No.592040

Just Walk In The ----- ep.1「Mist・五里霧中」4

投稿103作品目になりました。
オリジナルの異能SF第1章、その4になります。

前回の仮m(ゴホン)Just Walkは(CVマダオ)
・クイズ・マルオネア開催(賞金なし)

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2013-06-28 18:41:30 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:4007   閲覧ユーザー数:3532

 

”うたまる”

僕らが知り合った切欠であるチャットルームでも古参の一人。少なくとも、僕よりは先輩である。最初は性別を隠していた、というよりも、全く気にしてなかったし気づかなかったから、普通に同性だと勘違いしていた。後に女の子で、それも年下だと知ったときの衝撃といったらなかった。ちなみにジョージさんや狼さん達は何となく気づいていたらしい。曰く”言動がそれっぽかった”のだとか。そうだと知った後でも、僕にはそれが全く解らなかったのだけれど。

「でもまさか、うたまるさんまで智並市にいるなんて……あ、これ美味しいですね」

「気に入ってくれたらよかったです。まぁ、普通は驚きますよね」

僕たちは駅前の広場にいた。あの後、商店街での案内(食堂の仕入れに使うお店etc)をそこそこに切り上げ、智並駅やその周辺の施設を色々と教えてもらい、戻ってきたところで小腹が空いたので、マリアさんがよく利用するという屋台のクレープをそれぞれ購入して今に至る。ちなみに、マリアさんがミックスベリーで、僕が宇治金時。もちもちの生地にふわふわで滑らかな舌触りのクリームが実に堪らない。

「彼女も、初めて私たちと会った時は、それはもう驚いていましたよ。世間は広いようで案外狭いと言いますけれど、本当にそうですよね」

「それは確かにそ~だねぇ。ボクもまさか、皆がこんなに簡単に集まれるところにいるなんて、って初めはスゴくビックリしたもん」

「そうですよね……え?」

偉く自然に会話に加わってきたので数瞬、認識が遅れた。僕の真後ろ、丁度ほんのちょっぴり視線を下げた辺り、その辺を振り返って見下ろすと、いつの間にそこにいたのか、鮮やかな金髪の、町中ではアロハに次いで割に目立つであろうゴシックパンクスタイルで金髪の、見た目は少年な知り合いが、随分と豪勢なクレープにかぶりつきながら、こっちを見上げていた。

「やっ。約半日ぶりだね」

「タンデムさん」

「見知った顔を見かけたから思わず声をかけちゃった。ここのクレープ、美味しいよね~」

ほくほくとした満面の笑顔の虎鉄が持っているクレープは、パッと思いつくトッピングを一通り全部、乗せたというよりは詰め込んだようであり、ふと国士は全社員が乗っても”何ともありません”と声高に主張する物置のコマーシャルを思い出した。

「それ、なんて頼んだら出てくるんですか?」

「ん? ストロベリーバナナショートケーキ&チョコブラウニーにショコラフランボワーズ&アイスクリームプラス、だよ?」

「最早、呪文の類ですよね、その長さ。アナグラムとか作れそう」

「お店の人もよく覚えきれますね。というか、幾らなんでしょうか、これ」

「んふふ~。これを思いっきり頬張るのが好きなんだよね~」

そのまま大きく口を開け、クレープを口一杯に含む虎鉄。さながら頬袋をパンパンに膨らませたリスやハムスターのようなその表情は本当に幸せそうで、このまま宣伝広告にでも使えばいいというくらいに満足そうだった。が、同時にそれだけの甘味を口に含むのを見て胸焼けのような錯覚を覚えてしまい、とはいえ口直しになるようなお茶もコーヒーも手元にないため、国士は自分のクレープの抹茶味の部分を気持ち多めに咀嚼した。

「ん、ふぉ~ひえばふぁ」

「飲み込んでからにして下さいよ、タンデムさん」

「ん、んぐっ。ごめんね。そ~いえばさ、二人は最近噂になってる”アレ”、知ってる?」

「トラック事故のことですか? 実は事件かもしれない、っていう」

国士の脳裏のよぎったのはそれだった。”能力者”というものに対してコンプレックスのようなものは元よりあったし、つい先ほどもその捜査現場に出くわしたばかりなのだから。

