見ているだけで痛々しく、思わずこちらも表情をしかめてしまう。そして、

 

「我が父より授かりし身体、我が母より授かりし血潮、我が主に捧げしこの魂、その一片とて断りなく捨てるも失うも決してあらず!! 我が左の眼、永久に我と共に在り!!」

 

夏候惇はあろうことか、その眼球を口に含み、咀嚼し出したのである。弾力のある肉を噛み砕き、擦り潰そうとする音が生々しく感触を想像させ、周囲の兵士の何人かは吐き気を催してしまったようだった。しかし、

 

「ん、んぐっ―――さぁっ、仕切り直しだ、張遼っ!! かかってくるがいい!!」

「…………」

 

その姿から、霞は目を離すことが出来ずにいた。その泥臭さが、愚直さが、余りにも眩しく写って見えた。文字通り、見惚れていたのだ。そして、思い直した。あの矢は、少なくとも彼女の指示ではない、と。

 

「どうしたっ、来ないならばこちらから行くぞっ!?」

「……なんでや?」

「ん? 何の話だ?」

「なんで、ウチのこと、庇ったりしたんや?」

 

それは、自然と漏れ出た疑問だった。

霞は、自覚こそないものの、少なからずの期待を持っていた。もしかして、ひょっとして、彼女は少なからず”自分の望む言葉”を発してくれるのではないか、と。敵対する立場にありながら、彼女はそんな予感がしていた。

そして、

 

「決まっている。そんなこと―――」

 

 

 

 

『―――私が納得できないから(です/だっ)』

 

 

 

 

 

貴女がこのまま濡れ衣を着せられ、抗うことも出来ずに殺されてしまうことを、私は理解は出来ても、どうしても納得することは出来ませんでした。

 

―――実際に剣を交えて思っただけだ。ここは、この戦は、貴様ほどの使い手が命を燃やし、費やすほどの死に場所ではない、とな。

 

”納得”という行為は、全てにおいて優先されるものだと、私は思います。例えどれほど理に叶っていたとしても、それが自分の”真っ芯”に反していたなら”(しこり)”が残る。それは決して消えることなく、ずっとずっと、自分を苛み続けます。死ぬまで、ずっと。

 

―――貴様の強さは、このような茶番で潰えるには惜しい。素直にそう思った。だからこそ、貴様は生かして、華琳様の元へと連れていく。貴様の事情など知らん。興味もない。重要なのは、華琳様が貴様を欲しているということ。ただそれだけだ。

 

私は、納得したいんです。愚かだと笑われようと、哀れだと蔑まれようと、それが”私にとっての本当”である限り、私は実現の可能性を探し続けます。それが、一人で届かないのならば、躊躇いなく助けを求めます。選択肢が存在しないなら、自分の手で創り出します。

 

―――さぁ、構えろ。誰にも邪魔などさせはしない。真っ向から、真正面から、堂々と貴様を打ち倒し、私と共に来てもらうぞ。あのお方の望む全てを、私の持つ全てで、叶えてみせると、そう心に誓っているのだからな。

 

夢や、理想って、そういうものじゃないですか。

 

―――部下とは、臣下とは、そういうものではないか。

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

「…………」

 

月は言葉を失った。出すことが出来なかった。それは余りに単純で、それ故に力強かった。そして、彼の笑顔の儚さの理由に、気がついた。

この人は、なんて強くて、それでいて悲しい人なのだろう。この人はきっと、どれほど遠くても、どれほど暗くても、どれほど狭くても、どれほど険しくても、どれほど脆くても、その道を選ぶことを、歩くことを、進むことを、決して躊躇わない。一見、子供の我儘のようでいて、そうじゃない。それに伴う危険を、犠牲を、この人は知っている。今、正に身をもって体験している。

凄い、と素直に感嘆した。酷く巨大な荷物が、この人の背中に見えた気がしたからだ。それは到底一人で背負いきれるようなものではなくて、それでもきっとこの人はこれからも、背負わなくてもいいものまで次々に背負い込でいくのだろう。その重さを、辛さを想像して、言い表しようのない恐怖を感じた。今にも割れてしまいそうな薄氷の上に立つかのような、餓えた肉食獣の群れの中を丸腰で闊歩するかのような、あり得ない、あり得てはならない危なっかしさで、目の前にいるはずのこの人が今にも力尽きてしまいそうに思えてならなかった。

だから、

 

「解りました」

「……月?」

 

いち早くその変化に気付いた詠の怪訝な表情を余所に、月は居住まいを正し、白夜に向き直る。

 

「私たちの身柄を、皆さんにお預けします」

「……本当にいいの、月?」

「詠ちゃんの心配は解るよ? でも、このまま涼州に帰ったら、今度は洛陽の人達だけじゃない。故郷の皆も、父様も母様も巻き込んじゃう。それは、嫌だよ」

「……そう。なら、僕は月の判断に従う」

「有難う、詠ちゃん」

 

渋々、という表情を隠し切れていないものの、それでも自分の意志を尊重してくれる親友に微笑みを返し、改めて。

 

「董卓仲穎。真名を(ゆえ)と申します。宜しくお願いします、北条様」

「また様付けかぁ……別に呼び捨てにして下さっても構わないんですが」

「いいえ。私は今より庶人の身です。仕官されている方々へ敬意を払うことは当然のことですから」

「……これはまた、一本とられましたね」

 

苦笑する白夜に、月は思う。どうして、この人の差し伸べる手を拒めようか、と。果たして、この手を拒める者がいるのだろうか、と。そして、こうも考える。この人の”荷物”でなく”支え”になれないか、と。

きっと、この人は拒むかもしれない。結構だ、と遠慮して、恐れ入ってしまうかもしれない。でも、それでも、この人はあまりに自分を顧みなさそうで、危うくて、黙って見ているなんて、出来ないだろうから。

 

(力になりたい。ほんのちょっぴりでもいいから、この人の力に)

 

その心境に気付いてか、それとも単純にいきなり真名を預けられたことへ対する妬みか、二人の間に詠が割って入っては自分もいきなり真名をとりあえず(・・・・・)預け”調子に乗るな””勘違いするな”といった叱責を畳みかけ始める。その光景を見てやっと張りつめていた糸が緩んだのか、華雄はほっと胸をなで下ろし、柱に背を預けてずるずると腰を落としていっていた。思春はそこまでを見届けるとさっさと表へ戻っていったが、その口元は微かに微笑みの形をとっていたように窺えた。そして藍里は何度も謝罪の言葉を重ねながら、懐の短剣で月の髪を一束、そっと切り落としていた。

そして、

 

(御遣い様へのお願い、本当に叶っちゃった……)

 

まだ事実を知らない彼女は”どこの誰かも知らない””いるかどうかも解らない””天の御遣い”への感謝の言葉を、心の中で何度も繰り返すのだった。

 

 

 

………………………………

 

 

 

「…………」

 

張遼は黙然と立ち尽くしていた。その心の中にあるのは驚愕と、羨望と、そして、

 

「は、ははっ。えぇなぁ。アンタ、最っ高やわ」

 

この上ない、歓喜だった。

 

「ほんまもんの修羅っちゅうんは、アンタみたいなのを言うんやろうな。久しぶりや、こんなん。なんて言えばええんやろか。全身の毛が押っ立ってまうような、血が全部沸騰してまうような、こんな感覚、ほんまに久々やで……

せやから、」

 

そう言って、霞は飛龍偃月刀を高々と掲げる。周囲の誰もが手を止め、注目する中、

 

「えぇよ。降ったる」

 

ズン、と。おもむろに、目の前の地面へと突き刺した。

 

「ほぅ、どういう風の吹き回しだ?」

「興味が沸いた。アンタほどの修羅が忠誠を誓う、曹操という主に。それに、正直手負いのアンタに勝ってもなんも意味ない。それも、ウチの庇って負った怪我なら尚更や」

「それならば要らぬ心配だと言っているだろう。この程度で遅れをとるほど、柔な鍛え方は―――」

「せやから」

 

言葉を被せ、強引に二の句を継げなくさせると、霞はにんまりと歯を剥き出しにして笑い、言う。

 