「ん~ん、違うよ。そっちもまぁ有名だけど、ボクが言ってるのは別のお話」

「別の?」

しかし、どうやらそうではなかったようだ。国士と同じように思っていたのだろう晶もまた、ほんの少し驚いたように目を開いて首を傾げていた。そして、

「最近、この辺に”出る”らしいんだ~」

その純真無垢な笑顔に、しかし二人は背筋にぞわりとした悪寒を覚え、思わずクレープを口に運ぶ手を止めた。

元々、あまり快くはない話題ではあるが、いわゆる”そういった仕事”を生業としているだけでなく、その能力によって直接”彼ら”に干渉できる虎鉄の言葉である。その信憑性は、余りに桁違いだった。

「それは、その、つまり、”(コレ)”が、ってことですか?」

「ん? あ~、そっか。ごめんね、勘違いさせちゃったみたいで。違うよ。ボクの仕事になるよ~なことじゃないから」

だらりと手を垂らすジェスチャーで尋ねる国士に得心がいったようで、苦笑しながら首を左右に振る虎鉄。どうやら自分たちの懸念は的外れの早とちりだったと解り、二人はほっと胸をなで下ろした。

「なら、一体何が出るって言うんですか?」

「若い子たちの間で流行ってるらしいんだけどね、最近たまにこの辺で見るんだってさ、ウォーリー」

「「……ウォーリー?」」

脳内に思い浮かべるのは、人混みの中に紛れた特定の人物を探す絵本、その登場人物である紅白のボーダーに青いデニム、丸眼鏡にクラシカルな木製ステッキを携えた、あの独特な出で立ちのキャラクター。

「そういう服装してるから、そう呼ばれてるってだけだけどね。新手のパフォーマーさんなんじゃないかって専らの噂だよ。見られたらすっごくラッキーなんだってさ」

「あぁ、それなら私も大学で聞いたことがありましたね。ここ最近、つい1、2週間くらい前から見られるようになったらしくて、毎回人通りの多いところに現れるから写真もまともに撮れなくて、大まかな背格好ぐらいしか解ってないって」

「へぇ。面白いですね、それ」

どうやら心当たりがあったようで、晶の補足に国士は感心する。

「ね、ボクもちょっと見てみたいもん」

「結構目立ちそうな服装ですから、見つけられる度に同じ格好をしているって事は、少なからず狙ってやっている部分もあるんでしょうね」

「そうですね。僕もちょっと探してみようかな」

「見つけたら絶対教えてね、戦ちゃん」

「はい、了解です」

そう快諾して、国士は最後の一口を放り込んだ。

 

 

 

 

 

 

その日も、いつもと何ら変わらない一日のはずだった。

配送センターから荷物を指定の住所に届けて回る。それが自分の仕事。今までも、これからも、幾度となく繰り返し続けるルーチンワーク。

なのに、最近は同僚が次々に謎の事故で入院しており、先日とうとう職場に第4課の人が来て”事件の可能性があります”と言われてから、次は自分かもしれない、何か自分は恨まれるような事をしただろうか、と冷や冷やしながら毎日を過ごしている。仕事が終わり、業務から開放される度に、心から安堵する日々。そして今日もまた無事に仕事を終えて、配送センターへとトラックを走らせていた、その時だった。

(ん? 何だ、アレは?)

視界の端、流れていく人の流れの中に、ふと目を引くものを見つけ、一瞬そちらに目を向けた。当然、こちらは走行中なのだから、あっと言う間にそれは後ろへと流れていってしまい、確かめる事は叶わなかった。

(……まぁ、いいか。さっさと戻ろう)

多少の興味はあったが、どうしても確かめたい、というほどの事でもない。気にかかる程度だったそれを思考の外に追いやり、さっさと帰って冷たいビールでも呷ろう、そう思い直して直ぐに視線を前に戻した、その時だった。

 

ーーー目の前、トラックの進行方向である道路の真ん中に、いつの間にか佇んでいる女の子を視認したのは。

 

(なっ!?)

とっさにクラクションを鳴らしてブレーキを踏むが、気づいていないのか、それとも避ける気がないのか、その子は一切動こうとしない上に、距離は既に間に合いそうにないほどにまで縮んでしまっていた。

急激にハンドルを切る。完成と遠心力に飲み込まれようとしている車体の制御を必死に試みるけれど、年端もいかない幼子ですらそらんじられるように、車は急には止まれない。

前輪は勢いのままに歩道へ乗り上げ、眼前には鈍く冷たく佇んでいる電信柱が近づいてきてーーー

 

 

「ーーーというのが、事件当時の記憶、みたいですね。あふ……」

「ふむ、そうか」

欠伸をかみ殺しながらの歌穂の説明を、丈二は逐一、事細かにメモしていく。

国士たちがいる駅の直ぐ近く、智並市総合病院のとある病室に、二人はいた。個室故に一つしかないベッドの上で眠っているのはつい昨日、あのトラック事故で搬送された運転手であった。不幸中の幸いにして大きな外傷は左足の骨折のみで済み、その手術も無事に成功。後は意識の回復を待つばかり、という状況下に、彼はある。そんな彼の枕元、備え付けのパイプ椅子に腰掛けている歌穂は、うつらうつらと船を漕いでいるようだった。

「そういえば、その女の子の着てた服、私の学園の制服、だったような気がします」

「知ってる顔か?」

「いえ、そこまでは、ちょっと。ふぁ……私も、そこまで交友関係が広い訳じゃ、ないですし」

「そうか。この、事故の直前に視線を外した時、見ていたもの、ってのは解るか?」

「あぁ、えっとですね、多分、ウォーリーさんだと、思います」

「……ウォーリーさん?」

「最近、有名なパフォーマーさん、らしいですよ? 赤と白のボーダーが見えたから、多分、そうなんじゃないかと、思いますです」

眠気を必死に堪えながら、緩やかに説明を続ける歌穂。な何故、彼女が睡魔に襲われながらこのような事を語っているのか、その理由は実に単純明快である。

「パフォーマー、ねぇ……まぁいい。解った。もう寝てもいいぞ」

「済みませんーーーぐぅ」

「っと。相変わらず危なっかしいな、お前の”対価”は」

丸岡歌穂の”能力”を端的に説明すると”夢への干渉”と言うべきだろうか。彼女は眠っている者に触れる事で、その者が見ている夢を覗き見る事ができるのである。眠っている間に見る夢は、抑圧された願望を充足させるため、であるとか、脳が行う思い出の整理の副産物、であるなどと諸説あるが、いずれにせよそれは何かしらの”記憶”に関連している事は間違いなく、それを直接見ることが出きるという事は即ち、本人さえもが忘れてしまっている情報を引き出す事が出来る、という事でもある。また、同じ作品を観賞しても観客によって注目する点や抱く感想がそれぞれ異なるように、本人も気づけなかったような新たな事柄を、第3者の視点から発見する事も出来る。それを抜きにしても、彼女は生きてさえいれば、例え意識を失っている人間からでも、嘘偽りの一切含まれていない情報を引き出す事が出来るのである。それが事件の捜査という点においてどれほど重宝される能力であるかは、言うまでもないだろう。

そして同時に、彼女はその”対価”として、能力を使用した直後は強烈な睡魔に襲われてしまう。本人曰く、これに痛覚やカフェイン等で抗うのはまず不可能らしく、多少なら耐えられるものの、もって精々5分前後が限界らしい。まぁ、そうでなくては”対価”として成立しないだろうから、ある意味で当然なのだが。

「完全に無防備だからな。一遍寝ちまうと1、2時間は起きねぇし」

支えを失い、糸の切れた操り人形のように重力に身を任せて倒れようとする歌穂を受け止め、傍らの来客用ソファにそっと寝かせる。病室の予備の毛布を一枚拝借してかけてやると、丈二は予めプリントアウトしてきた資料の束を取り出し、思案に耽り始めた。

(一人も、かすりもしなかったか。まぁ、これはこれで収穫と言えば収穫だが)

パラパラとめくるのは昨夜、乾より渡された、第4課が現在把握している中からピックアップされた、今回の事件に関連している可能性のある容疑者達のリスト。しかし、歌穂の語る情報と、彼らの能力やその手口、対価及びその痕跡や目撃情報、その悉くと一致しないのである。

(少なくとも、彼の事故は本当にただの偶発的なものなのか、もしくは……)

考えたくはないが、未だ第4課が把握していないか、新たに覚醒したばかりの能力者の仕業か。

まだ確信があるわけではない。ここ数週間の間に起こった事故の被害者は彼を含めて5人。内2人は既に退院して日常生活に戻っており、彼らの証言もまた、資料には記されていた。そして、その中には、