「この勝負は、お預けや。アンタの怪我が治ったら、今度は邪魔の入らん場所で、本気で仕合おうや」

「……いいだろう。私も、このままで終わらせたくはなかったしな」

「ただし、降るっちゅうても、曹操を主かどうか認めんのはウチやで」

「好きにしろ。あのお方以上の主など、この世のどこにもおらぬ。すぐに貴様にも解ることだ」

「言いよんなぁ。ますます興味が沸いてきたで」

 

それに、と心中でだけ思う。

時間は稼げるだけ稼いだ。死戦を続ける必要がなくなった以上、無為に血を流すこともない。それに、自分の命は今、彼女に救われたようなものである。その彼女が(正確にはその主だが)自分の力が欲しいというのだ。

そして、何より、

 

(ウチがほんまに刃を向けなアカンのは、こいつらとちゃう)

 

真に憎むべきは、この連合軍の総大将であり発起人である張りぼて名家の袁家である。

 

(まだ死ねん。あいつらぶっ刺したるまでは)

 

そう、決意を新たにした、その時だった。

 

「っぐ、くっ―――」

「っ、夏候惇!!」

 

緊張の糸が切れ、痛みがぶり返してきたのだろう。夏候惇は遂に膝をつき、俯せに倒れてしまう。そこに駆け寄り、抱き起こすと、もの凄い量の脂汗が滲み出てきているのが解った。

 

「おいっ、誰か早よ衛生兵呼んでこいっ!! 今すぐやっ!!」

 

そう大声で叫ぶと、曹操の兵たちは直ぐに救助を呼びに行った。少々不衛生ではあるが、とりあえず自分の羽織の端を噛みちぎり、応急処置として左目を覆うように頭に巻き付ける。

そのまま暫く待つと、見覚えのある丸眼鏡にそばかすの少女が、二人ほど将らしき影を引き連れてきたのが見えた。

一人は、夏候惇と色違いで全く同じ服を着た、空色の髪で片目が隠れている。噂に聞いていた、神弓と謳われる妹の夏候淵だろうと、予測はできた。

だが、もう一人は余りに幼いようで、一瞬目を疑った。螺旋に巻いた金髪を揺らし、こちらへ駆け寄ってくるその少女。まさかと思った。そして、その予感は、

 

「―――春蘭っ!!」

 

彼女の真名を呼ぶ必死の形相から、確信へと変わったのだった。

 

 

 

…………

 

……………………

 

………………………………

 

 

 

「すぅ、すぅ」

「ん、んぅ、月ぇ……」

 

夕刻。既に太陽は西へ傾き、天の帳は青から茜へ、そして徐々に藍色へと、染まりつつある。

わざわざ自分たち用に割り当てられた天幕では、我が主と仰いだ人と、その親友たる筆頭軍師が、しかし年相応の安らかな寝顔で眠りに就いていた。いつぶりだろうか。これほど無防備に眠る姿を見られたのは。それを思い返し、また胸が暖かくなり、目頭が熱くなる。ずっと欲しかったものが、追い求めていたものが、そこにはあったのだから。

 

(よかった。本当に、よかった……)

 

ずっと、憤り続けていた。理不尽に。不条理に。向ける先のない矛は、ようやく収まる鞘を見つけた。

この人が今、こうして生きている事。それがとても感慨深くて、たまらなく嬉しかった。

そして、

 

「…………」

 

おもむろに、華雄は立ち上がった。既に手の枷も解き放たれており、孫呉の陣営内であれば自由に行動することすら許されている。というのも、正式に降兵としてこの場にいるからである。何より、今の彼女には孫呉を裏切る理由がない。

天幕を出る。炊き出しの忙しさは山を越えたようで、今は大半の兵たちが簡易的な家屋の建設などに向かっているようで、最低限の兵士たち以外は殆ど姿が見られなかった。

 

「まぁ、その方が都合はいいか」

 

そう呟いて、ゆっくりと歩き出す。目指すのはとある天幕。ほんの数刻前にもいた場所。すると、丁度それが見えてきた頃、

 

(ん、やはりか)

 

予想が的中し、小さく笑い声を漏らす。やはり彼はそろそろ向かうだろうと思っていた。

 