(女の子、ねぇ)

歌穂には先入観を抱かせない為に伏せておいていたが、先の2人の証言にも”女の子を避けようとした”という記述が含まれていた。年齢は10代半ば。身体的特徴の詳細までは流石に覚え切れていなかったようだが、歌穂の言うとおり、彼女の通う智並市の公立高校である(みなと)学園の女生徒の制服だ、と言うのである。だが、

(事件当時、現場に湊学園の生徒がいた、ましてや道路のど真ん中に飛び出していた、なんて目撃情報や証言はない。あれだけ人通りの多い場所だ、本当にいたなら一人ぐらいは見ていてもおかしくないはずだが……)

そのために記憶が混乱しているか、虚偽の証言ではないか、とされていたのだが、これは気にかかる。

奇妙な点は他にもある。あれだけ混雑した通りでの事故でありながら、巻き込まれての負傷者が著しく少ないのである。打撲傷や擦過傷、捻挫は過去5回で数十人はいるようだが死者並び重傷を負った者は未だ一人として報告されていない。怪我人が少ない事は喜ばしい事ではあるが、丈二には何かが引っかかっていた。

(院内にいる被害者は後2人。うたまるが目を覚まし次第、次の病室へ向かうか)

そこで当たりが出るならよし。外れなら外れで、また一から情報を集め直せばいい。が、まずは一つ。

「目撃情報のない、謎の女生徒、か。調べる価値はあるかもしれんな」

そう呟いた、その直後であった。

「う、うぅ……」

「む、意識が戻ったか?」

呻くような声を上げ、身体を捩らせる被害者の男性に、丈二は枕元のナースコールに手を伸ばそうとする。

が、

 

「や、やめ、そこは、その穴は、そんな事の為に使うんじゃあ……」

 

「……コイツ、またやりやがったな」

そんな、表情を歪めて何かから遠ざかるように首を背ける男性を見て、嘆息と共に丈二はソファの上で熟睡する歌穂を見下ろした。

先ほども述べた通り、歌穂は他人の夢を覗き見る事が出来る能力者である。しかし、正確にはそれが全てではない。彼女は夢を覗き見るだけでなく、多少であれば、その夢を好きなようにいじってしまう事すら可能なのである。そして、何よりもこれが重要なのだが、

 

―――彼女、丸岡歌穂は、重度の”腐”女子、なのである。

 

「もっとマイルドな起こし方ってもんがあるだろうに、なんでわざわざトラウマ植え付けてくかね……」

彼女はその能力を活かし、こういった調査への協力の他にも、意識不明に陥ってしまった患者のケアをボランティアで行っていたりもするのだが、その際に少々でも”そっちの琴線に触れた男性”には時折、こういった(彼女にとって)趣味と実益を兼ねた治療(イタズラ)を施しているのである。そのせいで、無駄に新たな世界の扉を開いてしまった者が何人もいるとか、いないとか。

「んふふ、んふふふふ……」

「いい面しやがって、コイツ……叩き起こしてやろうか?」

取りあえずナースコールで看護師を呼び出すと、満足げな笑顔を浮かべながら眠る歌穂に、教育的指導(ゲンコツ)の一発でもくれてやろうか、と呆れ混じりに指の間接をボキボキと鳴らす丈二であった。

 

(続)

 

ども、後書きです、はい。

随分とブランクを空けてしまいました。日々レポートやら実験やら講義やらバイトやらで、休日も普通に研究室に籠もっているゴリラ男子です。

久々の更新は”Just”でしたが、皆様お楽しみ頂けたでしょうか。いよいよもって本格的に彼らが事件に首突っ込んできます。長いプロローグでしたが、まぁ相変わらずの更新ペースになると思いますので、生暖かい目で気長にお待ち下ちい。

 

と、報告が一つ。

 

前回の更新の後書きで申しておりました、SS企画の参加者が決定致しましたので、この場を借りてご報告をば。

結構いろんな方にお声をかけさせて頂いたのですが、最終的にこんなメンバーになりましたとさ。

 

狭乃狼氏

YTA氏

うたまる氏

ITSUKI氏

 

上記の4人には近々、企画の全容を纏めたものをメールしますので、今しばらくお待ちを。

 

それでは、次の機会にお会いしませう。

でわでわノシ

 

 

 

…………あ、先日ガチで交通事故に遭いました。


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