「北条」

「……華雄さん」

 

天幕から出てきたばかりの白夜は、片手にやはり”あの楽器”の入れ物を携えていた。また、弔問に向かう積もりだったのだろう。その傍ら、恐らくそれに同行するつもりだった諸葛謹がおり、こちらに声をかけてきた。

 

「どうかされましたか? 何か、不都合でも?」

「いや、そういったことではない。北条、お前と話がしたい」

「私と、ですか?」

「あぁ。出来れば、二人だけで」

「それは、私は構いませんが……」

 

白夜は隣の藍里の返事を伺う。釣られて、華雄もまた隣へ視線を向けた。

そして、

 

「……解りました。真面目なお話のようですし、私はここでお待ちしてます」

 

暫く考えるような素振りを見せた後、藍里はそう言って微笑んだ。

 

「白夜様。再三言いますが、く・れ・ぐ・れ・も、外には出ないで下さいね。陣営内で済ませて下さい」

「はい。解りました」

「それじゃあ華雄さん、白夜様をお願いします」

「あぁ、任されよう」

 

そう言って、二人が陣地の外れの方へと歩いていくのを見送って、

 

「…………むぅ」

 

やがて、まず声は聞こえないであろう程に遠く離れた頃、藍里はつん、と唇を尖らせた。

 

(本当は私が一緒に行くはずだったのに……羨ましいなぁ、華雄さん)

 

とても真剣な表情だったのと、先日の虎牢関で守ってもらった恩から今回は引いたけれど、正直なところ、あの人の隣を他人に譲るのは凄く嫌だった。

あの暖かい手を引けて、心地よい声を聞けて、誰よりも寄り添えるあの場所を与えられたことは、今の藍里にとって何よりも誇らしく、そして喜ばしいことだった。

 

(いけないことだと解ってるけど……独占したく、なっちゃうんだよなぁ)

 

既に自覚はある。男嫌いだった自分に、異性に対する恋愛感情が芽生えている、と。出会った当初から、その日溜まりのような暖かさに徐々に惹かれていた。常にこちらを上回る発案に何度とも心躍った。そして、

 

「ふわぁ……」

 

思い出す。抱き締められた感触。広い背中。自分の心の影まで受け入れてくれた、あの夜のこと。今でも顔が熱くなる。頬が紅潮していると、見ずとも自覚出来てしまう。

この感情を”不治の病”と例えるのが、本当によく理解できる。これは確かに治らない。というより、治せない。きっと報われた後でも、この動悸が治まることはないだろう。

そして、それ故に、

 

(皆さんが惹かれてるのも、解っちゃうんだよなぁ……)

 

何せ、あの刺々しい思春さんでさえ、白夜様に対しては随分と丸くなっているのだ。というより、少なくとも私の知る限り、孫呉であの人を嫌っている、なんて人はいない。

と、そんなことを考えていた、その時だった。

 

「―――お、お姉ちゃん」

「……え?」

「ちょっと、お話、いいかな……?」

 

振り返った先で、妹が俯きながら指を絡ませつつ、上目遣いでこちらを見上げているのに気づいたのは。

 

(続)

 

後書きです、ハイ

 

なんぞ珍しくテンションと空いた時間が重なったのでガーッと書き上げられました。未だ打ち切りを疑わずお待ち下さってるマイノリティな方々、本当にお待たせしました「盲目」最新話投稿です。

 

さて、いかがでしたでしょうか。久々にプロットノートを紐解いて”あぁそういやこうだったなぁ”と思い出しつつの執筆だったので、違和感などなければいいのですが(ォィ作者)。我ながら偉い濃密に創ったもんです。12000文字以上使って進行がこの程度ですよ?(爆)それもまだこれから夜会話のシーンと今後のフラグをおったてるという……

はてさて、華雄の”話”とは。朱里が来た理由とは。いよいよもって、こっからオリジナル展開全開(?)になってきますので、どうぞ引き続き気長にお待ち下さいませ。

それでは”盲目の御遣い”次回「椿事」、お楽しみに。

 

でわでわノシ

 

 

 

 

 

 

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